真剣でクリスの兄に恋しなさい!   作:トラックオジサン

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河原合戦はこの話で終わります。
何故か書いてるうちに妄想が爆発し1万字ギリギリいかないぐらいまで増えました…


32話

「すみませんね、お待たせしちゃって」

「構わねぇよ。アイツはお前さんのこれか?」

 

鍋島は親指をグッと立てる。

古臭い表現だなぁと弁慶は思ったが特にツッコミはしない。

 

「ええまぁそんなとこですね」

「いいねぇ!わけぇのは勉強に戦いに恋と青春しまくってなんぼだな」

「鍋島さんも若い時はそんな感じで?」

「俺は戦いばっかだったな、続きは病院のベッドの上で聞かせてやるよ」

「一歩間違えるとセクハラ発言ですね、そういう意味じゃないだろうけど…ベッドの上に寝てるのは鍋島さんの方だったりして」

「いいねぇ!気に入った!今度アイツと一緒に九州こいよ!美味いもん食わしてやるぜ」

 

「そろそろいいかー?」

「いいよーぱぱっと始めちゃいますか」

「よーし!いくぞー!…ファイっ!」

 

ステイシーから開始の合図があると弁慶がすぐに動き出す。

錫杖を槍の様に構え鍋島の胸元めがけ鋭い突きを放つ。

 

鍋島は弁慶の攻撃を腕でガードする。

 

「いい攻撃だが俺には届かねぇな。お返しだぜ!」

 

拳を振りかぶり正拳突きを弁慶に向けて放つも弁慶はバックステップで回避する。

鍋島の正拳突きは空を切っても拳の形をした気の塊が弁慶に直撃し吹き飛ばされてしまう。

 

「くぅ…!」

「そら!まだまだいくぜぇ!」

 

追撃をかけるべく鍋島は弁慶に迫り拳の連打を放つ。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

それに対抗すべく弁慶も錫紵の連打で負けじと反撃するが、鍋島の放つ拳の速度の方が上で競り負けてしまう。

 

ジリ貧の弁慶はバックステップで距離を取ると鍋島は地面を蹴り大地を揺らす。

この技は相手をよろめかす技だと察知した弁慶は上空へ飛んで逃げる。

 

「これでも…くらえっ!」

 

上空から錫杖を鍋島へと投げつける。

速度威力も十分だが鍋島には通じない。

 

「わりぃな。俺は倍返しが得意なんだよ!そーらっ!倍返しだ!」

 

弁慶の投げつけた錫杖は鍋島によって威力が増し弁慶の元へ戻る。

 

「倍返し返し!」

 

弁慶は更に返って来た錫杖に力を乗せ鍋島へと投げ返す。

これ以上ないほどと言える威力となって鍋島に向かっていく錫杖。

 

「倍返し返し返し!」

 

見ていた者は目を疑う。

弁慶の返した錫杖を更に倍にして投げ返す鍋島の人間離れした技は威力もスピードも最初に投げた時とは比較にならない程だった。

 

「倍返しがえ…ムリっ!」

 

更に返そうと弁慶が構えるが錫杖を捉えることができずに直撃を受け体制を崩しながら地面に落下してしまう。

弁慶は直ぐに起き上がり接近戦を仕掛ける。

 

「まだまだあめぇよ!川神流改め俺流一本背負い!」

 

弁慶の腕を掴み地面へと投げつける。

 

「うぐっ!……っっうぅぅ…」

 

鍋島と弁慶の実力差に周りの空気も弁慶は良く頑張ったっと称えるような空気になってしまう。

 

「やっぱり厳しかったか…」

 

大和も諦めた雰囲気になってしまう。

そんな空気を一切気にしていないのはノア一人であった。

 

「大和くんは終わったと思うのかい?」

「あ、いや、そのぉ…あれは無理ですよ…姐さんじゃないと勝てないですよ…」

「確かに百代であれば勝てる確率は上がるだろうね。しかしだよ?弁慶が鍋島さんに劣っているとは思えないんだよね」

「あの状況でもですか?」

「弁慶の目はまだ死んでいないよ。そうだろ?弁慶」

 

