横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


このまま、一気に終わりまで続けていきたいです。


その33、針のない糸では釣りはできない。

 

横島が影浦隊を撃破した頃、外周のビルで身を潜めていた東隊では……。

「ショッピングモールから次々とベイルアウト、その数3体です」

ビルの上層階の窓から身を潜めながら外の様子を覗っていた東隊アタッカーの奥寺常幸は、ショッピングモールから3体の光体が飛んでいくのを確認する。

 

「恐らく影浦隊だろう」

別の窓からショッピングセンターの様子をスナイパーのスコープで覗っていた東隊隊長東春秋は落ちついた声色で応える。

「ははっ、まじっすか、あの影浦隊を一人で全滅って、横島先輩やばいっすね」

外周のビルの警戒をしていた東隊アタッカー小荒井登は、もう笑うしかないといった表情だ。

 

「先ほどの轟音は恐らく横島のトリオン爆弾だろう。決着が予想以上に速い」

東はライフルを構えながらも、二人に話しかける。

北添尋のメテオラによる破壊音から始まり、途中からトリオン爆弾の爆破音と建物が崩れる音がし、それからすぐにこのベイルアウトだ。

音での判断だが、影浦隊と横島の戦闘時間は5分も経っていないと……。

 

「影浦隊は横島先輩の罠に嵌まって敗れたということですね」

奥寺は確認のために東に聞き直す。

 

「だろうな」

 

「アブねー、ショッピングモールに行ってたら、俺たちも爆弾でボンってところだった」

小荒井は汗をぬぐう仕草をし、ほっと息を吐く。

 

「王子隊は動かなかったか、おそらくこちらと同じく持久戦覚悟で攻撃のタイミングを計っていたのだろう。小荒井、奥寺、この後の展開はどうする?」

東は王子隊が影浦隊と横島の戦闘中に横やりを入れる可能性を考えていた。

その際は東隊も追従して動くのも効果的な選択肢の一つだった。

今の硬直状態では、東としては、横島をショッピングモールの外に出たところを、王子隊と挟撃したいが、これにはリスクがある。

横島がショッピングモールの外に出ずにショッピングモール内に立てこもることだ。

既に横島は撃破ポイント3で、このまま立てこもってやり過ごしたとしても、この後に開催される夜の部B級ランク戦中位の結果次第ではあるが、王子隊・東隊のポイントを抜きB級上位に残る可能性は高い。

しかも、東隊はここで少なくとも2ポイント以上は取らないとB級中位に落ちる可能性が非常に高い。

このギリギリの状況でも、東は小荒井と奥寺に今後の行動について選択を委ねる。

これも東の後進への育成方法である。

 

東のこの問いに小荒井と奥寺は……。

 

 

 

 

 

一方王子隊では……

「ベイルアウトを確認。3人です」

王子隊のアタッカー樫尾由多嘉が報告する。

 

その報告を聞き、王子隊隊長王子一彰は深く息を吐く。

「こっちでも確認したよ。ヨコシマンが倒れて、影浦隊の誰か一人が生き残ってくれていればいいんだけど、望み薄かな、一斉に倒れたとなると影浦隊がヨコシマンの罠に引っ掛かり、一気に全滅ってところかな。トリオン爆弾の爆音が鳴り響いていたし、どうせならヨコシマンを道連れにしてほしいよね、せめて、手足の一本ぐらい持っていっていてくれたらラッキーだね。さてどうするか」

 

王子隊シューター蔵内和紀は窓の外を確認しながら、王子に報告する。

「やはり東隊の動きはないな」

 

「東隊もこっちと同じ考えだろうね。先に動いた方が不利になる。まあ、普通は影浦隊とヨコシマンの戦いに横やりを入れるのはセオリーだけど、ヨコシマンはその横やりを入れる部隊でさえ手玉にとる。ヨコシマンをやっつけようとするならば、只の横やりじゃだめだ。意識の外からの一撃必中の攻撃で倒さないといけない。前回のランク戦で那須隊がやったようにね。最良はヨコシマンと影浦隊が正面で戦い、横から東隊がヨコシマンを遠近から攻めたてている。そんな状況でこちらが、枠外からの一手を放つのが良かったんだけど……」

王子は少々困ったような物言いだ。

 

 

「そうはならなかった。東隊と俺たちの作戦が一致していたということか」

 

「予想はしていたけど、そういうこと、だからお互いを意識しすぎてお見合い状態で、出ることが出来なかった。結果的には双方の作戦ミスということになるだろうね。策士策に溺れるとはよく言ったものだ。救いはあの東さんと同じ考えであったことかな?」

王子は自嘲気味にそう語る。

 

「だが王子、東隊が横やりに先に出たとしても、横島が影浦隊を倒すのが早すぎた。いずれにしろ俺たちや東隊にしろ間に合わなかった可能性が高い」

蔵内はそんな王子を慰めているのだろう。

 

