誤字脱字報告ありがとうございます。
とりあえず続きです。
そして始まった三雲隊と横島の模擬戦3戦目。
転送直後に千佳がメテオラで、周囲を破壊しだしたのだ。
千佳の膨大なトリオン量によるメテオラは、マップ全体を破壊尽くす勢いだ。
残りの3人は千佳の周りを囲み、周囲を警戒する。
横島を街ごと吹き飛ばす作戦だ。
横島を倒さなくとも街を破壊尽くすことにより、トラップを設置させる隙と場所を奪い、横島の逃げ道すら与えずにあぶりだすことが出来る。
かなり力技ではあるが、有効な作戦である。
この作戦、横島相手じゃなくて、他の隊に対してもかなり有効な作戦でもある。
「千佳、すごいな。マップの半分がまっさらだ」
「だが、横島先輩はまだベイルアウトしていない。千佳続けてくれ」
「うん」
千佳は続けて頭上に巨大なキューブ状のメテオラのトリオン弾を形成し構えるが、なぜか千佳がスッと消え、巨大なメテオラのトリオン弾が暴発し、その場で大爆発を起こす。
メテオラの暴発でその場に巨大なクレーターが出来、爆心地にいた修、遊真とヒュースはあえなくベイルアウト。
横島はというと。
「ふう、下水路があってよかった。千佳ちゃんのあの攻撃ってなんなの?マジで?」
そう言って横島は千佳の手に手錠型の拘束トリガー、ロックを嵌める。
「あの、横島さん、どうやって?」
千佳は横島を驚いた表情で見上げる。
千佳は横島が目の前にいることや、自分がどうやってここまで来たのか、ここが何処なのかもわからない状態だ。
横島はその千佳の問いに真面目に答える。
「千佳ちゃんのあのとんでもない攻撃をよけるために、マンホールに突入して、そんで下水路を通って、千佳ちゃん達の真下付近まで到着。そんで、ホールで地上まで穴を空けて、千佳ちゃんだけをここに落とす。千佳ちゃんと入れ替わるようにホールからトリオン爆弾を射出して、あのどでかいメテオラを爆発させたって感じかな」
そう、修たちは周囲を警戒していたが真下や真上の警戒を怠っていた。
いや、普通は地面を警戒しないだろうから当然といえば当然なのだが、この男を相手どる場合は例外だ。
「……すごい」
千佳は素直に称賛する。
「いや~、それほどでも。一番怖いのは千佳ちゃんだからね。なんつったって、盤面をひっくり返しちゃうからやりようがないし。トラッパーのトリガーも地面や壁とかには設置できるけど空中や質量が小さすぎるものには取り付けられないからね。千佳ちゃんが土地を真っ平にしちゃうと、トラップを取り付ける場所が少なくなっちゃって、応用範囲が狭まるから面倒なんだよな~」
横島にとって、脅威は千佳だった。
土地を強引にまっさらにできる千佳はトラッパーにとって相性が悪すぎる。
さらに千佳は、横島の世界基準でも凄まじい力を持っている。
破壊能力だけなら、中級魔族かそれ以上の力だ。
「修君の作戦は間違ってなかったんですね」
千佳は嬉しそうにそういう。
そんな千佳をじっと見詰めながら、横島は語りだす。
「やっぱ、千佳ちゃんは真っ先に狙われるよな~。攻撃がど派手だし。相手も一番の脅威に映るだろうな。だから千佳ちゃんは自衛手段を持たないとかな。おすすめは何が何でも逃げる!そんだけトリオン(霊気)があれば、霊能力者だったらスピードも速くなるもんだけど……、ボーダーと霊能力者の違いをどう埋めようか……うーん」
横島は千佳がどんな状況でも狙われやすい事を懸念する。
あんなに破壊力のある攻撃手段を持つ千佳だが、現状では自衛手段があまりにも貧弱なことに横島は心配し、珍しく悩んでいた。
「霊能力者?」
千佳はその言葉に疑問顔を浮かべる。
ベイルアウトし待機室に戻ってくる三雲隊の面々。
「……どうなったんだ?」
「千佳のメテオラの暴発だろうが……」
「横島先輩の攻撃?近くに居なかったはずなのに」
「よっ、盛大にやられてるなメガネ君。遊真にヒュースはどうだ?何もわからずにやられる気分は?」
そこに迅が現れる。
「迅さん……」
「うーん、カゲ先輩の気持ちが少しわかった」
「ちっ、迅」
修と遊真とヒュースは三者三葉に答える。
そこに千佳が戻ってくる。
「宇佐美、今の戦闘を皆に見せてやってくれないか」
「はいはーい。それじゃ、みんながどうやってやられたのか」
栞は目の前の大きなディスプレーに三戦目の試合状況を映しだす。
横島視点での映像が始まり、横島が千佳のメテオラから逃れるために道路のマンホールに飛び込む姿が映る。
そして、人が移動するには十分な広さの下水道を進んで、修たちが居る場所の下付近に到着すると、千佳だけをホールで下水道に落とし、それと同時にトリオン爆弾をグラスホッパーで千佳と入れ替わるように地上に射出し、千佳が形成させたメテオラに直撃、暴発させるシーンが映った。
