横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
なんとか完結に至りたいです。


その32 トリオン体の小物を作ってる奴って誰よ。

 

影浦隊はショッピングモール4階衣服売り場の女性物の下着コーナーでブラを物色する横島を発見し、建物東側に位置する吹き抜けを囲む大通路から絵馬ユズルの狙撃と北添尋のメテオラの絨毯爆撃で、逃げの一手の横島を徐々に追い詰めていた。

 

だが、必死の形相で不格好に逃げ惑う横島が突如として影浦隊の視界から姿を消したのだ。

影浦隊だけでなく、この試合を見に来た観客席のボーダー隊員達もスクリーン越しではあるが横島の姿を見失っていた。

 

横島を見失ったと感じた次の瞬間、一方的に中距離からの攻勢をかけていたはずの影浦隊の後方で、断続的に爆発音が鳴り響きわたり、吹き抜け周りの大通路から狙撃を行っていた絵馬ユズルが複数の爆発に巻き込まれ吹き飛び、吹き抜けに落下していく。

ユズルは見るからにトリオン体の漏れが激しく、トリオン流出過多でベイルアウト寸前の致命傷だった。

 

「どうなってやがる!?」

「ユズル!?」

前方に出ていた影浦は爆発音に気が付くが状況が把握できず、丁度影浦とユズルとの中間ぐらいの位置でメテオラで絨毯爆撃を行っていた尋もすぐ後方からの爆発音に振り返ると、ユズルが先ほどまで居たはずの場所には、もうもうと煙が上がり、ユズルを確認できなかった。

 

『ユズルの奴は致命傷だ!もう持たない!!この爆発の威力、トリオン爆弾だ!!くそっ!!どこからだ!?横島の奴は今の今まで売り場で逃げ回ってたはずだ!!最初っから爆弾を設置してあったってことか!?そんなはずは!?』

オペレーターの仁礼光は早口で悪態をつきながら、現状とユズルの状況を影浦と尋に伝えるが、どこからの攻撃なのか全く把握できていない。

確かに横島は光が言った通り、前方の影浦からさらに離れた衣服売り場の中を降り注ぐメテオラとスナイパーの弾丸から逃げ惑っていたのだ。

横島とユズルの距離は少なくとも80~100mは離れていたはずだった。

となると最初からこの吹き抜け周りにトリオン爆弾を設置していたことになるが、ユズルがこの建物に侵入してからずっと、この吹き抜けの上下全体が見渡せる位置に身を潜め監視していたが、横島が吹き抜け周囲の各階の大通路にトラップを設置する姿を見ていなかった。

 

影浦と尋は光の通信越しの声に大通路に横島からの何らかの仕掛けか攻撃があると判断し、それぞれの位置から売り場側に飛びのくが、一呼吸置く間もなく、爆発音とともに飛びのいた先の天井が崩れ落ちてきたのだ。

 

「うわっ!?」

尋は吹き抜けの大通りの方へ、転がり込むように再び飛び込み。

 

「ちっ!!」

尋より売り場の内側へ回避した影浦は、スコーピオンを二つ繋ぎ鞭のような性質を持つマンティスを柱に突き刺し、フックショットのように使い、遠心力を利用し、ギリギリを滑り込むように、崩れ落ちる天井を避け、吹き抜けの大通りに飛び出す。

 

しかし、飛び出した先に複数のトリオン爆弾が何処からともなく二人の近辺に転がり込んでくる。

 

「くそが!」

影浦は再びマンティスをフックショットのように使い、空中機動で吹き抜けの上空へと逃れる。

 

「うわわっ?やばいよこれ!?」

尋はシールドをとっさに張るが、複数トリオン爆弾の爆発をすべて受け止めることができず、致命的な大ダメージを負う。

 

影浦は吹き抜け上空へと立体移動で逃れたが、そこに投網のようなネットが頭上から影浦めがけて降ってくる。

「次から次と!!」

フックショットのように使っていたマンティスを咄嗟に解除し、中空で迫りくるネットを切り裂く。

 

「くそったれ!!」

しかし、切り裂いた瞬間、ネットが連続的に爆発し、大轟音を奏でる。

影浦はシールドを張る間もなく爆発の直撃を受け、ベイルアウト。

 

影浦がベイルアウトするのと同時に、大ダメージを負っていたユズルと尋もトリオン流出過多でベイルアウト。

 

横島を追い込んでいたはずの影浦隊がいつの間にか窮地に陥り、あっという間に全滅したのだった。

 

この状況を見ていた観客席の大多数は、影浦隊に何が起こったのかわからず、呆然としていた。

観客席のスクリーン右上には横島隊にポイントが3点入ったことが表示され、さらにざわつく。

 

「影浦隊全員ベイルアウト、横島隊にポイントが入りました。横島隊長の攻撃によるものですが……」

実況席の林藤ゆりも横島がどうやって影浦隊を全滅させたのか、すべてを把握しきれていなかった。

 

その横で太刀川慶が冬島慎次に質問をしていた。

「冬島さん、最後のあの爆発するネットは何なんすか?」

「……あれか、あれは恐らく、多量のスパイダーを複数のトリオン爆弾で結合してネット状にしたものだろう」

 

