横島隊の次のB級ランク戦第5戦下位昼の部の相手は、常盤隊、吉里隊との対戦だったが、早々に常盤隊と吉里隊が遭遇し乱打戦となり、数の有利性が働き4人の常盤隊が3人の吉里隊を追い詰め2人落とし、撃破点2をあげた。
その後、常盤隊4人と吉里隊の生き残りの1人は、横島の落とし穴トラップに翻弄され敢え無く撃沈、横島撃破点5と生存点2で合計7ポイントを上げる。
ランク戦直後、迅は作戦室でぼやいていた。
「試合開始時の転送位置が最悪だった。横島の位置が一番端だったし、川を挟んだ地形も厳しかった。転送後直ぐに常盤隊と吉里隊が戦闘に入って、吉里隊が速攻で二人落ちたのも痛かったし。このB級下位の段階ではパーフェクトは取って置きたかったが、運が悪かったとしかいいようがないな」
「うーん。なんか女の子を落とし穴に落として地雷爆破ってのは、どうも気が引けるんだけど、どうせならくんずほぐれつして抱きしめたい!!」
迅の言葉など聞いていないかの様に横島は、思い出した様にこんな言動をする。
だが、もし女性隊員を抱きしめたとしても、ベイルアウトで逃れられるだろう。もっとも、スコーピオンやシューター用トリガ―を装備していれば抱き着いた瞬間に撃破されるのは横島の方だ。
「お前は呑気でいいな。お前が遠征に確実に行けるラインは現段階ではB級上位7位以内に入る必要がある。ランク戦は各ラウンドの獲得ポイントの合計で順位が決まる。下位との対戦では全てポイントを取らないと厳しい状況だ。せめて中級の10位ぐらいならまだ何とかなりそうだが……」
「遠征に参加するにはB級ランク上位に入らないと、いけないのか?」
「ああそうだ。そうなればほぼ確実だ。トラッパーというポジションは遠征にこそ真価を発揮するポジションだから、B級中位でもその必要性を重視してくれれば何とか行けるとは思うんだが、後は忍田さんが周りをどう説得してくれるかにかかってる」
「まあ、その辺はお前にまかせるわ」
「ふぅ、お前がナンパやセクハラしまくったせいで、何処の隊にも入れてくれないし、隊員も集まらないから、こんなに苦労してるんだろ?」
「ナンパの何が悪い!そこに女の子がいるのに!男として当然だ!」
横島は自身を持って自らの行いを正当化する。
「まあ、それには同意するが、お前のナンパ下手糞だし、心象も最悪だぞ。それは置いといてだ。そろそろ対戦相手が横島の落とし穴対策をとって来る頃だ。今日の夜の部のランク戦の結果しだいだが、中級14位にギリギリ滑り込む可能性もある。中級以上となると対策をきっちり練って来るだろう」
既に横島対策は練られているだろう。
それに、今日の試合では単独行動のトラッパーの弱点が露見されたに等しい。
トラッパーは罠を仕掛けてこそのトラッパーなのだ。
罠を仕掛ける時間を与えない、若しくは罠を仕掛けていないフィールドで戦うという基本行動をいかに行うかである。
「今更言うのもなんだが、トラッパーって単独でやるもんじゃなくないか?」
横島は本当に今更な事を迅に訪ねていた。
「ホント今更だな。あの段階で横島を遠征に参加させるにはやはりトラッパーが近道だった。さっきも言ったが、トラッパーは遠征には必要なポジションだ。ランク戦参加者では横島以外に3人しかいない。だから、多少ランクが低くとも選ばれる可能性が高くなるからな」
本来はB級2位までが遠征メンバーに選ばれるのだが、トラッパーという遠征には欠かせないポジションであれば、迅の言う通り多少ランクが低くとも選ばれる可能性が高い。
「そんじゃ、忍田さんに頑張って周りを説得してもらうしかないか」
「お前な~。まあ、横島は実際よくやってるよ。トラッパーなんて無茶振りだったのはわかっている。それにもまして、予想以上にあんな特殊なポジションを使いこなしてる。むしろ妙にしっくりくる感じだ」
「あ~、なんていうか、罠仕掛けたり騙したりするのが俺の本来の戦闘スタイルだから、トラッパーはピッタリだったりするんだけど」
「……横島、お前って本職はトラッパーだったのか?霊能者とか言ってなかったか?それにお前、アフトクラトルの大規模侵攻時、俺と行った防衛任務の時もトリオン兵を光る剣で倒していただろう?」