「とにかく作戦プランは変更だね。プランCで……羽矢さん、東隊の位置予想出ますか?」

王子は作戦プランの変更を伝え、オペレーターの橘高羽矢に東隊の場所を聞く。

プランCと聞き、蔵内は大きく頷き、樫尾は目を大きく見開く。

王子隊が用意した作戦プランは大きく分けて3つあった。

プランAは先ほどの最良の策である影浦隊と横島が戦い、横やりを入れる東隊の状況からの枠外の一手だった。

 

『東隊は恐らく、ショッピングモールを挟んだビルの2棟のうちのどちらかね。ルートは検索してあるわ』

隊員達の最年長、大学生オペレーター橘高羽矢は王子のその声にすぐに答え、さらに東の狙撃を回避できる作戦ルートの検索まで行っていた。

 

「さすが羽矢さん、助かります。それじゃ、行きますか」

王子の声と共に王子隊は動き始める。

 

 

 

 

 

東隊では……。

次の行動を東から委ねられ、小荒井と奥寺は決断を迫られていた。

「この場を動くのは危険ですね」

「このままだとポイントゼロだぜ、B級中位に落ちるだろ?思い切って王子隊と戦った方がいいんじゃないか」

慎重策の奥寺と積極策の小荒井で意見割れたようだ。

 

小荒井の意見を聞き奥寺は続けてこう説明する。

「尚更ここを動かない方がいい。B級中位に落ちる可能性があるのは王子隊も同じこと、王子隊はこっちに狙いを定めてくる。こちらから向かったとしても、雑居ビルの中の狭い空間での戦いになれば東さんの狙撃を活かせない。それに横島先輩にも気を配らなければ間違いなく横島先輩は仕掛けてくる。この建物は狙撃に適してるし、東さんに横島先輩を警戒しつつ、こちらの援護をして貰った方がまだポイントを獲得できるチャンスがある」

奥寺の作戦は消極的な慎重策では無く、王子隊と戦う事が前提の慎重策であった。

 

「うーん、成る程。流石奥寺」

小荒井は奥寺のこの説明に納得したようだ。

 

「横島を警戒しながら、王子隊に狙撃か、さすがにキツイな」

東は珍しく半笑いするが、2人の成長ぶりに頬を緩めるのを隠すためでもあった。

 

「東さん、よろしくお願いします」

「東さんの狙撃で横島先輩も一撃っすよ」

 

「わかった。奥寺の作戦で行こう。だが、もう一手必要だろう」

東は奥寺の作戦で行く事を決めたが、何かもう一つ策を打つようだ。

 

 

 

 

 

さらに横島隊では……

『横島、今の所東隊と王子隊に動きは無いようだな。影浦隊とやりあってる最中に横やりを入れてくると思ったんだが』

「ショッピングモールに潜んでるって感じじゃないよな」

横島は何かの作業をしながら、通信越しの迅に応える。

 

「もう、別にこのままでいいんじゃないか?ポイント取ったし、これでB級上位に残れるだろ?」

『可能性は高いが確実じゃない。今夜のB級中位の那須隊辺りが大きくポイントを獲得したら、追い抜かされる。さらに王子隊と東隊のどちらかが3ポイント取れば話が変わって来る。それは王子隊も東隊もわかってるだろう。横島狙いをあきらめて、しばらくすれば王子隊と東隊との戦闘が始まる。横島を倒したところで1ポイントしか入らないし、お前を倒しに行ったところでリスクの方が大きいだろう?』

 

「まあ、その方が俺もやりやすい。やりやってる連中を横からまんまと罠に嵌めて、ポイントだけかっさらうとか、俺好みだ!」

 

『お前、ほんといい性格してるよな。まあ、俺も横やり入れるの好きだけどな』

迅と横島はなんだかんだと似た者同士であった。

 

 

 

 

 

こうしている間も実況席ではゆりが各隊の動向を実況し続けていた。

「ここでようやく王子隊が動き出しました。外延部のビル群の中を進んでおります。狙いは東隊でしょうか?」

ゆりは王子隊が動き出したことを伝え、解説席の冬島に話をふる。

 

「そうだろう。王子隊と東隊は横島を攻撃する機会を逸した。狙うなら影浦隊と横島が戦っている間だっただろう。今から横島を狙うリスクが大きすぎる。こうしている間にもショッピングモールに横島がトラップを次々と設置してる」

冬島も王子隊のこの動きが東隊を狙う行動だと判断する。

 

「ポイント稼ぐならそれがベストだろう。横島隊と言っても倒したところで1ポイントしか入らない。さーて東さんはどう動くかだ」

太刀川も冬島やゆりと同じく、王子隊の動きは東隊を狙った行動だと考える。

それと、東隊がこの状況でどう動くか楽しみにしているようだ。

 

 

実況を続けるゆり。

「東隊にも動きがありました。さらに外側のビルに移動です」

 

