横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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ようやく書けました。




その29、ランク戦最終戦開始

 

「初めましてのみんなもいるかもしれませんね。玉狛支部木崎隊オペレーターの林藤ゆりです。実況は初めてなので、少々のミスは許してくださいね」

ゆりは笑顔を湛えて自己紹介をする。

その大人の女性の魅力が詰まったキュートな笑顔に、観客席の誰も彼もが頬を赤く染めていた。

ランク戦最終日とあって、昼の部の実況を行ってくれる人がなかなか見つからず、現在ランク戦に関わっていないゆりにお鉢が回ってきたのだった。

ゆりはその申し出を快く引き受け、こうして初めて実況席に座る。

因みにゆりは本部室直属のオペレーターを除く、現在最年長のチームオペレーターでもあり、しかも玉狛支部ということもあり、中々頼みずらい存在でもあった。

旧ボーダーからの唯一のオペレーター要員であり、あの城戸司令や忍田本部長でさえ、彼女には中々意見を言い難いらしい……。

 

「それではB級ランク戦上位最終戦ラウンド8昼の部を開催します。解説にはA級冬島隊隊長の冬島さんと、A級太刀川隊隊長の太刀川くんに来ていただきました。よろしくお願いします」

 

「よろしく……」

年上の冬島もゆり相手だと多少緊張する様だ。

 

「ゆりさん、よろしく」

一方年下ではある太刀川の方はどうやら緊張は無い様で、気軽に挨拶を返していた。

 

「続きまして隊の紹介を行います。現在B級2位影浦隊、変幻自在刃を自在に操るマンティス使いアタッカー影浦雅人隊長、気配りが出来る重量級ガンナー北添尋隊員、未来のナンバーワン天才スナイパー絵馬ユズル隊員、ちょっと口が悪いのは茶目っ気破天荒オペレーター仁礼光隊員。次にB級5位王子隊、さわやかイケメンの裏には策士の顔、アタッカー王子一彰隊長、冷静沈着生徒会長シューター蔵内和紀隊員、真面目一直線、こちらも中学で生徒会長のアタッカー樫尾由多嘉隊員、王子隊の頼れるお姉さんオペレーター橘高羽矢隊員、続いて、B級6位東隊、戦略眼は軍師の如く、みんなの先生スナイパー東春秋隊長、元気いっぱいアタッカー小荒井登隊員、落ち着き払った姿は隊長譲りアタッカー奥寺常幸隊員、彼らを影から支えるのがオペレーター人見摩子隊員。最後にB級8位横島隊、ボーダー創設以来の問題児にして異色の規格外トラッパー横島忠夫隊長、その相棒は実力派エリートが何故かオペレーターを?迅悠一隊員です。彼らがどのような戦いを繰り広げるのか楽しみですね」

ゆりは隊と隊員達を少々色を付けて紹介していく。

 

「今回も横島隊長がどんな戦闘を行うのか楽しみだ」

横島が、冬島自身が開発を行ったトラッパートリガースイッチボックスのツールトリガー群をどう活用するのかを毎回楽しみにしていた。

前回は横島のランク戦は、ボーダー内の仕事の予定と重なり、直に見る事が出来なかったのがよっぽど悔しかったのか、今回はボーダーの技術部や隊長としての仕事を一切入れずにこのランク戦の解説に臨んでいた。

 

「そうですね。横島隊長の今迄のランク戦を確認しましたが、新戦法や新戦術が満載でしたね。前回の人質戦術は流石に驚きました。人質戦術については賛否があった様ですが、規定違反ではありませんので、そのままランク戦は続行されましたが、今後の対応については現在検討中だそうです」

ゆりは冬島の話から、前回の横島の人質戦術についてボーダー上層部の現在の見解を述べる。

 

「なかなか楽しませてくれたが、今回はやすやすと横島の思惑通りに進まないだろう。策士の王子やあの東さんが対戦相手だからな、個人的には東さんがどんな横島対策を取るのか楽しみだ」

太刀川は王子隊や東隊では横島も苦戦は免れないだろうと語る。

 