「なるほど、スパイダーの先に爆弾くっつけてトラップにする奴を束ねてネットにしたってことか、そりゃ切ったらこうなるな」

 

「……それよりも、横島はどうやって絵馬に爆弾を?どこから北添と影浦に攻撃したんだ?」

冬島の疑問はもっともだ。

 

「それなのだけど、ちょっと見てもらえます」

そこにゆりが実況マイクをオフにし、実況席にある小型タブレット画面を冬島と太刀川に見せる。

 

そのタブレット画面には横島を起点とした映像が映し出されていた。

その映像を三人は食い入るように見て、それぞれ見解を述べる。

「………既に天井を崩落させる爆弾を設置していたということか」

「まさか、こんな方法で上下に移動していたのかよ。トラッパーじゃなきゃ、できない発想だな」

「どうやって、絵馬の位置を把握したんだ?」

「スナイプの射線ですよ冬島さん。絵馬の奴、一方的な展開ってなもんで、移動をおろそかにしていたし、まあ、建物の中であの展開だと、移動する暇がありゃ、撃たなきゃならないが」

「横島はすべて計算ずくだったってことか……」

「おそらく、横島君が女性の下着を物色していること自体が罠だったのよ」

 

 

 

影浦隊のランク戦用の作戦室では、次々とベイルアウトしてきた隊員達が、オペレーション席に座る光のもとに集まってくる。

「ごめん、カゲさん。どうやってやられたのかもわからなかった」

「いや~、ゾエさんも何がなんだか」

ユズルも尋も何が何だかわからないといった感じだ。

 

「横島の奴!何をやりやがった!!確かにおめーらは彼奴を追い詰めていたんだ!!」

光は横島の動きを途中から把握できなかったことにイラついているようだ。

 

「光、そういきり立つんじゃねー」

「でもよー、カゲ」

「負けたんだ。横島の奴の方が一枚上手だったってことだ。ちっ」

そう言う影浦も、わけもわからずに敗れ去ったことに、いら立っていた。

 

 

 

しばらくし、実況席のゆりがマイクをオンにし、観客席に向かって解説を始める。

「お待たせしました。横島隊長の影浦隊撃破ポイント獲得について検証いたしました』

観客席の壁一面のスクリーンに先ほどの横島隊と影浦隊との攻防が映し出される。

 

「横島隊長は4階の女性下着コーナーで物色をしているところを、絵馬隊員に狙撃され、北添隊員のメテオラによる絨毯爆撃と絵馬隊員の狙撃により、逃げ惑うことになります。影浦隊は吹き抜け周りの大通路を基点として、横島隊長を狙っておりました。これは横島隊長のトラップを警戒していたためです。絵馬隊員はショッピングモールに突入してからこの吹き抜けを監視していたため、影浦隊はこの大通路には横島隊長のトラップが無いと判断したからこそです。さらに、影浦隊長は横島隊長を追わずに、北添隊員の絨毯爆撃を行ったのは、横島隊長が4階の売り場にトラップを仕掛けている可能性が高いと踏み、横島隊長を追い詰めると同時に、メテオラの爆風でトラップを解除する目的があったと見受けられます。このあたりまでは影浦隊の作戦通りの展開でした」

ゆりのここまでの説明に、会場の観客も頷き納得している様子だ。

 

「ですが、横島隊長を順調に追い詰めていた影浦隊は横島隊長を見失ってしまいます。その直後、絵馬隊員はトリオン爆弾による攻撃で大ダメージを負います。さらに4階の天井が崩れ、それを避けるために吹き抜けの大通りに飛び出した影浦隊長と北添隊員の元にトリオン爆弾が絶妙のタイミングで落ちてきました。北添隊員はここで大ダメージ、影浦隊長はマンティスで吹き抜け上空に逃れましたが、トリオン爆弾付きスパイダーを投網状に形成したものが中空の影浦隊長に降り注ぎ、影浦隊長はこれを切りましたが爆発に巻き込まれベイルアウトいたしました」

ゆりは、ここまでの攻防をリプレイ映像にそって解説する。

 

 

「では、絵馬隊員を襲ったトリオン爆弾は何処からか?」

今度はスクリーンに、横島基点の映像が流れる。

 

「逃げ惑う横島隊長、しかし、逃げ惑いながらもトラッパー用トリガーを起動してました。トリオン構造物の壁などに穴をあけて通るための『ホール』を柱や衣料品売り場の棚の裏など、影浦隊から見えない位置に、床と天井に数か所空けていました。北添隊員のメテオラの爆風や衣料品などにより、より一層、横島隊長の行動は見えませんでした。横島隊長は逃げ惑いながらも4階から3階にあけた穴(ホール)にトリオン爆弾複数投下、投下した先にはグラスホッパーを展開し、トリオン爆弾をグラスホッパーで飛ばし、4階吹き抜け部で狙撃態勢をとっていた絵馬隊員付近に着弾爆発させ、大ダメージを負わせました。グラスホッパーによるトリオン爆弾射出の命中精度の低さをカバーするために複数のトリオン爆弾をグラスホッパーの角度を微妙に調整しつつ射出させ確殺率を高めさせていたようです。それにしてもグラスホッパーの展開角度は絶妙なものだといえます。さらに、横島隊長はトリオン爆弾を投下射出したと同時に、自らもグラスホッパーで、柱の裏の天井に『ホール』で開けた穴を利用し4階から一気に6階まで上がり次の行動に備えていました。これが横島隊長が突然消えたように見えたからくりです。

