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訓練控え室では、三雲隊が今の模擬戦の敗戦ミーティングを行っているところに横島とゆりが現れる。
「わははははっ!後輩諸君!!まだまだだな!!」
横島は高笑いをしながらわざとらしく偉そうにそう言った。
「ありがとうございます。勉強になりました」
「横島先輩、次は負けないよ」
「ふん、次は勝つ」
「全然気が付かなくって、びっくりしました」
それに修は軽く頭を下げ、遊真とヒュースは再戦を望み、千佳は小さく微笑む。
「そんじゃ、祝勝会の続きといこうか」
「みんな待ってるから、さあ行こう」
「そうね。桐絵ちゃん達が待ってるわ」
迅と栞とゆりは横島に質問攻めを行う勢いの皆を訓練室から追い出すようにリビングへと向かわす。
リビングに戻った一行だったが……。
「横島―――!!あんた霊能者で変態で別世界の人間だったの!?」
桐絵が横島にいきなり飛びつくように迫り、胸倉をつかんで前後に揺らす。
変態は合ってはいるが、今更驚く要素ではない。
どうやら並行世界の人間と言いたかったようだ。
「く、苦しい、小南!なんなんだ!?」
横島は無理やり桐絵の手を外す。
そんな小南の様子に遊真とヒュースはいつもの事だとスルー。
栞はまたかと苦笑ぎみにスルー。
千佳も栞と似たような反応だ。
だが、修だけは小南が口にした言葉に、ぎょっとする。
林藤は横島を手招きして、肩を後ろからつかみ、皆に改めて横島を紹介しだした。
「修、こいつめちゃくちゃ強かっただろ?お前らも疑問に思ってるだろ?横島がなんで強いのかって?そんなに戦いが上手いのかって?こいつの経験値は旧ボーダーの連中にも劣らないっていうか、それ以上なんだろう。それはこいつが、平行世界の人間で、霊能者として妖怪や悪魔と戦ってきたゴーストスイーパーという退治屋だからだ」
「え?何を言って……ゴーストスイーパー?妖怪?悪魔?並行世界?」
栞は目を丸くし、林藤と横島を交互に見る。
「ど、どういうことですか?林藤支部長!?」
修もその言葉に驚き、林藤に聞き返す。
「ん?どういうこと?」
遊真は林藤が言ってる言葉が理解出来ていないようだ。
「………別世界の戦士か、どうりでボーダーと戦い方が違い過ぎるわけだ」
ヒュースも、霊能者などの単語はわからないが、横島が別世界の人間であることだけは理解したようだ。
「え?修君……」
千佳は修の袖を引っ張り、驚きの顔を向ける。
「横島、ごーすとすいーぱーって、ヒーローなのか?」
陽太郎は雷神丸に乗ったまま、目をキラキラさせていた。
「えーっと、ああ、まあ、ちょっと失敗しちゃって、こっちの世界に飛ばされて、ゆりさんとクローニンに拾われたって感じか……。一応言っておくが、俺は歴とした地球人で日本人だぞ!!平行世界のだけどな!どうだ、驚いたか!!あー-はっはっはー――!!」
横島は、最初はバツが悪そうに説明しだすが、最後には偉そうに高笑いをしていた。
「……あの、近界(ネイバーフッド)とは別世界なんですか?」
修が恐る恐るといった様相で聞く。
それに答えたのは迅だった。
「そうだ。話を聞く限り近界とは別だ。正直、ほぼ俺たちが生きている世界と同じ歴史で同じ地理に同じ国、言語や文化もまるっきり同じだ。違いと言えば、こっちには近界があるが、横島の世界には近界の代わりに神や悪魔や妖怪に霊が実在するという点だ」
「横島先輩は別世界の戦士だったってこと?」
遊真はようやく理解が追いついたようで、横島に確認する。
「いや~、戦士じゃないぞ。高校生だ。バイトでゴーストスイーパーやってるだけで」
「ば、バイトだったんですか!?バイトで妖怪退治っておかしくないですか?向こうの世界の人はみんな妖怪退治ができるんですか?」
横島の言葉に反応したのは京介だった。
確かに横島の世界でバイトでゴーストスイーパーなんてものをやってる連中は極わずかだ。
「あー-、霊気、こっちでいうところのトリオンが無いと厳しいな、無くてもできないこともないが、さすがに悪魔とかは無理だろうな」
