横島!トリガー・オン!!   作:ローファイト

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その42 トラッパーって結構重要じゃね?

 

玉狛支部からの発案で、トラッパーポジションをボーダー内で浸透させるためのPRや講習会等の諸所の活動を開始しようとしていた。

 

トラッパーは重要なポジションではあるが成り手が居ない。

その理由は明白であった。

他のポジションに比べ扱いが難しく、多量の知識に多量のトリオン量等が求められ、また、10代の若者が多いボーダー隊員達からは他のポジションに比べかなり地味に見え、現ランク戦環境では必ずしも必要ではなく、特に居なくても不都合がないからだ。

しかし、防衛戦や遠征となれば別だ。

間違いなく必須であり、大規模ネイバー侵攻の防衛戦において、トラッパー第一人者の冬島が居なければ、被害が拡大していたどころか、負けていたかもしれない。

 

これからの遠征は、誘拐されたボーダー隊員や一般市民を奪還する目的が加わる。

今迄の遠征とは異なり、難易度が各段に跳ね上がる。

奪還という言葉で濁しているが、実際にはネイバーの国に侵攻することになるのだ。

その意味を真に理解しているのは、おそらく旧ボーダー隊員と唐沢、もしくは玉狛所属のネイバー組ぐらいだろう。 

旧ボーダー隊員が多く在籍している玉狛支部だからこそ、トラッパーポジションの有用性を理解し、今回の提案に至っている。

その切っ掛けは、まさしく、横島の存在に他ならない。

玉狛支部は、ボーダー本部と異なり、元々トラッパーやスポッターが担える人材を探していた。

そのために、曲がりなりにも両方のポジションを擁している加古隊と組んで全国にスカウトの旅に出ていたのだ。

そこで、偶然見つけたのが平行世界から飛ばされた横島だった。

だから、横島は強制的に始めからトラッパーポジションをやらされることになったのだ。

予想以上に飛んでもない結果にはなったのだが……。

 

横島の事は置いておいて、現ボーダーに横島以外のトラッパーは冬島隊隊長の冬島慎次、加古隊の喜多川真衣、松代隊の箱田正邦と3人いるが、真に実戦で100%運用が可能なのは冬島一人だ。

喜多川真衣はランク戦に特化したトラッパー運用をしており、上層部が求める基準はクリアしているが、広範囲の戦場や緻密な戦略が求められる実戦では厳しいと判断されている。

箱田に至っては、トラッパーとして未完成な状態だ。

 

そのような経緯があり、玉狛支部林藤の思惑により、トラッパーを擁する隊同士の交流会に先んじて、トラッパー運用が100%行えるもの同士、冬島隊と横島隊が交流という名の模擬戦が行われる事になったのだ。

 

 

そして、模擬戦開始直前の冬島隊のミーティングでは……

「はぁ、なんでわざわざ相手さんの人数増やしたんだ?横島だけでも大変なのによ、よりによってチカコって……ああ、そういう事か、真木の作戦通りってことか?」

当真勇は直前に対戦相手の人数を増やす提案をした理佐に文句を言うも、途中でその目的に気が付いたようだ。

その目的とは、横島隊に人数を増やし、横島の動きやオペレーターの迅の思考を制限させ、さらにまだまだ未熟な千佳を選ぶことによって、勝率を高めることだ。

 

「そうだ」

 

「事前に話してくれてもいいだろ?……冬島さんは知ってた?」

「いいや」

この盤外戦術について、理佐は当真だけでなく隊長の冬島にも知らせていなかった。

 

「突然の提案だという事にした方が、相手に悟られにくいと踏んだ。相手に考える時間を与えない事が重要だ。当真のリアクションも臨場感を生み効果的だった。事前に知らしていればあの言葉は出なかった、違うか?…今頃、あちらもこちらの意図に気が付き、対応に四苦八苦している頃だろう」

確かに、事前に知らせれば、冬島隊側の意図に気が付き、提案を突っぱねられるか、提案を飲んだとしても、何らかの対策を取られる可能性が高い。

相手に考える間を与えないことも重要な戦術だった。

 