ノアの声に反応するように地面からヨロヨロと起き上がる弁慶。

 

「はぁ…はぁ…きついね…正直ここまで差があると思わなかったよ…」

「いやいや、俺相手にここまでやれたんなら誇っていいぜ?お前さんの方が潜在能力は上だろうがな」

「はは…そうかもね…でもね、大好きな人の前で負ける訳には行かないんだよ…だからね…使わせてもらうよ…」

「あん?」

 

立ち上がった弁慶から少しずつ闘気が溢れてくる。

 

「これが、我が主に捧ぐ技…いくぞ!」

 

「金 剛 纏 身 !」

 

この瞬間、川神にいる強者達は一斉に河原の方へと視線を向けた。

莫大に膨れ上がった気を感じたのだった。

 

「お、ぉい…嵐のような暴威…お前の物なのか!?」

 

周りで見物していたクリス達も弁慶の気の大きさに驚きを隠せないでいた。

 

「これが弁慶の本気なのか…!」

「凄いね…マスタークラスまで力が引き上げられてるよ…」

「私にも少し感じることはできるが…そこまで凄いのかね?」

「あれは弁慶ちゃんの必殺技だよ。衣川の合戦で弁慶主従の最後の場面を再現する技…弁慶の仁王立ちの名前の通り仁王の力が宿って戦ったと言われている技を再現したもので技名は金剛纏身」

「それは何とも凄そうな技だな」

「そうだね、相手が強ければ強いほど…状況が絶望的であればあるほど弁慶ちゃんの能力が跳ね上がるんだよ。3分間って限定的だけど…弁慶ちゃんは今この場にいる誰よりも強いよ」

 

そしてノアもまた驚きを隠せないでいた。

 

「まさかここまでの物とは…」

「何が起こってるんですか!?」

「簡単に言えば弁慶はパワーアップしたんだよ。多分鍋島さんよりも強くなってるんじゃないかな?」

「それじゃあ…」

「今の弁慶には俺も勝てないね」

「・・・すごいぞ弁慶!!」

「まぁ…限定的な条件付きだろうけどね」

 

「それじゃ…いくよっ!

 

弁慶が鍋島に一瞬で詰め寄り、鍋島の体を蹴り上げる。

 

「ぐあぁっ!」

 

上空に蹴り上げられた鍋島を弁慶は飛び上がり上空で鍋島を追い越し

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

 

両手を握った拳の鉄槌で撃ち落とした。

そのまま地面へ高速落下した鍋島をステイシーが確認する。

 

「ぁ、白目向いてるんじゃん…それまで!勝者弁慶!」

 

勝者を告げる声が上がると観客からデカイ歓声がワアッ!と上がる。

 

「うぉっ!やべぇやべぇ…一瞬でも気を失っちまったか…」

 

ほんの数十秒で鍋島が起き上がる。

 

「はは…あれだけやって一瞬だけなのね…」

「いや、一瞬だけでも大したもんだわ。精神的に相当きたぜ?教育者になって訛っちまってるな。俺もまた1から修行のやり直しだわ」

「まったく…これだから壁超えの人達は…」

 

弁慶は体をふらつかせその場に倒れこみそうになる。

弁慶の体が傾いた瞬間、何かにぶつかり倒れることはなかった。

 

「お疲れ様。大変だったね?」

「あはは…あれは3分間強くなるんだけど…強敵過ぎて10秒で終わっちゃったよ…」

「やっぱり限定的な技だったんだね…本当にお疲れ様。かっこよかったよ」

「ちょっとこれ以上は戦えないかな…ごめんね…」

「あれだけの強敵と戦って勝ったんだ。誰も文句は言えないし…俺が言わせないよ」

「うん…あとは任せたよ…?」

 

弁慶の問いにコクンと首を縦に振り弁慶をそのままお姫様抱っこの体制で柔らかい地面へと運ぶ。

弁慶はノアの首に腕を回し、満足そうな笑みを浮かべている。

 

「本当は地面では無い所に運びたいんだけど…今はここで我慢しておくれ」

「もうちょっと抱えててくれてもいいんだよ?」

「弁慶ならずっと抱えていたいが…勝負が終わるまで待っていてくれ」

「あぁ、ノアの活躍を見ながら待っているよ」

 

