ようやく整いました。
実は構想していた戦法が、なんか横島らしくないなーーって悩みに悩みまくって、半年以上、ここに来てようやく整った感じです。
再開です。
「それでは、B級ランク戦上位最終戦ラウンド8昼の部開始です」
実況の林藤ゆりのコールと共に、隊員達がマップへと転送される。
「各隊員は転送後にバッグワームを装着。マップ中央の大型商業施設へ、影浦隊影浦隊長と北添隊員、さらに横島隊長も転送位置から一直線に突入、しかし東隊と王子隊は大型商業施設へは突入せずに隊の合流を優先するようです」
ゆりは転送直後のそれぞれの隊員の動きを見ながら実況を行う。
「トラップを仕掛けるために横島が大型商業施設へと真っ先に突入することは分かっていたが、てっきり横島のトラップを設置させる暇を与えないために、何処の隊も一斉に商用施設へ突入すると思ったが、突入したのは影浦隊だけか」
「東さんも王子の隊も合流を優先して、じっくり大型商業施設を攻めるつもりか?」
冬島だけでなく太刀川もどうやら、何処の隊も真っ先に大型商業施設に突入するものだと思っていたようだ。
「東隊は一早く合流しましたが、周囲のビルの屋上で待機したままです。そしてここで王子隊も全員合流、大型商業施設には突入せず、周囲のビルの中へと入って行きます。両隊とも横島隊長がトラップを設置する前に排除するのではなく、合流を優先し慎重に事を進めるようです」
ゆりの実況通り、東隊と王子隊は大型商業施設での戦闘を避け、横島や他の隊が大型商業施設から飛び出してくるのを狙う、待ち伏せ型のかなり慎重な作戦を取る予定であった。
大型商業施設に突入早々上階で、影浦隊の影浦と北添尋が合流を果たしていた。
「……気にくわねー」
だが影浦は鋭い目を更に細め周囲を見渡し、こんな言葉をパートナーの尋に漏らす。
「何が?」
「何にも感じねえ、東のおっさんはともかく、他の連中も感じねえ」
影浦はサイドエフェクト、他人の意識を肌で感じ取る事が出来るサイドエフェクト【感情受信体質】で、他の隊員の意識を感じ取れないでいたのだ。
戦闘となると、相手を倒すために攻撃的な意識等大きな感情が動き、普段よりも肌に突き刺さるような意識を感じやすいのだが、今はほぼ感じる事が出来ないでいた。
東や遊真のように戦闘でも自らの意識すらもコントロールできる人間は別にして、敵が近くに居ない事を示していた。
「と言う事は、大型商業施設に他の隊も入って来てないって事かな?」
尋は影浦の言いたいことを正確に汲み取り、こう返事をする。
「ちっ、光!他の隊の様子はどうなってやがる」
影浦はオペレーターの仁礼光に状況を確認する。
『そこ(大型商業施設)に入って無いんじゃねーか?試合開始から全員バッグワーム使ってたから正確にはわかんねーけど、ばったり出くわしてけん制したり戦ったりした跡もねーし、カゲのサイドエフェクトでも感じられねーんだろ?ユズルは王子隊の連中がそこ(大型商業施設)から遠ざかるのを見たって言ってたぞ、東隊も同じじゃねーか?周囲で様子見ってか?慎重策って奴だな』
光は相変わらずの口の悪さが目立つが、オペレーターとして高い能力を有している。
その光でも現状を正確に把握できない状況であった。
「なるほどね。予想が外れた。てっきり、東隊も王子隊も商業施設に入って、真っ先に横島くんを狙うと思っていたのにね」
尋や影浦隊は全隊がこの大型商業施設に飛び込み、横島が罠を張る前に、戦闘開始するものだと予想していたからだ。
「光、横島はどうした?」
『それもわかんねー、だが、トラッパーの彼奴は大型商業施設に入った可能性が高いだろ?彼奴は他の隊が戦闘してる最中を狙ってくるからな』
光は何だかんだと横島の全試合を確認し、その戦いをぶりから予想する。
「うちの部隊だけで、商業施設内でトラッパーの横島くんと真正面で戦う展開は流石に避けたかったな」
尋は横島との直接対決となりそうな展開にウンザリとした感じだった。
「丁度いいじゃねーか、周りの連中を気にせずに横島をぶった切れるってもんだ」
逆に影浦はこの状況に楽し気である。
「でもさ、横島くんのトラップは厳しいよ、この最上階からあまり動かない方がいいんじゃない?」
「奴はのさばればのさばるほど、厄介だ。それがトラッパーって奴だ」
「そうなんだけどさー、横島くんの落とし穴トラップは仕掛けた場所がまったく見えないから迂闊に動けないんだよね」
「じゃあお前が、横島がトラップを仕掛けそうな場所をかたっぱしから破壊すればいい」
「かたっぱしからって、さすがのゾエさんもトリオンが持たないよ」
