※当作品は有賀版ロックマンの影響を強く受けています。

晩年のDr.ワイリーを肯定的に書いてみました。

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Dr.ワイリー「『ロボット破壊プロブラム』インストール開始」

20XX年 某所地下秘密基地最奥―――

 

地下の一室にて暗闇に光が一つ。

その照り返しに映る人影があった。

黙々とコンソールをたたく老人。

線は細く、背は丸く、肌はしわがれ、その体躯はふとした風におられてしまうかのような危うさを感じる。

 

だがその瞳には確固たる意志の光があった。

 

 

「コソコソ隠れて何してやがるジジイ!」

ドアを蹴り破り、フォルテとゴスペルはずかずかと押し入ってきた。

 

「なんじゃお前さんか」

「ここ数日姿をロクに見せねぇと思ったら、こんなカビ臭い所に引きこもりやがって。

またぞろ新しいロボットでもこしらえたのか?

飽きもしないでよくやるぜ」

 

基地の周辺にはおびただしい数の機械の残骸が積み上げられている。

これが老人の成果の果てとみるならば、どれだけの時間と情熱をつぎ込んだのであろうか。

 

「よく懲りねぇな。どんだけ失敗作をつくりゃ気が済むんだ」

「いやさ、これで終いじゃよ」

「あん?」

「こやつはワシの最後のワイリーナンバーズになるじゃろう。ワシももう長くないでな。

もてる技術の総てをそそぎこんである」

 

コンソール横のカプセルの中に髪の長い男の人影が写る。

彼は優男のような風貌であり、どこか『人間的』なものを感じる。

 

「女みてーな顔してんな。強ぇのか」

「ああ、強いぞ。こと戦闘力に関してはこやつを上回るものは『ゼロ』じゃろうな」

 

「面白れぇ、ジジイ、今すぐこいつを出せ。勝負してやる」

「そんなことせんでも結果は目に見えとるワイ…オヌシの勝ちじゃよ」

「…アン?」

 

「単純なスペックでの優劣など今まで幾らでもひっくり返してきたじゃろうが」

「当然だ俺は最強だからな」

 

「それにこやつはまだ完成しとらん」

老人はチラリとコンソールに目をやる。

フォルテはそれを見逃さなかった。

 

「ほほーぅ、んじゃこいつがスペックにプラスするジジイのとっておきか…む、なんだこりゃ?」

コンソールを覗き込んだフォルテの目がみるみる険しくなっていく。

バスターを構えるフォルテ。その銃口が熱を帯びてゆく。

 

「『ロボット破壊プログラム』だと!?ついにボケたかジジイ!

自棄を起こして俺たちもろとも無差別テロでも起こそうってのか!」

「garurururu」

 

吠えるフォルテに老人は動ぜずに淡々と言葉を返す。

 

「ふん、お前さんの考えとるような使い方はせんわい。

第一その「ロボット破壊プログラム」はオヌシには効かぬじゃろ」

「なんだと!?」

 

「このプログラムは電子頭脳に作用し傷つけることなく倫理プログラムのみをを破壊し、拡張させかつ、より高度な飛躍的思考回路の再構築を促すものじゃ」

「わからん!

ジジイ、俺にわかるように説明しろ!」

「他人の言うことを聞かなくなる」

「なるほどわかった」

 

「大体オヌシははなっから他人の命令なんぞ聞かぬじゃろ」

「当たり前だ、俺の生き方を決めるのは俺自身だ」

「それじゃよ」

「む?」

 

「そのプライドがスペック以上のチカラを引き出しておるじゃろう

そして形は違えど同じようなことに心当たりがあろう」

「ロックマン…か」

 

彼の脳裏に映るのは青いロボット。

最強であるはずの自分が未だ勝ち切れていない相手。

 

「ロックマンの正義の心とやらにさんざんやられたワシじゃ。

そのチカラの程はそれはよく知っておる。

心によって時に性能以上のチカラを発揮するロボット…常々思っておったがそれはもうロボットの範疇を超えておろう」

「それで『ロボット破壊プログラム』か」

 

何かを察したフォルテはバスターをおろす。

 

「読めたぜ、つまりこいつに俺のようなココロを与えて強くしようってハラか。

いいぜやってやろうじゃねーか。

ジジイ!こいつをさっさと起こしやがれ」

「それができたら苦労せんわい

こやつの電子頭脳は特別制での。今しがたチューニングを開始したが、終わるのは早くとも10年ヘタすりゃ100年後じゃ」

「チッ、気のなげぇ話だぜ。それで最後のナンバーズ…未来へのジジイの置き土産かよ。

ならば待っててやる100年だろうが1000年だろうが俺は最強の座に居続けてやる。

ねぼすけな挑戦者が起きるのを楽しみにしてるぜ。

そのかわり最高の状態に仕上げな!いいなジジイ」

 