弁慶をゆっくりと地面へ座らせるといつの間にか次の戦いが終わっていた。

 

「…大和くんの戦いを見ていなかったな…」

「いやぁ…まぁ…あの相手なら大和も勝てるって…」

「後で一緒に謝ろうね」

 

ボロボロになりながら戻ってくる大和

大和の顔はものすごく満足そうにしている。

 

「やりましたよ!ノア先輩!弁慶!」

「あ、あぁ、よく頑張ったね」

「うんうん、カッコよかったんじゃない?」

「いやー、途中で目を潰された時はちょっと焦りましたけど何とかなりましたよ」

 

どんな風に戦っていたのか判らない二人は何と答えてよいかわからないでいると続いての対戦が発表された。

 

「盛り上がってきたな!4勝4敗のイーブンだ!泣いても笑っても次の戦いで決まるぞ!いくぜ!ダイスロール!ロックンロール!」

 

ステイシーが盛大に声を上げながらサイコロを転がす。

出目はノアと鍋島が示される。

 

「おじさん?まだいけるんだよね?」

「おぉ、さっきは負けちまったがお前さんが戦ってる間に回復はしてるぜ。問題ねぇよ」

 

鍋島の言葉を聞いて文太は迷わず7を出す事を決める。

 

「ノア先輩どうしますか?って聞くだけ無駄ですかね?」

「良く判ってるじゃないか。最小の数字で構わないよ。流れる事はないだろうからね」

 

大和は持ってるカードの最小の数字を手に取り審判に渡す。

 

ステイシーが双方のカードを確認する。

 

「よーし!バトル成立だ!これで最後にしてくれよ?私もそろそろ帰りたいんだからよ」

 

両者中央にて正面から向かい合う。

 

「交流戦の時の指揮は見事だったぜ?百代ちゃん抜きであそこまでやられるとは思ってなかったからよ」

「それはどうも。お褒めに預かり光栄ですよ」

「それじゃドイツ仕込みの戦い見せてもらうぜ?」

「その前に一つ提案いいですかね?」

「なんだ?」

「引き分けで勝ち…というのは止めて決着つくまでやりませんか?時間もかかりすぎてるようですし」

「はっはっ!弁慶といいお前さんといい、威勢のいい若者だぜ!いいのか?俺相手にそんな啖呵きっちまってよ」

「勝てる算段がなければこんな事言いませんよ?」

「いいねぇ!ガチンコ勝負受けて立つぜ!お前さんといい弁慶といい頼もしいカップルだな!」

「一つ…忠告しておきますね?本気で来てくださいね?負けた時の言い訳に全力を出してないと言われたくないのでね」

「おぉ!いいねいいね!わけぇのは勢いがねぇとな!本気でやってやるよ!」

 

両者目をそらさずに睨み合いを続けていると、

 

「そろそろいいか?最終戦始めるぞー?」

 

ステイシーの声を聴くと両者戦闘態勢に構える。

 

「・・・・・・はじめぇ!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!」

「おらぁぁぁぁぁぁっ!」

 

鍋島とノア、両者同時に正面へと駆け出し拳を振りかぶり正面に放つとお互いの拳がぶつかり合う。

ぶつかりあったお互いの拳は後ろへと弾かれる。

 

先に体制を直したのは鍋島。

体制の崩れたノアに襲いかかる。

 

「おらおらっ!いくぜぇ!」

 

拳の連打をノアへ放つ。

 

「ちぃっ!」

 

体制を崩しながらも何とか鍋島の攻撃を防ごうと足で体を踏ん張らせるが間に合わず、何発か体に受けてしまうがその後は踏みとどまり鍋島の攻撃をガードする。

 

「さっきまでの威勢はどうしたぁ?むんっ!」

 

大きく振りかぶった拳をノアの腹目掛け放つ鍋島の拳を体の正面から受けてしまう。

 

「ぐっ!この程度…はぁっ!」

 

全身に力を入れ鍋島の拳を弾き返す。

 