「あっ!?下水道??」
「地下にあんなのがあるのかー、栞ちゃん、教えてよ」
「迅、あんな場所があるなんて知らされていない」
どうやら、三雲隊の面々は先日の横島の試合をまだ見ていなかったようだ。
そんな三雲隊の面々に手を合わせて謝る栞。
「みんなごめんね。私も有ることは知ってたけど全然意識してなかったんだよね」
「先日、横島がこの下水道より狭い排水管を通って勝利したところだから、宇佐美やメガネ君たちが知らないのも仕方がないって」
迅がそういうのも仕方がない。
ランク戦始まって以来、初めて使われた場所だからだ。
汚物が集まる場所だ、普通は使わないだろう。
「本当に盲点ですね。勉強になります」
修は生真面目にメモを取る。
「いや、参考にならないな。トラッパーの奴にしかできない。……この方法だと誰が相手だろうと厳しいだろう。なんて方法を思いつく奴なんだ」
ヒュースは自分たちでは真似ができないだろうと考えていた。
「逃げ道としてはいいんじゃない?奇襲攻撃とかにも使えるし」
遊真は移動手段の選択の一つとして活用できそうだと考えていた。
「仮想マップだからいいけど、実際は汚い場所だよ」
千佳の言い分はもっともだ。
実際は汚物が流れ悪臭が漂い、相当汚い場所だ。
よっぽどの事ではない限り入ること自体躊躇するだろう。
「千佳、汚いってどういうこと?」
ネイバーの遊真は下水道がどういう場所なのか理解していなかった。
同じくヒュースも遊真の質問に頷いていた。
千佳は遊真とヒュースに丁寧にどういう場所なのか説明する。
それを聞いた二人は、遊真は選択肢の一つとして有りだと答え、ヒュースは絶対に使用しないと、意見が分かれる。
迅はそんな三雲隊の面々に今回の模擬戦について語りだす。
「罠を張らせないように建物全部吹き飛ばす作戦自体は良かったんだよな。まあ、一隊だけじゃ横島を見つけ出すのは厳しいだろうな、あいつ異様に隠れたり逃げたりするのがうまいし。それは置いといてだ。今まで敵に横島のような使い手とは出会わなかったが、今後現れるかもしれない。特に遠征に行く場合はこちらが侵攻した形になる。防衛戦と異なり、知らない土地で、情報のない敵と戦うなんてことは当然起こる。だから体験してもらった。その辺は遊真とヒュースはわかってるだろうけどな」
「ブラックトリガーを使ったら、もうちょっと何とかなったかもしれない」
「ああ、蝶の楯(ランビリス)が使えれば、負けはしなかった」
遊真とヒュースはブラックトリガーがあれば勝てたというが……。
「遊真とヒュースも自分で言ってただろう?横島の戦い方は相手の強さは関係ないんだって、横島と対峙するには戦闘力よりも対応力、即応力、探査能力、戦略戦術が大切な要素だ。那須隊がランク戦で示していただろ?その辺はメガネ君だったらわかるよな」
「はい、……ですが、今の僕ではまだ」
遊真とヒュースは迅の言葉にそれでも不満そうだ。
「因みにあれでも抑え気味だぞ。彼奴はトラッパーの虎の子ワープ使ってないし、あと隠し玉もまだまだあるしな」
「あれでもですか!?」
修は迅のその言葉に驚きを隠せなかった。
その横で千佳も口を押え驚いていた。
「そんじゃ、横島先輩と迅さんはどっちが強い?」
遊真は口を尖らせたまま迅にこんなことを聞く。
ヒュースもこの遊真の質問に興味があるのか、じっと聞きみみを立てていた。
「あ~、本気出したあいつと戦っては見たいが、風刃使ったとしても厳しいかな」
迅は率直な感想を漏らす。
本気の横島とはトリオン体ではなく、素の状態の横島と戦った事を想定して答えていた。
「迅さんでもか~」
「…………」
その頃、横島は……。
この模擬戦では横島のオペレーターをゆりがしていた。
「横島君、ちょっとやりすぎじゃないかな?三雲君達自信なくしたりしない?」
「いや~、そんなつもりじゃなかったんですが、迅とも話したんですが、理不尽な攻撃というものを体験してもらおうかなって」
「どういうこと?」
「俺の世界では、ビルを吹っ飛ばすような連中や一撃で島を吹っ飛ばしたり、関東一円に猛毒を降らしたりとか、とんでもない連中が結構いたんですよ。そんな理不尽な連中に対して、どうするかってことを考えなきゃ、生きていけない世界だったんで。どんな相手を前にしても今ある状況で切り抜ける力をつけてほしいというか……アレ?なんか柄にもないこといっちゃってるな」
「……横島君は優しいのね」