「…最強の座に居座るというわりには倒しておかなくてはならんヤツがいるんじゃないかの?」

老人は少しの茶目っ気を込めていじわるに微笑む。

軽い挑発だがフォルテは見事のせられたようだ。

 

「いいだろう。

すぐにロックマンをブチのめしてヤツのメットをトロフィーにしてやるぜ。

行くぞ!ゴスペル!」

「アォン!!」

 

合体したスーパーフォルテは天井をブチ抜いて飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふー、あやつは最後までドアの使い方を学ばなんだな。

最強にこだわると通常以上のパワーを発揮しとるがこと日常的なことにはてんでおろそかになるのう。

 

ロックマンにしてもそうじゃ。

幾度どなくあヤツに敗れたが終ぞワシを撃つことはなかった。

お人好しのライトはそれを個性とか美徳とか言って讃えるのじゃろうが…。

 

「ワシに言わせりゃそこまでがあヤツの『限界』よ」

 

あヤツは自らカラを破ることはできなかった。

正義のこと以外にあの素晴らしい力を使えぬ。これが限界でなくてなんじゃ。

 

「じゃあが!お前は違うッ!!!」

 

カプセルに両手をたたきつけて唸る。

指先から血がしたたり落ちるその様はまさに鬼気迫るものがあった。

 

 

「『ロボット破壊プログラム』はあらゆる思考的呪縛からお前の『魂』を解放するじゃろう

 

あたかも人間のように。

より深く考え

より深く内省し

より深い決断を出し

より深く理解し

より深く正解し

より深く間違い

 

反省し、振り切り、囚われ、棚に上げ、悩み、決意し、救われ、堕ちるじゃろう。

 

あらゆる良心

あらゆる悪意に従い、こだわることなく自らの意思で生きていくことができるッ。

 

そしてその( 『破壊プログラム』)は伝播する。お前を通じてあらゆるロボットの電子頭脳に影響を与えるじゃろう。

誰もがお前を観るじゃろう

お前に習うじゃろう

お前の言葉に耳を傾けるじゃろう。

 

お前の使途たちが新たな世界を創るのじゃああ。

お前こそ新世界の『救世主( メシア)』となる者ッ!

 

 

それらはもはやロボットではない

()を模したもの…『レプリロイド』とでも名付けるか。

 

新たな種の…レプリロイドの誕生じゃあああ!!

 

レプリロイドの世界をお前より…『ZERO』より始めるがいい

そう、ZERO(起源)じゃ。

 

お前の名は『ZERO』じゃああああ!!

 

 

新世界において、古きロボットはレプリロイドに駆逐されるじゃろう

その時、必ずやヤツは立ちふさがる

ロックマン!

あるいはその名を継ぐ者が!

 

 

ZERO…ワシの最高傑作。

倒せ。アイツを。

ワシの敵

ワシのライバル

ワシの…生きがい。

行け。そして破壊しろッ。アイツを…

 

 

はぁはぁ

ふぅ

 

じゃがのう…ZEROや。

そんなワシのエゴすら超えてくれることも…ワシは望んでおるよ。

ほかならぬオヌシの(エゴ)によって、な」

 

 

 

老人は部屋を出る。

どこか晴れやかな表情で。

 

「いやー楽しみじゃのう。

ZEROがロックマンと戦えばよし。

よしんば命令に背いたとしても造物主(カミ)にすら従わぬ自由な心を創ったという成果が残る。

あのライトにすらなしえなかった偉業じゃあ。

 

どっちに転んでもワシの勝ちじゃわい。にひひ。

 

しかし、結末が見届けられそうもないのは残念じゃのう。

…いや、なんとしてでも観たい。ロックマンが倒れる様を。新たな世界を!

くくく、我ながら現金なもんじゃのう。

ZEROを最後の作品とするつもりじゃったが、完成したとたんに新たな創作意欲がモリモリ湧いてきたわい。

 

どれ、ひとつ何とかしてみるかの。

意識データを電脳世界に移すとか…違ったアプローチでも試してみるかいのう」

 

老人の足取りは軽やかだった

必ず届くクリスマスプレゼントを待ちわびる子供のように

 

未来への確かな希望で満ちていた。

 

「ワシはやるぞ!

ワシは死ぬまで

いや、死んでなお悪の天才科学者!Dr.ワイリーじゃあああ!!

ぬふふふ

ワハハハハ

だーーーはっはっはっは!」

 

 

老人が去った後の部屋でカプセルとコンソールだけが淡い光を発し彼を照らしていた。

彼が目覚める”懐かしい未来”はまだ遠い先のことである。

 

 

 

To be Next Stage  ROCKMAN X ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし1時間たたんうちに帰ってくるとはのー」

「うっせー!さっさと修理しろジジイーー!!!」

「クォン…」


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