「因みに、ゴーストスイーパーもボーダーと同じで適正が必要だそうだ。だから横島の世界でも、ゴーストスイーパーという退治屋は少ないらしい」
京介の質問に横島と迅が応える。
「妖怪とか悪魔と、神様まで実在する世界……伝承のような力を振るう悪魔と妖怪と戦えるなら、強いはずだ」
修は考え込むように独り言を言っていた。
「横島!!妖怪がいるならピカチュウいたりするの!?」
桐絵は目をキラキラさせながら横島に質問をするが…やはりズレている。
ピカチュウは妖怪ではない。
そんな中、栞が元気よく手を挙げながら横島に近づいていく。
「はいはーい!!横島さん質問いい!?」
栞のテンションがおかしい。
かなりハイになっている。
「何?栞ちゃん」
「横島さん、霊能者なんでしょ?ってことは霊とか見えるってことですよね!?そうですよね!!」
「そうだけど?」
やたらテンションが高い栞に迫られ引き気味に応える横島。
そして、栞は興味津々にこんな質問を横島にしてしまった。
「だったら、こっちの世界でも霊が居たりするんですか!!ここに普通に居たりして!?」
栞の探求心は全方向に向けられる。
並行世界の、しかも霊能者である横島は栞の恰好の探求心の糧に……。
「栞ちゃん!!」
「宇佐美やめろ!!横島も答えなくていい!!」
ゆりは慌てて栞の口をふさぎ、レイジはレイジで横島の口を塞ぐために羽交い絞めに。
そう、知らないほうがいい事実というものがある。
ゆりとレイジはそれをしみじみ思っていたところでの、この栞の質問だ。
ゆりとレイジは必死に栞と横島を止める。
「もごもご!!」
「いいやー―――!!筋肉が!?筋肉が!!やめー-てー――!!どうせ止められるならゆりさんでー――――!?」
口を塞がれる栞に、レイジに羽交い絞めにされ、そのまま絞め落とされそうな横島。
実は栞の質問に興味深々だった千佳は止められる二人を見て、残念そうにしていた。
こんな一幕があったが、その後も横島は玉狛支部の面々に質問攻めにされ続け、一息ついたところで、遊真とヒュースはボーダー本部へ、個人ランク戦に向かった。
遊真は元々、影浦達と約束していたようだ。
ヒュースは遊真に誘われ、ついて行くことに。
どうやら横島との闘いが消化不良だったようだ。
千佳は用事があるらしく、レイジに家まで送ってもらう。
祝勝会の後片付けを行っていた残った面々に向かって迅は、こんなことを言い出す。
「ちょうどいいか、メガネ君も横島と一緒に遠征に行くから見て行った方がいいだろう」
「何よ迅」
「横島と小南、京介で模擬戦だ。小南、京介のオペレーターは宇佐美で、メガネ君は横島のオペレーターをやってみてくれ」
迅は横島と桐絵・京介組で模擬戦を行うようにと言い出した。
「二対一ってのは、なめられてるみたいでムカつくけど、ようやく横島とできるわね!」
「いいですね」
桐絵はニヤリとし横島を見据え、京介は目を細めていた。
桐絵と京介はやる気満々のようだ。
「あ~やるの~、まあ、前から言ってたしな。でも、なんでオペレーターが修なんだよ!!ゆりさんがいい!!」
「迅さん、僕はオペレーターなんてやったことが無いんですが」
「特にやることないよ。横島にすべて任せればいい。今回メガネ君はオペレーター席に座って横島の行動を見ているのが訓練だ」
「はい、それだったら勉強させてもらいます」
「俺の話聞いてる!?ゆりさんがいい!!」
早速訓練室に向かう面々。
「横島め、ゴーストスイーパーか何だか知らないけど、ぎったんぎったんにしてやるんだから」
「小南先輩そうはいっても、実際二人でも横島先輩を探すだけでも大変ですよ」
「え?迅さん、その設定で本当にいいの?……二人とも、マップは平坦な住宅街で、近接模擬戦用の狭いマップだよ」
栞は迅から言われた模擬戦条件を二人に伝えるが、トラッパーにかなり不利なかなり狭い半径100m程しかない平坦マップだ。
「はぁ?なめてるの!?」
「それなら、何とかなりそうですね」
