なぜだ、なぜライスが当たらない……そうだ、ライスのSS書こう。

※この物語はPixivに投稿した作品をそのまま持ってきています。


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・(作品執筆経緯)どおしてハロウィーンライスが出ねえんだよお!! ライスを引くために6月からずっと貯めていた15000ジュエルを使って100連した結果、ライスどころか星3一人も当たらなかった高校生トレーナー。しかしその悲しみはこの作品を作るための昇華の糧となった!!

・残酷とR−15は保険。


主人は冷たい棺桶の中で笑い眠る / ヴァンパイアは微笑む

 僕は吸血鬼という存在が憎かった。今まで一緒に育ってきた妹を目の前で殺されたからだ。

 

 そうして僕は未熟ながらもヴァンパイア・ハンターとなり、仇である吸血鬼を探しながら各地に跋扈する吸血鬼を殺し回った。

 

 そうは言っても無闇な無差別大量虐殺というわけではなく、悪いことしかしていない吸血鬼だけをターゲットにして殺した。

 

 この世の中には人間に対して好意的な吸血鬼まいる。もし出会えば仲良くして、親睦を深めなさいというのが師の教えだった。

 

 そうして俺はあらゆる街や秘境へ踏み入り、やがて妹の仇である吸血鬼の館を見つけ、決死の覚悟でヤツを殺した。

 

 だが俺も浅いとは言えない傷を負ってしまい、帰路の道端で倒れてしまった。

 

 そんな時だった彼女との"再会"は。

 

「す、すごい怪我……ど、どうしよう。これじゃ応急手当じゃ治らない……!」

 

「このまま、死なせてくれ……そうすれば、妹に逢える……から」

 

意識が朦朧とする。体に力が入らない。あぁ、そうか。これが……これが死か。

 

 ヤツを殺したとき、ヤツも最後まで生にしがみつこうとしていた。あの時のヤツはいつも高貴な振る舞いをしている時とは違い、まさに無様の言葉が合うような言動や行動を取っていた。

 

 だがこうやって生と死を彷徨っていると、自然とそういう感情が湧いてくることに気が付いた。

 

「(僕は、まだ生きたい!)」

 

 声には出なかったが、俺は強くそう願い心の奥から叫んだ。その叫びは涙と変わり僕の頬を伝って地面の土を濡らした。

 

 そう思った次の瞬間、柔らかく暖かいナニかが僕の唇を覆った。そしてそこから温かい液体のようなナニかが流し込まれる。それは鉄に近い味がした。

 

 冷え切っていた体に熱が戻ってくる。少しずつ動かなかった手足が動くようになる。それと同時に僕はゆっくりと目を開けた。

 

「んっ?!」

 

 僕は黒髪のウマ娘みたいな娘にキスされていた。そのことに気付いて距離を取ろうとしたが、肩を抱かれているような状態であり人間の力で振りほどくことは出来なかった。

 

「んむっ……んっ」

 

 目の前の少女にキスをされながら、僕は流し込まれているナニかを飲まされている。

 

 やがて月明かりが目の前の少女を照らすようになった時、僕は思った……目の前にいる少女が殺された妹にそっくりだと。

 

「くふっ……ふぅ、これで大丈夫かな」

 

 そう言うと少女は唇を離した。その口元には何やら赤い液体が滴って、月明かりで怪しく光っていた。

 

 少女は僕から距離を取る。そうして少女の全貌を見た時、僕は確信した。目の前にいる少女は紛れもなく殺された妹、ライスシャワーだと。

 

「ライス……なのか?」

 

「うん……お久しぶり、お兄さま」

 

「なん、で……こんなところに? そもそも殺されたはずじゃーー」

 

「ライスはあの時死んだよ……でもね知ってるお兄さま? 吸血鬼に噛まれた人やウマ娘はヴァンパイアさんは稀に吸血鬼になるんだよ」

 

「つまり……今のライスは、吸血鬼なのか?」

 

「うん。そして今お兄さまに流し込んだのはライスの血……つまり吸血鬼さんの血」

 

「吸血鬼の……血?」

 

「それを飲んだことによって今のお兄さまは半分吸血鬼さんの状態なの」

 

「半分、吸血鬼」

 

