誤字脱字報告ありがとうございます。
では続きを……
「横島隊長は!?……ダメージはほとんど受けていない模様!!」
実況の武富桜子は横島がマンションの集合ゴミ置き場に豪快に頭から突っ込んで、平然と出て来た事に驚きながら実況する。
「皆さん申し訳ございません。一瞬横島隊長を見逃してしまい、肝心なところが映像でお送りできませんでした。どうやら民家の爆発以降、那須隊との攻防があった模様です!……おっと!映像でるようです!」
会場の映像は、民家の爆発以降、横島の追尾が出来ずに見逃していたが、戦闘が一旦仕切り直しの様そうの内に、先ほどの映像で追えなかった場面をリプレイする。
「横島隊長、香取隊と柿崎隊の挟撃による猛攻を変態回避で凌ぐも、耐え切れずにグラスホッパーで民家の中に退避し、その民家に那須隊長によるメテオラの弾幕が降り注ぎ、爆発!ここまでは確認できましたが……おっと、横島隊長は爆発で舞い上がる民家の屋根の破片に紛れて、グラスホッパーで上空に逃れていました!しかし、上空に逃れた横島隊長を狙いすました様に那須隊スナイパーの日浦隊員が狙撃!え?…そ、それを横島隊長は体をくねらせ回避!?さらに那須隊長がバイパーの弾幕で四方から横島隊長を追撃!!横島隊長は地面に向けグラスホッパーで飛び込み、回避するもゴミ置き場に突っ込んだ!!……しかも当人はダメージらしいダメージは受けてません!!なんて回避能力なのか!!」
「……まじかよ。日浦の狙撃はドンピシャだろ?あの距離の狙撃に横島は気が付いていたのか?気づけるものなのか?それとも狙撃を読んでいやがった?いや、それにしてもギリギリの回避だった。それとも野生の勘とかいうやつか……あれを回避されたらスナイパーはやってられねーな」
当真は茜の狙撃は文句なしの狙撃だったはずなのに、それを横島が難なく避けた事に少々投げやり気味に解説をする。
「横島パイセンの回避はまじでしゃれになんねーが、那須隊は横島パイセンの回避行動を完全に読んでた。香取隊、柿崎隊、いや俺も含めてここにいる連中は全員パイセンが上空に逃れた事に全く気が付いてなかった。だが那須隊は読んでやがった。だからあの狙いすました狙撃だ。しかも狙撃が避けられる可能性がある事も想定していたから、バイパーの追撃も直ぐに対応できた。那須隊は横島パイセンを相当研究したんじゃねーの。パイセンのバカな部分ばかり噂されているが、その実は恐ろしく能力が高いと、トラッパー以外の基礎能力に回避能力が異様に高いと知っていた。今の横島パイセンと戦ってA級でもあれだけの駆け引きは難しいんじゃない?」
米屋は珍しく、解説らしい解説を鋭い目つきで行い、那須隊の見事な対応を褒める。
「ああっ!しかし一息つく間もなく、横島隊長がゴミ置き場から脱した所で、またしても香取隊長に見つかった!!これも香取隊長の野生の勘なのか!?」
会場の映像では葉子が横島を発見した映像が映し出される。
「逃すか!」
「ひえ~~!!何で追いかけて来るんだ~~!まさか、女の子のストーカー!?……あっちこっちからも狙われてる!?なぜじゃーーーっ!」
横島は葉子の攻撃を不格好に躱し涙をちょちょ切らして逃れながら、あちらこちらで横島を狙う気配を感じていた。
横島は他のボーダー隊員とは根本的に異なる能力を持っていた。
変態的な回避能力ではない。
あの変態回避は横島のデフォルトの基礎能力(ギャグ補正付き)による単なる回避行動に過ぎない。他人から見れば特殊能力に見えるかもしれないが、そこではない。
横島は霊能者であり霊視が出来るという点だ。
霊視能力はフルに使うと、探査だけでなく危機察知やサイコメトリーまで可能な代物だ。
それはボーダーのランク戦だけでなく戦闘での大きなアドバンテージとなる。
ましてや、この世界のトリオンと横島の世界の霊気は同じカテゴリーの物。
霊視とまでとは行かなくとも、横島の世界では霊能者として霊気を感じとる能力は必須と言える能力だ。
ボーダー隊員の戦闘体はトリオンの塊のようなもの。
しかも、弾丸から武器までトリオンで構成されている。
霊能者である横島は霊視を行うまでも無く、トリオン(霊気)で構成された戦闘体、を近距離であれば無意識に把握できてしまうのだ。
さらに最高峰の霊能者である横島の場合、それだけでなく戦闘体の次の動きまで見えていた。
横島は茜や玲の位置までは察知していなかったが、無意識内で感じられる範囲内に到達した茜の狙撃や玲のメテオラやバイパーが迫っている事を把握し対処したのだった。
恐らく霊視を本格的に発動すれば、このマップはそこそこ広いがマップ上には9人しかいないため、全て把握しきる事が出来るだろうが、あえて行っていない。
「当たらないし!あんな避け方で!!イライラする!」
