真剣でクリスの兄に恋しなさい!   作:トラックオジサン

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とうとうここまできました


24話

水上体育祭から翌日の事だ。

 

「ん〜〜っ!いつも部室で食べるつまみとは違うなぁ!」

「あそこではどうしても冷めてしまっているからな」

「作り立ては違うって事か…いやぁ、これではせっかくの大吟醸がすぐになくなってしまうな」

「何だったら俺が貰った一本も開けてしまって構わないぞ?」

「いいの?」

「俺は普通の酒を飲めるから気にするな」

「いいなぁ、私も早く飲めるようになりたいよ」

「まだ我慢するんだな」

「飲めるようになったらノアに晩酌して貰わなくちゃねー」

「その時は付き合わせてもらうさ」

 

海で泳いでいる時にした約束を早速と言わんばかりに果たそうとしている。

確かに約束はしたがまさか次の日になるとは思ってもいなかった。

 

体育祭を終えた昨日の晩

風呂に入りサッパリとしていたら弁慶からメールが届いていた。

 

【明日 約束】

 

まさか次の日に来るとは思っていなかったが特に予定がある訳でも無かったので了承する事に。

 

【(*^^*)】

 

相変わらず簡潔なメールだが弁慶らしいメールだった。

冷蔵庫の中身をチェックし、食材が足りなくなりそうだなと思い次の日朝から近所のスーパーに行き食材を買い足しておいた。

何時頃に訪れるのか分からなかったが朝からという事はないだろうと思い昼食の準備を勧めていく。

多分昼は食べてこないだろうなと思っていたので弁慶の分もまとめて作っておく。

例え食べなかったとしても夜飯にすれば済むことだ。

 

ピンポーン

予想通り弁慶が昼食の時間になり家にやってきた。

 

「や、来たよ」

「予想通り昼頃に来たか、とりあえず上がってくれ」

「お邪魔しまーす」

 

客用のスリッパを履き弁慶が付いてくる。

 

「弁慶の私服を始めてみたな」

「見た感想は?」

「とても良く似合っているよ」

「そう?スカートは似合わないからね」

「そういう意味ではないのだけどね。スカートでも似合っていると思ってるよ」

「ありがと。ノアの私服も似合ってるよ」

「そうか?シンプルな服装なんだが…」

「だからいいんじゃん。ジーンズに無地の黒Tシャツでもノアが着てるとモデルみたいだよ」

「褒められると案外嬉しいもんだね。ありがとう。とりあえず適当にくつろいでもらって構わないよ。ちなみに聞くが昼飯は?」

「まだ食べてないよ。腹を減らした方がノアのつまみが美味しくなると思ったからね」

「ノンアルコールとは言え空腹はオススメしないよ…昼食作ってあるが食べるかい?」

「えっ!?作ってあんの?」

「なんとなくこうなるのではないかと思っていたからね」

「わーお…いたれりつくせりじゃん」

「飲むのがメインになるのだから簡単な物しか作っていないがな」

 

何となくで予想して作っていたが正解だったようだ。

 

「ノアのイメージからは想像出来ない昼食だね」

「そうかい?」

「金髪の優しそうな兄ちゃんが日本食を作ってるのを想像出来ないよ」

「パンとおかずの方が似合っているかな?」

「まぁ、私が勝手に思ってる外人のイメージだから気にしないで」

「朝食はそのままのイメージだよ」

「あ、松永納豆だ」

「すっかり燕の戦略にハマってしまってね。これ以外の納豆も試してみたんだが…」

「やっぱノアってイメージ通りじゃないんだね」

「これに関しては最初は嫌悪していたのだが食べていく内に美味しくなっていってね」

 

まぁ軍に入れば食べられずに行軍する事もあるし、その場にある物で食べたりする事も考えたら問題はない。

 

「「いただきます」」

 

弁慶は俺の正面に座り二人で昼食を取る。

 

「うっま!飲む為に食べてこなかったけど正解だね」

「ノンアルコールとは言え空きっ腹にはよろしくないだろう?」

「へーきへーき、その為にノアの作るツマミがあるんだからね。今日はノアも飲もうよ!」

「最初からそのつもりだったさ」

「あ、ツマミは切らさないでね」

「食材も十分にあるさ」

「さすがだね。ミスターパーフェクトの称号を与えてやろう」

 

