真剣でクリスの兄に恋しなさい! 作:トラックオジサン
ふと授業中に校庭に目をやると体育の授業をしているのを見かけた。
いつもならそんなに気にならないのだが髪に特徴のある弁慶が目に入った。よく見てみると体育をしているのがクリスと弁慶のクラスであった。
授業の内容を片耳で聞き何故か体育に魅入ってしまった。
女子の競技は射撃練習のようだ。
男の方は既に終わっているのか女子の方を皆で見ている。
体育とは運動をする授業だったよな?
何故射撃がある?
そんな考えを他所にFとSが勝負をしているようだ。
何かとあの2つのクラスは勝負しているな。
ん?弁慶がこちらに気づいたようで手を振っているな。
明らかにこっちに向かって振っているよな…
無視する訳にもいかないので軽く手を振り返しておく。
的が遠くなっていくと人数も減っていく。
時間的に次の的が最後だな。
Fの3人は外すことなく終えたようだ。
Sも3人は外す事なく最後に弁慶の出番のようだ。
しかし小刻みに震えているように見えるが…どうしたんだ?
案の定というべきか震えた状態ではまともに狙いもつけられず弁慶が外してしまったようだ。
しかし射撃があるのか…銃を最近撃っていないから鈍ってるかもしれないな…
今度使用許可を貰えるか聞いてみるか。
休み時間になると弁慶からメールが入っていた。
【昼休み 食堂】
簡潔なメールだが言いたい事は判った。
昼休みに食堂に来いということだな。
了解とこちらも簡潔に返す。
【(⌒▽⌒)b】
面倒くさがりな弁慶らしいメールだった。
昼休みになり食堂に行くと入り口で弁慶が待っていた。
「遅かったじゃないか」
「授業が終わってから直ぐに来たつもりだったが?」
「冗談だよ。ノアが遅れるとしたら何かしら理由がある時だろ?」
「判らないぞ?俺も人間だからな。遅刻ぐらいするさ」
「ふーん…でも実際遅刻したことないでしょ?」
「…ないな」
「ほらね。ま、そんな事より昼ご飯食べてしまおうじゃないか」
「そういえばどうして誘ってきたんだ?義経もいないじゃないか」
「たまには食堂で食べたくなる時もあるのさ。体育の時間に目が合ったから誘ってみようかと思ってね」
「なるほど、っとここで話していると席が埋まってしまうな。注文を頼んで席を確保するとしよう」
お互いに注文をし昼飯を確保すると適当な席に付き食べ始めた。
「ノアは…A定食か。というか弁当じゃないの?」
「今日は弁当を作れなかったからな」
「ノアが作れないとなると何かあったの?」
「今日は朝一でドイツから報告が来ててね、その報告をまとめたり父さんと話したり色々してたら登校の時間になってしまったんだよ」
「へぇ…本当に軍人なんだね。普通に学生してるから忘れそうだよ」
「そう言ってくれるのであれば少しはここに馴染めたのかな」
「そういえば体育の時射撃を外す前に震えていたように見えたがどうしたんだ?」
「ああ、あれね。実は…」
簡単に言うと義経の威厳を保つ為に川神水を断っていたらしい。
主思いというか、不器用と言うべきか…
「与一くんに対して厳しすぎないか?弁慶と同じで義経くんを主と見ているんだろう?」
「えー?ノアだって妹に厳しいから一緒じゃない?」
「厳しいというより甘やかさないだけだからな?」
「おんなじだって」
「違うからな?」
弁慶と会話しながらの昼食は楽しかった。
彦一と清楚くんと昼食するのも楽しいが弁慶との昼食は違った楽しさであった。
「おんや?そこにいるのはノア君ではありませんか」
「ん?あぁ、燕か。今日も商売かい?」
「そだよー。試供品配ったり売ったりで燕ちゃんはお昼でも忙しいのだよ」
「それは君が自分で忙しくしているのではないかね?」
「むむむ、否定出来ない…」
突如現れたのは松永燕、百代と組手をした事により一躍有名に…というより納豆の行商みたいな事をしている事で有名だろうな。