「今回選択権がある横島隊がステージを決定しました。市街地D、昼間天候は晴れです。狭いステージですが、大型ビルが立ち並び、ステージの中央には大型商業施設があります。大型商業施設の外延は大通りで、シューターやスナイパーが有利となりますが、大型商業施設内での局地戦になりがちになり、スナイパー対策としても使用されるステージです。このマップを選択をした横島隊、東隊長の狙撃対策でしょうか?」

 

「それだけじゃない。大型施設内の複雑な空間地形はトラッパーとしても有利に働く。特に単独トラッパーの横島だと特にな」

冬島はかなりトラッパーに有利なステージだと説明する。

 

 

 

 

影浦隊の作戦室では……

「横島とようやく戦えるってのに、王子の野郎と東のおっさんが一緒だとはな、めんどくせーな」

影浦隊隊長の影浦雅人(18歳高校3年生アタッカー)の第一声はこれだった。

影浦は横島との対戦を楽しみにしていたが、王子や東という策を巡らすタイプの隊との戦闘となるため、厄介に感じていた。

 

「カゲじゃないけど、結構大変だよね。横島くんだけでも厄介なのに、王子隊と東隊もいるからね。絶対何か対策を準備してくるよ。横島くんの動きだけでもわかればいいんだけどね」

北添尋(18歳高校3年生ガンナー)も影浦と同じ意見の様だ。

 

「このマップだと横島先輩の動きを見張るのはまず無理だ。それに東さんを相手にしながらだと厳しい」

絵馬ユズル(14歳中学2年生スナイパー)も作戦室の画面の表示されているマップを見ながら、横島の動きを探るのは無理だと答える。

 

「おめーら、何うだうだ言ってんだ!どうせ頭悪ぃーんだから、考えたって仕方がねーだろ!?いつも通り暴れて派手に引っ掻き回せばいいじゃねーか!」

仁礼光(17歳高校2年生オペレーター)は相変わらずの口の悪さで、うだうだ考えてる3人に叱咤する。

 

「ふはっ、そりゃそうだ。光の言う通りだぜ」

「光ちゃん。頭悪いのにゾエさんも入ってる?ゾエさん成績真ん中位よ」

「……結局はいつも通りか……でもそれしかないよね」

影浦も北添尋もユズルも光の叱咤で吹っ切れたようだ。

 

 

 

 

同じくして王子隊では……

「東さんとカゲくん(影浦)だけでも厄介なのに、ヨコシマン(横島)も参戦とは、思い切って白旗上げようかと思うくらいだね」

王子隊隊長の王子一彰(18歳高校3年生アタッカー)はため息を吐きながら冗談交じりにこんな事を言う。

因みにこの爽やかなイケメンである王子は、同級生以下後輩には変なあだ名をつける癖がある。

 

「確かにな。厄介な相手ではあるが、勝てない相手ではない。そうだろ?」

蔵内和紀(18歳高校3年生シューター)はそんな王子に表情を崩さずにそう言った。

 

「そうだね。初めから負けるつもりならランク戦なんて出ないよ」

王子は爽やかな笑顔を見せそう言う。

 

「先ずはヨコシマンだよね。前の試合でカトリーヌ(香取)が実践したヨコシマンを真っ先に狙う作戦はいい方法だった。ヨコシマンにトラップを設置させる隙を与えない事が最大のヨコシマン封じ、ただ、ヨコシマンの機動力や身体能力が並みのアタッカー以上にあったし、まさか人質を本当に取るなんて誰も考えつかない。ヨコシマンの落とし穴トラップやグラスホッパー迫撃砲やあの身体能力も厄介だけど、やっぱり一番厄介なのは策士だということ、東さんに匹敵するもしかしたらそれ以上かもしれない。過去の試合を見たけど、試合を完全にコントロールしていた。ほぼチートだね」

王子はため息交じりに横島をそう評価を下す。

 

「……そこまでか、横島は」

 

「だから、今回はヨコシマンとは真面に戦わない事にするよ」

 

「どういうことですか王子先輩」

真面目一直線の樫尾由多嘉(15歳中学3年生アタッカー)は真剣な眼差しで王子に聞く。

 

