真剣でクリスの兄に恋しなさい! 作:トラックオジサン
「九鬼と合同訓練ですか?」
『ああ、向こうから申し入れがあってな。これを受諾した』
「何が狙いだろうね?」
『それを確かめる意味でも訓練の話を受けたのだよ』
今までそんな申し入れは無かったはずだ。
急にそんな話が来るなんて裏があるに違いないと勘ぐってしまうな。
『それはそれとしてだ、せっかくの合同訓練だ。存分に我軍の力を見せつけてやればいい』
「本気を出しても?」
『それは承認できんな』
「判ったよ。適度に力を見せつけてくるとするさ」
『頼んだぞ。マルギッテも連れて行ってくれ』
「判ったよ」
『そういえば、嫁探しはどうなったかな?孫を抱ける日は近そうかい?』
「まだそんな日は訪れなさそうだよ」
『判った。楽しみに待っていよう。それとは別に一つ頼みたいことがある』
「なんですか?」
『それはな…』
電話を終えふぅっとため息を吐いた。
少しは子離れ出来たかと思えばまだ出来ていなかったみたいだ。
ま、その程度なら頼みを聞くのも問題ないな。
九鬼従者と合同訓練ねぇ…
九鬼ビルに行くなら弁慶もいるかな?
せっかくだし軽くつまみでも持っていってみるか。
何を作ろうか考えながら台所に向かって行った。
九鬼従者部隊との訓練当日
「ふふっ、腕が鳴りますねノア様!」
「何をそんなに張り切ってるんだか…」
何故かやる気満々のマルギッテと共に九鬼ビルの前に到着した。
警備をしていた従者に来た旨を伝えて待つこと数分
「お待たせいたしました。フリードリヒ様、マルギッテ様」
「久しぶり…でもないですね、前回話が出来なかっただけで会ってますね」
「ええ、早速で申し訳ございませんがこちらでございます」
九鬼従者部隊序列3位
クラウディオ・ネエロ
強さもさることながら従者としての振る舞いは従者部隊の中で一番じゃないかな
ヒューム卿と比べたらクラウディオさんの方がよっぽど完璧な執事だろうな
「そんな事はございませんよ。私もまだまだです」
「相変わらず心を読むのが得意なようですね」
「簡単な事でございます」
クラウディオさんに案内されたのは広めの鍛錬が出来る様な場所だった。
中に入ると九鬼の従者が勢ぞろいしていた。
いや、各地に散ったりしているし一桁台もクラウディオさん、女王蜂、ヒューム卿、マープルさん、ゾズマさんって結構揃ってるな。
合同訓練って聞いていたが…
「遅かったではないか赤子」
「全然時間に余裕を持ってきてますけど?」
「俺からしたら遅いぐらいだと知れ、赤子よ」
時間も場所も指定してきたのはそっちだろう
言ってしまうと面倒くさいから言わないけど…
「時間も場所もそちらが指定したのでしょう!ノア様への無礼は世界最強の執事とはいえ許しませんよ!」
一々挑発に乗るんじゃない…マルギッテ…
「ほお?許さんと言うならどうするつもりだ?」
何で毎回こうなるんだか…
そう思っているとヒューム卿の頭が軽く叩かれた。
「…何をする、クラウディオ」
「一々挑発するものではないですよ。時間もキッチリ守って来られてるのですよ」
「マルギッテも一々挑発に乗るなよ?」
「むぅ…」
「申し訳ございません!」
「それで一応訓練と聞いてますけど…明らかに訓練って雰囲気じゃないですよね?」
物凄い殺伐とした空気が流れているのを肌で感じてしまう。
敵視…とまではいかないが殺気は向けられているな。
「早い話が赤子共と実践の合同訓練だ」
「ああ、もう分かりました。どうせヒューム卿が軍人に負けるなどって焚き付けたんですね」
こう…単純に敵を作るのが好きだよな。
「前も言ったと思いますが従者としてそれはどうなんですかね?」
「九鬼で従者をやっていくなら腕前が無くてはならないからな」
俺は別に構わないんだが…
マルギッテが沸点低すぎて睨み返している。
殺気出し過ぎだな。
まあ、俺もここまで言われたら引き下がれないな。
「そっちの事情は判りませんが引き受けた以上、やらせてもらいますよ」
「当たり前だ」
「が、一言言わせてもらえば…」
さすがにやられっぱなしっていうのもよろしくない。
訓練なら別にいいよな?
