シャンフロ短編置き場   作:wanaza

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街中キッシング/同棲ゴーイング(楽玲)

◆街中キッシング

 

『陽務が、あの斎賀さんと、どんな話してんの?』とは、俺と玲さんが付き合いはじめた時に、雑ピに質問された言葉だ。

その時は、即座にやつの新作ポエム(最近は和歌にも手を出し始めたらしい)を、きっちり詠み上げてうやむやにしたけど、あの質問に答えるとしたら「ごく普通」としか返せない。

普通に手を繋ごうとして玲さんがバグモードになって、普通にデート先でなぜかカリスマモデルと長身ジャージ女(両者申し訳程度のグラサン着用)が出現して、普通に徘徊型ラスボス(リアル人間)と遭遇して、といった風にごくごく普通のお付き合いの経過を辿っている。

普通ってなんだっけ。

で、世のカップルと変わらないように、ごくごく普通にそういう触れあいもだんだんとするように、というか出来るようになって。

自然と、取り決めみたいなものも出来た。

 

くいっと、袖を一回引かれる。

夕方からぼちぼち夜に名前を変える時間。

辺りに人通りは少ない。

もう一度、袖を引かれる。

俺達は、一応周囲を確認して、それから道の端へ。

 

「玲さん」

 

こくんと、うなずきが返ってくる。

俺はそっと玲さんの肩に手をまわす。

 

俺と玲さんの身長差は15cm。

誰が言い出したのかは、分からないが、理想的な身長差らしい。

 

「らくろうくん」

 

玲さんの手が俺の頬に添えられる。

フェザーキス。

軽く触れるだけ。

 

いっかい。

 

にかい。

 

背中をとんとんと、叩かれる。

 

合図だ。

 

フレンチキス。

恋人同士のキス。

お互いの熱がより、伝わる。

 

「ふ…………ん…………ん」

 

頬に添えられていた玲さんの手が、いつしか俺の首筋に降りてきている。

俺も玲さんも夢中になっていた。角度がかわる。

 

「ふぅぅぅ……ん…………ぁ……」

 

腰にまわした手に、力が入る。

首筋にまわされた手に力がこもってきているのが分かる。

もっとふかく。

もっとふかく。

 

ぴったりとひっついて。

 

 

「最大火力と最大速度は、現実世界でも最大火力で最大速度なのか?」

「ひゃぁぁぁぁぁ!?」

「さ、斎賀姉ぇ!?」

「老婆心だが、あえて言わせてもらおう。 路上だぞ?」

 

ころしてください。

 

 

◆同棲ゴーイング

 

「…………相当にまずい気がする」

 

気がする、じゃなくてまずいんだが。

まずいといっても、別に料理がまずいとかそういうわけではないし、というか作り置きしてくれているのは玲さんだから当然美味しい。

 

「美味しいから、問題かもしれない」

 

美味しいことの何が問題か。

一般に、胃袋をつかむという言葉がある。要するに、旨い料理はアドということなんだが、旨いピザだと留学の危険がある。いや、ねえよ。

かくいう俺は、既に玲さんに胃袋をつかまれてしまっている状態と言えるんだが。

 

「毎週末に……うちにきてくれて…………料理作り置きしてくれて…………」

 

ちらっと、ワンルームマンション特有のキッチンに目をやると、玲さん用の食器とかまで揃いつつある。

洗面所には、歯ブラシとかスキンケア用品とかまでしっかり備え付けられるようになっていて。

 

「…………どうせい」

 

厳密には、半同棲とか言うやつ。そして、最近は週の半分以上玲さんが、うちに来てくれている。

 

このことから、導かれることはひとつ。

 

「筋、通さないと…………俺、やばくね……?」

「何がですか?」

 

あ、玲さん、来てくれてたんだ。

いや、ちょっとね、玲さんにプロポーズというか、結婚というか、婚約というか、ご実家に挨拶しとかないと俺の命が。

 

「………………けっ!?」

「け!?」

 

玲さんいつの間に!?!?

 

後日、めちゃくちゃ娘さんを下さいするために、風雲斎賀城にのりのんだ。


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