 今思えば僕は自然にその場を立っていた。さっきまで石を保つだけでも必死だったのに、さらにさっきまで流れていた血は止まっていて、痛みはさっきまでと比べると圧倒的に和らいでいた。

 

 そんなの人間の治癒力では考えられない。

 

「ねぇお兄さま、ライスと一緒に暮らそう?」

 

「一緒に?」

 

「ライス、ずっと一人で寂しかった。本当はね、数年前からお兄さまの後をつけていたの……でも今現れたらきっとお兄さまは自分自身で立てた目標の達成出来なくなっちゃう。だからずっと、この時を待っていたの……全てが終わるこの時を」

 

「……」

 

 こんな事があっていいのだろうか。妹を殺したヤツへの復讐のためにしていた旅は、ヤツを倒して終わりだと思っていた。

 

 しかしそれは同時に、今までの生きがいを失うことと同義だった。

 

『私を倒せば、貴様には生きがいはなくなる。人間も吸血鬼も生きがいが無ければ生きることは出来ない。だから貴様は私を殺せない……殺しても待っているのは無だということを、貴様自身が知っているからだ!!』

 

 ヤツと対峙した時にヤツが言った言葉は、戦闘に入っても時々頭の中を横切った。

 

 だがあの時は生きがいや生と死などはどうでもよかった。ただ、思うとの仇をとればそれでよかった。

 

 だからヤツを殺せた。

 

 そこで自分の旅は終わるはずだった。いた、終わるしかなかったと言った方がいいだろう。

 

 だが実際はどうだろうか。瀕死の重傷を負って死にかけているところに、吸血鬼になってしまったが妹が目の前に現れて、その妹の血を飲み半吸血鬼になり九死に一生を得て、こうして一緒に暮らそうと手を差し伸べてくれている。

 

 それは生きがいを失い、空っぽになってしまった自分を包み込んでくれるような言葉だった。

 

「あぁ……また一緒に暮らそう、ライス!!」

 

「うん、お兄さま!!」

 

 そうして俺たちは二人で一緒に暮らし始めた。

 

   ・ ・ ・

 

「おはようございます、主人さま」

 

「おはよう……って、主人さま?」

 

「はい、何か変でしょうか?」

 

「だってお兄さまはライスのお兄さまだよね?」

 

「でも僕はライスの血を飲んでいて兄以前に眷属だから、主人さまと呼ぶのは普通なんじゃないかな主人さま」

 

「そうかもだけど……でもお兄さまからかってるよね?」

 

「そんな事ないよ主人さま」

 

「むーっ、からかっているようにしか聞こえないよ……!」

 

 そう言って頬を膨らませて少し怒るライス……うん、可愛い。

 

   ・ ・ ・

 

「お兄さまって結構料理出来るんだね」

 

「旅に出て色んな国を訪れたからなぁ……それに自分で作れた方が旅費が安くなるから。そう言うライスは料理出来るの?」

 

「ううん、あんまり出来ないかな」

 

「えっ、でもずっと一人だったんだよね?」

 

「ヴァンパイアさんは基本1週間は食べなくても生きていけるから、基本街で外食をしてたよ」

 

「じゃあなんで今は毎日食べてくれるんだ?」

 

「だってお兄さまの料理を食べると心が温まるから……それに美味しいし!」

 

 そう言って僕が作ってくれた料理を口に入れて笑顔を浮かべてくれるライス。そんな彼女の笑顔を見るためなら僕は喜んで料理しようと思った。

 

   ・ ・ ・

 

「この地域には独自の文化があるんだな……火薬を使って夜空に花を描くなんて」

 

「うん、この地域には異国の文化が入ってきているんだよ」

 

「へぇ異国かぁ……こんなに綺麗な文化を作れるんだから、きっとすごい国なんだろうなぁ」

 

「お兄さま、もしかしてその国に行ってみたい?」

 

「う〜ん……正直ライスと居られるならなんでもいいかな」

 

「ふぇ!? お、お兄さま!! ライスをからかうのはーー」

 

「からかってなんかない……これは僕の素直な気持ちだ」

 

「っ……そう、なんだ」

 

 ライスがそう言うと一つ大きな花が夜空に咲く。その光によってライスの顔が赤くなっている事が分かった。

 

「あの、お兄さま……ライスね、お兄さまのことーー」

 

 ライスがその言葉を囁いた瞬間、炸裂音が鳴り響いた。

 