横島の無様としか言いようがない回避行動から、直ぐにでも撃破出来そうなハズなのに、自分の攻撃が全く当たらない事に葉子は相当イラつきを覚えていた。
「うぼべっ!?地雷女に付け回された事はあったが、可愛い女の子に武器を持って追い回されるなんて、……、やばい、他の連中も来てるし!!いやーーーーーっ!!こうなったらもうーーーー!!」
葉子の攻撃をさけ横島はスピードを上げ逃げる。
横島は葉子の後には香取隊の男共二人が追走し、柿崎隊が遠巻きに迫ってきている事を感じ取っていた。
このままだと、先ほどの同じ様な挟撃状況に陥る可能性が高いとみて、何やら走りながら準備をし出す。
住宅街に挟まれた小さな公園に横島は逃げ込み、葉子がそれに少々遅れて追いかけるが……。
「ふはははははっ!この横島!いつまでもやられっぱなしではないのだ!!」
横島は先ほどまでの逃げから一転、大きな樹の前で待ち構えていたのだ。
しかも、両手を前に突き出しニギニギと何かを揉むようなやらしい手つきで……。
「な、なに?まあいいわ、そっ首刎ねる!」
葉子はその怪しい手つきと横島の下種顔に一瞬怯んだが、一気に横島に詰め寄る。
横島が葉子のスコーピオンによる斬撃を一歩下がり避けると同時に葉子目掛けて何処からともなくロープが絡みつく。
「なっ!?」
横島はロープをはるサブトリガー、スパイダーを多数同時に発動させたのだ。
スパイダーのロープを利用し、美神令子ばりのロープ術で一瞬にして葉子をす巻きにし、地面に転がす。
「美神流緊縛術!なんちって!?」
丁度、横島と葉子を追走していた香取隊のアタッカー三浦雄太とガンナー若村麓郎が追い付いて来た。
「ヨーコちゃん!」
「……!?」
「こんなもの!」
葉子は腕に生やしたスコーピオンでロープを切って脱しながら飛び跳ねて起き上がる。
「本命はこっちだ!」
スパイダーのロープから脱した葉子の背後から横島が手錠のような物を両手首にかけたのだ。
「くっ」
葉子は背後の横島を足にスコーピオンを生やして足蹴りで斬ろうとする。
三浦雄太と若村麓郎も即座に葉子のカバーに入ろうと駆け寄ろうとするが……
「え?……発動しない?」
葉子の足蹴りは空を切るだけでスコーピオンは発動しなかった。
それどころか、葉子は上手く体を動かせなかったのだ。
葉子にはめられた手錠からロープが伸び、木に吊るされ、足下40cm程ではあるが宙づりにさせられる。
「お前らわかってるだろうな、近づいたらこのねーちゃんがどうなるか!」
横島は宙づりの葉子の背後から下衆な笑みを浮かべ、三浦雄太と若村麓郎にこんな事を言う。
「ヨーコちゃん!!」
「……人質だと!?何を!?」
そう横島は人質を取ったのだ!!
実況席では……
「横島隊長!香取隊長を拘束!?どういう事でしょうか!!」
桜子は横島のこの行動の意味が分からず困惑気味に実況する。
「この状況は、普通に考えたら人質をとったんだろうが……。ランク戦で人質取ったの初めて見た。何やってんだか横島パイセンは?それに香取ちゃんも大人しいな。あんなものスコーピオンで強引に脱出できるだろ?何やってんだ?」
米屋は呆れ気味にこう言った。
「いや……、あの手錠はスイッチボックスに入ってるトラッパーのツール、ロック(試作品)だ。冬島さんがアフトクラトルの戦いで必要と感じ開発し、ガロプラの襲撃の後に更に改良を加えたものだ。要するにあの手錠は人型ネイバーを大人しく捕縛させるためのトリガーだ。アレで拘束されるとトリオン伝達系を阻害する働きがあってトリガーを発動出来ない代物だ。さらにベイルアウトさせないために戦闘体を維持したままとなる。俺は冬島さんの実験に付き合ったから知ってたが、トラッパーじゃないと知らないわな。香取はトリガーが発動出来ない上に戦闘体も上手くコントロールできないだろう」
当真は横島が使った手錠の開発に携わっていたがために知っていたようだ。
トラッパーのトリガースイッチボックスに収納されてる最新ツールでその名もロック(試作品)、当真が言う通り、人型ネイバーを拘束するためのツールだった。
冬島はトラッパーとして戦闘員を務めてはいるが、本職はボーダーの技術者だ。
アフトクラトルの侵攻の後、敵人型ネイバーを拘束するためツールが必要だという事で開発された物だった。
ガロプラの襲撃の際には、敵人型ネイバーにベイルアウトで逃げられた事もあり、更に機能を追加し、今の様な高性能なものとなった。
ただし、このロック、直接人型ネイバーに手錠のように嵌めないといけないため、戦闘中での使用は本来困難極めるものだ。
敵人型ネイバーが弱り切った所で使用するような物だ。
「でも当真さん、ランク戦で人質なんて取って意味がある?」
「知らねーよ。それは横島に聞いてくれ」
米屋や当真もそうだが、桜子も人質を取る意味が分からないと言った感じだ。
