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三雲隊との模擬戦開始。
B級ランク戦最終日
ランク戦B級上位昼の部は林藤ゆりが横島隊の勝利を宣言し終了する。
「横島隊の勝利です。各隊の獲得ポイントは、横島隊撃破点7に勝利点2で9ポイント、東隊撃破点1の1ポイント、王子隊、影浦隊は0ポイントです。横島隊は圧勝でしたね」
最後にゆりに話しを振られた冬島と太刀川は……。
「横島はこの頃マンネリ化しつつあるランク戦に、新たな風を吹き込んだと言っていい。ただ、横島の戦術は誰もがマネできる物じゃない」
「単純に横島が強かった。ただそれだけだな」
今期のB級ランク戦結果は、ランク戦最終日B級上位夜の部で三雲隊が勝利し、目標としていた2位に浮上し、遠征の選考対象となった。
横島隊は夜の部の結果を待って、5位となり、横島個人の遠征はほぼ確実となった。
因みにB級中位夜の部で那須隊は勝利し、初のB級上位入りを果たした。
翌日、玉狛支部では昼食を兼ねた祝勝会が模様された。
もちろん、三雲隊と横島隊の目標達成のお祝いだ。
テーブルには林藤支部長の奢りで注文したピザやら寿司やらが並ぶ。
玉狛支部勢ぞろいで、おめでとうの掛け声から始まり、それぞれ飲み物を手に乾杯をし、食事に手を伸ばす。
横島はどさくさに紛れて、ゆりにアプローチを掛けるが、落ち着いた筋肉木崎レイジに遮られ、大人しくソファーに座らされていた。
そんな横島の横に桐絵が座りこんな事を聞く。
「ところで横島、あんた来期どうするの?また迅と2人だけ?」
「絶対ヤダ、何で男と組まないといかんのだ!そう、俺は加古のねーちゃんの所が良い!!」
「あんた知らないの?加古さん、女の子しか隊に入れないわよ」
「マジで!?……そんじゃ、玲ちゃんところで」
「あそこも同じで、女子だけの隊ってのが売りだから無理よ」
「ええ!?そんじゃ……、月見蓮さんの所で!」
「それこそ無理よ。(三輪)秀次の奴が玉狛を目の敵にしてるし」
「そんじゃ!!美人ねーちゃんが居る隊で!!」
横島は本心をぶっちゃける。
美人がいる隊であればどこでもいい様だ。
だが、現状で横島を受け入れてくれる隊は無いだろう。
横島がいくら実力者だと判明したとしても、女子からの好感度が低すぎる。
先日の戦いで下水管の中に躊躇なく入る姿は、流石に観覧隊員達も引いていた。
間違いなく、女子からの好感度は更にマイナスになっているだろう。
「……あんた、やる気あんの?まあいいわ。うちの隊に入れてあげてもいいわよ」
桐絵は自らこんな事を横島に言ったのだ。
桐絵の場合、横島との付き合いが長い上に、純粋に横島の実力を認めている、好感度も低くはない。
むしろ、桐絵の中では横島の好感度は高い方だ。
特に、星輪女学院のテロ事件以降、横島に対する信頼度かなり高まっている。
「筋肉とイケメンと小南か………」
「なに?不満でもあるわけ?」
「別に~、そういえば、小南の所ってオペレーター誰だ?」
「ゆりさんよ」
「マジで!!入る!!」
「あんたなんでゆりさんは良くて、私はダメなのよ!!」
「美人お姉さんだから?」
「私も美人扱いしなさいよ!!私だって学校では清楚なお嬢様で通ってるのよ!!」
小南は横島の態度に、遂にキレテ、横島の胸倉を掴み前後にゆすり始める。
そこに爽やかイケメン烏丸京介がフォローに入る。
「まあまあ小南先輩、横島先輩の照れ隠しですよ。小南先輩の色気が凄いから、直視できないんですよ」
「え?そうなの?今までのは全て照れ隠しだったの?横島?」
「あーーそうだなーーうん小南は色気あるなーー」
横島は土偶のような目をし、棒読みで言葉を返す。
「私にそんな色気が!?」
鵜呑み系美少女?小南桐絵は京介と横島の心のこもっていない言葉にまんまと騙される。