昼に食堂に来れば確実に会えるだろうし、必ず納豆を売っている。
家名を上げる為と言っていたが本当の所はどうなのか判らない。
「ちょいちょい、私を放っておいて他の女と浮気?」
「あんれま、ノアちゃんってばいつの間に弁慶とそんな仲に?」
「ふむ…すまないな燕、弁慶を裏切る事はできないようだ」
「何もしてないのに振られたことになってる!?」
「そういう訳で今日は納豆を買ってやる事は出来ない」
「まぁ、もう食べちゃった訳だしね」
「あれ?キレイにまとまった?ノア君ってばこういうのに乗ってくれるんだね」
「確かに意外だね。真面目に返してくると思ったのに」
「ここに馴染んだ結果だよ」
「んでも何で弁慶とご飯食べてるの?」
「弁慶とはある程度知り合いでね」
「私にご飯をくれるいい人だよ」
「餌付け?」
「違うが?それで燕は何の用だ?」
「いんや、ただ珍しい組み合わせだなーって思って声掛けただけだよん。いい意味で目立ってたみたいだしね」
「そうなのか?」
「あんれま?気づいてなかったの?二人が座ってた場所の注目度凄かったよ」
「弁慶と話していたから気づかなかったな」
「おんや?ノアは意外にも私に夢中らしいな」
「これはひょっとするとひょっとして?」
「そういう意図は無かったんだが…」
「ま、そんな訳で二人に話し掛ければ注目度が上がるってことでね」
「やっぱり納豆絡みじゃないか」
「そう!私と松永納豆は切っても切れない関係なのさ!ではでは、お邪魔しましたー!」
手を敬礼するように頭の前で揃え燕は去っていった。
「一体何だったんだ…」
「からかいたかっただけじゃない?ノアが私と一緒にいるのってだらけ部ぐらいだから周りから見たら珍しいでしょ」
「クリスやマルギッテとも食事するが?」
「その二人は妹と部下だから有名だし」
俺が他の女性と二人でいるのが珍しいか?
「ま、なんでもいいじゃん。今日もだらけ部行くんでしょ?」
「ああ、今日も寄らせて貰う予定だよ」
「今日のつまみは?」
「作ってきてあるさ。つまみは前日に作っていたからな」
「ノアの作るつまみは美味いからねー、すっかり餌付けされちゃったよ」
「美味いと言ってもらえるなら作り甲斐もあるさ、日本の料理を作るのにも役に立つしな」
「じゃ、放課後だらけ部で」
「ああ、放課後にな」
そう言って弁慶は先に食堂から出ていった。
確かに最近はだらけ部に行く時は必ず何かを作ってきているな。
美味いと言ってくれるからついつい調子に乗ってしまうな…
まぁ……弁慶の美味しそうに食べてる姿を見るのも悪くないしな。
放課後になりだらけ部ではいつものように壁に背を預けながら本を読んでいる。
大和くんと宇佐見先生は将棋
弁慶はそれを見ながら川神水を飲む。
すっかり見慣れてしまった光景だ。
「そうだ、今日はつまみにこれを持ってきたよ」
そう言って大和くんが取り出したのは生うにだった。
初めてみる食べ物に興味が湧く。
「ドイツでは見たことがないな…おいしいのかい?」
「美味しくなかったら持ってきませんよ」
「それもそうだな」
「しっかし学生が生うに持ってくるとかどうなのよ」
「Sクラスってそんな感じじゃない?」
「あー…言われてみりゃそうだったな」
「2年のSクラスは中々楽しそうだね」
「どうだろうねぇ、3年は楽しくないの?」
「皆常に勉強に励んでいるだけだな。昼食も至って普通だな」
「だったらノアも2年に来ればよかったのに」
「こればかりは父さんが決めたことだからね。今となっては後悔しているよ」
「ノアが2年だったら毎日つまみ作ってもらえたのに」
「毎日は勘弁してくれ」
「今日だって楽しみにしてたのにさー」
「今日は大和くんが持ってきたつまみを食べようじゃないか。さぞ美味しいのだろう」