横島隊長が消えたと認識したと同時に、絵馬隊員が大ダメージを受けた一部始終です」

このゆりの説明で、会場からは呆然とも驚愕ともとれるような、ため息に似た声が漏れていた。

 

この間も、映像の右上に小さく別枠で東隊、王子隊、横島隊の動向がリアルタイムで映し出されているが、横島がどこかで移動を行っている以外は大きな動きはない。

 

次に冬島慎次がゆりから変わって説明する。

「次に、天井の崩落についてだが……、横島は下着を物色する前に、既に4階と5階の柱の天井付近に遠隔操作型のトリオン爆弾を設置していた。それも柱を残し天井をブロック事に落とせるような精密なものだ。影浦隊の二人が天井の下に逃げ込むだろうタイミングで天井を崩落させた。6階に上がった横島はこの時点では、吹き抜け部にはまだ到達していない。あのタイミングは読んでいたのか勘なのかはわからんがな。いずれにしろ横島は元々この4階、5階で決着をつけるつもりだったのだろう。あの横島の下着を物色する奇怪な行動は恐らく、隊をおびき寄せる釣りだ」

冬島の説明に、またしても観客席から、なんとも言えない唸り声のような声が漏れる。

恐らく、観客席の大半の隊員達は、驚いたらいいのか呆然とした方がいいのかと、まだこの攻防について理解に及んでいないのだろう。

 

しかし、冬島の説明には間違いがあった。

確かに横島は4階と5階に天井を崩落させる罠と、落とし穴トラップ等を仕掛けていたが、横島は、たまたま通りかかった女性用下着コーナーに引き寄せられ、真剣にブラを物色していたのだ。

横島のこの行動が結果的に釣り要素となっただけの話である。

横島の常日頃のこういった行動から、大した奴に見えないというのは、横島の恐ろしき性質だろう。

 

 

「天井を崩落させた横島はすぐさま、畳みかけるように、大通路に逃れてくる影浦と北添にトリオン爆弾を6階から投下、おそらくここに逃れてくることが読んでいたのだろう。影浦と北添の姿が見える前に既に爆弾を投下し始めていた」

冬島の解説とリンクして、スクリーンには横島が意地悪く高笑いしながら6階の吹き抜けから4階に向かって爆弾を投下する姿が映像で映し出されていた。

 

「さらに、こういう展開用に考案していただろうスパイダーとトリオン爆弾で作成した投網のようなネットを中空に逃れた影浦に絶妙なタイミングで投下し、仕留めた」

冬島の説明が終わると同時に、またしても観客席から唸るような声が上がる。

感嘆なのか驚愕なのか、はたまた、ゆりや冬島達の見解に理解しきれていないのか、そのすべてなのかは判別がつかない。

ただ、横島が確実に影浦隊を仕留めたという事実だけは理解できただろう。

 

また、横島と実際に対峙してきたB級ボーダー隊員達や、A級隊員やボーダー上層部は、横島に対しての警戒度をさらに上昇させるに十分な攻防戦であった。

 

 

 

その頃横島は……。

「ふう、危なかった。ってあー―――っ、ゾエの奴!!ブラ全部吹き飛ばしやがってー―――!!何てことしやがるんだー――――!!」

『……横島、あのブラも仮想空間の一部で、トリオンで形成されてるから、次の試合には元通りだ』

「おおお!マジで!!……ん?ということは、あのブラとか下着とか、トリオンってことは玉狛支部でも再現できるってことだよな!!今度、栞ちゃんに頼んで再現してもらおう!!ん!?……!?ビルとか建物と一緒で、あのブラとかパンティーとかをあんなに忠実にトリオンで再現してるってことは、ブラやパンティーをトリオンで設計してる奴がいるってことだよな!!」

栞は間違いなくブラとか女性用の下着など再現してくれないだろう。

そんなことを栞に直接頼めば、桐江にもばれて、二人に折檻されるのが目に見えている。

 

『そういうことだ。……先に行っておくが俺は作った人を知らないからな。たぶんボーダー本部の鬼怒田さんの班の人だろう』

迅は横島が迅にトリオンで下着などの小物を再現している人を紹介してくれと言う前に予防線を張る。

 

「げっ、あのタヌキおやじの部下か~。いや、ブラのデータがあるということは!!加古のねーちゃんのブラやパンティーもトリオンで再現できるってことだ!!何としてもお近づきにならなければ!!」

 

『お前、どんな時でもブレないよな』

迅はあきれ気味にこの馬鹿な会話を締めくくる。

 

「うはははははっ!!やってやるでー―――!!」

横島のテンションは上がりっぱなしだった。

 





次は王子隊と東隊
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