「ウソですよ。そんなもの小南先輩にあるわけないじゃないですか」
京介はしれっと嘘だと告白する。
「また騙したわねーーー!!」
桐絵は京介ではなく、横島の胸倉をつかんで締め上げながら前後に揺らす。
「く、苦しい、ぎ、ギブギブ!!小南!!ギブ!!」
首が絞まっていく横島の顔は徐々に青くなっていく。
そんな夫婦漫才をやっている横島と桐絵に、遊真が声を掛ける。
「横島先輩横島先輩、模擬戦やろう。もう、ランク戦終わったし、いいじゃん」
それに答えたのは横島じゃなく、何時の間にかその場に現れた迅だった。
「いいよ」
しかも、今まで頑なに横島との対戦を断っていた迅があっさりOKを出したのだ。
「迅!!なんでそんな面倒なことを、嫌だぞ!!」
「おお、迅さんのお墨付き、さあやろう横島先輩。今からでもいいよ」
「遊真!横島とやるのは私が先よ!!ギッタギタにしてやるんだから!!」
直ぐにでも模擬戦を行う勢いの遊真に桐絵が自分が先だと主張する。
「横島、もてていいな~」
迅はにやにやしながら横島にこんなことを言う。
こんなことでモテたくないだろう。
横島に寄って来る連中はバトルジャンキーのような連中ばかりだ。
「何言ってやがる!!」
「丁度いい、祝勝会のエキシビションマッチってことで。但し、チーム戦だ。横島隊と三雲隊のな、ほら、ボスのお墨付きだ」
迅がそう言うと、林藤支部長がニカっとした笑顔と共にグッドのサインを出して、模擬戦のOKを出す。
「おお~、修!千佳!ヒュース!今から横島先輩とチーム戦だぞ」
遊真はその場から三雲隊のメンバーに大声で声を掛ける。
「え?横島先輩と今から?どうする千佳?」
「修君がいいなら、いいよ」
「横島か、いいだろう」
修と千佳とヒュースは三者三葉の返事だが、どうやらやる気のようだ。
「ちょっと迅、私は!?」
「後でな」
小南は不満そうに迅に詰め寄るが、軽い感じであしらわれる。
「なんかやることになってるぞ?」
こうして横島の意思に関係なしに、祝勝会で横島隊と三雲隊の模擬戦を行うこととなった。
訓練室に集まる三雲隊の面々。
眼鏡女子オペレーター宇佐美栞はオペレーター席から皆を見渡し説明を始める。
「そういえば、みんなはトラッパーと戦うのは初めてだよね」
「はい、そうです」
皆が頷くなか、修が代表して答える。
ヒュースだけは澄ました顔をしているが……。
栞は続けてトラッパーの概要を説明する。
「トラッパーは基本的に、トリオン爆弾とか罠を仕掛けて、相手を倒したり足止めしたり、味方の移動補助を行って、味方を有利な状況に持っていくポジションなの。かなり有用なポジションだけに聞こえるけど、運用がかなり難しいからなり手がいない。全体を見渡せる視野が必要だし頭がよくないと出来ないし、オペレーターがその部分の一部は補助できるけどそれでも厳しいの。自衛手段がほとんどない。そもそも戦略戦術もだけど、まずトリオン量が多くないとなれないのよ」
「横島は、とても頭がいいようには見えないな」
ヒュースがこういうのも仕方がないだろう。
普段が普段だけに。
「いや、横島先輩はかなり頭が切れる。僕が見た中で断トツに凄い」
修は参考にするために横島のランク戦ログを何度も見直していたが、作戦能力が凄まじいことを理解していた。
「それはわかっている。見た目の問題だ。それよりも奴は他のボーダーの連中とは全く違う。何故だ?」
ヒュースも横島の実力は認めてはいたようだ。
それよりも、ヒュースは横島が他のボーダーとは全く異なる戦い方や雰囲気に違和感を持っていた。
「戦ってみたらわかるんじゃない?」
遊真はなぜか楽し気にそう言う。
遊真は遊真で横島の事をネイバー出身じゃないかと思っていた。
それはヒュースと同じ理由からだ。
「私はどうしたらいいのかな、トラッパーと戦ったことがないから……」