「まあ、なんか修を見てると、昔の俺っぽいっていうか、性格とかは真逆なんすけど、なんとかしたいって気持ちが強いじゃないっすか。まあ、俺の場合なんとか生き残らなきゃって感じっすけど、挫折というか困難というか壁は今の内に体験した方がいいというか……」
「横島君は挫折とか後悔したことが?」
「もちろんあるっすよ。取り返しのつかないもんが……」
「そう。私も……そのための訓練ですものね。三雲君達には後悔無いように導いていかないといけないわね」
「あはははははっ、そんなたいそうなもんじゃないっすけどね」
「やっぱり、その辺もおじさんや迅君に似てるわ」
「へ?林藤のおっさんと迅に?どこがっすか?」
「そういうとぼけたところも含めてよ」
模擬戦をリビングのテレビで見ていた他の玉狛支部の面々は……。
小南はカウンターでお茶を飲む支部長の林藤匠にこんなことを聞く。
「ねえ、ボスは知ってるんでしょ?横島がここに来る前に何をやってたのか?ネイバーじゃないっていうけど、戦い慣れし過ぎてるわ」
それに答えたのは林藤ではなく烏丸京介だった。
「小南先輩、横島先輩は実は、ヨコシマ星からやってきた。宇宙人です」
だが、その答えはとんでもないものだ。
相変わらず、小南をからかう気満々だ。
「ええええ!?横島って宇宙人だったの!!だから、あいつあんなにスケベなんだわ!!」
「……いや、さすがにこれを信じちゃダメでしょ小南先輩。さすがに引きます」
「トリマル!!また私に嘘をついたわねー―――!!」
流石鵜呑み系美少女、こんな嘘を信じる方がおかしいが……。
だが、林藤は軽い感じでこんな暴露をする。
「皆が集まってる時に言おうと思ってたんだけどさ、あいつ、霊能者らしいんだわ」
「もうだまされないわ!!ボスも私をだます気ね!!」
「いや~、それがほんとなんだってば、本人から聞いてみ」
「本当なの?……霊能者ってあれよね。除霊とか霊視とかできる人よね。でも、それって戦ったりとかトラッパーとかと関係ないんじゃない?」
さすがの小南も今回は警戒してか、かなり半信半疑だ。
「正確にはゴーストスイーパーってなものらしいぞ。なんか悪魔とか妖怪とか幽霊とかと戦ってきたんだと」
「林藤支部長、さすがに小南先輩も二番煎じじゃだましきれませんよ」
京介は林藤の冗談だと思っている。
「お前たち、それは事実だ。横島は並行世界の日本人で悪魔や妖怪退治を行うゴーストスイーパーという退治屋だ」
「……本当に?」
木崎レイジがそういうことで、真実味が出てくる。
京介はレイジがこういうことで嘘や冗談を言う男でないことを知っている。
「マジマジ、マジで大マジよ」
「ええええええ!!??」
林藤は相変わらず軽い感じで応えるが、桐絵は驚愕の雄たけびを上げていた。
「ちょっと待ってください、霊能者とかはまだいいです。今並行世界って聞こえましたけど!?しかも悪魔とか妖怪とかって!?」
「本人がそう言ってる」
京介は並行世界というあり得ない言葉を耳にし混乱気味だ。
「どうして私にも黙ってたのよ!!」
「あー、小南は顔に出やすいからな、他の隊員のためだ。京介にしろ修に千佳にしろ、平行世界の人間やらゴーストスイーパーですって言ってもすぐに受け入れられないだろ?だから横島がお前らと変わらない普通の男子高校生だってところを見てもらってからにしようと思ったんだ。因みに玉狛支部内ではいいが、他の隊員連中には内緒にな。これ知ってるの、ボーダーの上層部と俺と迅とレイジ、ゆりとクローニンだけだから」
小南が林藤に迫るが、林藤は軽い感じでそれに応える。
「横島が普通の高校生のわけあるかー――――!!どう見ても普通じゃないわよ!!」
「さすがに小南先輩の意見に同意します」
まあ、今までの横島の行動を見れば、普通じゃないのは当然だ。
「でもよ~、普通にいい奴だろ?」
林藤はニヤリとしながらそう言う。
「まあ、そうだけど!」
「確かに横島先輩はいい人です。俺も助かってます。それとああ見えて年下の面倒見もいいですし」
桐絵も京介も横島がいい奴だということは認めていた。
「そういえば、ゴーストスイーパーって何?妖怪と悪魔と戦っていたって!!横島が居た平行世界に悪魔とか妖怪がいるの!?」
「横島先輩って、遊真やヒュースと違って普通にこっちの世界になじんでましたけど、平行世界というからには、世界そのものの成り立ちはほぼ同じなんですかね」
桐絵と京介は林藤に迫り、質問攻めにしようとする。
「ちょっと待てお前ら、聞きたいことがありゃ、後は本人に聞けばいいさ」
林藤はそう言ってお茶を濁した。
次は修君達にゴーストスイーパーばれです。
それと、ボーダーから、今まで一度も出てこなかったあの人参上です。