横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
漸く書けました。


その39、筋肉か脂肪か悩ましい。

 

玉狛支部では、三雲隊と横島隊のランク戦目標達成の祝勝会が正午前から開かれ、大いに盛り上がっていた。

三雲隊のB級2位達成による遠征候補に入ったことの喜びだけではなかった。

かねてから、空閑遊真が熱望していた横島との模擬戦が三雲隊と横島隊とチームで模擬戦で実現したこと、この場で玉狛支部の面々に横島が平行世界の人間で霊能者であることが全員に知らされたことがこの盛り上がりの原因だった。

今は小南桐絵と烏丸京介二人と横島との模擬戦が繰り広げられていた。

 

そんな中、玉狛支部に珍しい客が訪れる。

冬島隊のオペレーター真木理佐だ。

彼女は、一つ年上のナンバー1スナイパー当真勇だけでなく、一回り年上の隊長である冬島慎次をも容赦なく顎で使う実質的な隊のリーダーであった。

 

理佐はあらかじめ桐絵にこの時間に玉狛支部に訪れる事を伝えていたが、桐絵が支部長の林藤匠やオペレーターの林藤ゆりに伝え忘れていたため、ゆりの不在に、理佐は一層不機嫌になっていた。

そんな真木に横島はいつものように下手糞なナンパするのだが、容赦なく警察へ変質者として通報されそうになる一幕があった。

今現在、支部長室には支部長の林藤匠、遅れて迅悠一と宇佐美栞が集まる。

横島と桐絵と京介も先程までこの場に居たが、今は席を外し、祝勝会の片づけを行っている。

 

支部長席から林藤匠は応接席に座る真木理佐に改めて尋ねる。

「で、真木は何しにこんな辺境の支部に来たんだ?」

 

「林藤先輩(ゆり)に直接話があります」

 

「ゆりに?ああ、ゆり主導で進めてるトラッパーの技術講習会や対策室を開く件ね。俺が答えらえる範囲でいいんだったら応えるぜ」

ゆりは、トラッパーの運用方法の確立と後進の育成、情報共有のために、このような事を行うことをボーダー本部上層部に上申し既に了承を得ており、先んじて、中核を担ってもらうために冬島隊の冬島と理佐に知らせていたのだ。

 

「では、近日に遠征選抜試験が行われる中、時間を割いてまでこのような事を行う意義はどこにあるか尋ねたい」

 

「意義ね~。トラッパーはなり手が少ないから、増やそうって言うのがまず一つだな。難しいポジションってのもあるが、地味な役回りだし、ランク戦じゃ別にトラッパーが居なくても困らないから、人気もない。だが、遠征や実戦となると話は別だ。必ず必要となるポジションだ。毎回遠征に冬島隊が呼ばれるのはそのためだ」

 

「それは私も理解しています。ならば、林藤先輩が主導で講義をすればいい話で、私は必要ないでしょう。トラッパー及びトラッパー擁する部隊のオペレーターのみの会議、さらにはB級以上のオペレーターのみの講習会そのものに意味がないと考えますが?」

 

「意味がないことはないぞ、一口にトラッパーと言ってもそれぞれ隊の役割は随分違う、お前さん所の冬島隊長はスナイパーのサポートから罠から侵攻阻害やらとオールラウンダーにこなすスタンダードとしたら、加古隊の喜多川真衣はスナイパーが居ない分をフォローするための役回りが主だ。松代隊の箱田は冬島の劣化版って感じだが、うちの横島は正面切って戦うトラッパーだ。情報共有は大事だと思うが?それに冬島の開発にも役に立つだろう?」

B級以上のトラッパーは横島を含め4人しかいない。

その中で横島とA級の冬島と喜多川真衣のトラッパーとしてのスタンスが全く異なっているのだ。

B級の箱田の場合、松代隊としてトラッパーの運用がまともに出来ていないのが現状だ。

 

「確かに、トラップの開発強化などには情報共有は必要なのは理解しています。それならばトラッパー同士で打ち合わせるだけでことが済む。冬島隊長主導で現状もやって来ています。それにオペレーターまで時間を割く必要性はないのでは?」

 

「なーに言ってんだ真木。トラッパーの運用はオペレーターあってのものだ。トラッパーの負担の半分はオペレーターが担っていると言ってもいいんじゃないか?まあ、その辺をそつなくこなしてしまう真木には実感はないのかもしれないがな。トラッパーをちゃんと運用するにはオペレーターの力量がかなり必要となるということだ」

匠がこういうのは間違いではない。

トラッパーの運用はオペレーターの負担がかなり大きい。

設置したトラップの位置情報共有や設置順や発動順の管理から、ワープなどの移動手段の位置情報など、多岐にわたる。

トラッパーの役割が多いほど、オペレーターの負担が増大していくことになる。

その最たる隊が冬島隊なのだが、理佐が優秀過ぎるため、その自覚がないようだ。

例外として、横島の場合はすべて自分で出来てしまうのだが、通常はそうはいかない。

 

「オペレーターが本業ではない迅さんがトラッパーのオペレートを行っていましたが?」

それにいまいち納得していない理佐は迅に話をふる。

 