弁慶と話しながら昼食を取り、それが終わるといよいよ弁慶が大吟醸を飲み始めた。

何故か弁慶がキッチンよりも俺の部屋がいいと言うので俺の部屋で飲む事に。

 

「さっきのキッチンのとこもだけどキレイにしてるよね?」

「男だからもっと乱雑していると思っていたのかい?」

「いんや、ノアの事だから綺麗にしてるとは思ってたさ。予想通り過ぎて拍子抜けしてるんだよ」

「それは何よりだ。イメージを崩さずに済んだみたいだね」

「とりあえず乾杯しよう!」

「何について乾杯するんだい?」

「私とノアが水上体育祭で活躍した事に、乾杯!」

「あぁ、プロージット!」

「………ぷはぁっ!うっまぁぁい!どう?」

「確かに美味いな。いつも弁慶が飲んでいる川神水より洗礼されてあるように感じるな」

「だろー?」

 

弁慶は持ってきた大吟醸を一気に飲み干してしまった。

 

「そんなハイペースで飲むつもりなのか?」

「いやいや、そんな勿体ない事はしないさ。最初の一杯だけだよ」

 

空いたグラスに大吟醸を注ぐ。

 

「そういえば九鬼の人間は何も言ってこなかったかい?」

「んー?何が?」

「俺の家に来ると伝えて何も言われなかったのか?」

「あー、一応は伝えたけど特に何も言われてないよ」

 

なるほど、弁慶には特に何も伝えていない訳か…

明らかにこの部屋を見張るような監視の目があるな。

間違いなく九鬼従者部隊だろうな。

限りなく気配は消しているつもりだろうが…

監視している視線の気配までは消せないみたいだな。

幸いと言うべきか、弁慶は気づいていないようなので言う必要はないな。

 

「それがどうしたの?」

「いや、一応男の家に行くと伝えているのであれば心配されるのではないかと思ってね」

「子供じゃあるまいしそこまで過保護じゃないさ」

「……それもそうか」

 

その後俺と弁慶は互いの子供の時の話や学園の話で盛り上がっていた。

途中、ツマミが無くなったので作ってくる事を知らせると驚かれた。

 

「なんで作り置きしてないの?」

「作り立ての方が美味しいだろ?」

「そう言われると確かに…」

「すまないが少し待っていてくれ」

 

席を立ち上がり台所へ向かうと何故か弁慶も付いてきた。

 

「何故ついてくる?」

「いや、一人で待って飲んでるのって寂しいじゃん?」

「ほんの数分で済む作業だよ?」

「ほら、ノアの料理の腕前も見てみたいし」

「対した腕前ではないよ?」

「まぁまぁいいからいいから、早くしないと餓死しちゃうよ?」

「判ったから押さないでくれ」

 

仕方無しに弁慶が見ている前でツマミを作る事になった。

作る所見て弁慶は一体何が面白いのだろうか…

弁慶の視線を感じながら調理を始める。

開始して数分

時折弁慶からおーという声が上がる。

 

「ノアの料理スキル高すぎない?」

「そうなのかい?別に特別な事は何もしていないけど…」

「こう言ったらあれだけど、女子力高いね」

「せめて男子力と言ってくれないかな?」

 

何故か弁慶は隣に立って見る。

というスタイルではなく、俺の肩に手を置き更に肩口から覗き込むスタイルを取っている。

女性にしては背が高い弁慶ではあるがさすがに俺との身長差はそれなりにあるので見づらくはないのだろうか?

肩に手を置くというより半分ぐらい抱きつかれているような状況だ。

俺が食材を取ったりする時は素直にどいてくれるが鍋や包丁に向かっている時は肩口から顔を覗かせてくる。

たまに弁慶の吐息にドキッとしてしまう。

多分顔は赤くなっているだろうが幸いにも酒を飲んでいるので誤魔化せるだろう。

 

結局つまみを5品ほど作り部屋に戻った。

決して弁慶にしがみつかれる時間を長くした訳ではない。

 

「いやー…ノアって嫁さんとか居なくてもやっていけちゃいそうだね?」

「料理ができるだけでそれはどうだろうね」

「結婚したいとか思うの?」

 

まさか弁慶とその話題になるとは…

 