   ・ ・ ・

 

 夜、ライスと一緒に館を出て、裏にある森へと踏み入る。

 

 普通の人間では暗すぎて昼までも立ち入る人間はいないほどだが、吸血鬼であるライスと半吸血鬼である僕は夜目が利くのでこの暗い森を歩く事ができた。

 

 しばらく歩き続けると森が開け、その先にはあるのは芝の広場。そこに着くとライスはその芝の上を駆け出す。ライスは夜中にこの場所で走るのを1日の中で一番の楽しみにしていた。

 

 元々ウマ娘であるライスは走るのが好きだった。だが吸血鬼になってしまい陽の下を自由に走ることはなかなかに難しい事だ。だからこうして夜中に人があまり来ないこの森の先にある芝の広場で自由気ままに走るのだ。

 

 次の瞬間、ライスは自分自身に生えている翼を広げて夜空を駆け始める。

 

 その夜を駆ける姿は何ものにも変えられない美しさがあった。

 

「ライス、またお日様の下で思いっきり芝の上を駆けたいんだ」

 

 吸血鬼は太陽が苦手である。とは言っても小説などでは当たった瞬間に苦しみながら灰になると書かれているが、それほどではない。だが灰になるというところは間違いなく、日差しの対策を何もしないと30分から1時間の間に灰になってしまう。

 

 そもそも当たった瞬間から少し気分が悪くなるので、日焼け止めの強化版みたいなものを塗るのは当たり前だ。自分も半吸血鬼だからこの程度で済んでいるが、自分より吸血鬼のライスはもっとキツいだろう。

 

「その時のライスはとびっきりお笑顔で芝の上を駆けるんだろうなぁ」

 

「……時々ね、夢を見るの」

 

「夢?」

 

「ここじゃないどこか……ライスは普通のウマ娘でお日様の下、みんなを幸せにするために芝の上を走っている……そんな夢」

 

「そっか……」

 

 その夢を語るライスはとても楽しそうに話してくれていて、僕はその夢が叶って欲しいと心の隅に小さく願った。

 

   ・ ・ ・

 

 ライスが目覚めなくなった。

 

 それはあまりにも唐突に訪れた悪夢だった。

 

 僕はいつも通り、ライスを起こすために彼女の寝室に訪れ、部屋に入って、ライスが眠っている棺桶を覗き込んで、起きるように催促した。

 

 しかしライスからは眠そうな声も、ちょっとした反応が返ってくる事もなかった。

 

 僕は知人の医者をしている吸血鬼に彼女を診察してもらったが……彼曰く、ライスは夢を見ているとの事だった。

 

「なんとかならないんですか!!」

 

「……夢を見ている以上、いつ目を覚ますか。吸血鬼は長生きする代わりに体感時間が狂っていますから、1年……下手するとそれ以上は掛かりますね」

 

「そん、な……」

 

 せっかく妹と再会できて、またいつものような生活が、普通の生活が送れていたというのに……こんなのあんまりだ……。

 

 僕はライスの隣で大泣きした。今まで大切にしていたものを再び全て失ってしまったから。そしてそれを取り上げたのは吸血鬼でも人でもない……自然現象によるものだったからこそ、僕の怒りはどこに向けれないいのか分からなかった。

 

「それに……見てくださいよ」

 

 彼に言われて俺はなんとか一度泣き止み、ライスの寝顔を見てみる。

 

 その表情はーー。

 

「こんなにも嬉しそうに微笑みながら眠っているんです……きっと悪い夢ではないと思いますよ」

 

   ・ ・ ・

 

 ライスが目覚めなくなって2年以上が経った。しかしライスは冷たい棺桶の中で、相変わらず微笑んだままピクリとも動かない。

 

 いや、夢に呼応するように体をよじったり寝言を言ったりしているから、ピクリともは言い過ぎだ。それでも何か反応がある度、起きるんじゃないかという淡い期待を抱いてしまう。

 

「ライス……血だよ」

 

 そう言って僕は採血器で採った自分の血をライスの口に流し込む。

 

 医者である彼から今の僕がライスに出来る事は何かないか訊いてみた。すると彼は定期的に自分の血を飲ませて栄養不足に陥らせないようにしてあげる事と言い、採血器を渡してくれた。

 

