横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
再開させていただきます。


その41 そいつはロリコンじゃない!ただのどスケベです!

 

トラッパー対策会議を行なった翌日、遊真とヒュースは本部へと個人ランク戦にでかけ、千佳は修と玉狛支部の訓練場で栞の指導の元、基本的なトラッパー対策について、実地方式の練習に励んでいた。

 

そんな時にこの訓練場に珍しい人物が訪ねて来た。

「千佳ちゃん、ちょっといい?」

横島がいつものニヤケ顔とは異なり真面目顔で休憩中の千佳に声をかけたのだ。

横島が1人で玉狛支部の訓練場に入って来ることはまずない。

それどころか、横島が玉狛支部の訓練所で練習している姿をまず見ることが無い。

練習試合も、先日行った三雲隊との練習試合や桐絵と京介との練習試合ぐらいだ。

 

 

「横島さん?…はい、大丈夫です」

ベンチに座っていた千佳は少々首を傾げてから、不思議そうに横島を見上げ返事をする。

訓練場に現れる横島も相当珍しいというのもあるが、横島から話しかけられたからだ。

しかも、真面目顔の横島にだ。

横島と皆が居る中で雑談や、掃除の分担や食事の準備などで話す事は特に珍しい事ではないが、横島に面と向かって呼び止められることは、千佳の記憶にも無かった。

 

「俺と練習しない?」

しかも横島にあるまじき、まともなことを言いだす始末。

 

「え?…横島さんと私がですか?」

千佳はその言葉に大いに驚いたが、隣で同じく休憩中の修も驚きを隠せないでいた。

 

「そう、千佳ちゃんに教えたい事があってさ」

横島は千佳の視線に合わせるようにしてしゃがむ。

 

「その……」

千佳はいつもと違う真面目な感じの横島に戸惑ってしまい、答えに窮してしまう。

 

そんな時に怒鳴り声が横島に飛んでくる。

「横島!!千佳に何をするつもり!!まさか!!ついに千佳の可愛さにロリコンに目覚めたのね!!」

もちろん訓練室に乗り込んできた桐絵だ。

そして、ベンチに座る千佳と真正面でしゃがむ横島の間に入り、仁王立ちする。

 

「何言ってんじゃーーー!!誰がロリコンじゃ!!」

真面目顔の横島の顔はその桐絵の怒鳴り声で見事に崩れ、立ち上がりながら抗議の雄たけびをあげ、何時もの感じの横島に戻る。

まあ、横島の場合、真面目顔は3分持たないため、いずれは崩れるのだが。

 

「じゃあ、なんなのよ!」

 

「千佳ちゃんを練習に誘っただけだ」

 

「あんたが千佳に?練習って……本当?」

桐絵は横島から意外な言葉が出たことに戸惑い、周りの千佳と修に顔を向けて確認を取ろうとする。

 

戸惑いながらも桐絵に応える修、隣でうんうんと頷く千佳も戸惑い気味の顔だ。

「横島先輩から、その、千佳に教えたいことがあると…」

 

「は〜?横島、あんた人に物を教えれるの?…って、とんでもない事を教えるつもりじゃないでしょうね!!」

 

「普通に俺が持ってるワザで、千佳ちゃんに合いそうなものを教えるだけだって」

 

「あんたの得意ワザって!!人のスリーサイズをばらしたり!!下着ドロボーとか!!シャワー室を覗いたり!!千佳を変態に引き込む気!!」

 

「………」

「………」

修と千佳は流石に横島でも下着ドロボーやシャワー室の覗きなどしないだろうと、逆に小南の言動に呆れるが……。

横島は小南の言動に思いっきり目が泳いでいた。

「こ、小南君、何を根拠にそんなことを?紳士だからそんなことはしたことも、な、ないぞ」

元の世界では上司である美神令子の下着を盗んだり、シャワー室を覗いたりとやりたい放題だったのだ。

普通に犯罪行為だし、この世界では今の所、ボーダーの鉄壁の対策により未遂に終わっているに過ぎないのだ。

 

こんなどうでもいい一幕があったが、千佳は横島を二人目の師匠とし、本格的に教えを受けることになる。

 

 

 

その3日後、ボーダーA級2位の冬島隊の3人が玉狛支部を訪れた。

先週、玉狛支部から、トラッパー運用一般化を図る技術講習会や対策室の立ち上げが発案され、その前段階として、玉狛支部の支部長林藤匠から、トラッパーが在籍している冬島隊と横島隊とで情報交流会という名の模擬戦を行うことを、冬島隊のオペレーター真木理佐(裏の隊長)に提案していたのだ。

 

理佐はトラッパー運用の一般化には賛成していたが、冬島隊と横島隊との二隊による模擬戦について必要性はあまり感じていなかった。

だが、玉狛支部の支部長林藤匠に今のボーダーの模擬戦の欠点が、横島隊との模擬戦で分かると言われ、その意図が何するものなのか気にはなっていた。

そのためか、珍しくその決済を隊長である冬島慎次に託した。

冬島はその話を聞き、二つ返事で了承し、今日、冬島隊と横島隊による模擬戦が実現したのだ。

 

