彗星の羅針盤   作:もみじん

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お久しぶりです、もみじんです。
新規連載です。
宜しくお願いします!


プロローグ

舞台が暗転する。

 

それを合図に舞台が明転する。

 

そして再び舞台は暗転し、明転、それを繰り返す。

 

乾ききった瞳を潤すように瞼を閉じ、開ける。

 

潤った瞳に映る光景は、まるで実体験かの様に鮮明に脳裏へと焼き付く。

 

目の前でうつ伏せになる少年を視界が捉えた。

 

少年は動かない。

 

ので、辺りを見渡す。

 

普段は賑やかである学校の廊下も怖いくらいにシンとしている。

 

廊下の窓際から目の前の少年を上半身と下半身で絶つように横切る夕日の光。

 

再び辺りを見渡す。

 

廊下には私と目の前の彼しかいない。

 

普段、閉鎖的な教室に風を通す開放的な廊下は今はただ恐怖でしかない。

 

怖い。。。

 

怖い。。

 

怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

コワいコワいコワいコワいコワいコワいコワい。

 

誰でもいいから抱き着きたい。

 

頭を撫でてほしい。

 

私を安心させてほしい。

 

既に乾いているであろう瞳を瞼で閉じ、再び開ける。

 

目の前の彼を再び視界が捉えた。

 

するとうつ伏せになる彼から黒くて歪な"何か"がポコポコと湧き出てくるのを見た。

 

彼から湧き出る"ソレ"はすぐに『いつもの』あれだと確信する。

 

私は目の前の現実から目を背けるように、すぐさま振り向き、後ろへと駆けだす。

 

"ソレ"とは悪意だ。

 

憎悪、復讐心、邪気、妬み、呪い、敵意、嫌気など他にも沢山あったが、兎にも角にも"ソレ"は悪意そのものだ。

 

これは『私』の話になるが、"ソレ"をポコポコと出す奴らはたいていロクデナシだ。

 

いつからかは忘れてしまったけれども『私』は、人の"ソレ"が見えるようになった。

 

そして"ソレ"を出す人と関わるとろくな結末が訪れない。

 

だから『私』は"ソレ"を出す人とは一切関わらないように今まで生きてきた。

 

だから彼女も逃げているんだろう。と思った。

 

これは同情心か、それとも同じ"ソレ"が見えるという共通点から生まれた仲間意識かなにかか。

 

それは今はまだわからない。

 

ただ今、『私』は走っている、彼女もまた走っている。

 

後ろを振り向く余裕はとうにない。

 

シンとした廊下も今は『私達』一人の舞台となりつつある。

 

駆ける足音は観客の拍手の様に廊下全体へと響き渡る。

 

『私達』の激しい息使いもまるでマドンナの独唱の様に、時には緊張感を漂わせつつクライマックスへと向かってゆく。

 

そしてふと、『私達』の息が切れた。

 

『私達』の独唱が終わると、必然と観客達に緊張が走る。

 

"現実から目を背けてはいけない"

 

どこからか誰かの声が聞こえる。

 

それは幻聴か。

 

"お前が ■ した"

 

再び誰かの声が聞こえる。

 

その声にはびっしりと悪意が詰まっている。

 

それは復讐心か、それとも憎悪か。

 

この際それはひどくどうでもいい。

 

悪意がやってくる。

 

"怖い"

 

逃げても逃げてもやってきた。

 

"怖い"

 

悪意が襲ってきた。

 

『ありがとう』

 

ふと、声がした。

 

私の意識は、寝起きに水を掛けたように覚醒する。

 

声がした方へと振り向く。

 

・・・誰もいない。

 

あるのは黒い"アレ"だけだった。

 

いつの間にか黒い"アレ"は『私達』の周り全体を覆いつくしている。

 

廊下の窓際から射す夕日の光は既にない。

 

辺りが真っ暗になる。

 

黒い"アレ"に囲まれる。

 

助けて。。

 

助けて。。。

 

助けて。助けて。助けて。

 

一人にしないでほしい。

 

謝るから許してほしい。

 

もうだれも ■ ■ ■ ■ ない。

 

『あ。』

 

そう、一言だけ彼女の声が漏れる。

 

それは後悔であったのか、それは少なくとも『私』にはわからない。

 

一つだけ言えることがあるとすればそれは『私達』にとって"目覚め"であったということだけだ。

 

そして『私』は眠りから目覚める。

 

そして『鹿野紅葉』は、悪意に目覚める。

 

そして『私達』は、互いに暗転した視界を広げる。

 

そこに黒い"アレ"の形、姿はなく、鹿野紅葉は5,681回目の朝を迎えた。

 




読んでいただきありがとうございました。
一話目の載っていますので、続けて読んでいただけると幸いです!
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