 僕は数年前ライスの血を飲んで半吸血鬼となり、命を救われた。

 

 それが今は逆転して僕が彼女を生きさせるために血を与えている。

 

 最初は抵抗があったが何回もやっているうちに慣れていった。

 

 ライスは確かに目覚めない。だけど死んでいるわけじゃない。マラライスが目覚めればいつもの日常が……いや、前よりももっと充実した楽しい暮らしが待っているはずだ。

 

「(むしろライスに嫌がられるくらいべっっったりくっ付いてーー)っ!? かはっ! ごはっ!!」

 

 その瞬間、僕は血を盛大に吐いた。

 

 その頃、この地域ではある伝染病が流行っていた。その伝染病は傷口から菌が侵入し発病すると高熱や身体痙攣……さらに吐血などの症状が出て、最終的に死に至ることが多いものだった。

 

 そして自分は定期的に針を刺していた。それが菌侵入のきっかけになってしまっていた。

 

 なんとか手で口を押さえて吐血を止めようとするが、意思とは裏腹に自分の体は多くの血を吐き続けた。吸血鬼の血を飲んだとはいえ、所詮半吸血鬼……人よりも免疫は少しある程度だった。

 

「(ダメだ……俺がここで死んだら、ライスが悲しむ!!)」

 

 僕は棺桶の中で眠っているライスの寝顔を目に焼き付ける。少しでも生にしがみつくために……妹と再び暮らすために。

 

 だが、僕の体には血は残っていなく……視界が真っ黒になっていくだけだった。

 

 体に力が入らなくなっていき、体が前のめりになってライスのお腹の上に力なく倒れてしまう。

 

「(あぁ……ライ、す……きみがはしるすがたを……もう、いちどでも……みたかっーー)」

 

 そうして、僕は死んだ。

 

   ***

 

「んはっ!! はぁ、はぁ……」

 

 僕はベッドから飛び起きる。そりゃそうだ……自分が死ぬ夢なんて見たら、誰でも飛び上がって起きるだろう。

 

 にしてもあの夢はなんだったんだ……なんかやけにリアルだったし、それにライスシャワーだって?

 

 ライスは自分の担当ウマ娘……だが、あの姿に見覚えがあるような気がする。いやでもあんな姿見ていないはず。

 

 色々思考を巡らせているとピンポーンと家のインターホンが鳴った。

 

 僕は眠い頭を無理やり覚醒させながら「はーい」と返事をして自室を出て、玄関に向かう。

 

 そうして鍵を開けて玄関の扉を開ける。するとそこにいたのは……自分の担当ウマ娘であるライスだった。

 

 それもいつものような私服ではなく、ヴァンパイアのコスプレをしていた。そしてその姿はあの夢の中で出てきたライスと瓜二つ。

 

「お、お兄さま! と、トリックオアトリート!!」

 

「……まだ上旬だよ、どうしたの?」

 

「あのね今度学園主催のハロウィーンパーティーがあるんだけど、その衣装が届いたから……その、お兄さまに一番早く見せてあげたくて……め、迷惑だったらごめんなさい!!」

 

「いや、そんなわけないよ……とっても似合ってる」

 

「ほ、本当? ライス似合ってる?」

 

「似合ってるって……上がっていく? プリンくらいなら出せるよ」

 

「い、いいの!?」

 

 そう言うライスは耳をピーンと立てた後、横にぺたんと倒す。尻尾はさっきまで自信なさげだったのに、今は元気よくブンブンと振っている。

 

 そうしてライスを家に上げてプリンを差し出す。

 

 食べ終わるとしばらく雑談をしたり家にあるゲームをしたりして時間を潰した。

 

 しかしずっと一緒にいるとやっぱり考えてしまう。今のライスはあの夢の中のライスと一緒だ。それは単なる偶然なのか……それとも。

 

「あの、お兄さま……ライス、絵本持ってきたんだけど一緒に読んでもいいかな?」

 

「別にいいよ。ライスの持ってくる絵本は面白いし……なんてタイトルなの?」

 

「『ヴァンパイアは微笑む』って言うんだけど、元々童話の『主は冷たい棺桶の中で笑い眠る』を基にした絵本なんだ……とっても感動するからどうしてもお兄さまに読んで欲しくて」

 

 自分の知らない絵本だが、ライスの説明を聞いていると、何と無く悲しい系の物語なのかなと考えてしまう。

 

 そして僕はライスがそういう系のお話を持ってくるのを意外に思った。基本ライスはハッピーエンド系が好きだったからだ。

 

 ライスは僕の膝の上にちょこんと座り込むと、絵本を開き読み始める。

 

 その内容は……とても見覚えがあった。というかさっきまで見ていた夢と全く同じだった。

 

 どういうことだ……なんであの夢とこの物語がリンクしているんだ?