迅が頭を軽く搔きながらそれに応える。

「いや~、真木ちゃんそれは違うな。横島だから行けたってのもあるが、横島一人の隊だから俺でもオペレートが出来たってだけで、そこに隊員が1人でも増えると無理だろうな」

迅がこういうのも無理もない。

そもそも迅はオペレーター適正が低い、横島の思考と似通い意思疎通が容易であった事と、トラッパーの横島一人だから運用出来たと言っていい。

そもそも、横島自身オペレート無しでも、戦闘可能だが……

それは置いておいて、トラッパーの能力をフルに活かすには運用管理が的確でなければ難しい。

人数が増えれば増えるほど、現状のオペレートシステムではオペレーターの負担が増え、能力を生かしきれなくなる。

冬島隊がスナイパーの当真勇とトラッパー冬島の二人編成なのは、理佐がトラッパーの冬島の能力を100%引き出すために、人数を絞り二人編成でなければ発揮できないと判断したからであって、理佐自身そのことを十分理解していた。

加古隊のトラッパー喜多川真衣はトラッパーの能力を部隊の長距離戦へのフォローに特化し、限定したことで運用を円滑に回すことができていた。

松代隊はそのあたりが不十分であり、運用がうまく機能していない例だ。

 

「確かに、そうだと」

 

理佐が納得したところで林藤匠は説得を続ける。

「そういうこと、トラッパー職はトリオンが多くないと出来ない上に、豊富な知識も必要になる。それと同様にオペレーター自身もそれに即した知識と運用能力が問われる。だからトラッパー運用は難しい。だから成り手も居ない。よっぽどの物好きじゃないとな。さらには隊としてトラッパーを扱う機会もない上に、トラッパーの運用方法も知らなければ、トラッパーを採用しようとも思わないだろ?」

 

「なるほど」

 

「だからさ、お互いのノウハウを出して、トラッパーの運用方法を改めて確立しようってことだ。それには冬島を普段からそつなく操る真木の力が必要だということが理解してくれた?」

 

「理解しました」

 

「だから、トラッパーのトリガーのノウハウを一番持っているのは冬島と真木だ。おたくら二人がメインと言って良い、まとめ役はうちのゆりがやるから、頼むわ」

 

「面倒な」

 

「そういうだろうと思って、ゆりからってことにしたのさ」

誰にでも厳しい姿勢を示す理佐でも、大先輩であるゆりに一目置いているため、ゆりからの通達ならば素直に言うことを聞いてくれると匠が判断しての事だった。

 

「ふう……ならば、早くお互いを理解するために、トラッパーを擁する部隊同士で模擬戦を行うのが妥当でしょう」

理佐はため息を吐きながらも了承し、早速こんな提案をする。

確かに、トラッパー部隊同士の模擬戦を行った方が、意見も出しやすいだろう。

 

「そうだな、その辺は後でゆりと連絡して打ち合わせしてくれ、ここの設備は自由に使って良いからな。まあ、才能あるやつは仕事が回って来るのは仕方がない事さ、真木もそう思うだろ?」

匠は軽い感じでこう言って、この話し合いを締めくくった。

 

「……了解」

理佐はため息を吐きながら、了承する。

匠の最後の言葉は半分皮肉のようなものだ。

かつて理佐は、才能があるのにボーダー内でブラブラし、隊にも所属せず当真に対し、働けと迫ったことがあった。

 

話し合いを終え、席を立とうとする理佐を迅が呼び止める。

「あー、その前に真木ちゃん、横島と冬島隊と先に模擬戦してみた方がいいんじゃないか?」

 

「何故わざわざ?他の隊との合同での模擬戦でいいのでは?」

 

「先に知ってほしくてね。横島とやってみればわかる。ボーダーの今の模擬戦の欠点がね」

 

「……考えておきます」

迅の意味深な言葉に顔をしかめながら真木理佐は玉狛支部を後にした。

 

 

 

 

その頃、祝勝会の片づけを終えた玉狛支部のリビングでは……。

「横島!さっきの続きやるわよ!」

桐絵が横島に迫っていた。

 

「まだやんの?迅も栞ちゃんも居ないし、今日はいいだろ?」

 

「オペレーターなんていらないわよ!普通にソロで模擬戦をやればいいじゃない!」

 

「クマちゃんとか!!加古のねえちゃんとかとソロでやりたい!!戦闘服エッチいし、おっぱいの揺れもすんばらしい!!」

 

「わ、私だって!胸ぐらいあるわよ!!」

 

「確かにトリオン体はかなり盛ってるけどな~、でも筋肉で出来てるし~、色気もないしな~」

 

「うきーーーー!!盛って無いし!!筋肉で出来てないわよ!!……筋肉で出来てないわよね。トリマル?」

小南は勢いよく反論するが、急に不安になったのか隣の京介にこんなことを聞く。

 

「残念ながら小南先輩。トリオン体で盛った分は筋肉です」

 

「え?ウソよね。盛った分は脂肪じゃないの?」

 

こんなバカ話を少々赤面しながら聞いていた修は心の中でこう思う。

トリオン体に何を盛ってもトリオン体でしかないのにと……。

 

 

 

相変わらずのノリの横島だが、その晩、迅とゆり、レイジ、匠にとある相談をする。

千佳の件である。

 

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