「いつもの事だけどよ、たかが交流の模擬戦にそこまでするか?まあ、それは置いといてだ。さすがの迅さんも真木の悪辣ぶりに嵌まったということか、ご愁傷様」

当真はやれやれといったふうに、椅子に深く腰を下ろす。

 

「で、作戦はどうする真木?雨取を狙うにしても、トリオン量でごり押しされると厄介だが、逆に雨取にどこかに隠れられてまったく動かなければ、雨取を発見することは困難だ。横島一人と戦うのと変わらないことになるぞ」

冬島慎次が言うように千佳に初動から隠れられ、全く動きを見せなければ、理佐の盤外戦術は全く、効果が表れない。横島一人と戦っているようなものだ。

理佐の盤外戦術対策としては、最も効果的で単純な戦法だと言える。

だが……。

「いや、迅さんの性格上それはない」

「それは俺もそう思う。迅さんがチームメイトを木偶の坊のように扱うなんてありえない。ちゃんと戦闘に出して、戦わせるだろう」

理佐も当真も、迅の性格上、千佳を隠れさせて戦闘に加えない様にし、足手まといのような扱いは、有り得ないと考えている。

確かに、迅の性格上、切羽詰まった実戦ならいざ知らず、模擬戦という訓練や練習試合で隊員を試合に関わらせないような真似をしないだろう。

 

「まあ、そうだろうな」

冬島もそれはわかっていて、あえて話題に出したようだ。

 

「盤上は整った、我々はいつも通り動けばいい。ただ、横島の動きには最大の注意が必要だ。横島は風間隊長並みに動けると思った方がいい。当真は雨取との撃ち合いには当然勝てるだろ?それと隊長、横島のトラップ対応も出来ているのだろ?」

理佐は特に具体案を出さず、いつも通りでいいと結論づける。

理佐は冬島隊がいつも通りの実力を出すために、この盤外戦術を仕掛けたのだ。

今更、特殊な作戦を遂行するよりもよっぽど効果的だと踏んでいた。

実際、特殊な作戦を実行するには、事前の綿密な打ち合わせや訓練が必要となる。

だが、今回はそんな時間は全くなかった。

 

「流石にスナイパー同士で負けるわけにはいかないわな」

「新しい戦法には対応はしきれないかもしれないが、対応策は考えてある」

 

「結構だ」

 

 

 

 

一方、横島隊では……

突如参加が決まった千佳が慌てていた。

「私、ど、どうしたら」

 

そんな千佳に、ニカっとした笑顔を向ける横島。

「大丈夫だって」

横島は年下には優しいだけでなく、面倒見もいい。

そう、ロリコンではない横島はエロが絡まなければ、結構な好青年なのだ。

エロが絡まなければ……。

ただ、そのエロ方面がとんでもないだけで、元の世界では、エロを外した横島は常識人枠に当てはまる。

まあ、元の世界には、横島の上司の美神令子を筆頭に、横島よりも破滅的な破綻者がゴロゴロ存在したのだが……。

 

「すまん、真木の作戦にまんまと嵌まった。オペレーターの俺封じと横島の行動阻害にターゲット変更、さすがはA級2位のオペレーターといったところか」

迅は理佐の今回の提案の裏の意図に気が付き、横島と千佳に素直に謝った。

 

「ただの模擬戦だぞ?」

「そうなんだが、相手がこれ程本気でやって来るとは、予想外だったな。しかも真木は勝つ気満々だぞ。お前のオペレーターを行うなど微塵も思ってないのに、賭けにのったからな」

横島も迅も今回の交流戦に冬島隊というよりも理佐がこれ程の本気度で行うとは思っても居なかった。

 

「私は……足手まといにしか……」

千佳は、相手が本気で勝利するつもりで挑んでくると知って、横島の邪魔になるんじゃないかとますます不安に思う。

 

「大丈夫だ。千佳は横島の指示に従ってくれ、俺は千佳のオペレートのみで、横島とは回線のみ繋げる」

迅は横島のオペレートをせずに、千佳のみに限定することで、オペレート封じを回避しようとする。

横島の場合、オペレート無しでも戦闘は可能だった。

元の世界では、連絡手段がなくともお互いの動きを察知し、作戦を遂行することが普通であったため、特に苦もない。

ただ、千佳はそうはいかないため、迅は横島の動きを予想しつつ全力で千佳をフォローするつもりだ。

 

