モンスターハンター〜伝説の邂逅〜   作:奇稲田姫

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ヤクモの新人育成ってどんな感じなんだろう、というところを掘り下げた話です。
掘り下げたと言うか単純に教官となったヤクモの物語ですね

私がライズ勢なので過去作は知識が乏しいんですよね…………
調べながらなので細すぎるところまでは折りこめないかもしれませんが、まぁ、暖かい目で見守ってやってください。
故に武器や防具もライズが中心になります!

でもリクエストがあるなら言ってもらえれば応えます!

前後編だけで終わらせたいですが……………………長くなる可能性もありまする

第1話よりもだいたい半年〜1年前くらいの話になります。


ヤクモの新人育成譚
3.ヤクモ・ミナシノの新人教育 前編


ドンドルマ大衆酒場。

 

 

 

 

ゴグマジオス撃退戦からだいたい数ヶ月。

 

その日は特にクエストの予定も入っていないにもかかわらずヤクモは大衆酒場までわざわざ足を運んでいた。

 

それほどまで今日という日は特別であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いましたヤクモさんッス!おーい!ヤークモさーん!」

 

「悪い、待たせちまったか?」

 

「いえ、私も今来たところですよ。レマさん、アカシさん」

 

静かに椅子を引いてカウンター席から立ち上がり、声の主達の方へ視線を向ける。

 

視線の先に立つ2人のうち男性の方は【氷牙竜(ひょうがりゅう)】ベリオロスの素材をふんだんに使用し、ヘルムから伸びる2本の角のような装飾が特徴の真っ白な『ベリオ・S』装備に身を包んでいた。

彼はアカシ・カイト。

現在は同じくベリオロスの素材から作成した太刀『バスティザンエッジ』を背負い、『伝説世代』の一角としてヤクモと共につい数ヶ月前にゴグマジオスを撃退したパーティの1人だった。

そしてもう1人。

彼の隣でこちらに向かって元気よく手を振ってきている彼女もまた『伝説世代』の一角を担い、ヤクモ、アカシと共にゴグマジオスを退けたうちの1人だった。

レマ・トール。

そう呼ばれる女性は【蛮顎竜(ばんがくりゅう)】アンジャナフの素材を使用した『ジャナフ・S』装備と言われる装備で、臙脂色に近い色が特徴のメイルやグリーヴ、そしてポイントはメイルに取り付けられた黒い毛皮をマント状に加工して取り付けられている事だろう。

武器もあの百竜夜行の時に担いでいた『ウォーハンマーⅠ』から蛮顎竜派生へ分岐させ、さらにハンマー『蛮顎槌フラムスフィリ』にまで強化をさせていた。

両足をやられて動かせない状態でトドメの一撃をゴグマジオスにお見舞し、恐らくはそれが決定打となって撃退に成功したと言っても過言ではないレベルの功績を上げたハンマー使いの女性だ。

特にあの時彼女が放った一撃は『インパクトクレーター』と命名され、それも含めて語り継がれていくことになるのだが、それはまた別の話。

 

ちなみにあの最後の場面、3人が放った技には後にそれぞれ固有の名前が与えられ、レマの放った『インパクトクレーター』に続き、ヤクモは元々から覚えていた兜割りをさらに気刃状態で放った事で技の威力や連撃性能を段違いにまで昇華させ『気刃兜割』と正式に命名された。また、アカシの技に関しては翔蟲を使って一気に距離を詰め一瞬にして切り抜けることで納刀と同時に時間差で相手を切り刻む『桜花鉄蟲気刃斬』と命名された。

レマとアカシに関しては本人達が翔蟲を所持していないにもかかわらず定着してしまっため、実は後にウツシとヤクモに色々と相談するハメになるのだが………………あ、これもまた別の話。

 

さて、話を戻そう。

大衆酒場の入口付近で両手をこちらに向かってブンブンと振っているレマに笑顔で手を振り返しながらゆっくりと2人に合流し、アカシとレマの顔を順番に見回した。

 

「怪我の具合の方は如何ですか?」

 

「あぁ、バッチリだ。流石にこの3ヶ月フィールドに出れなかったのは堪えたけどな」

 

「右に同じっす。あたしはアカシさんよりは早く退院は出来たものの昨日までずっと車椅子生活でしたンスよ〜。正直発狂するかと思ったッス…………色々と」

 

「みたいですね。私も昨日ようやく色々なところの包帯が取れまして。医師の方からも『完治』と言われました」

 

「でも、良いよなぁ重症なのが腕か足かだったお前らは。俺なんか肋骨全壊だぜ?むしろよく生きてたよ」

 

「爆発引っ掻きと体当たりをモロにもらってたっスもんね〜アカシさん。装備に感謝しないといけないッスよあれは」

 

「今めっちゃくちゃ感謝してるわ。マジで強化させといて良かったって思ってる。おっそろしいな。とは言えよ。お前だって足踏まれただろ?最後の方なんか立ち上がることも出来なかったじゃねぇか」

 

