真剣でクリスの兄に恋しなさい! 作:トラックオジサン
ありがとうございます。
「わざわざ弁慶のお出迎えですか?ヒューム卿と桐山さん」
九鬼ビルの前にはヒューム卿と桐山さんが待ち構えていた。
弁慶の迎えにしては随分と豪勢な出迎えだな。
「何?迎え何ていらないのに…別に門限越えてないでしょ?」
二人の登場に弁慶は怒っているな。
別れ際に邪魔されたのが気に食わなかったかな?
「ええ、そこはキッチリと守られておりますので」
「そんな事でわざわざ出向いたりしない。お前達に聞きたいことがある」
ああ、もう伝わったのか…
九鬼従者は仕事が早いな。
「俺達二人の事…恋仲になったかどうかならその通りですよ」
「え?言っちゃうの?」
驚きながらこちらを向く弁慶
「大方監視していた従者から連絡が入ったんだろうね」
「え?見られてたの?」
やっぱり監視には気づいてなかったか。
「部屋の中までは見ていないだろうけどね。外から部屋を見ている感じはしていたよ。隠密性に長けた従者だったんじゃないかな?」
「さすがはドイツが誇る軍神と言った所か」
「ええ、そのとおりでございます。家から出てこられたお二人がそれはそれは親密そうにしていると報告がありましたので、御本人の口から事実を教えていただきたくここでお待ちさせていただきました」
「なら答えは聞いたよね?私とノアは恋人になった。それで終わりでしょ?」
「勿論答えを聞けて満足しております。ですが…」
「それだけで俺達が出てくると思うか?」
それ以外にもあるのか…となると…
「俺の覚悟の問題かい?それなら弁慶が嫌だと言うまでは一生をかけて幸せにする予定なのですが?」
「ノア…」
「おやおや、それはそれは結構な覚悟で御座いますね。ですが半分当たりで半分外れでございます」
「英雄のクローンとはいえ武蔵坊弁慶だぞ?生半可な奴と恋仲にさせるわけ無いだろう」
そうなると何が問題なんだ?
「仮にも九鬼主導で行われている武士道プランの中心人物だぞ?おいそれと恋仲になるのを許されると思っているのか?」
「そういう事ですので恋仲になった男女を引き裂くのは不本意ではありますが弁慶を諦めてくださいませんか?」
「なんだいそれは?私は私であって誰と付き合うかまで決められる覚えはないんだけど?」
「お前の意見は聞いていない」
「それは九鬼の総意ということかい?」
「ええ、私はこう見えても武士道プランの責任者を任せられておりますので」
「という事はミス・マープルも了承していると?」
「そうなりますね。何もタダで別れろとは言いません。こちらで弁慶の代わりになる女性を紹介させていただきます」
「九鬼からの紹介だ。人間性も保証してやる」
チラっと弁慶を見ると不安そうにこちらを見ている。
そんな弁慶に優しい笑みを浮かべ二人に対峙する。
「話は判りました」
「ノアっ!?」
前に出そうになる弁慶を腕で制する。
まだ話は終わっていない。
「さすがドイツが誇る軍神ですね。話が早くて助かります」
「何か勘違いしていませんか?」
「はいっ?」
「そちらの言い分が判りましたと返事しただけで弁慶と別れる事に了承はしていませんが?」
「ほう?こちらに逆らうと言う事か?」
「逆らうも何も弁慶の意志をまだ確認していないと言っても先程反論していたが…弁慶はどうしたい?」
「九鬼には育ててもらった恩はあるよ。けど英雄のクローンだけど私は私なんだ。別れないよ」
「という事らしいが…どうする?」
「ふんっ、話して判らんとはな。少し痛い目を見ないと分からないようだな」
「不本意ではありますが仕方ありませんね」
眼前の二人が戦闘体制となる。
「っ!来るよ?」
「こちらとしても話し合いで終われば良かったんだがね…仕方ないか」
「どうするの?」
「まずはやるしかないみたいだね。あの二人を倒さなければ話も出来無さそうだよ」
「みたいだね。はぁ…これだから頭の固い老人は…」
「ははっ、まぁ大事に思われてるという事だよ。弁慶と恋仲になった時に何かしら起こる事は覚悟していたから問題はないさ。当日とは思わなかったけどね」
「何か悪いね…私が桐山をやろうか?」
「いや、弁慶は後ろで見ていてくれればいいよ」
「大丈夫なの?ヒュームだけでもきついんじゃ…桐山もやるよ?」
「確かに苦戦はするだろうね。まぁ意地みたいなものさ。弁慶は彼氏のカッコいい姿を見たくないかい?」
「ふふっ、是非彼女にカッコいい所を見せておくれよ」
弁慶を後ろに下がらせ前に出る。
「ほぉ?一人でやるつもりか?」
「ええ、そのつもりですよ」
「よろしいのですか?」
「構いませんよ。彼女に良い所見せられる舞台ですから」
「その思い上がり、ポッキリとへし折れるぞ?」
「それはどうでしょうね?案外そちらの自信が折れるかもしれませんよ?」
「赤子、貴様の後ろにドイツ軍がいるからと強気になってないか?」
「何故ここで軍が出てくるんでしょうか?俺個人の問題ですよ?」
「ほう?後ろに九鬼本隊がいるとしてもか?まあ、俺一人で十分だがな」
「さっきから聞いてれば…まるで俺がドイツ軍がいるから強気に出ていると思ってるようですね?ははっ…舐められたもんだ…」
「軍神と言われてるようだが俺から見ればまだまだ赤子よ」
「また赤子って…はぁ…あんまり俺の事を舐めるなよ?」
ドイツ軍を盾にしている、赤子呼ばわり…怒りが込み上げてしまうな。
ノアは戦闘態勢となった事を示すように闘気を膨れ上がらせる。
「本気みたいだな赤子よ」
「いい加減赤子呼ばわりは止めとけよ零番。負けたら恥ずかしいぞ?」
「くっくっく…いいだろう!桐山、手を出すなよ」
「判りました。というよりそろそろ時間のようですね」
「時間?」
何を言ってるんだ?