「わ、わかりました。迅さん、横島さん、よろしくお願いします」

千佳は多少不安を払拭できたようだ。

 

「ふははははは、任せなさい!!真木ちゃんには俺のオペレーターになってもらわなくてはならないからな!!必ず勝つ!!」

横島は相変わらずのテンションである。

 

 

 

 

 

そして、模擬戦が開始される。

マップはオーソドックスな平地住宅地。

広さは通常のランク戦の半分ぐらいの設定だ。

一対一の模擬戦のため、お互いの隊の隊員は同じ位置に転送される。

 

 

この模擬戦の様子をリビングでは、支部長室で観戦している林藤とゆり、所要で出かけているレイジとクローニン、大人組以外の玉狛支部の面々が観戦していた。

 

「千佳、かなり緊張していたけど、大丈夫なのか?」

修はテレビ画面を見ながら、心配そうにそれとなしに言葉にする。

 

「千佳なら大丈夫、いざとなったら結構肝が据わってるし」

「そうね。迅さんも居るし、大丈夫、大丈夫」

遊真と栞は、修に心配ないと声をかける。

 

「それよりも、横島の奴が千佳に変なことしないか、心配した方がいいんじゃない?」

そんな声を上げるのは、もちろん小南桐絵である。

 

「ああ、それは大丈夫ですよ。小南先輩、横島先輩は男好きなので」

へっちゃらでこんな大胆なウソを言う烏丸京介。

 

「え?ウソ?横島って男好きなの?……って、そんなわけ!!あるかーーーー!!」

流石の桐絵でもこのとんでもないウソには騙されなかった様だ。

 

「やっぱりバレました?……でも、横島先輩は年下の女の子には紳士ですよ」

 

「紳士?横島が?何言ってんのトリマル?私や宇佐美もセクハラの被害に遭ってるじゃない!!」

 

「色気が無い小南先輩は置いておいて、宇佐美先輩は一人でいる時に横島先輩に本気で迫られた事がありますか?」

 

「そういえば、一人の時にやられた事無いかな……」

隣で小南がわいのわいのと色気がないという言動について、京介に抗議をしているが、そんなことを気にせずに、栞は思い出すように答えた。

 

「歳近い女の子に対してのスキンシップみたいなものですよ。たぶん本気で手を出そうとしているのは、ゆりさんや沢村さん、加古さんとか年上です」

京介はこんな感じのフォローしているが、実際は那須隊の熊谷友子にも結構本気でセクハラしている横島。

横島の場合、本気でセクハラしても大丈夫な(対応できる)女性を独特の感覚で選別しているのだ。

対象となった女性はたまったものじゃないが……。

 

 

 

 

 

試合開始後、冬島隊の二人は別れ、トラッパーの冬島慎次は、大き目の住宅にトラップを設置しながら潜み、トラッパーのトリガー、スイッチボックスを開き起動する。

かなり分厚めのノートパソコンのような姿をしたスイッチボックスを開き起動し操作した時こそ、100%の能力を発揮でき、さまざまな対応が可能になる。

例えばショートワープは、スイッチボックスを開いて起動していない状態だと、トラッパーの目に映る場所にしかワープできない上に転移距離もかなり短い。

だが、起動状態だと、場所と正確な位置さえ把握できれば、他の人員も目に映る場所以外でもワープさせることができ、そこそこの距離も転移可能となる。

トラップ設置やトリオン爆弾なども設置範囲が広がり目視以外の場所にも設置できるとかなり有用なのだ。

だが、欠点はある。ノートパソコンのようなスイッチボックスをじっくり操作する必要があるため、トラッパー本人が全くの無防備になる事だ。

バッグワームタグ(常時バッグワームを起動できるサブトリガー)を起動させ、本気で隠れている(ハイド)トラッパーを探すことは困難ではあるが……。

それに、位置の設定や地形把握、相対位置の把握など、かなりの情報量が必要で、トラッパー自体にも思考や演算処理能力が求められ、それをサポートするオペレーターにも負担が大きい。