「っとと!おいおい…本気でやってんのにダメージそれだけかよ…どんな体してんだよ!」

「いたって普通の体ですよ。人より少しばかり鍛えてるだけのねっ!」

 

互いに体勢が整うと拳の連打の応酬となる。

ノアの強さも中々の物ではあるが鍋島の強さの領域には少しばかり届いていなかった。

徐々に押され始めたノアは一旦距離を取り立て直す。

 

「これが壁超え…マスタークラスか…」

「お前さん中々の強さだが弁慶と同じでまだ足りねぇな」

「さきほど弁慶に負けていましたよね?」

「揚げ足とるんじゃねぇよ!しかしお前さん防御主体だろ?攻撃力もそこそこだが俺の気を練った拳受けてまともに立ってられるのは誇っていいぜ?」

 

見破られてるか…

 

ノアは基本的には防御を主体とする戦い方をしている。

鍋島の攻撃を受けてダメージを負っているのに直ぐに立て直せるのはその為だった。

 

「だがよ、俺の拳も安くねぇだろ?ダメージ溜まってんだろ?このまま行きゃ俺の勝ちだぜ?」

「さぁてね…それはどうですかね?」

「やってみりゃ分かるさ!まだまだいくぜおらぁ!」

 

鍋島がノアへと襲いかかる。

鍋島の猛攻を何とか凌ぐも攻撃全てを捌くことができず何発か拳をを許してしまう。

 

ちぃっ!このままじゃジリ貧だな!

やはり防御主体じゃ勝つのは難しいか…

 

何度も鍋島の攻撃に合わせカウンターを繰り出そうとするが強引な拳の割り込みにカウンターを潰されてしまっている。

 

「おらぁっ!隙きができてんぞ!」

「…っ!しまっ…ぐあぁっ!」

 

防御しながらも考え事をしていたノアの一瞬の隙きを見逃さず鍋島の拳がノアの体へクリーンヒットを許してしまった。

そのままの勢いに鍋島の攻撃は激しくなり、ノアは対抗出来ずに攻撃を喰らい続けてしまった。

まともにもらった一撃目はアッパー気味に腹に当たり空中へと軽く投げ出されると空に浮いたまま鍋島の連撃を喰らってしまった。

 

「これで…終いだよ!」

 

鍋島が大きく振りかぶり拳を上から下へと打ち下ろすとノアはまともにそれを喰らい地面へと埋め込まれてしまった。

 

「がはっ!」

 

血反吐を吐き地面から動かなくなってしまうノア

 

「そんな…ノア先輩!」

 

大和が叫ぶもノアは反応しない。

 

「くっくっくっ!やはり最後に勝つのはミレーニアムな僕なんだよ!説教臭く僕に勝っても最後に勝てばいいんだよ!」

 

文太の勝ち誇る声が響く。

 

審判をしているステイシーもこれで勝負ありかとノアへ近づこうとする。

 

「ノアっ!」

 

弁慶が大きな声で最愛の人の名前を叫ぶ。

 

「まてっ!審判…まだ決着ついてないみたいだぜ?」

 

鍋島の言葉に疑問を持つステイシーだが次の瞬間、ノアがゆっくりと地面から這い出し立ち上がる。

 

体の所々は傷つき出血もしている。

 

これ以上はストップを掛けるべきか判断に迷うステイシー

 

「は…ははっ…世界は広いなぁ…まだまだこんな人がいるなんてね…ははっ…自分が情けない…自惚れていたよ…本気を出さずに勝てると思っていた自分が恥ずかしい…」

「あんっ?」

「先に謝っておきますよ。申し訳ない。俺が本気でやれと煽っていながら本気でやってなかったのは俺の方でしたね…」

「負け惜しみか?らしくねぇな?」

「いや…防御主体なのは俺の全力で間違いないんですよ。防御主体の戦い方なら…ね…」

「へぇ…」

「攻撃主体になるとね…血が騒ぐといいますか…歯止めが効かないといいますか…どのみち血を流しすぎてしまったのでね…止まれませんよ?…そして、見てもらえればわかりますよ…負け惜しみかどうか…ねっ!」

 

ノアは鍋島へ一気に距離を詰めると鍋島を吹き飛ばす。

咄嗟の事ではあったが何とかガードした鍋島は少し驚きを見せていた。

 

おいおい…いきなり威力上がってんじゃねぇかよ!