「クマちゃんお勧めの一品でもあるからね」
「では早速一口…あんっ…んんー!美味い!そして川神水を含んで…かぁっー!」
「もはや弁慶の行動がヒゲ先生よりオッサンだ…」
「おいおい、オジサンでもあそこまで酷かねぇよ」
「ノア先輩もどうぞ」
「ではいただこうか」
ふむ…これは美味いな。
「寿司の文化といい生で海産物を食べるのがこんなに素晴らしいとはな、日本の料理は奥が深い」
「ノアはこうやって日本料理を学んでいって私につまみを献上してくれればいいんだよ」
「軍師大和に問う、どうすれば俺は逃れられる?」
「えっ?べ、弁慶?俺の持ってきた生うにはどうだった?」
「勿論美味しかったさ。良い物だよ。川神水に良く合う」
「じゃあこれからは俺が川神水に合ったつまみを持ってこよう」
「それはいいな!大和のつまみも勿論だがノアのつまみも最高だからな」
「ノア大尉…諦めも作戦です…」
「軍師大和、諦めが早くないか?」
「師事宇佐見はどうですか?」
「人生諦めが肝心だ」
「ありがたいお言葉でした」
「まあ作ってくるぐらい問題ない」
「結局それで落ち着くんですね…腹いっぱいになったら眠くなってきたな…少し寝るか…」
「んじゃオジサンも…」
二人が床に寝転がり体を休める体制になる。
「ノアノア、いつもの」
「判った、好きに使いなさい」
「あーどっこいしょっ…極楽極楽」
俺の太ももはすっかり弁慶の枕になってしまった。
「ほぉら、頭」
「はいはい…」
片手で頭を撫でるのもすっかりお馴染みになってしまったな。
暫くそのままでいると足音が聞こえてきた。
ここは良く人の来る場所だな…
あんまり落ち着けなくなってきたか?
「ヒゲ先生誰か来るよ?」
「職員の緊急ならメールで来るはずだから…放っておけ、どうせ過ぎるだろ」
これはフラグという物だ大和くんに教わった。
まさしくその言葉を使うにピッタリな出来事だろう。
「やっぱりここにいやがったか、親父」
「た、忠勝!?」
「ゲンさん!?」
見慣れぬ人物の登場に大和くんと宇佐見先生が飛び起きた。
「はぁ…ったく…」
そこからは彼の説教が始まった。
言葉から察するに彼は宇佐見先生の息子なのだろう。
しかし宇佐見先生は結婚していないはずだが…
「弁慶も…」
何故か矛先が弁慶に向いてしまった。
何故巻き込まれたのだろうか…
三人ともシュンっと下を向きながら黙って説教を聞いている。
時折こちらに助けてほしそうに視線を向けてくるがこちらではどうする事も出来ない。
「それから…フリードリヒ先輩もっすか…」
「俺はここで本を読んでいただけだよ忠勝くん」
入ってきた瞬間に目が合ったのだが俺がいるのが想定外だったのか少し驚きを見せていたな。
「本なら図書室でいいんじゃ?」
「あそこは清楚くんと彦一の憩いの場なのでね、邪魔は出来ないのさ、ここに俺がいたら問題あるかい?」
「いや、問題はないっすけど…意外っすね。クリスの兄貴っていうから真面目かと思ったんっすけどね」
「君の思ってる事はもっともだ。しかし俺はゆっくりとした空間が好きでね。ここは最適な空間なのさ。だが今回の件は貸し1として見逃して欲しい」
「あーまぁ…別にいいっすけど…とりあえずそういうことだからな3人は気をつけろよ。今回はノア先輩に免じてここまでにしとく」
それから彼は何故かハムを置いて部屋を去っていった。
「彼は宇佐見先生の息子なのかい?」
「ああ、忠勝って言ってな」
「失礼だが宇佐見先生は結婚していなかったと思うが?」
「養子なんだよ」
「そういうことか…余計なことを聞いてしまったな。申し訳無い」
「あー別にそういうの気にしてないから平気だよ」
「随分と立派な息子さんだな」
「だろ?オジサン自慢の息子さ。ツンデレだけどな」
また知らない日本語が出て来た。
意味を聞いてみたがイマイチ判らなかった。