真剣でクリスの兄に恋しなさい! 作:トラックオジサン
弁慶との楽しいデートも終わりお土産を渡しに島津寮へと訪れた弁慶とノア。
「夜に済まないね」
「いえ!ノア兄様に来ていただけるなら何時だって構いません!」
「いや、クリスにじゃなくて他の皆に言ってるんだからね?」
「まだ常識的な時間内ですよノア先輩」
「いや、あまり遅くに来るのは良くないだろ?本当に急に来て悪かったね」
「フリードリヒ先輩。お茶をどうぞ」
「すまないね由紀恵くん」
フリードリヒの目の前にお茶が置かれその横に更にお茶が置かれる。
「ん、あんがとね」
勿論ノアと一緒に訪ねてきた弁慶にもお茶が出されるのであったが…
「何でノア兄様と弁慶が一緒に来るのですか?」
クリスにはノアと弁慶が一緒に来た理由が分からなかった。
事情を知っている大和は特に何も言わず
察しの良い京は直ぐに状況を理解し
クリス同様理由が分かっていない由紀恵
「忠勝くんは仕事か…翔一くんは?」
「キャップなら紅芋アイスが食べたいって沖縄行っちゃいましたね」
「それは何とも…行動力あるのはいいけど明日の学校に間に合うのかい?」
「どうなんでしょうね…気分屋ですから」
学生の本分は勉強では?と疑問に思う。
それでも2年に進級しているあたり問題ないのだろうなと勝手に結論づけた。
「それでノア先輩の目的は?」
「おっと、そうだったね。まずは大和くんから頂いた情報で今日は楽しめたからね。そのお礼に七浜で買ってきたお土産を渡そうと思ってね」
中華街で買ってきたお土産を大和に渡す。
弁慶とのデート場所は大和にお勧めしてもらった場所である。
「わざわざお土産なんて…」
「感謝の気持ちさ」
「…ありがとうございます。って多くないですか?」
「大和くん個人の分と寮の皆で分ける分だよ」
「おお!七浜の中華まんだ!ノア兄様!食べてもいいですか?」
「夜ご飯食べたんだよね?明日以降にしておきなさい」
「はーい…」
クリスの行動を咎めるノアを弁慶は微笑ましく見ていた。
「食べる物ではないがクリスには個人的にお土産があるからね」
「えっ!?本当ですか!?なんだろう…」
ノアから袋を渡されたクリスは即座に袋を開封し中を確認する。
「こ、これは!」
「七浜中華街限定のクマのストラップだよ」
「おいおい、オラとキャラ被っちまうだろー!そういうのは困るぜフリードリヒboy!」
「こら松風!いけませんよ?」
「心配しなくともそのストラップに神は宿っていないから安心してくれ」
「ふぅー、それならいいんだぜ?チャイナ服着てるクマがオラと同列だったらマスコットの地位が危なかったぜ」
クリスへの個人的な土産を忘れないあたりは流石と言うべきだろうか。
やはりクリスには多少なりとも甘くなってしまうようだ。
「うーっす。ノア先輩きてるんだって…って弁慶!?」
そこに現れたの島津岳人。
先程寮に入る前に寮母である麗子さんにもお土産を渡していた。
気を使わなくていいのにと言われてしまうがクリスが世話になっているお礼として渡していた。
それを聞いた岳人は寮の方へと訪れたのだが、弁慶がいた事に驚きを隠せないでいた。
「なんでノア先輩と弁慶が一緒に…まさか!俺様の溢れ出るフェロモンに弁慶が落ちたのか!?」
「それノア先輩関係ないじゃん…」
「クリスに会いに来たらたまたま合流したとかかもしれねーだろ!」
「輪廻転生果たしてもそれはないから安心してくれ」
弁慶にアッサリと否定されてしまう岳人
「っとあまり長くなってしまうのもいかんな。クリス話があるから聞いてほしい」
「はい?何でしょうか?」
「…私達もいていいの?」
「別に気にしないで構わないよ。その内知れる事が早くなるか遅くなるかだけの話だからね」
岳人、京、由紀恵は興味津々にノアの言葉を待ち
クリスは真剣な眼差しでノアを見つめている。
「そんなに大した事では…いや、クリスには大した事になるかな」
「っ!なんでしょうか?」
「そんな身構えなくていいよ?ただ弁慶と付き合う事になったという報告だけなのだから」
「ああ、なるほど。ノア兄様が弁慶と付き合う事になったという話ですか…ん?ノア兄様?」
「どうしたんだい?」
「自分の耳がおかしくなったようです。ノア兄様と弁慶が付き合うと…」
「うん。そう言ったからね」
「…ああ!突き合いですか?」
自分の手をパンッと叩き納得したように見せているがまったく意味合いが違っていた。
「クリス…それは無茶があるよ…」
「しかし京…ノア兄様と弁慶がツキアウというのはそれぐらいしか…」
「ノア先輩?もっと直接的に言ったほうがいいですよ?」
「クリス、ドイツ語で話すかい?その方が伝わるだろ?」
「あ、いえ、そのー…」
「俺と弁慶は恋人同士になったんだよ」
察しの悪いクリスに直接的に分かりやすく恋人と伝える事になった。
「…………」
しばし無言の空気が流れるが静寂を破ったのは他の人であった。
「嘘だ…弁慶とノア先輩が付き合ってるなんて…」
ノアの発言を聞き何故かショックを受けている岳人
なぜ彼がショックを受けているのだろうか?