「マルギッテ相手にそこにいる従者だけで平気ですかね?最低でも二桁いってないと厳しいのでは?」
俺の言葉を聞いた大半の従者達の殺気が鋭く突き刺さる。
先に焚き付けたのはお前らの上司だろうと言ってやりたい。
「学園に居る時とは違うのだな」
「あっちはプライベートですからね。軍関係となれば話は別ですよ」
「ふっ」
さて、早速訓練開始といきたいが…
「マルギッテ!相手してやれ」
「よろしいのですか?」
「猟犬部隊総隊長として命じる。格の違いを見せつけてやれ」
「Verstanden!(了解)」
こうして九鬼従者部隊の若手連中との合同訓練という名の実践訓練が始まってしまった。
「ちょっと待って下さい!」
「なんだ?812位!」
「我々の事をあの男は舐め過ぎではありませんか?」
「ほお?お前のような赤子が勝てるとでも?」
「はいっ!」
「と言ってるがどうする?」
挑発し過ぎたかな?
「貴様ごときがノア様の相手をするなど!」
「止めろマルギッテ・エーベルバッハ!」
「はっ!」
軍として行動している時でしか俺はマルギッテの事をフルネームで呼ばない。
それだけ本気で止めたと言う事になる。
「812位だったかな?まずは俺とやろうか」
「いいのか?後悔することになるぞ?」
「いいからいいから。やるよ?」
「威勢は良しだな。遠慮なく掛かってこい!」
数十秒後に812位は壁に吹き飛ばされていた。
「ば、馬鹿な!俺の斬影拳がぁぁぁぁっ!」
斬影拳がぁって言われてもそもそも攻撃させてないからな…
812位の従者があっさり負けた事により九鬼従者部隊の若手達の気持ちが引き締まった。
「残りはマルギッテが相手しますが問題ありませんよね?」
「ああ、赤子共にもいいクスリになっただろう」
「マルギッテ・エーベルバッハ!暴れてこい!」
「はいっ!さぁ!誰から相手になりますか!」
マルギッテと従者部隊の実践合同訓練が始まった。
先に言った通りマルギッテ相手では3桁後半の従者ではまったく相手にならないな。
さっきの812位の奴がやられた事によって少しは粘っているみたいだが次々とマルギッテにやられていく。
壁に背を寄りかからせ腕を胸の前で組み様子を伺う。
従者側の最初の威勢は何処へやら
おっかなビックリな様子でマルギッテに挑みかかっている。
そう考えると何も知らなかったとは言え最初に来た812位の人は見込みがあるのではないだろうか?
「暇そうだな?俺が相手してやろうか?」
「そうですね。あくまで訓練ですしせっかくならやりましょうか?」
世界最強と戦える機会も早々あるわけでもないしここはお言葉に甘えさせてもらおうかな。
「と、言いたい所だが別の相手を用意してやったぞ」
やらないのかよ…
「で?俺の相手は何処に?」
「本来なら貴様も従者とやってもらう予定だったが気が変わった。もうすぐ鍛錬に来る奴らと相手してもらう」
この口ぶりからすると相手は従者ではないな。
そうなると…九鬼家の誰かの可能性もあるな。
長女の九鬼揚羽、長男の九鬼英雄、次女の九鬼紋白…
長女ならまだ話は分かるが下二人はないな。
「となると九鬼家の長女あたりですか?」
「揚羽様は現在欧米に飛んでいる。もうすぐ来るぞ」
というか従者部隊との合同訓練じゃなかったんですかね?
