シャンフロ短編置き場   作:wanaza

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鈍感パンデミック

「最近、楽郎君が、付き合って欲しいってすぐに言うようになってきて、勘違いしないようにするのが大変なんです」

 

常連客である斎賀玲のその言葉を聞いて、ロックロール店主岩巻真奈は頭痛の気配を覚えて思わず米神を押さえる。

 

「真奈さん大丈夫ですか!?」

「大丈夫か、大丈夫じゃないかで言えば、大丈夫じゃないけど、もう少し詳しく教えてくれる?」

 

心配そうな表情で顔を覗き込んでくる常連客に、再度催促する。するとようやく、玲は詳細を話し始めた。

 

よく晴れた日だ。

ここ最近はどうやら日本列島全体を高気圧が覆っているそうで、まさに通学日和である。

今日の玲の勘働きは冴えに冴えていて、想い人である陽務楽郎とも一緒に登校することができた。

 

(ここ最近、調子が良い気がする……!)

「玲さん」

「ほぴゅ」

「ほぴゅ?」

 

しまった。少し油断してしまっていた。

 

「な、なんでも、ないです!」

「そっかあ」

 

へにゃりと彼が笑う。玲はその表情を見て、自分の顔がかなり熱くなっている自覚をした。

 

(最近の楽郎君は、少し、変かも)

 

今みたいに、笑うことが増えた。

 

「ところで、玲さん」

「ひょあい!」

 

そして、まさに今のように玲に向かってはにかみながら、話しかけてくることも増えた。後、心なしか。

 

(顔が赤くなってる、ことが多い気がする)

 

「玲さん、付き合って欲しい」

 

 

み。

 

 

しばし、思考停止。しかし数多の修羅場を乗り越えてきた玲には死角はない。

 

「今晩も、シャンフロですか? 良いですよ」

 

加えて、こんな感じの発言も多くなっている。玲が勘違いしたらどうするつもりなのだろうか。

 

「…………うん、シャンフロ」

 

そして、最後にがっかりしたような、安心したような複雑な表情になることも増えている。

 

「ということなんです、真奈さん」

 

常連客の語りを聴いていて、真奈はなんかこう、涙が流れそうになってきた。

 

「楽郎君……哀れがすぎる…………」

「や、やっぱり、楽郎君は何か困っている事があるんですか!?」

 

そして、こっちの常連はやっぱり分かっていない。

ここで、真奈が端的に『告白されてんのよそれ』と答えることもできる。できるのだが、それはオトナとしてやってはいけないことだし、若干あのクソゲーハンターが自分で撒いた種でもあるのは間違い無いとも、思わなくもない。クソボケが感染してるし。

つまり、真奈にできるアドバイスは、一つしかなかった。

 

「玲ちゃん」

「はい」

「楽郎君にチューしなさい明日にでも」

「真奈さん!?」

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