 

 

 

理佐は模擬戦を決めた3日前の時点で、きっちり対策を講じようとしていた。

たかが交流の模擬戦、もし負けたとしても実績に傷がつくわけでもないが、ルーキーでランク的にも格下相手に負けるわけにはいかない。

しかも、A級隊での初負けとなり、不名誉となりかねない。

さらに、個人的に好意を向けている風間隊のオペレーター三上歌歩に悪意のない慰めの言葉等もらった日には……。

考えたくもない。

 

本部の冬島隊作戦室で、改めて横島隊について調べる。

A級とB級の違いもあり、今までランク戦の戦闘ログ確認することは無かったが、幸いにも、横島隊のランク戦のすべてに冬島か当真が解説者として、見て来たため、横島隊の情報は他の隊よりも正確に手に入れることができる状況であった。

 

だが、横島隊の戦闘ログを見ると、喜劇でも見ているようなトンでもない方法ばかりで勝利する姿に頭が痛くなる。

「真面目にやる気があるのか?」

 

冬島からは、発想力がずば抜けていると称賛ばかり……。

「横島の発想は今までなかった、開発部に入るべき人材だろう」

当真からは、横島に弾が当たる気がしないとか、腑抜けた言葉しか返ってこない。

「はぁ?あいつと模擬戦?はぁ~、彼奴に弾があたる気がしないんだよな」

「何、腑抜けたことを、そんなことでナンバー1スナイパーを名乗るなど情けないとは思わないか?」

「ヤバイんだって、絶対感知系のサイドエフェクト持ってるぜ。必中距離を難なく捌きやがる」

 

しかし、実際横島を真剣に解析すると、とんでもない能力であることを。

「機動力と回避能力が異様に高い。さしずめ風間隊長並みの機動力と回避能力を身に着けた冬島隊長といったところか……、トラッパーの域を超えている。おそらく隠密行動も一級品だろう。ジョブとしては忍者といったところか?……戦術もなかなかのものだ。あのふざけた行為は戦術を隠すためのフェイクか?いや、あの迅さんがオペレーターだ。戦術プランは迅さんによるものか。B級中位当たりじゃ、相手にならないのもうなずける」

 

「横島は迅さん並みの戦力と見て間違いない。勝ち筋が難しいな。相性が良くない。……他の隊も居れば別だが、真正面でやり合うにはこちらが不利だ……。単独で模擬戦を受けたのは早計だったか?」

理佐は一日かけて、対策プランを練っていたが、結論は厳しいものばかりだった。

理佐はボーダーオペレーターに必須の並列思考が高いだけではない。

それ以外の要素で情報分析と戦術に長けており、それがスナイパーとトラッパー二人の戦闘員のみの異色の隊をA級2位に押しとどめていた。

現在の自分の隊の能力を正確に把握し、相手の能力をも色眼鏡無しで評価が出来ており、今回、横島隊が自分達冬島隊の天敵のような相手だと認識したのだ。

まずは、トラッパー能力については、冬島は戦闘員として隊やボーダー隊員全員をサポートする能力はボーダーで右に出るものはいないが、単独での能力と言ったところで、横島に大幅に劣る。

もし、冬島隊と風間隊の混成チームを率いれば、横島隊を難なく撃破できるだろう

しかし、現状は隊員のスナイパー当真勇のみ。

また、本来の3チームからなるランク戦であれば、冬島のトラップと当真のスナイプで、戦場をコントロールし、有利な展開にもっていき、この二人の強味を十分に生かせるが、単独で、格下ならいざ知らず、同じA級同士の戦いだと不利になりやすい。

混戦や大規模戦闘でこそ、真価を発揮できると言っていいだろう。

 

「トラッパー横島忠夫、オペレーター迅悠一の二人のみ、うむ、そこに隙がありそうだ」

理佐は改めて、戦術を練り直す。

 

 

 

 

模擬戦当日に戻る。

理佐は模擬戦を行う直前に、迅にこんな提案をしたのだ。

「いくら交流の模擬戦だとしても、こちらはA級でそちらはB級のルーキー、隊員の人数もこちらの方が多い。一方的な展開にもなりかねない。少なくとも同じか、それ以上の人数をそちらに加えた方がいいだろう」

横島隊にわざわざ人数を増やす提案をしたのだ。

 

「いや、こっちは横島だけでも別にかまわないよ」

それに迅はこうきり返したのだが……。

 

「ふむ、今回はトラッパー同士の交流会、検証も兼ねた模擬戦だ。少なくとも同じ条件の方がいいだろう?その方が検証もやりやすくなる。どうやらそちらの支部のスナイパーもこの場に居る様だ」

理佐は理論づけて、わざわざ横島隊に人を増やす提案をする。

しかも、模擬戦を見に来ている三雲隊の面々の中にいた千佳を見て……。

 