迅は、アフトクラトルの大規模侵攻時に横島が助けた女性C級隊員からも横島の戦いっぷりを聞いていたし、横島をワザと防衛任務に連れて行き、トリオン兵と戦わせたりしていた中で、横島がハンズオブグローリー(霊刀)で戦っていたのを知っていた。
「あん時は女の子達にかっこいいアピールしたかったし、敵も大したことなかったからな。元の世界で今迄戦った相手って、悪魔とか妖怪とか幽霊とか滅茶苦茶な連中ばっかりだったから、真面に戦っても勝てないなんてざらだし、自然とそんな感じに」
そう、横島が元居た世界では、格上相手と対峙することが普通だった。
それこそ、蟻と象程の力の差があるような相手とも何度も戦ってきたのだ。
そうなると、自然とまともじゃない戦い方が身についてくるという物だ。
まあ、師匠であり上司の美神令子の影響が多分にあるのだが……。
「……お前の居た平行世界の地球ってとんでもないな」
アフトクラトルの新型トリオン兵ラービットさえ、大した事が無いと言い切る横島のレベルで、真面に戦っても勝てない様な連中がわんさか存在する世界とか、迅には想像できなかった。
「とにかく、今後は相手も対策をとって来る。落とし穴戦法だけじゃ、じり貧だろうし、今回の様に転送位置が悪いと、点を取れずに勝ち逃げされる可能性も十分にある」
迅は話題を戻し、今後のランク戦の対策を横島に振る。
「そりゃそうだ。それなんだけどトラッパーのトリガー、スイッチボックスだっけ、あれに入ってるトラップしか使えないのか?」
トラッパーのトリガー、スイッチボックスには様々な兵装やトラップなど遠征に役立ちそうな物が収納されている。
但し、トリガーの消費は激しいというデメリットがある。
そのため、他の攻撃用トリガーをセットしないのがトラッパーのセオリーだった。
「基本的に、ランク戦ではトリガーは量産品しか使えない。ただトラッパーのトリガーは殆どが試作品段階か、検証中の物ばかりだ。冬島さんや依田さんに頼めば新たに追加は可能かもしれないが、今期のランク戦中には無理だろう」
迅はタブレットを片手に、トラッパーのトリガー、スイッチボックスに入ってるトラップやアイテム等のラインナップを眺めながら答える。
基本的にトラップボックスには直接攻撃するような兵装は入っていない。
他の攻撃隊員の補助や遠征や潜入に必要な兵装が主である。
「という事はこの中のもので戦うしかないか……トリオン修繕キットか意外とつかえるか、ん?共通のオプショントリガーにも結構使えそうなのがあるぞ。なんだ、グラスホッパーとかスパイダーとかって、もうトラップその物だろ?しかもその場で瞬時に設置できるって、そりゃ、こんなのが普通にあれば小隊戦じゃトラッパーの必要性は高くないよな。……おおっ?これ何て使えそう」
横島もタブレットを手に取り、トリガーの一覧を眺めていたが……。
「横島、予定よりちょっと早いが攻撃用トリガーも併用すべきか……」
迅は元々B級中位クラスに上がった際、攻撃用トリガーの併用を考えていた。
横島のトリオン量は雨取千佳に匹敵すると見られており、トリオン消費が激しいトラッパー専用トリガー スイッチボックス以外にも攻撃用トリガーを併用し運用することが十分可能だった。
逆に雨取千佳はスナイパーのライトニングでシューターのオプショントリガー、レッドバレットが使用できるように、スナイパーでありながら、トラッパー専用のスイッチボックスも使用できることになる。
「大丈夫だって、トラッパーとしてのアピールが必要なんだろ?まかせろって、くふふふふっ」
横島は悪そうな顔で含み笑いをし、迅にそう答える。
「次のランク戦の話はこの辺でおいて、今日の夜のネイバーが攻めてくる件だが」
迅は真剣な表情で横島にこう切り出す。
「ああ、サイドエフェクトで見えたって奴?本部狙いなんだろ?何となるんじゃない?」
対して横島は軽い感じで答える。
迅のサイドエフェクトとアフトクラトルのエネドラの残留記憶であるエネドラットからの情報を統合すると、今日の夕方から夜にかけて、ネイバーが攻めて来る事が判明していたのだ。
次回、ようやく横島らしい感じの展開が書けます。