 

「夢から覚めたヴァンパイアは酷く悲しみました。自分が夢を楽しんでいる間に大好きだった兄が死んでしまっていたからです」

 

「……」

 

「ふとヴァンパイアさんはカーテンから漏れ出ている太陽の光を視界内に捉えました。そしてヴァンパイアさんはカーテンを開けて日光を彼の骸と一緒に浴び、灰となりました……」

 

 ライスは絵本を閉じる……しかし、これのどこがハッピーエンドなんだ?

 

 夢とこの物語がリンクしているのも気になるが、ライスはこの絵本を感動する物語だと言っていた。しかしこれでは物語として成立しなーー。

 

「そうして再び、二人は出会ったのです」

 

 絵本を閉じたライスは顔をこっちに向け……自分の唇を僕の唇に押し当てた。

 

 あまりにも突然なことに僕は思考が止まってしまう。そうしてそのままライスは体をこっちに向け、僕の胸に体重を預ける。

 

 しかし思考がフリーズしていた僕は支えることができず、そのままゆっくりライスに押し倒される。

 

 そのまま、ライスは僕と長い間キスを交わした。少しずつ頭が動くようになってきて、思考することもできるようになった俺は一度彼女の肩を掴んで優しく唇を離す。

 

「待ってくれライス……これは、絵本の世界なんだろ?」

 

「ううん、違うよ。これはライスとお兄さまの前世のお話だよ。『主は冷たい棺桶の中で笑い眠る』なんて童話は存在しないし、この絵本だってライスが作ったものだよ」

 

 確かにライスは昔、絵本を作ったことがある。だから絵本作りのノウハウは持っている。

 

 だけどこれは絵本の物語ではなく、前世のお話?

 

「ライスも思い出したのは最近……お兄さまも見たんじゃないかな、妙にリアルな夢。ライスが出てくる夢」

 

「……見た。たった今さっきだけどね」

 

「なら、分かるよね……お兄さま」

 

 そう言いながらライスは自分の頭を僕の胸の中に埋める。

 

「ライス、お兄さまのことが好き、大好き……またあの時みたいに、二人で暮らしたい」

 

「……本当にいいのか?」

 

「もう嫌なの、ライスの知らないところでお兄さまがどこか遠くへ行ってしまうことが……ライスはね、灰になる前に誓ったの……『次は絶対お兄さまの近くにいる』って!」

 

 正直、まだ夢心地だ。

 

 本当に前世でライスが妹だったのか、吸血鬼だったのか……それを知る手段はほぼ無いと言っても過言ではない。

 

 だけど何故だろう……涙が止まらなかった。胸がズキズキと痛んでいる。そして、この瞬間を待ち焦がれていたような気持ちになる。

 

「……ライス、僕は少し前から君のことが好きだった」

 

「そうなの?」

 

「うん……だけど自分がライスと付き合ってもいいのかとか色々と考えることがあった。でも、もう迷わない」

 

 そう言いながら僕は身体を起こして、今度は逆にライスを優しく押し倒す。

 

「ライス、俺もライスが大好きだ……付き合ってください」

 

「……はい、お兄さま」

 

 そう言い合い、俺は自分の唇をライスの唇に近付ける。ライスも拒まず……むしろ受け入れるかのように目を瞑って身体を僕に預ける。

 

 唇と唇が触れ合う……さっきは思考が止まって気付かなかったが、キスをすると甘い香りが口内に広がり鼻腔をくすぐっている。

 

 長い長いキスを終え、僕は唇を離す。すると彼女のほおが紅潮していることが分かった。そして自分も紅潮しているだろう。

 

「お兄さま……大好きだよ」

 

 そう最愛の人に向かって囁き、一人のヴァンパイアは微笑んだ。

 

 




・ライス……頼むから来てくれ(泣)

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