それもそのはず、そもそもランク戦で人質を取る行為は意味がないからだ。
そもそも人質とは、金品や人質交換や時には逃走の確約等、この前の星輪女学院のテロ事件のように相手に何かを要求するために行う行為だ。
戦争でも一時休戦等の要求などのカードとして人質は効果的であり、戦術的にも有効手段である。
しかし、実戦を踏まえた訓練の場でもあるボーダーのランク戦ではあるが、対戦相手も倒してポイントを得るポイント制である。人質を取る位なら倒した方がいい。
さらに相手を全て排除する殲滅戦であり人質を取る事は初めから意味を持たないのだ。
会場に観戦に訪れたボーダー隊員もそれがわかっているため、横島の行為は人質などを取る卑怯者というよりも、意味が分からない行為に映っていた。
だが横島は……
「このねーちゃんのスリーサイズを公表しちゃうぞ!!本気だぞ~!!」
揉み揉みと怪しい手つきをし、葉子と香取隊の男共にこんな事を言う。
「さ、さわるな!!この変態!!」
葉子はそんな横島に涙目で叫ぶ。
葉子は訳が分からない内に拘束され、人型ネイバー拘束用トラッパー用ツール『ロック』でトリガーが発動できず、身体能力も落ちた状態だ。
さらに言うと、オペレーターとの通信も阻害された状態だった。
しかもだ。ここで横島に直接触れられると、横島のサイドエフェクト(だと噂されているだけ)でスリーサイズがバレる。
バレるだけでも相当な精神ダメージだが、葉子がトリオン体にバストを相当盛っていた事が白昼の元にバレてしまうのだ。
さすがの葉子でもそれは乙女的には絶対にノーだ。
「ヨーコちゃん!!」
葉子に惚れている三浦雄太にとってもその行為は許されるものではない。
「………雄太、葉子を強制的にベイルアウトさせるぞ」
若村麓郎は、葉子がどういうわけかトリガーが使えず通信もベイルアウトも自発的に行えない状態だとオペレーターの華から伝えられ、葉子を助けるには撃破して強制的にベイルアウトしかない事を聞き、サブマシンガンを葉子に標準を合わせながら雄太に伝える。
「わかった!ろっくん!」
雄太は返事をし、木に吊るされ人質となった葉子をサブマシンガンで撃つが、葉子の手前でシールドが張られ遮られる。
横島がシールドを張ったのだ。
「ふはははははっ、無駄無駄!!柿崎隊がもうすぐここに来る。貴様たちで柿崎隊を見事撃破したのなら!!このねーちゃんを開放してやろう!!さもなくば!!スリーサイズを調べちゃうぞ!!ふははははははっ!!ちょっと手がすべって触っちゃうかもしれない~!!先ずはバストサイズからっと!!ふははははははっ!!」
横島は怪しい手つきをしながら悪魔の様などす黒い笑みを浮かべ、高笑いをする。
もはや完全に悪役だ。
横島は誰もが全く想定などしていない、乙女心と羞恥心を人質に、柿崎隊を倒すように要求してきたのだ!
「くっ!ヨーコちゃん!!」
「こ、これは、なんて人だ!!」
雄太と麓郎は流石にこれには攻撃を止めざるを得なかった。
「もぎゃーーーーっ、もう殺せ殺せ!!」
木に吊るされ葉子は半狂乱に陥いりじたばたともがく。
実況席では……
「…………さ、最低です………こほん。し、失礼しました。横島隊長!ボーダーランク戦創設以来、初の暴挙です!!」
桜子はこの光景に目が点になりぼそっと呟き、しばらくして咳払いをしてから、実況に戻る。
「くははははっ!流石横島パイセン、ド汚ねーーっ!!」
「これ、いいのか?」
米屋は爆笑し、当真はこのまま続けていいものなのかと答えを出してくれる人を探すようにあたりを見渡していた。
会場の誰もが思った。
ド汚ねーーと!!
横島くんの口車に乗ってはダメだよね。
横島ワールドに引き込まれる香取隊。
次はどうなる事やら。
次のランク戦の対戦相手で横島くんの事を気になりだしそうな女子は?(玲ちゃん以外)
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熊谷友子
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日浦茜
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志岐小夜子
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照屋文香
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宇井真登華
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香取葉子
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染井華