それにいち早く反論したのは、迅ではなく、当真だった。

「げっ、真木!なんで、相手を増やすんだよ。しかもこの場のスナイパーって、チカコ(千佳)しかいないだろ?」

その声に、この場で声がかかるとは思いもしなかった千佳はビクッとする。

 

理佐はそんな当真の声を無視し、迅に視線を向けて返答を促す。

 

「まあ、そうなんだろうけど、横島、どうだ?」

迅は仕方がなさそうに、横島に振るが……

 

「だったら、オペレーターは真木ちゃんと迅を交代で!!」

横島は暑苦しい笑顔でこんなことを言いだす。

 

「お前って奴は、まずはトラッパーとしてお互いを知るための模擬戦だ。今から出来るわけないだろ?」

「だったら、俺が模擬戦に勝ったら、真木ちゃんがオペレーターやって!!」

「ごめんな、こいつの冗談だから」

迅はいつもの横島の戯言をスルーして、迅は理佐に軽く謝る。

 

だが……

「いいだろう」

意外にも理佐はその条件を受けたのだ。

それは理佐が勝つ自信があるという表れでもあるのだが、負けたとしても踏み倒す気満々である。

 

「マジで!?」

「真木、横島の戯言は間にうけなくていいから」

 

「但し、提案がもう一つ。トラッパーとスナイパーは積極的なポジションではない。試合が動かない場面も多くなるだろう。今回3戦行う予定だ。少しでもスムースに試合を行うために、勝敗はお互いの隊のどちらか1人がベイルアウトさせることで決着といのはどうだろう」

理佐はここでもう一つ条件を足す。

そう、これは冬島隊が横島隊に勝つための理佐の盤外戦術だった。

普通に隊同士のタイマン勝負では冬島隊が不利であることは最初から分かっていた。

横島は、ナンバー1スナイパーの当真に弾が当る気がしないと言わしめ、冬島が唸る程のトラップ使いであり、総合力は真木の見立てでは迅並みと評している。

そんな横島を仕留めるにはこの人数では至難の業だということを理解していた。

そこで、ワザと横島隊に一人追加させたのだ。

普通なら、戦力アップさせる悪手に見えるが、そうではない。

まずは、横島のランク戦で見せた戦い方の半分以上が、一人だから出来る芸当であることだ。

グラスホッパー迫撃砲などは最たるもので、砲撃でトリオン爆弾をばらまくため、前線で戦う味方のアタッカーが居る場面では、まず使えない。

トリオン爆弾による落とし穴トラップもそうだ。一つ使い方を間違えば

味方も撒き沿いにしてしまう可能性がある。

高威力、広範囲の攻撃など、派手な戦い方の幅を減らす目的がある。

さらに、隊を一人増やすことで、迅の負担を大幅に増やし、迅の戦術プランを阻害させる狙いもある。

元々オペレーター処理能力の適性や並列処理能力が無い迅が、今までオペレート出来ていたのは、横島一人の隊だからだ。

これが二人になると、おそらく情報過多になり、迅がまともにオペレーターとして機能出来なくなる事は明白だ。

一人増やすターゲットとして、千佳を選んだのも理佐の戦略だ。

千佳がこの模擬戦に見学に来ることも調査済みだった。

確かに千佳は、トリオン量がボーダー随一で、とんでもない高威力の攻撃が実現できる。

師匠のレイジのお陰もあり、スナイプの腕も悪くない。

ただ、千佳もルーキーであり、動きも他のB級隊員に比べれば、かなり見劣りする。

防戦能力もカッチカチのシールドはあるが、総合で見ると並みより低い。

しかも、当真からの情報だと、普段横島と訓練をしたことが無いときている。

即席チームで、横島や迅の負担がかなり上がる。

千佳の一発は怖いが、それよりもメリットの方がかなり大きいと理佐は踏んだのだ。

さらに、一人を倒すことでチームの勝利とする条件を足せば、迅並みの戦闘力を持つ横島をわざわざ倒す必要が無く、千佳を狙えばいいと。

 

そして、交渉でもっともらしい理由をつけ、相手を丸めこめることも成功し、この時点でかなりの確率で勝利に近づいたと、理佐は、表面上は無表情ではあったが内心は一息ついていた。

 

そんな事とも知らずに、勝利すれば理佐がオペレーターをやってくれると、ハイテンションで雄たけびを上げる横島。

「やってやるでーーーー!!」

 

 

 

そんな中、急に巻き込まれた千佳は……

「え?私も模擬戦に出るの?横島さんと?……修くんどうしよう、足手まといにならないかな」

急に模擬戦に出ることになり、隣の修の顔を不安そうに見上げる。

 

「模擬戦だし、出ても良いんじゃないか?それに千佳はこの頃、横島先輩と訓練しているし、その成果を試せるいい機会じゃないか」

そんな千佳に修は、出ればいいと促す。

 

「……うん」

 

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