言ったところでどうしようもないだろうし別にいいんだがね。
「貴方達はそれでも九鬼従者ですか!もっとかかって来なさい!」
マルギッテにエンジンが掛かってきたな。
「うちのマルギッテがどんどん倒してますけどいいんですか?」
「構わん。上には上がいる事を教えてやらねばならんからな。それにステイシーや李、手が空けばあずみにも相手させる」
眼帯を外していないから完全な本気じゃないとはいえマルギッテも厳しいからな…
従者部隊を辞める人が出て来なけりゃいいけどな。
ヒューム卿を横にマルギッテの訓練(しごき)を見ながら待っていると…
「こんにちは…ってなんだこれは!?」
「ちぃーっす、うっわ…死屍累々だねぇ…」
「遂に組織の人間が攻め込んできたか!?」
現在の悲惨な状況を三者三様の反応をしながら源氏3人組が入ってきた。
「お前達、遅いぞ」
「す、すみません!」
義経は律儀だなぁ…
どうせどの時間に着こうと遅いって言うぞ?
「あれ?ノアじゃん、何してんの?」
俺に気づいた弁慶がこちらに寄ってきた。
「猟犬部隊と九鬼従者部隊の合同訓練だよ」
「へぇー…何処が訓練なの?」
マルギッテに倒されへばっている従者を横目に見ながらこれの何処が訓練?と言わんばかりの視線で見てくる。
「一応名目上は合同訓練さ」
「なるほどねぇ…よくよく考えてみたら見慣れた光景だ」
ヒューム卿をチラッと見ながら応えた弁慶の言葉に驚くほど納得がいった。
多分ヒューム卿の訓練の方がきつそうだけどな。
「それで?弁慶達も訓練か?」
「ああ、クラウ爺に言われてここに来たんだけど…だるい…」
「何処にいても弁慶は弁慶だな。しかしやらねばならないのだろ?」
「まぁね。鍛錬しとかしないといざという時に主守れないからね」
「義経の強さなら早々負けることもないと思うがね」
「それでもだよ、あーぁ早く終わらせようっと」
明らかにやる気のない弁慶だが主の為に鍛錬は欠かさないみたいだな。
締める所ではしっかり締める。
常に気が貼ってる義経は少しだけ弁慶を見習うべきだな。
「早速だがお前達はこの赤子と鍛錬してもらうぞ」
やっぱそうなりますよね。
何となくクローン組が現れた時からそんな感じはしてたんだよね。
「ふ、フリードリヒ先輩とですか!?」
「そうだ。今のお前達では足元にも及ばんだろうからな」
「へぇ…只者じゃないと思ってたけど、ノア強いんだ?」
「こいつが組織の人間なら今ここで討つべきか?いや、連絡が途絶えると更に警戒されるかもしれんな…」
うん。三者三様の反応だね。
というよりもだ
「持ち上げるのはよろしくないですよ?ヒューム卿」
「俺は事実しか言わん、例えばこうするとだ…」
次の瞬間ヒューム卿の必殺技であるジェノサイドチェーンソーがノアに向かって放たれた。
喰らえば一撃で相手の体力を10割削ると言われている恐ろしい技だ。
そんな恐ろしい蹴りをノアは軽くバックステップを踏み回避する。
「ふぅ…いきなり襲うの止めませんか?」
「貴様ならあの程度避けられるだろ?」
「あんだけ手加減されてれば避けれますよ」
本気で蹴りを放たれたら身構えてない限り喰らってしまうだろうな。
「ならば問題ないだろう。ピーピーとよく吠える赤子だ」
「問題なくても不意打ちは止めてくださいね?」
「義経、弁慶、与一、準備はいいな」
無視か…耳が遠くなったのか、都合の悪いことだけ聞こえないのか…便利な耳だな。
「義経はいつでも!」
「パッパっとやっちゃいますかね」
「いいだろう。ここで組織の奴を倒しておくのも一興か」
それぞれがやる気になってくれたようだな。
若干1名おかしな事を言ってるが気にしないでおこう…
見せてもらおうか。
日本が誇る英雄のクローン達の実力とやらを!