「王子隊の動きに気が付いたか、迎撃態勢を整えるつもりだろう。あの外側のビルはショッピングモールから他のビルに比べ距離がある。横島のグラスホッパー迫撃砲をかなり意識しての事だろう。前の高いビルがグラスホッパー迫撃砲の攻撃をある程度防いでくれそうだ。なんともいい位置取りだな」

 

「東さんの事だ、王子隊が攻めてくることを予想していたんじゃないですかね。さすがは東さんだ。始めの位置取りも、横島のグラスホッパー迫撃砲の攻撃からすぐに隣のビルへと回避で出来るように考えてのことだろう」

太刀川はかなり東をリスペクトしているため、東目線になりがちなのは致し方がないだろう。

 

 

 

しばらくし、このマップの外側方面で騒音が響き渡る。

「東隊と王子隊が戦闘を開始しました。隣り合ったビルでの射撃戦を展開しております。解説の冬島隊長と太刀川隊長の予想的中ですね」

ゆりの実況と共に東隊と王子隊が隣り合ったビルの窓から、撃ちあっている映像が流れる。

 

「ほお、奥寺とコアラ(小荒井)は射撃用のトリガーを使ってるな、ようやく東さんから許しをもらったか、ということはそれだけあいつらが育ったということだろうな」

太刀川が少々感心したようにこう言った。

奥寺と小荒井は東の育成方針により、今までアタッカー用の近距離武装のトリガーしか装備していなかったが、奥寺と小荒井の成長が見て取れたため、射撃用トリガーの使用をようやく許可したのだ。

 

「東隊は奥寺と小荒井、王子隊は王子と樫尾だけか……、お互い何かを狙っているようだ」

現在隣り合ってるビルを挟んで戦っているのは2名ずつで、しかもお互いにけん制しあうように戦っていた。

そのことに解説の冬島は、この戦闘に参加していない東と蔵内が何かを狙っているのではないかと踏んだのだ。

 

そうこれは東がもう一手と付け加えた戦術と、王子隊が熟考の末準備していたプランCが関わっていた。

 

狙いは横島……。

この小競り合いの戦闘事態が横島を釣る罠だったのだ。

両隊が戦っている隙にと、攻撃を仕掛けてくるだろう横島を、逆に打ち倒すための……。

 

この作戦は両隊が話し合って行ったものではない。

そもそも、事前にそんなことをすればルールに抵触する。

 

東と王子がお互いの思考を読み取り実行に移されたものだった。

 

本来なら、ビルを挟んだこの射撃戦いは、実力的に王子隊が奥寺と小荒井がいるビルに乗り込んでとっくに制圧してもいいようなものだ。

それをしないことからも、東は王子隊の狙いは横島だと確信できたのだ。

王子も王子で東隊がこのビルで待ち構えていたこと、待ち構えて対峙しているのが奥寺と小荒井だけということ、東からの狙撃もないことから、この時点で東隊も横島狙いだと確信へと変わった。

 

そして、お互いの隊の目である東と蔵内が、横島が何処から現れるかを把握し、横島を挟撃するのみ。

 

これは共闘ではなく飽くまでもお互いを利用しあい、横島を撃つという、個々の戦術である。

横島をどちらの隊が撃とうが、その後は互いの隊がB級上位をキープするための威信をかけた戦いが待っている。

 

 

 

 

その頃横島は……

「そういえば、ネイバーフッドとかいうところに行くには、遠征艇っていう乗り物でいくんだよな」

横島は何かの作業をしながら迅にこんなことを聞く。

 

『なんだ?いまさら』

 

「前にガロプラが来た時に言ってたが、遠征艇って一機しかないんだよな」

 

『そうだな、あれを破壊されると遠征計画が随分と遅れてしまう』

 

「そんなに人数乗れないとか言ってなかったけ?」

 

『そうだな。遠征にはトリオン量が多量に消費する、遠征隊員のトリオン量にもよるが、トリオンを温存するためになるべく人数を制限し、遠征艇も小型化させることが主流だ』

 

「………遠征メンバーって、男女混合?」

 

『そうだな。複数の隊で選ばれることが多いからな』

 

「………加古のねーちゃんとか月見連さんとか一緒にか?」

 

『遠征メンバーに選ばれればそういうこともあるかもしれないな』

 

「なるほど、そうか……狭い艦内でお姉ちゃんたちと密室のくんずれつほぐれつ、うまくいけば混浴も!?」

横島はこんな妄言をのたまいだす。

……仮に遠征艇で女性隊員と一緒になっても混浴などありえないだろう。

下手をすると横島だけ隔離される可能性だって現実的にあり得る。

 

だが、横島のテンションは既にマックスだ。

「やってやるでー――――!!!!遠征メンバーは誰にも譲らーーーーーーーん!!!!何人たりとも邪魔はさせー―――ん!!!!」

雄叫びを上げながら屋上へと突っ走る横島。

 




いよいよ、頭脳+頭脳VS本能の戦いが……。
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