「よーし!お前らそこまでだ」
パンっパンっと軽く手を叩く音と共に男の声が響いた。
声の主が誰か判った途端に体の力が抜けてしまった。
きっとこの人が仕組んだんだと大まかに理解した。
「はぁ…この茶番を仕組んだのは貴方ですか…帝さん」
「おいおい…茶番なんて言うなよ。試練だよ、愛の試練」
「言ってて恥ずかしくないですか?」
「全然?」
「なになに?どういうこと?」
まだ状況が把握できていない弁慶は何が起こったのか分からないようだ。
「この帝さんが俺と弁慶が恋仲になったのを知って面白そうだからって理由で茶番を演じさせられたって訳さ」
「なんでそんな事すんの?」
「その方が面白いだろ?それにソイツの覚悟も見れた。弁慶に取ってはいい事しかないじゃん」
「付き合わされたこっちの身になってくださいよ…」
「ま、最初から俺は反対してなかったんだがな。ご老人達が反対しててな。じゃあ覚悟試せばいいんじゃね?ってなった訳よ」
「大方、ヒューム卿とミス・マープルあたりでしょう?クラウディオ卿は賛成よりの中立でしょうし」
「正解だ。さすが軍神だな」
「えっとつまり…どゆこと?」
「俺と弁慶が付き合う事に特に問題ないってことさ」
勘弁して欲しいもんだ。
「しかし問題もありますよ?フリードリヒ様が弁慶と別れた場合など…」
「心配せずともさっき言ったように一生をかけて幸せにするさ」
「まーた言いやがったよ。あっついねぇ」
「では今後は口出ししないという事でよろしいですね?」
「帝様が決められた事だ。俺個人でどうこうなどない」
「はぁ…まったく趣味が悪いよ…」
「お疲れ弁慶…」
これで問題はなくなった訳だ。
心置きなく弁慶と恋仲である事が九鬼にも認められたと言う事だしね。
「ま、お前等と次に会うのは結婚式とかだろうな」
「また先の話を…」
「案外近いんじゃねぇかな?俺の勘って当たるし。あー、後はあれだ、お前ドイツに帰ったらどうすんの?」
その事についてはもちろん考えているが…
「考えはありますけど今はまだ言えませんね。不確定なので確定したら報告しますよ」
「おー!そうしてくれ」
「帝様、そろそろ時間かと」
「っといけねぇ。もうそんな時間かよ…つーわけで悪かったなノア。今度俺からの二人に何か詫びの品送ってやるからよ」
「こういうのはこれっきりにして下さいね?」
「さぁな。どうなるか何て俺にも分かんねぇし」
もうやらないと言ってくれればいいだけなのに…
困った人だ。
「ま、今の所は何もしねぇから安心してくれ。今日は老人達は退散すっからよ。行くぞお前達」
その場にいた従者達全員と共にビルの中へと消えていく帝さん。
「はぁ…心臓に悪いな…」
「何かごめんね?」
「弁慶が気にすることはないよ」
「でもノアのかっくいーとこ見れたから感謝しないとね」
「そうかい?」
「だってヒュームとやり合おうとしてたでしょ?私の為に」
「そうだね」
「益々惚れちゃったよ」
「結果オーライというやつかな…言った事に嘘はないんだけどね」
「ありがとノア。今日は帰るよ。また明日学校でね」
「ああ、最後に色々あって疲れただろうからゆっくり休むんだよ」
「おやすみ」
「ああ、おやすみ…んっ…」
最後に軽く口づけをし弁慶はビルの中へと入っていった。
今にして思えば零番の挑発に乗り過ぎたな…
俺もまだまだだな…
そういえば父さんに報告どうしよう…
そんな事を考えながら家路へと辿り着くのであった。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
非常に助かっております。
引き続き拙い作品ではありますが宜しくお願い致します。