何しやがった?

 

鍋島は自身が何で攻撃されたのか分かっていなかったがすぐに攻撃方法が露呈される事になる。

 

吹き飛ばされた鍋島にさらに詰め寄るノア。

勢いそのままにノアの攻撃が鍋島の顎へと当たる。

下から上へと顎を蹴り上げるとそのままカカト落としを鍋島の頭へと落とす。

 

顔面から地面へ叩きつけられた鍋島の頭をそのまま踏みつけようと上から下へ足を振り下ろすも鍋島がノア足を掴みそのまま立ち上がる!

 

「舐めるなよ!小僧が!俺流一本背負い!」

 

ノアの足を持ったまま投技を決めようとする鍋島だが…

逆にノアが足を掴んでいる鍋島をそのまま持ち上げ地面に叩きつけようとする。

 

「ぐっ!この野郎がァァ!」

 

頭から叩きつけられそうになると拳を地面に突き立てそのまま距離を取る。

 

「さっきまでと雰囲気がまるでちげぇ…こいつはやべぇな…!」

 

ノアは先程までと違い一切喋る事はなく鍋島を見ているように思える。

 

「ちぃとばかし痛えかもしれねぇが勘弁してくれよ!オラよっ!」

 

気を拳に纏わせ連打を放ち拳の形をした闘気の塊がノア目掛けて飛んでいく。

ノアは腕を横にダラッと垂らしたまま片足を上げる。

足に闘気を纏わせ鍋島の繰り出した無数の闘気の塊を蹴りで全て撃ち落としていく。

 

「おいおいまじかよ…これならどうだっ!」

 

今度は量より質だと言わんばかりに特大の拳を放つ鍋島。

特に驚いた様子もなく先程と同じ体勢で待ち構えるノア。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」

 

雄叫びを上げながら飛んできた闘気の塊を廻し蹴りで消し飛ばしてしまった。

お返しと言わんばかりにノアの足から闘気の塊が連蹴で放たれる。

 

「ちぃっ!」

 

舌打ちしながら鍋島は拳に闘気を纏わせノアの攻撃を撃ち落としていく。

最後の一撃を撃ち落とすと正面にノアの姿は無く背中に衝撃を喰らい吹き飛ばされる。

苦痛に顔を歪めながら直ぐに体制を立て直し吹き飛ばされた方を振り向くとそこにはノアが眼前まで迫っていた。

最初の印象では優しそうな好青年であったノアの顔は狂気に顔を歪めながら笑っていた。

 

コイツっ!百代ちゃんタイプかよっ!

 

自身が相手の実力を見誤っていた事を認める鍋島だがノアの攻撃を防ぎきれずダメージを受けてしまっている。

 

橋の上で見ているクリスは驚愕していた。

自分の知っている優しい兄の面影はなく戦いを狂喜に満ちた顔で楽しんでいると感じている。

 

「あんな…あんなのはノア兄様じゃない!」

「クリス?」

「ノア兄様は!自分の兄様は…」

「お嬢様、落ち着いてください」

 

クリスの元に現れたのはマルギッテだった。

 

「マルさん!」

 

その姿を見つけると直ぐ様マルギッテに抱きつくクリス

 

「マルさん!ノア兄様が!」

「大丈夫です。あれは紛れも無くノア様です」

「しかし…」

「ノア様は私にこう言われました…」

 

『マルギッテか?急にすまないが河原にきてくれ』

『はっ!畏まりました!』

『橋の上で待機していてくれ、きっとクリスも来ているはずだ』

『なぜそのような事を?』

『多分だが…本気を出す事になると思う』

『それは…』

『きっとクリスは俺の変わった姿に怯えてしまうかもしれない…その時は近くにいてやってほしい』

『畏まりました!』

 

「ノア兄様がそんなことを…」

「ええ」

「マルさん…あの兄様は…」

「私も一度しか見た事ありませんが…あれはノア様の本気のお姿です」

「あれが…ノア兄様の本気…だがあれではまるで…」

「ええ、お嬢様の思っておられる通りです」

「何故だ?何故優しい兄様が…あんな…」

「あれはとあるテロ組織の壊滅を任務としていた時の話です」

 