「大和くん?何で岳人くんは俺と弁慶が恋人になったら落ち込むんだい?」
「気にしないでいいですよ」
「弁慶はパワー系だろ!俺様とお似合いだと思うじゃねぇか!」
「や、私はどっちかといえばスピード系なんで」
「むしろイケると思ってた岳人がオカシイだけだし…私はお二人を祝福しまーす」
以外にも二人がなの恋人を祝福してくれたのは京であった。
彼女は他人に興味がなく自分の仲間がいればそれでいいと思っているタイプだけに他人を祝うのが珍しい。
「ありがとう京くん」
「お二人はとてもとてもお似合いなので未来永劫一緒にいるといいですよ」
「京が他人を祝うとか、明日は槍でも降るんじゃねぇの?」
「ガクトに彼女が出来る確率よりは高いよ」
「何でそこで俺様を出すんだよ!」
(多分京は俺と弁慶が付き合う事が無くなったから祝ってるんだろうな…)
大和の考えるように京は懸念していた事柄が一つ減らしてくれた先輩を祝っている。
決して二人が付き合ったから祝っているわけではない。
それでも少しは前進したかな?と大和は思っていた。
「クリス?ボーッとしてるようだが大丈夫かい?」
「は、はい!」
「あまり喜んではくれていないみたいだね」
「いえっ!そんなことは!」
「さすがに顔を見れば判るよ。何か気になる事があるのならば言ってご覧?」
「ノア兄様が不真面目な弁慶と付き合うのが意外です…」
「あー、なんとな~く私も判るかなぁ。外から見たら意外かもね」
クリスの言葉を肯定したのは意外にも弁慶であった。
「ふむ…クリス?俺は休日にしている事はなんだか判るよね?」
「よく庭で読書をしていましたね」
「そうだね。紅茶を飲みながら本を読む。のんびりと過ごすのが好きなのは知ってるよね?」
「はいっ!」
「庭に紅茶飲んで読書って!まんまヨーロッパの金持ちっぽい感じじゃねぇか!」
「ガクト黙ってようね?」
「のんびりとした時間を弁慶と一緒に過ごすのが楽しいのさ」
「ま、ダラーッとしてるだけだけどね」
「こればっかりは個人の感性だから教えるのが難しいなぁ…とにかく俺と弁慶は好きあって恋人になったというのは事実だよ」
「うーん…ノア兄様の話は判りましたが…」
未だに兄と弁慶が恋人になったことが信じられないクリスは認められずにいた。
クリスにとって兄は家族であり目標でもある。
常に自分の先を行く兄をクリスは尊敬し誇っている。
国の為に軍で活躍する兄を“真面目”と捉えている。
そんな真面目な兄が面倒くさがり屋な弁慶と恋人になったなどクリスから見れば考えられない話だ。
「まだ認められないかい?」
「うー…ごめんなさいノア兄様…」
こればかりはクリスの性格だから仕方がないと分かっているが家族であるクリスには祝福してほしいと思っている。
ここらへんに関しては父親も母親もノアが決めた人物ならば反対することはないだろう。
勿論人間性など問題がないか確かめられたりするだろうがその程度の話である。
「無理にとは言わないよ?それはクリスの感性だからね。ただ…やっぱり妹であるクリスには祝福して欲しかったかな」
残念そうにするノアを見てクリスはシュンっと俯向いてしまう。
大好きな兄にそんな顔をさせたくないクリスではあるが自分の気持ちに嘘はつけない。
「要はさ、私が認められればいいんだろ?簡単な話じゃないか」
「とは言うが弁慶の性格が変わる訳ではないだろう?」
「そりゃあね、私は私だからね。ってことで一つ提案なんだけど私と勝負しない?」
この提案には弁慶以外の全員が驚いた。
「そんなに驚く事?」
「まぁ…弁慶から勝負を挑むとは思わなかったからね」
「うん、実際弁慶は決闘も逃げてるわけだし」
「あーまぁ面倒くさい事に変わりはないんだけどね…ノアの事好きなのは確かだし、出来れば仲良くしたいじゃん?これから会う機会も増えるんだし」
「あれ?さりげなく惚気けてねぇかこれ?」
「うん…しょーもない…」
「ノアの為ってのもあるけどノアの家族に認められたいっていうのもあるしねぇ」
弁慶の考えを聞き少し考えるクリスは直ぐに結論を出した。
「判った!では弁慶勝負しようじゃないか!」
「うん。それで何で勝負する?」
「さすがに長くやるのは簡便して欲しいね」
「ならば今度行われるテストで勝負というのはどうだろう?」