「そうだねぇ…結婚はしたいと思ってるよ」

「へぇ…軍人さんだと結婚とか興味なさそうに見えるけどね」

「それは偏見だね。まぁ結婚が遅い人間が多いのは事実だけどね」

「子供は?」

「子供も欲しいね、っと言っても軍人で跡継ぎって意味ではないから勘違いしないように!」

「大丈夫だよ。そんな事思ってないから」

「そういう弁慶はどうなんだい?」

「私?勿論結婚したいし子供も欲しいよ」

「そうか…面倒くさがりでも子供ができたら変わりそうだな」

「どうだろうね。基本私は私だからね。何も変わらないさ」

 

その後も弁慶と飲みながら語り合い数時間が経過した。

弁慶は川神水だけでそれなりに酔ってきている。

 

「そろそろ飲むのは止めておいた方がいいんじゃないかい?」

「えー…まだまだ飲めるよぉ?」

「雰囲気だけとはいえ飲み過ぎも良くないからね」

「もうちょっと!もうちょっとだけ飲ませて!」

「判った、判ったからそんなに引っ付くな」

「なんでよー?私がくっついてたら迷惑なのー?」

「そうじゃない…色々と当たっているし…近すぎるんだよ」

「なにぃ?照れてんのぉ?かわいい奴め!」

 

機嫌を良くした弁慶が俺の足の間に座り体をこちらに預けてくる。

かなり近くなった弁慶から良い匂いがしてくる。

やはり英雄のクローンとはいえ、女なのだと強く意識させられてしまう。

 

「ノアー…頭!」

「はいはい」

 

頭を撫でろという事だろうと弁慶の頭を撫でる。

 

「ふっふーん♪ノアの手は気持ちいいなぁ」

「お気に召したようで何よりだよ」

「ほーら、お酌も!」

「まったく、俺の腕は2本しかないのだよ?」

「いいから、いいから〜」

 

空いたグラスに大吟醸を注ぐとそれをゆっくりと弁慶が飲む。

 

「ぷはぁ…あー…ノアはさ、妹と一緒に留学期間が終わったらドイツに帰るんだよね?」

「そうだな…」

「帰ったら何すんの?」

「今までと変わりないさ、祖国を守る為に軍務に励むだけだよ」

「そっかぁ…先の事なのにノアがいなくなるって考えると寂しくなるなぁ」

「そうか…そう思って貰えるとは、嬉しい限りだな」

「ノアのツマミが食べられなくなるのはねぇ…」

「おや?ツマミだけの存在だったのかな?」

「今のはちょっと間違えただけさ」

 

それからはしばし沈黙の時間が流れた。

 

弁慶の頭を撫でながら空いた手で黒ビールを流し込む。

弁慶はちびちびと川神水を飲んでいる。

黒ビールをテーブルに置くと弁慶の手と俺の手がぶつかってしまった。

お互いに無言ではあるが、通じ合っているのか空いた手を繋ぎ合わせた。

弁慶がこちらを振り向くことはない。

 

「あのさー…」

「どうした?」

「ノアは…ドイツに帰りたいの?」

「そうだなぁ…どちらとも言えないな」

「何で?」

「こちらに残りたい理由ができたからな」

「理由って?」

「好きな人が出来た。ドイツに連れて帰りたいと思う反面こちらで一緒に過ごしたいとも思ってる」

「ノアの好きな子か…どんな子?」

「面倒くさがり屋で甘えたがりな人だな」

「他には?」

「常に酔った雰囲気で俺にツマミを作れと言ってくる人だ」

「へぇ…そんな人いるんだ…」

「ああ…」

「私も…好きな人いるんだよね」

「弁慶の好きな人か…興味あるな」

「年上でね…優しい人なんだ」

「それで?」

「私の頭を優しく撫でてくれて…ツマミを作ってくれる人かな…」

「そんな奴がいるのだね…」

「うん、そもそも私は年上は好みじゃなかったんだけどね…何故かその人には甘えちゃってね…膝枕してもらうと優しく髪を撫でてくれるんだ。その瞬間が堪らないのさ」

「弁慶…」

「何?」

「好きだ」

「知ってる…私もノアの事好きだし」

「そうか…」

「ふふ…」

 

どうしようか…物凄く恥ずかしくて弁慶を見ることができない。

 