マルギッテの語りだしにクリスが耳を傾ける。

 

そのテロ組織は無差別なテロを行っていました。

明確な目標はなくただ破壊をするだけの無差別テロ集団でした。

テロ集団が次に目標とする場所を察知できた我々は当時の猟犬部隊をノア様の指揮の元、出動致しました。

現地に到着すると我々の到着が遅かったせいか既にテロ行為は進んでおりました。

ノア様のご命令により速やかにテロ集団の鎮圧に掛かろうとした時です。

我々の正面に建物から逃げ出しこちらに助けを求める親子の姿がありました。

当然我々はその親子を保護しようとしたのですが…後ろから出てきたテロ集団に親子は我々の目の前で銃殺されてしまいました。

少し間が空いてからノア様から命令が降されました。

 

「テロ集団組織を一人残らず鎮圧せよ」

 

この時ノア様の声が異様に冷たく感じましたが我々猟犬部隊は命令を遂行しました。

普段ノア様は指揮官として後方に控えているのですがこの時はお怒りのあまり自ら先陣を切って行かれました。

幸いにもテロ集団はただ数が多いだけで鎮圧は問題なく行われていたのですが…

そこでノア様は狂気に満ちた顔でテロ集団を鎮圧…あれは蹂躙と呼ぶべきでしょうか…

有り体に言えばやり過ぎと言われる程テロ集団を痛めつけておりました。

幸いにもジークが居ましたのでテロ集団に死者は出ませんでした。

テロ集団の鎮圧が完了した時です。

ノア様は我々に襲い掛かってきました。

 

「ノア兄様が…マルさん達を襲った…?」

 

ノア様を抑える為我々も抵抗しましたがノア様の強さが凄まじく中々取り押さえる事ができませんでした。

そこに中将が援軍として駆けつけてきていただいたおかげで何とかノア様を抑える事は出来ました。

 

「怒りで自我が抑えられなかったか…我が息子ながら凄まじい物だな…」

 

以降ノア様は中将に本気を出す事を禁じられておりました。

 

「でも今のノア兄様は本気で戦っているのだろう!?」

「多分中将がお許しになられたのかと…」

「何故だ…」

「そこまでは私にも判りませんが…いざとなればお嬢様の力をお借りしなければならないかもしれません」

「そんな…ノア兄様…」

 

再び河原の方へと視線を戻すクリスとマルギッテ

 

ボロボロになりながらも鍋島はノアの攻めを耐えていた。

防御が出来てしまう分、ノアの攻撃を防いでいたが全てを防ぐ事は出来ず致命傷を避けながらなんとか戦っていられるが端から見ればいたぶっているようにも見えてしまう。

 

審判のステイシーは止めるべきどうか悩んでいた。

壁超えの鍋島ならまだやれるのではないか?

この考えが止めるタイミングを狂わせていた。

 

このままじゃやべぇな…ジリ貧すぎるわな…

 

一瞬の隙を逃さずに攻めに出ようとするもノアの足技の前に反撃が出来ない。

かといってこのまま耐えていても完全に突破されるのは時間の問題である。

 

暴走気味のコイツを止めるにはこれしかねぇな…

あれはいてぇからやりたくねぇんだがよ…そうも言ってられんな!

 

鍋島は玉砕覚悟でノアの連蹴りを被弾しながらノアの体全体を掴む。

 

「わりぃが俺にもプライドがあってよ!負けるにしても道連れにさせてもらうぜ!」

 

鍋島の体内の気が大きく膨れ上がっていく。

 

「川神流!人間爆弾!」

 

自分ごと自爆しノアを道連れにしようと技を放とうと気を外側に爆発させようとする。

 

しかし…

 

鍋島の拘束を自力で引き剥がし飛び膝蹴りを顎に喰らってしまい技は不発に終わってしまう。

鍋島の巨体が地面から離れるほどの威力を喰らい、追撃の垂直蹴りで更に打ち上げられ、トドメの一撃としてサマーソルトキックを喰らい地面に大の字で倒れ込む。

 