「ヨコシマンの基本戦術は漁夫の利から始まる。もしくは相手が弱ってる所を叩く感じだね。だから、それをこちらがやってしまおうという事だね。前回那須隊がやっていたことに近いけどこれが一番効果的そうだ。一番いいのは東隊と影浦隊とヨコシマンが三つ巴の時に仕掛けるのがいいかな。まあ、それは東隊次第なんだけど、たぶんそうはならなさそう。とりあえずは動きがあるまで中央の大型商業施設に入らずに、周りのビルの中で隠れて様子を見よう」

 

「それはいいが、それだと横島が何処にトラップを仕掛けているか把握出来ない」

 

「ヨコシマンは中央の大型商業施設で罠を張るはず、それ以外だと効率が悪い上に、他のビルに移るにしても、大きな大通りを通らないといけないから、東さんやエマージン(絵馬ユズル)に見つかるよね。狭いマップだし。もし東さん自身が策を練ってきた場合は、僕らと同じ策を取るかもしれないけど、その時はまず東隊もヨコシマンを先に狙うはずだし、外れはないかな。ヨコシマンと当たる時は3人同時で攻撃する方がいいしね」

王子の策は横島が潜み罠を張るだろう大型商業施設に入らずに、周りのビルで様子を見ながら、外に出てきたところ、又は他の隊と戦闘をしている際中を狙うというかなり偏った消極的な策だった。

 

「なるほど、だが王子にしてはかなり慎重な策だな」

蔵内がこういうのも無理はない。

王子隊のアタッカー2人とシューター1人という近中距離の編成から、自ら動く策を擁する事が多かったのだが、今回は完全に待ちの作戦だった。

 

「それだけヨコシマンが脅威だという事だよ。二宮さん共々早くA級に行ってくれないかなと本気で思うよ」

王子は半笑いだったが、本気でそう思っていた。

 

 

 

そして、東隊の作戦室では……

「市街地Dか続くな。前回は三雲隊にはいろいろとやられたが……」

東隊隊長の東春秋(25歳大学院生スナイパー)は市街地Dを選択した事に少しホッとしていた。

もし、横島が荒野マップの砂嵐を設定したならば、勝つ見込みがほぼ無かったからだ。

砂嵐による視界不慮で前方3~5mほどしか確認できないため、スナイパーによる狙撃が封じられる。バッグワームを使われると相手の位置がお互い確認できなくなり、遭遇戦の乱戦にほぼなるという、かなり偏ったステージだった。

実際ここ2年荒野自体が選ばれる事がなく、しかも天候の砂嵐は過去1回しか選択された事が無い所謂『クソ』マップだった。

 

「小荒井、奥寺、作戦をどう立てる?」

東は小荒井登(16歳高校1年生アタッカー)と奥寺常幸(16歳高校1年生アタッカー)に今回の作戦をどうするか聞いた。

東はボーダー内で実力的にはトップクラスであり、本来A級の隊を率いる立場であるが、後進の育成のため、こうして年若い隊員とチームを組み、教育を施しているのだ。

こうして東に育てられた隊員はA級B級問わずに多数いる。

東の基本的な教育スタイルは自分達で考えさせ、実戦させる。

勝ち負けに限らず、何で成功し、何が失敗したかを都度検証し、じっくり教え込んでいくタイプだった。

 

「またこのマップか、影先輩だけでも厄介なのに、横島先輩もいるとか、どうすればいいんだこれ?トラッパーともまだ戦った事ないし……このマップは中央の商業施設で戦う事が殆んどで、相手の位置を早く見つけるかなんだけど、うーん。横島先輩はほったらかしにすると後でやばいし……、影先輩と遭遇したら一人じゃやばいし……」

小荒井はどんな作戦が有効なのかまだ考えがまとまっていないようだ。

 