「そりゃ足の骨粉々でしたッスから。あの感覚本当に気持ち悪いんスよ。下半身が全く動かせないんスから。あれホントにトラウマ級ッス。もう逃げられない恐怖」

 

「あれはお前だけじゃなくてこっちもかなりのプレッシャーあったんだぞ?なぁ?ヤクモ」

 

「ほんとに!?」

 

「はい。少しでも立ち回りを失敗したらと思うと迂闊に動けなかったですよ。全身が軋む音と激痛を感じながら一瞬でも集中力を切らすことは許されず、動きを止めることも出来ず動き続ける必要がありましたから」

 

「全身バッキバキで動きながらミシミシ音が聞こえてくんのよ。自分の体から」

 

「うわ、それもそれで嫌ッスね…………」

 

3人並んで歩きながら他愛もない話題から先日の撃退戦、入院中の出来事等々、話し始めたらキリがない。

 

話の話題が途切れることなく時に笑みも混じえながらドンドルマの街を歩み進めていく。

 

「ふふ、でも2人ともお元気そうで安心しました」

 

「ま、あたしは元気だけが取り柄ッスから。真っ直ぐ行ってぶっ叩くのがウチの信条ッスし」

 

「ただ細かいことを考えられないだけのくせによく言うぜ」

 

「それがレマさんの個性という事でいいではないですか」

 

「さっすがヤクモさんッス!あたしのことちゃんとわかってくれてるッスね!………………どこぞの『ア』がつく薄情者とは違うッス〜」

 

不意にガバッとヤクモに抱きつくレマ。

 

「薄っ!?………………お、お前な!」

 

そんなやり取りを交わしていると3人はドンドルマの街の入口へたどり着く。

特に門だとか壁だとかそんな大層なものは存在していないが街と外の境界だとはっきりと分かるほどには3人もこの街でお世話になっていた。

 

そんな3人の別れの日。

 

それが今日この日であった。

3人が全員怪我が完治し戦線へと復帰できる日。

 

故に特別な日。

 

 

 

「あ、もうこんなところまで来てしまっていたのですね……」

 

そんな呟きと共に足を止めたヤクモの横をアカシとレマがゆっくりと通り過ぎていく。

 

街境を挟んでもう一度向かい合いお互いの顔を確認しあった。

 

「ここでお別れか。………………一応もう一度聞くけど、良いのか?」

 

「ヤクモさん、本当に一緒に来ないんスか?」

 

寂しそうに眉をへの字に寄せるレマの横でアカシは腕を組んだ。

 

「はい。お誘い頂いて本当に嬉しいのですが。流石にこの街のハンター層を薄くする訳にも行きませんし。いつまでも『伝説世代(この肩書き)』を頼りっぱなしではこの先変わっていけないと思うので。私はこの街で次の世代を育てます」

 

「そうか………………寂しくなるな」

 

「…………ぐすっ」

 

「大丈夫ですよ。ほらレマさんも泣かないでください。もう今生の別れという訳でもないのですから」

 

彼女にしては珍しく涙する姿にゆっくりと肩を抱きしめて背中をトントンと叩く。

 

「もし何か困ったことがあったりしたら遠慮なくまた戻ってきてください。いつまでも私は待っていますから。この場所で。いつ帰ってきてもいいように部屋も掃除しておきますから。だからもう泣くのはやめてください。レマさん」

 

「うぅ………………うん、約束。…………あたしも約束する……っす……ぐすっ…………!」

 

ゆったりと体を離すと、目尻に浮かんだ涙を軽く指で拭い取り、レマがいつものようにパッと笑顔を向けた。

 

「はい、約束です。それから………………」

 

そんなレマに安堵の笑みを浮かべたヤクモがその視線を今度はアカシに向けた。

 

「?いや、俺はそういうのは良いよ」

 

「遠慮してるのですか?」

 

「違ぇよバカ。俺はさあんまり湿っぽいのは嫌なんだよ。知ってんだろ?」

 

「ぐすっ………………そうだったッスね。アカシさん」

 

「そうでした。ふふ」

 

「だろ?だからさ、これ」

 

そういうとアカシはにっと笑みを浮かべながら右手に拳を作ってヤクモの前に突き出した。

 

「そうッスね。流石アカシさんッス。シンプルでわかりやすいッス」

 

続いて突き出された拳に向かってレマも右手の拳を差し出し、最後に2人がヤクモの方へ視線を向けた。

 

「ですね」

 

ふと小さく笑を零しながら2人に遅れてヤクモも突き出された拳に向かって軽くコツンとつき当てるようにして応えた。

 

3人の拳が1点で突き合わされる。

 

「わかっているとは思いますが、アカシさんとレマさん(あなた達2人)の訃報なんかは聞きたくありませんから。それだけはご了承願います」

 

「当たり前だろ?お前こそ、俺らのいない所で撃墜されたとか勘弁してくれよな」

 

「信じているッスよ、ヤクモさん」

 

「任せてください」

 

その言葉を最後に3人は突き合わせていた拳を元に戻す。

 