審判ステイシーが確認すると完全に鍋島がノビているのを確認。

 

「それまで!勝者ノア・フリードリヒ!これにて5対4で川神書店チームの勝ちだ!」

 

ステイシーの宣言を聞くと周りがワーッと盛り上がる。

気絶していた翔一や宇佐美もその盛り上がり具合に目を覚ます。

 

「やった!ノア先輩!やってくれたよ!」

「待って大和」

 

ノアへと駆け寄ろうとする大和を弁慶が止める。

 

「どうしたの?ノア先輩を迎えないと…」

「そのノアの様子が変だよ。終わったのに戦闘態勢が解かれてない」

 

地面に倒れ込む鍋島を見つめるようなノアの姿

ステイシーが堪らず声を掛ける。

 

「おい軍神!試合終わったぞ?いつまでそこにいるんだよ!」

 

ステイシーに声を掛けられたノアがゆっくりとステイシーの方へ体を向け…蹴りを放つ。

 

紙一重で何とかノアの攻撃を躱し臨戦態勢を取るステイシー、直ぐに何処かへと連絡を入れる。

 

「ファック!暴走状態じゃねぇかよ!李!こっちきてくれ!軍神がやべぇ!」

 

その言葉を聞き河原に降りたのはステイシーの同僚である李とマルギッテにクリスであった。

 

「おい猟犬!飼い主がおかしいぞ!ちゃんと躾しとけよ!」

「言葉を直しなさいと言いたいですが…今はそれどころではありませんね」

「ノア兄様!戦いは終わりました!いつもの優しい兄様に戻ってください!」

 

クリスの言葉に一瞬ピクリと反応を示したが直ぐに標的を見つけたかのように殺気を4人に向ける。

 

「お嬢様、申し訳ありませんがバックアップをお願いします。ステイシーと李!手伝いなさい!ノア様を止めますよ」

「命令すんじゃねぇよ!言われなくても止めるわ」

「今ここで止めないとヤバイ事になりそうですからね」

「ノア兄様…」

 

戦闘態勢を取る4人

ノアが狂気に満ちた顔を見せながら4人に襲いかかろうとする。

しかしノアは動く事が出来なかった。

ノアの後ろから弁慶が背中に抱きついていたのだ。

 

「離れなさい弁慶!今の貴方ではやられますよ!」

「下がれ弁慶!流れ弾喰らうぞ!」

 

二人の言葉を聞いても離れない弁慶

 

「まったく怖がり過ぎだよ…誰の彼氏だと思ってるのさ…」

 

ゆっくりとノアの体が弁慶の方へと向いていく。

 

「ノア?終わったよ…大丈夫だよ…私は敵じゃない、ノアの味方で彼女の弁慶さ」

 

更に力強くノアを抱きしめる弁慶

するとノアの腕がゆっくりと弁慶の背中に回る

 

「すまない…迷惑かけたみたいだね…」

「まったくだよ…自分を見失うなんてノアらしくないよ?」

「勝負には勝ったみたいだけど…どうにもスッキリしないね…」

「そればっかりは仕方ないね」

「ほんと…助かったよ…危うくクリスを傷つけてしまう所だったよ…」

「まぁ賭けだったけどね。でも、ほら、私ノアに愛されちゃってるからさ」

「まったくもってその通りだね。愛してるよ弁慶…」

「出来れば人がいない所で聞きたかったけど…私もだよ…」

 

ノアと弁慶が強くお互いを抱きしめる。

 

「おいおい…お前ら…急にイチャつくんじゃねぇよ!」

「まったく人騒がせな…」

「ノア様に対する暴言は止めなさい!」

「ノア兄様…元に戻って良かったです!」

 

「皆に迷惑かけちゃったかな…迷惑ついでに…弁慶、後は頼んだよ…」

 

弁慶に抱きついたままノアは気を失ってしまう。




次回からは日常+イチャイチャ+ちょいバトル
な感じで話数を重ねていくと思います。
日常とイチャイチャは同義みたいなもんですけどね!

いつも誤字脱字ありがとうございます。
感想評価お待ちしております。
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