彗星の羅針盤   作:もみじん

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第22話 ブレ:一日目②

楓を見つけた後、広場へと警察がやってくるまでの間になんとか私は会長たちと合流することができた。

 

「これからどうするんですか?」

 

「兄の元へ向かう。」

 

「兄って、倫太郎さんでしたっけ?」

 

「へー、会長に兄貴なんて居たんだ。」

 

黒崎が会話に割って入ってくる。

 

「そうなんだけど、結構色々と抜けてそうな人だったよ?」

 

初対面での印象は何というか頼りないイメージだった。

 

正直、この状況で第一にあの人に会いにくいという選択肢は例えそれなりの知り合いだったとしてもないだろう。

 

「それで、倫太郎さんの元に向かってどうするんですか? 会長。」

 

「ブレの最中は危険が付き物だ。

 そういった意味では、兄と居る方があっちへ戻る生還率がより高くなる。

 あれでもあの人は俺の20倍は強い────。」

 

「「!?」」

 

◇◇◇◇◇

 

公園を囲っていた森を抜け、懐かしい街並みが現れる。

 

「街中では怪しまれることはないだろうが、俺たちが未来人であるというボロは出すなよ。」

 

そっか、ここに居る人たちからすれば私たちは未来の人ってことになるのか。

 

会長は秋野には初めてきたと言っていたのに黙々と街中を歩いていく。

 

「・・・」

 

私達はその後を追っていく。

 

「・・・」

 

私の知らない路地裏に入ってきた。

 

「・・・あの、会長?」

 

先ほどまで我慢していたのか黒崎がムズムズとした表情で会長に話しかける。

 

「道・・・、迷ってません?」

 

「・・・すまない。」

 

会長の謝る姿は何度か目にしたが、ここまで見苦しい謝罪は初めてだった。

 

「会長、駅に向かってるならあっちですね・・・。」

 

私は見かねて駅であろう方角を指さす。

 

「本当に済まない・・・」

 

「はは、会長もそういうとこあるんですね。」

 

今来た道を振り返って、元の道へと戻っていく。

 

その刹那、私の左腕に激痛が走った。

 

「ぅあ゛ぁぁ、、い、、ッたいッ!!」

 

「もみじ!? 大丈夫!?」

 

楓が駆け寄ってくる。

 

今まで感じたことのない激痛、、だったはずなのだがその痛みはやがて記憶へとなっていく。

 

フラッシュバックの様にこの痛みを"過去"に感じた場所が思い浮かんでいく。

 

そしてそのフラッシュバックが落ち着くとともに、痛みも消えていった。

 

激痛が走っていた左腕を眺めると手でギュウっと握りこまれたような赤い跡が残っていた。

 

「それ、どうしたの!?」

 

「行かなきゃッ!!」

 

私はこの痛みが過去の自分からのメッセージだと受け取った。

 

記憶に残るあの"男"、今はまだ曖昧だがその男が間違いなく過去の私にこの痣を残した。

 

会長たちを置いたまま路地裏を出て、私は"この時"通っていたはずの中学校へと足を向けた。

 

◇◇◇◇◇

 

過去の記憶を辿って簡単に中学校にやってこれた。

 

今日が何曜日なのかはわからないが学校には1人も生徒が見当たらない。

 

この光景を私は知っている、いいや先ほど思い出した。

 

先生たちも居ないことが分かっているので、開いていること知っていた一階にある空き教室の窓から学校内へと侵入する。

 

そして左手にある痣を作った"あの教室"へと向かって走ってゆく。

 

ガラララ

 

記憶に残る教室の引き戸を開ける。

 

すると中には記憶通り、一人の男と"過去"の私が居た。

 

「いったいんですけど!! おじさん何するの!?」

 

過去の私は目の前に居る男に左手を握りこまれたのか、擦る様に左腕を擁護する。

 

「あー、ごめんごめん。

 でもちゃんと"来てくれた"から良かった。

 一階の空き教室の窓が開いているからそこから出るといい。」

 

「なんだよ、まったく。

 絶対、パパに言うからね!!」

 

「あー、それは勘弁してよ・・・。

 俺殺されちゃう。」

 

「いやだよ! 絶対言うからねッ!!

 私帰る!! って、あなた誰? いつからここに居たぁ・・・・

 まぁ、いいか、私帰る・・・!!」

 

幼い少女は私に気が付いて驚くのだが、急にそれがどうでもよくなったかのようになり教室を出ていく。

 

「・・・私に何をしたんですか?」

 

「まぁ、一種の催眠ってやつかな。

 フラッシュバックがうまくキマッてよかったよ。

 これうまくいく人とうまくいかない人がいるからな────。」

 

黒髪で黒のスーツを身にまとった男はそう言って私に振り返る。

 

「やぁ、会いたかったよ、紅葉。

 俺は冬島斗真、特殊諜報機関カルマ所属のエージェント。

 カルマってのは要するに、今回みたいな超常現象の解明と対処を行ってる専門組織だな。」

 

垂れ目なのにキリっとした目つきの冬島はそう自己紹介をしてきた。

 

「・・・さっきの、過去の私を介して今の私にこの時の記憶を埋め込んだんですか?」

 

「ん、ご名答。まさにそんな感じ。 理解が早いねー。

 ブレの時はこれが使えるのが唯一のメリットなんだよね。」

 

正直原理は一切わからないが、しかしそうでも想像しない限り先ほど自分の身に起きた腕の痛みが説明ができない。

 

「そこまでして私をここに呼んだ理由はなんなんですか。」

 

「さっきも言ったけど、俺は超常現象の解明と"対処"を行ってる人なのよね。

 そんでさ、因みになんだけど今回のこの現象ってなにが原因だと思う?」

 

「そんなのわかんないですよ。 私が関係してるとでも言いたいんですか?」

 

「んー? 自覚が無かったか。

 奏太朗は説明してないのかね。 他のみんなはどこにいるのかな?」

 

「え? か、会長たちならさっきまで一緒に居ましたけど・・・」

 

急に会長の名前が出てきて少しあっけにとられてしまう。

 

しかもこの人は私以外にも"誰か"が居ることを知っているようだった。

 

「あー、そうなんだ・・・。

 説明する前に終わらせることもできるけど、めんどっちいからそれは止めるわ。」

 

ゾワッと急に冬島から悪意がにじみ出てくる。

 

私はそれを見て、反射的に後ろへ飛ぶ。

 

「おや? もしかして視えてるの? 俺の悪意。

 いいねぇ! いいねぇ!

 "心意"が段々と練られてきているみたいで俺ぁ、嬉しいよ。

 もう自分の"悪意"は操れるか? 試しにかかってきな。」

 

そう言って冬島は私を指で招いてきた。

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