ボーダー基地防衛戦時のトラップの起動など基地専属のオペレーターが何人もかかってフォローしているが、冬島と理佐はそれを難なくやってのける力量を持っている。

 

ナンバー1スナイパーの当真は、冬島のワープ可能圏内で、一般住宅の屋根を転々と移動しながら、横島と千佳の位置を把握しようとしていた。

スナイパーの当真がこうしてリスク承知で動いても、冬島のワープ圏内であれば、見つかったとしてもワープにより安全に回避撤退が可能だからできる芸当だ。

 

さらに、千佳対策として、もし広範囲メテオラ攻撃や、アイビスによる千佳砲を撃たれてもワープによる移動回避できるように、ワープによる緊急回避位置設定も既に複数用意してある。

千佳による無差別先制広範囲攻撃もほぼ、無効化出来ていると言える。

 

 

だが、当真はいつもより、慎重に移動を行っていた。

トラッパーとスナイパーは相手に見つからずに攻撃を仕掛けるのが基本戦術だ。

しかも、お互い同じ条件である。

相手をいかに先に見つけるかが大きな勝負の別れ処になるからだ。

 

 

 

だが、当真は模擬戦開始40秒経過で、あっさり、横島と千佳を同時に発見してしまった。

 

発見してしまったのだが……

「おいおいおい、冗談だろ?何考えてやがる?」

当真はスコープ越しに、驚きとも呆れともとれない、何とも言えない声が漏れる。

 

「当真、明確に報告しろ」

理佐は当真のそんな声に注意する。

横島と千佳はバッグワーム(レーダーに映らないマント状のサブトリガー)を起動させているため、理佐にはこの二人の位置は現状把握しきれていないため、当真の目視での発見情報が重要となる。

その目視情報も瞬時に共有されるが、そこには横島と千佳の二人がどの位置に居るかの情報しかない。

理佐には、横島と千佳が一緒に移動している状況しか把握できず、どんな状態なのかはわからないのだ。

 

「いや、アレはないだろう?……横島がチカコを背負って、何か喚いている。……グラスホッパーを使って堂々と上空に移動だぞ」

スナイパーとトラッパーが堂々と姿を現わすなど、完全にセオリーを無視しているのだ。

しかも、見つけてくれと言わんばかりに、上空を飛び跳ねている状況だ。

当真も驚きを通り越して、呆れるのもわかる。

 

「……ちっ」

だが、理佐はその報告を聞き、眉間にしわを寄せ一気に表情が厳しくなる。

横島と千佳が一緒に行動することは想定内ではあったが、わざわざ姿をさらすような行為をするなど、予想外も良いところだった。

 

 

その当事者の横島と千佳は……。

グラスホッパーを使い上空を移動する横島は、千佳を背負いながら何故か涙を流していた。

「シクシクシク、加古のねーちゃんや熊ちゃんだったら、すんばらしかったのに……ああ!!おっぱいとふとももの感触を!!」

 

「……ごめんなさい。私、胸もなくて、ちっちゃくて」

 

「しまったーーー!!心の声が漏れてたーー!!ご、ごめんよ~!千佳ちゃんが悪いわけじゃないんだけど!悪いわけじゃないんだけど!!んっ!!いや、考えろ!!千佳ちゃんだって4年後にはきっと!ボインボインのパッツンパッツンに!!」

普通に最低な横島。

いつも通りである。

 

 

 

声は聞こえないが、スコープ越しに何やら喚いている横島が見えた当真は、

「はぁ、彼奴、やる気あるのか?真木……撃っていいか?」

「……いや、待て」

理佐は当真の狙撃を待つように指示した。

(わざわざ危険を冒して姿をさらした?対地爆撃を行うつもりか?だが、こちらの位置は把握されていない)

理佐は横島の行動に得体のしれない不安感を覚えていた。

 





横島と千佳ちゃんの合体!!
じゃないですが、次は横島の新戦法!?
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