「横島先輩は厄介ですね。中央の大型商業施設に横島先輩に隠れられたら、トラップを設置し放題ですね。今迄の傾向ですと、商業施設内での戦闘が殆んどですが、時間が経てば経つ程、横島先輩が有利になって行く。下手をすると商業施設内で戦闘を長引かせると横島先輩のトラップで全滅なんてこともありえます。スナイパーは絵馬1人ですし、外で相手の出方を待って戦った方がまだましなのかもしれません」

奥寺は、このマップの今迄の戦闘傾向から、中央の大型商業施設内での戦闘になる傾向が高いが、トラッパーの横島が居る状態では大型商業施設内での戦闘は危険すぎるため、建物の外は見晴らしがよくスナイパー有利ではあるが、敵対スナイパーは影浦隊の絵馬ユズル1人だけのため、商業施設で横島のトラップを警戒しながら戦うよりも、外で戦った方がいいと結論づける。

 

「そうだな。奥寺が言う様に外で戦うのも有効な選択肢の一つだ。横島のトラップは脅威だ。こちらが王子隊や影浦隊に気を取られてるうちに、全滅もあり得る」

東も屋外でじっくり戦う戦法も選択肢の一つとして考えていた。

複雑な構造の大型商業施設内に横島に隠れながらトラップを仕掛けられれば、他の隊も含め全滅もあり得ると考えていた。

 

「王子隊も同じこと考えてたりして」

小荒井は何気無しにそんな発言をする。

 

「小荒井のその意見ももっともだ。あり得る話だ。王子隊も対横島対策を考えているだろうが、中央の大型商業施設は圧倒的にトラッパー有利だからな」

東は小荒井の意見に大きく頷く。

 

「王子隊も同じ考えなら、こちらにはスナイパーの東さんが居る分有利に働く。それに王子隊も第一目標は横島先輩だろうし」

奥寺は王子隊が同じ行動を取ったとしても自分達が有利だと説く。

 

「はぁ、影先輩が真っ先に横島先輩を倒してくれたらやりやすいんだけどな」

小荒井はため息交じりにこんな事を言う。

 

「小荒井、そう言う風に仕向けるのも作戦の一つだぞ。大型商業施設の外での待ちの作戦は不確定的ではあるがその要素もある。うまく行けば影浦隊が横島がトラップを設置する前に遭遇戦と言う事もありえるからな。横島のグラスホッパー迫撃砲はこの狭いマップと高いビル群では使い難いだろう。撃ってきたとしても場所が直ぐに把握できる。よし、今回は全員で大型商業施設の外で待機し、待ちの作戦に出る」

東は二人の意見を取り入れ、大型商業施設の外で待ちの作戦に出る事を決定する。

だが、東自身が考えた作戦の中では最上の作戦ではなかった。

やはり、東は横島を真っ先に倒すべきだと考えていた。

横島は今までとは異なる戦法やトラップを使用して来る可能性があるためだ。

東にとっても横島は不確定要素が高すぎる存在だったのだ。

 

 

 

一方横島隊の作戦室では……

「今はB級8位だし、最終B級10位は堅いんだろ?別にテキトーで」

横島は鼻くそほじりながらマンガを読んでいた。

 

「ダメだ。7位には入っておきたい。お前はマイナスイメージがでかいからな、城戸さんが横やりを入れてくるかもしれないし」

迅はやる気が無さそうな横島を注意するのだが……

 

「なんか怖そうなおっさんとか、C級隊員をぶったぎった奴もいるんだろ?怖いおっさんとか不良とか苦手なんだけど」

 

「そう言えば、今回の実況はゆりさんがやるって言ってたな。いい所を見せなくてもいいのか?オペレーターを俺と代わってくれるかもしれないぞ」

迅は横島にこんな事を言う。

 

「なにーーーー!!ゆりさんが!!早くそれを言えーーーーー!!ふはははははっ!この横島の華麗なる活躍を眼に焼き付けてくださーーーい!!まっててねーーー!!ゆりさっはーーーーん!!」

横島はさっきまでのやる気なさが何処へと行ったのか、手の平を返したように今は興奮気味にやる気満々になる。

どうやら迅の横島対策は効果絶大だったようだ。

 





さてさて、横島がちゃんと戦うのだろうか?
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