「ノア」

「どうした?」

「好き」

「…俺もだよ」

「あー!もう!恥ずかしいな!」

「それは…俺も同じだよ」

「私達って両思いだったんだね」

「そのようだね」

「付き合っちゃう?」

「俺はドイツに帰ってしまう可能性がかなり高いけどいいのか?」

「でも何か考えてくれてるんでしょ?」

「一応考えているが…」

「だったらその時が来るまでは一緒に居ればいいさ」

「判ったよ。何かしら対策を考えておくとするよ」

 

そう言っていつの間にかこちらを振り向いていた弁慶が正面から抱きついてきた。

弁慶に応えるように弁慶の背中に手を回し弁慶を抱きしめ片手で頭を撫でる。

 

 

互いに抱き合ってからそれなりに時間が経過していた。いつまでもこのまま抱きしめていたいがさすがにそろそろ弁慶を家に帰さないといけないな。

 

「今日は終わりにしよう」

「えー?ノアは私と一緒に居たくないの?」

 

もちろんそんな訳はない。

このままずっと一緒に居たいと思っているが…

 

「今日は遊んでくるとしか言ってないんだろ?留学期間は決まっているがまだ時間はあるさ」

「ま、あんまり遅くなって義経を心配させちゃ悪いしね…今日の所は帰るとするよ」

「ああ、家まで送ろう」

「エスコート頼むよ。私の彼氏さん」

 

玄関で弁慶が靴を履いている姿を後ろで待っているとその後ろ姿を異様に愛おしく感じてしまう。

 

「弁慶」

「ん?何?」

 

靴を履き立ち上がった弁慶を正面から抱きしめる。

咄嗟の行動だったが弁慶も応えるように抱き返してくれた。

 

「ん…」

 

お互いに顔を見合わせると無言のまま顔を近づけ唇を重ねた。

 

「どしたの?いきなりでびっくりしちゃたよ」

「いや…どうにも自分が思っている以上に弁慶が愛おしく感じているようで…ついね」

「いやー、愛されちゃってるなー」

「すまない。女性と付き合うのは初めてでどうすればいいのか…」

「ふふっ、そんなに気にしなくていいんじゃない?」

「そんなものか?」

「そんなもんだよ。って言っても私も男と付き合うのは初めてだけどね」

「互いに初めてということか…」

「そ、だから気にせずに思った通りに行動していいんじゃない?さっきのだってビックリはしたけど嬉しかったし」

「これから沢山迷惑かけることになると思うがよろしく頼む。宣言しておくと一生手放す気はないよ?」

「もうプロポーズされちゃたよ…でも悪くないね。私もノアを手放す気はないからね」

「…そう言われると気恥ずかしくなるね…話し込んじゃうみたいだからそろそろ行こうか」

「だね」

 

家から二人一緒に出ると弁慶が腕を組んで手を繋いでくる。

今まで弁慶に近づかれると気恥ずかしさがあったが今はそれがない。

多分監視していた従者は驚いてるんじゃないだろうか?

 

「そういえば酔いはもう大丈夫かい?」

「さっきの出来事で酔いもすっかり冷めちゃったよ」

「なら義経くんには怒られなくて済みそうだね」

「なぁに、例え酔っていても今日の出来事を伝えたらそれどころじゃなくなるさ」

 

それからはゆっくりとしたペースで九鬼ビルへと向かっていった。

道中は何事もなく弁慶と存分に話しながら九鬼ビル前に到着しそうになった。

 

「あーあ、もう着いちゃったよ」

「学園でもまた会えるじゃないか」

「何でノアは2年じゃないのさ」

「妹が2年だから兄は3年ということじゃないかな?」

「マルギッテは2年なのに?」

「俺に言われても…ん?弁慶、どうやら出迎えのようだよ」

「んー?誰だろう?」

 

こんな時間に警備以外で従者がいるのはどう考えても弁慶を待っていたとしか思えない。

しかも待っているのが…

 

「やあ、わざわざ弁慶の出迎えかい?ヒューム卿」

 

従者部隊最強の男の出迎えだった。

これは一波乱ありそうだな…




一つの目標であった弁慶と付き合う
という所まで毎日欠かさず書くことができました。
まだまだ続きますがとりあえずは目標達成ということで…
こんなん弁慶じゃねぇ!
弁慶はこんな事言わねぇ!
などあるかもしれませんが生暖かい目で見守ってくだされば…
原作とは違うルートですがこれからも原作ルートを参考に進みつつオリジナルストーリーを交えていきたいと思いますので宜しくお願い致します。
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