ノアの提案に反論したのはクリスであった。
「えっ?戦いではないのですか!?」
「この前水上体育祭で負けていたよね?」
「うっ…あれは素手の勝負でして…レイピアさえあれば!」
「確かにクリスはレイピアが使えれば素手より強くはなるけど…弁慶は学年3位を目指すほど勉強しているのだよ?弁慶が不真面目だと思うのであれば勉強で弁慶に勝てる事は容易ではないかい?」
「それは…そうかもしれませんが…」
「なら決まりだね?言っとくけど戦いじゃ今のクリスでは敵わないよ?もっと強くならなくてはね。その点テストなら追いつける可能性はあるよね?」
「うー…判りました!私も騎士です!その勝負受けて立ちます!」
クリスと弁慶の勝負はテストと決まった。
「弁慶!勝負である以上、自分は手加減しないぞっ!例えノア兄様の恋人であったとしてもだ!」
「構わないよ。やるからには全力で来てくれないとね」
真剣な眼差しで弁慶を見るクリスに対し弁慶は不敵な笑みを浮かべていた。
「さて…ちょっと違う形だけど一件落着かな?そろそろ時間も遅くなってきたから帰らせてもらうよ。行こうか弁慶」
ノアは立ち上がるとスッと弁慶に向けて手を差し出す。
差し出された手を掴み弁慶はゆっくりと立ち上がる。
「なんで帰る間際までイチャつくんだよ!」
「いや、あれはノア兄様には普通の事だぞ?自分もよくやってもらってたからな!」
玄関に向かおうとするノアと弁慶だが何か思い出したようにノアが立ち止まった。
「言うのを忘れる所だったよ。クリス、父さんと母さんにはまだこの事を言わないでくれ」
「どうしてですか?」
「……サプライズだよ。驚かせたいからね。それまでは内緒にしていてくれ」
「判りました!マルさんは?」
「マルギッテには伝えておくが必要以上にこの事について話さないようにね」
「判りましたっ!」
するとノアはクリスへと近づきクリスの体を軽く抱きしめ頭を撫でる。
「今回は立場的に応援してあげられないけどクリスならやれば出来るよ。頑張ってね」
「…っはい!ノア兄様の期待は裏切りません!」
二人はお互いの頬に軽く口づけし離れると今度こそ玄関へと向かった。
「それじゃ遅くまですまなかったね。また学校で会おう」
「んじゃねー」
ノアと弁慶は二人揃って島津寮を後にした。
「よーし!弁慶に勝つぞー!大和!京!自分に勉強を教えてくれ!」
「わーお…凄いやる気だね…でもテストまでまだ時間あるよ?」
「相手は強敵だ!やれる事はやらないとな!ノア兄様の期待にも応えなければ!」
クリスの異様なまでのやる気に若干引き気味である他面々。
「これはノア先輩にやられたな…」
「弁慶が勝負って言い出したのが不意打ちだよね…見事にクリスに勉強させる気にしてるよ」
「これは本気でテスト対策考えなくちゃな」
「頑張ってる大和も素敵だけど今回は協力するよ。結婚して?」
「お友達で」
「俺様も手を差し出したり抱きしめたりしたらモテるのかなぁ…」
「あれはノア先輩がやるから絵になるんだよ?ガクトがやるとただのセクハラになるよ」
「弁慶は恋人でクリスは妹だからね…それに自然にできるのと意識してやるんじゃ全然違うよ」
「くそー!やっぱ弁慶と付き合うなんて許せねぇ!クリスを応援するっきゃねぇな!」
「ま、結果は見えちゃってるけどね…」
「上手く乗っかってくれたね」
「まさかああまで上手くいくとはね…我が妹ながら将来が心配だよ…」
「お兄ちゃんは悩みが尽きないねぇ」
「しかし驚いたよ。いきなり勝負なんて言い出すからね」
「私もらしくないのは判ってるけどさ…好きな人の家族には認められたいし仲良くしたいじゃないか」
「素晴らしい彼女を持てて俺は幸せだよ」
「そんな彼女にご褒美が欲しいなぁ」
「判ったよ。何でも言う事を一つだけ聞いてあげるよ」
「ふふっ、何にしようかなー!」
ちなみに弁慶とクリスの勝負は弁慶の圧勝で決着がついてしまった。
もしかしたら次の話は月曜日に投稿できないかもしれません。
話自体は何を書こうか決まってるのですが色々と改変する予定なのでその構成を練ります。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
感想、評価お待ちしております。