千佳は戦闘経験がないトラッパーとどう戦ったらいいのかわからないといったようだ。
トラッパーというよりも、横島との戦闘経験もないうえに、千佳自身実際、横島のランク戦を見たことがなかった。
「千佳ちゃん、これは訓練だから、迅さんも言ってたでしょ?横島さんと戦うのはいい経験だからって、だからいつも通りでいいんじゃない。といっても大まかな作戦は必要だよね。マップはランク戦の4分の1の広さの市街地で、転送位置はランダムだけど隊が纏まって転送されるから、条件としてはこっちの方が有利かな」
栞が千佳の不安を和らげるためにこう言いつつ、修に話をふる。
話をふられた修は少々間を置き、大まかな指針を告げる。
「作戦と言ってもいきなりですから、3マッチ、手探りで行くしかないですね。とりあえず、最初は千佳と僕が行動を共にし、横島先輩を高い場所から探そう、空閑とヒュースはコンビで横島先輩を地上から探してくれ……空閑とヒュースは2戦目まで抑え気味で様子見。行けそうだったら行ってくれ」
どうやら1戦目と2戦目は様子見をし、3戦目で本格的に戦うようだ。
「はいよ」
「無難だな」
修が出した指針に遊真とヒュースは了解する。
模擬戦を開始するが……
直ぐに勝負がつく。
1戦目は千佳がマンションの屋上に移動し、スコープを覗こうとする前に横島に背後を取られロックで無効化、マンションの階段にスパイダーで罠を張っていた修もトリオン爆弾を放り投げられ、狭い階段で逃げ道もなく爆破の直撃でベイルアウト。
千佳と修の異変に気が付いた遊真・ヒュース組が駆けつけるが、既にマンション周りに設置している落とし穴トラップやトリオン爆弾付きスパイダー等の2重3重の罠に嵌まりベイルアウト。
2戦目は1戦目と同じように千佳と修が高台を取りに行く。
今度は千佳と修が先に狙われるのを見越し、遊真とヒュースは千佳と修の周囲を警戒しつつ横島を捜索する作戦だ。
だが、遊真とヒュースの警戒網をいつの間にか突破され、1戦目同様千佳はロックで拘束、修は爆死。
遊真とヒュースもトラップをかなり警戒したが、向かうところ向かうところに横島の各種トラップが雪崩のような連続コンボで仕掛けられており、徐々にトリオンが削られていき、最後に落とし穴トラップに引っ掛かりベイルアウト。
3戦目の前に修たち三雲隊は……。
「ごめん、みんな」
千佳が真っ先に皆に謝る。
「いや、千佳が悪いわけじゃない。全く何もできなかった」
修は何やら考え込みながら、それにこたえる。
「……あの落とし穴トラップは厄介すぎる。こちらの行動が読まれているとしか言いようがない。奴に先手を打たせると厄介だ。たとえ千佳が捕らえられたとしても、奪還せずに行動した方がいいだろう」
ヒュースも横島のトラップに舌を巻く。
「修、1、2戦目を様子見と言ってたけど、俺とヒュースは横島先輩の姿すら見てない。様子見どころじゃない。横島先輩は相手の強さに関係なく強い、迅さんや俺やヒュースと別の強さだ」
遊真もヒュースと同じく横島の実力に舌を巻くが、こんなことを言いだした。
「どういう意味だ空閑?」
「なんだか戦ってる実感が沸かないというか、空気を相手してるような感じ?」
「そうだな。奴は相手が誰であろうと実力発揮する戦い方をしている。相手の強弱は関係ない。常に奴の掌の上で踊らされているような感じだ……。こんなことを感じたのはヴィザ翁以来だ」
ヒュースも遊真と同じような感覚のようだ。
「うーん、どうする?ここでやめる?」
この状況を見かねて栞は皆を見渡し聞いた。
「いや、燃えるね」
「やめるわけないだろう。あのニヤケ顔に一泡吹かす」
遊真とヒュースは俄然やる気のようだ。
千佳も静かにうなずき、あきらめる気はないようだ。
修は皆のやる気に、作戦を皆に伝える。
「わかった。ちょっと卑怯なのかもしれないが……」
こうして3戦目が開始される。
続く。