「迅さんが、双月とガイストも使って良いって」
「なによそれ!完全になめてるわね!」
「……いや、横島先輩とは火力やスピードだけじゃ戦えないですよ。如何に相手のペースに乗せられないかが大事なんで……その辺のフォローは俺がやりますんで、小南先輩はいつも通りで」
迅から専用トリガーを使ってもいいという話に、桐絵はなめられてると思いかなりお怒りのようだ。
対して、京介は横島に対しては、火力やスピードなどの攻撃力はあまり意味をなさないと踏み、横島のトラップを警戒しつつ、相手のペースに乗らないことが大切だと言おうとしたのだが、今更桐絵に求められない事を悟り、フォローに徹することにした。
模擬戦が開始される。
仮想空間の市街地道路の上に転送される桐絵と京介、その30m先に横島が転送されるのが見える。
「トリマル!小細工無しで一気に行くわよ!」
「そうですね」
桐絵は手斧型のトリガー、双月を両手に構えながら、一直線に横島に迫る。
京介も横島を確認し、ガイストを発動し、桐絵の後を追う。
横島が慌てて後ろに下がろうとするが、桐絵は突進しつつ双月を繋げ、大斧へと変化させ、振りかぶり、横島目掛けて一気に振り下ろす。
「うわっち!!」
並みの隊員なら今の一撃でベイルアウトだろうが、横島は直前にグラスホッパーで斜め後ろへ飛び逃れる。
それだけではない。横島は後ろ斜めに飛び逃れると同時にトリオン爆弾を桐絵に向かって投下。
桐絵はそれを察知し、振りかぶった大斧をそのまま地面に突き刺し、その遠心力を使って、体を空中に投げ出し、シールドを張りつつ爆弾の爆風を回避
桐絵の後を追っていた京介がアステロイドで横島を追撃しつつ、空中の桐絵の腕を掴み、遠心力を使い横島に向かって桐絵を勢いよく投げつける。
桐絵は空中で体勢を整えながら、大斧を二丁の手斧に戻し両の手に持直し、横島に迫る。
京介も桐絵を追うように、横島に迫る。
横島がグラスホッパーでさらに上空へ逃れようするが、京介のアステロイドのけん制で、上空は抑えられ、中途半端に横に飛び跳ねる。そこを再び二丁の手斧を大斧へ変化させた桐絵の横なぎの攻撃が一閃、横島は空中で体を大きく反ってギリギリ回避。
「ちょ、まった!!うわっと!?」
だが、そこに京介が体勢を崩した横島の上から弧月で兜割りのように真上から振り下ろす。
京介の桐絵に合わせての連携攻撃だ。
横島は既に体勢を空中で二度崩した状態だ。これ以上の空中での回避は流石に難しいだろう。
京介の弧月が横島を捉えたと思った瞬間、弧月が弾かれる。
しかし、息を吐く間もなくほぼ同時に桐絵の大斧が横島の斜め下から襲いかかる。
だが、桐絵の大斧もいなされる。
京介は目を大きく見開き、桐絵も驚きながら、一旦、横島から距離を置くように後ろに飛びのく。
「……まさか!?スコーピオン!?」
「あんたの隠し玉!?そういうこと!!」
横島の左手の拳から剣状のスコーピオンが伸びていた。
スコーピオンで京介の弧月を弾き、桐絵の大斧を捌き、超速の近接連携攻撃を逃れたのだ。
「あっぶな~、さすがにあれは避けるの無理だった」
「付け焼き刃じゃないわね……あんた!!アタッカーもできるってわけ!!いや、あんた元々アタッカーが本業ってわけね!!」
桐絵は横島がスコーピオンを構える姿が妙に馴染んで見えていた。
「本業がアタッカーってなにその頭悪そうな職業?はぁ、ゴーストスイーパーだって言わなかったっけ?」
この攻防を詳細に見ていたオペレーター席の修と迅は……。
「え?スコーピオン?今横島先輩、スコーピオン使いませんでした?どういうことですか?」
「ほう、さすが小南と京介だ。横島にスコーピオンを使わせるとはな、今の攻防どうだ?参考になるかな?メガネ君」
「その…ですね、早すぎて何が何だか……」
「メガネ君、これでも小南は様子見ってところだろうな。フォローする京介もやるだろ?」
「様子見?これでですか?ただ、凄いってことだけはわかりますが……」
修はこの攻防に驚きっぱなしだ。
そんな修を見て、ニヤリとしながら感想を聞く迅。
次、まさかのあの人登場