「それじゃあ俺たちはそろそろ行くぜ。ま、次に寄った時に土産話用意しといてやるから楽しみにしとけよな」

 

「ヤクモさんがビックリするような大物を倒してお土産にしてあげるッスから楽しみに待っていてくださいっスー!」

 

「はい、楽しみに待っていますね」

 

 

 

 

 

それからゆっくりと離れていく2人の背中を見送っていると、ちょうど太陽も真上から西に傾き出していた。

 

「ふぅ。さて、それでは私も気合を入れていきましょう」

 

よし!と気合いを入れ直したヤクモは腰巻に下げていたポーチからヘアゴムを取り出し、手馴れた手つきで後髪を括って1つに結び上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

→水蓧 八雲の章へ

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月後。

 

 

 

 

ドンドルマの大衆酒場に隣接された新人ハンター御用達、通称『訓練所』にて将来ハンターを目指す男女がざっと数えて10人ほど教官によって招集されていた。

全員が初期の装備としてレザー装備を身にまとい、片手剣の『ハンターナイフ』を腰に差している。

 

座学を終えたばかりで今日初めて武器と装備を支給されていることもあり、訓練所内はガヤガヤとどこか浮き足立っている様子は誰が見ても明白であった。

 

「静まれ。全員いるな?」

 

そんな訓練所に一際大きな声が木霊する。

クロオビシリーズと呼ばれる各所にオレンジ色が散りばめられた装備で腕を組む男性は、このドンドルマ訓練所を総括している人物だ。

名前は彼が頑なに明かそうとしないため弟子や街人含めて『教官』と呼んでいる。

その教官は部屋前方の一段上がった壇上で腕を組みながら集まった10人を見渡してから再び大きな声を出し始めた。

 

「諸君。先日まで座学講習ご苦労であった。ここにいる者は座学最終日に行った試験の結果から上位10名をここに招集させてもらっている」

 

その一言に訓練所内が再びざわついた、がすぐにそれも収まった。

 

「静まれ!諸君らをここに集めたのは他でもない、本日よりハンター教育プログラムを次の段階へ移行させるために集まってもらった。つまり…………実地訓練だ!」

 

再び歓喜の声が訓練所内に飛び交い始める。

 

「装備を支給されたことで薄々は勘づいていたかもしれないが、実地訓練とは言え気を抜くことは無いように!遊びでは無いことを自覚するのだ!一人一人がハンターとしての自覚を持って………………」

 

そう教官が話すもののついに念願のハンターの第1歩として現地に赴くことが出来るその喜びが前面に出てきてしまっている10名。

そんな彼らの耳には既に教官の言葉はほとんど届いていないことだろう。

溜息をつきながら片手で頭を抱える教官。

 

「浮かれるなと言っているそばから………………まぁいい、今は何を言っても耳に入らないだろう。それともうひとつ!」

 

最後の一言の声量によってガヤガヤとしていた訓練所内がパタッと静かになる。

 

「それに伴って、吾輩に変わって現地訓練を指導してくれることになった新しい教官を紹介する。入れ」

 

その言葉のすぐあと。

扉を数回ノックする音を響かせてからゆっくりと引き戸が開かれる。

 

 

「失礼致します」

 

 

澄んだ声色に鮮やかな黒髪を後ろで1つに束ねた女性は、律儀に一礼してから扉を閉めてゆっくりと壇上へ。

それから訓練生10名の方へ体を向けてぺこりとお辞儀をした。

 

 

「紹介しよう。これからお前達の教官となる『ヤクモ・ミナシノ』だ」

 

「ご紹介に預かりました、『ヤクモ』と申します。皆様が立派なハンターとなれますよう尽力致しますので、どうかよろしくお願い致します」

 

 

ヤクモは手短に挨拶を済ますと再び深深と頭を下げた。

 

同時に拍手喝采が巻き起こる。

それに交じってかなり小さな声で「(なんか今度の教官は優しそうだな)」「(ほんとクロオビ(教官)じゃなくてホッとしてるよ俺)」みたいな内容のひそひそ話も聞こえてくる様子。

 

「うむ。ではヤクモ。今日から頼んだぞ。先日打ち合わせで決めた通りにこなして貰って一向に構わん。責任は全て吾輩が持つ。何か問題があれば吾輩に言ってくれれば良い。手をかせることであれば全力でサポートしよう」

 

「承知致しました、教官殿。それでは………………その、早速で申し訳ありませんが、皆様の名前を教えていただけないでしょうか?知っていた方が何かとやりやすいですし、親しみやすくもなるとは思いますので」

 

はにかむように微笑んだヤクモの元に訓練生(主に男性)が我先にと押し掛けたのは想像に容易かった。

 




とりあえず前編。

本当は1話にまとめたかったけど………………恐らく無理でしょうとのことで分けます


あ、それともう2つ。
物語中に出てきた『あの最後の場面』とは……………………当然ゴグマジオス戦のクライマックスを指すわけですが、それは今後のお楽しみでw
それからなんで翔蟲を持たないレマとアカシに鉄蟲糸技が発動できたのかも今はまだ秘密です♪
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