確かに横島がトラップを仕掛けたと思われる場所をかたっぱしから破壊すれば、落とし穴トラップは解除される可能性が高い。
落とし穴トラップの性質上、仕掛けた場所が破壊されれば、壁などに通路を作るためのトリガー『ホール』が解除され、中に仕掛けられたトリオン爆弾も爆破されるだろう。
なまじ、ホールが破壊されないまでも、ホールの蓋が破壊され、中のトリオン爆弾に着弾されれば同じである。
ただ、ホールの蓋は威力の低い弾丸系のトリガーでは破壊出来ないため、ある程度威力のある攻撃を加えないと破壊出来ない。
要するに壁や建物を破壊出来る程度の攻撃を加えないと落とし穴トラップは解除できないという事だ。
さらに、狙撃用ガンナーのアイビスで狙い撃てば解除可能だが、そもそも落とし穴トラップが何処に仕掛けられているのかピンポイントで判明出来ないため、現実的ではない。
この落とし穴トラップは厄介極まりないところだ。
しかしながら、落とし穴対策を既に前回のランク戦で那須玲が示していた。
玲の横島へのメテオラやバイパーによる徹底した中距離からの攻撃は、自らが横島のトラップ設置範囲に踏み込むことなしに攻撃が出来るだけでなく、横島が近隣に設置したトラップも広範囲のメテオラによる攻撃で解除されていた。
要するに、何処に設置されているか分からない落とし穴トラップに対し、広範囲に高威力の攻撃を行う事で解除が可能だと証明されたのだ。
但し、玲のようにトリオン量も多く高威力の範囲攻撃が出来る事が前提ではあるため、この落とし穴トラップ対策は誰でも出来るものではない。
そう言う意味では北添尋はボーダー隊員の中でもトリオン量も高く、さらには重量級ガンナートリガー擲弾銃でのメテオラによる高火力範囲攻撃が得意としているため、横島の落とし穴トラップ解除にはうって付けといえる。
尋本人も横島の落とし穴トラップ破壊は可能だろうと踏んでいた。
各隊もこれには気が付いているが、東隊や王子隊では現実的に実施出来ない対策である。
しかし、流石に影浦が言うような建物かたっぱしから破壊するのは効率が悪すぎる。
まず尋のトリオンが持たないだろう。
そんな無謀な方法が取れるとしたら、トリオン量の多い二宮隊隊長二宮匡貴か太刀川隊出水公平、三雲隊に新規加入したヒュース、それでも、全ては無理だろう。
だが、建物ごと破壊が出来てしまうトリオンモンスター雨取千佳ならば全てを破壊尽くす事が出来る。
ただ、本気で行うとトラップを破壊する行為というよりも、全てを無に帰すだけになってしまうが……。
「カゲさん、この建物の吹き抜けを上からずっと監視してたけど、横島先輩は見かけてない」
絵馬ユズルが二人の会話に通信越しに入って来る。
ユズルは仁礼光の指示で物陰から最上階から吹き抜け全体の監視をするよう指示を出され、今も監視中だった。
『へへん。光様の指示によるものだ。おめーら、各階の吹き抜け周囲はトラップは無い。そこからゾエが片っ端からぶっ放して横島の野郎をあぶり出せ!』
「フッ、だとよゾエ」
光のその作戦指示に、影浦は悪そうな笑みを尋に向ける。
「光ちゃん、それ、ゾエさんトリオン切れで干からびちゃうんだけど」
『ちょうどダイエットにいいじゃねーか。横島が出て来るか、ゾエが先に干からびるか、我慢勝負だ!』
「はぁ、横島くんがもしここ(大型商業施設)に居なかったら、ゾエさん無駄死になっちゃうよ」
『いいからやれ、屍は拾ってやる。頑張れよ!』
光の作戦はこうだ。
大型商業施設の吹き抜け周囲から、尋による擲弾銃メテオラによる高威力広範囲攻撃による掃射で隠れているだろう横島をあぶり出し、出てきたところをユズルの狙撃で攻撃又は、影浦による近接攻撃で仕留める作戦だ。
単純だが、効果は高そうではある。
ただ、横島をいつまでもあぶり出せないでいると、尋は干からびはしないが、間違いなくトリオン切れに陥るだろう。
こうして、大型商業施設では影浦隊による対横島作戦が行われようとしていた。
その頃、横島は……。
真顔で何やら考えを巡らせていた。
そんな横島に迅が通信越しに問いかける。
「横島、何をやってるんだ?」
「うーむ。大人っぽい青の刺繍レース柄なのか、フレッシュな感じでオーソドックスに白の柄無しがいいのか」
「……何の話をしてるんだ?」
「くまちゃんに似合うブラはどっちかなって……」
そう、横島はこの大型商業施設の女性用下着販売店で、真剣にブラジャーを食入る様に物色していたのだ。
「真面目にやれ!」
お待たせしてすみませんでした。