真剣でクリスの兄に恋しなさい! 作:トラックオジサン
河原での決闘から翌日、ノアは目を覚ますと体の違和感を感じていた。
「思うように体が動かない…か…」
人の気配を感じ横に目をやると弁慶が隣でスヤスヤと眠っていた。
この状況にさすがのノアも焦りを見せる。
何故弁慶がここに…
いや、それよりも弁慶の格好だ。
何故俺のシャツを着ているんだ…
いやいや、そうじゃない……
駄目だ…思考が回らない…ここは弁慶を起こすしかないか…
意を決し弁慶の肩を叩く。
「弁慶、朝だよ」
「んっ…んんー…もう朝……?」
非常に艶めかしい声と共に弁慶が目を覚ますが完全には起ききれていないようで、体を起こそうとしない。
何故かノアの体に抱きつき更に寝ようとする。
「非常に嬉しい体勢だけど起きてくれないと困るよ」
「んんー…はぁ…おはよう…」
「おはよう弁慶、寝起きの君も素敵だけど起きてくれるともっと素敵になるよ」
「大丈夫だよ…もう起きてるから…」
「なら腕を解いてくれないかな?動けないんだけど…」
「大丈夫…大丈夫…」
何が大丈夫なのだろうか聞きたい所ではあるが学園の準備をしなければならないので無理矢理にでも弁慶の腕を剥がし起き上がる。
「私とのスキンシップは嫌なの?」
「朝からでなければ大歓迎だよ。とりあえず学園に行く準備をしてから少し話そうか」
「うーい…シャワー借りるよ?」
「構わないy……弁慶?俺のシャツを着て寝てたのは後で聞くとして、何故下はパンツだけなんだい?」
「んー?楽だから?」
「疑問形で返されても困るんだが…」
「あ、上はシャツだけでブラ着けてないよ?」
「聞いてないからね?」
「触ってみる?」
「朝でなければ素敵な提案だね。シャワー浴びて来なさい」
「ノアは恥ずかしがり屋だね…はいはーい」
朝から色々と試されてる気がする…まず顔を…弁慶がシャワー浴びてるから無理だな。
着替えて軽めの朝食でも作っておくか。
数分後、弁慶がシャワーを終え制服に着替えた状態で出てくる。
その姿にホッとするノア。
「さて…朝食が出来ているから食べてしまおうか」
「私の分も作ってくれたの?」
「作らないと思うのかい?」
「さっすがノア!判ってるねー!」
二人でテーブルに用意された朝食に手を付ける。
ノアは弁慶に疑問に思っている事を聞き始めた。
「最初から説明を頼みたいんだけど、何で弁慶がこの家にいるんだい?」
「ノアの看病の為に決まってるじゃないか…あーん…」
「よし、もっと最初から…俺が倒れてからどうなったんだい?」
「とりあえず書店同士の話は向こうに任せて私とマルギッテとクリスそれにステイシー、李でノアをここに送ったんだよ」
「なるほど、後でクリスとマルギッテに連絡しておかなくてはいけないね…それで?」
「送り届けた後は私が看病で残るって言ったらクリスとマルギッテも残るって言い出したからどっちが残るか決めようとしたらメイド達が私が残るのに反対したから一触即発状態?」
それはそうだろう。
いくら弁慶が俺の恋人になったとは言え男の家に泊まるとなれば止めるだろう。
仮にクリスに恋人が出来てそんな事を言い出したら…
父さんが血の涙を流しながら全軍を率いて相手の家に行くんじゃないか?
…クリスの未来を考えると頭が痛くなりそうだ…
今は止めておこう。
「ダルいから説明省くけどそんな感じで私が残る事になったよ」
「間に何があったのか判らないのはいいとしてだ、何で隣で寝ていたんだい?」
「ノアが寝てるベッドが気持ちよさそうでねぇ、ちょっと横にお邪魔しちゃったらそのまま寝ちゃった」
「ちなみに来客用に日本式の布団はあるんだけど?」
「あー最初はそっちで寝ようと思ったけど…」
「面倒くさいと…次に何でシャツ1枚で寝たんだい?」
「んー?家だといつもあの格好だからねぇ」
「せめてズボンを履くという事は出来なかったのかい?」
「えー?ノアは彼女のあーいう姿嫌い?」
「正直に言えば嫌いではないけど…」
「じゃーいーじゃん♪役得役得♪」
「ちなみにその制服は昨日のではないよね?」
「大丈夫だよ。メイド達が届けてくれたからね」
「そうか…とりあえず朝食を食べきってしまおう」
「朝からノアの朝食食べられるとは幸せだねぇ…川神水が進んでしまうよ」
「朝から飲みすぎないでくれよ?」
「大丈夫、心得てるさ」
その後朝食を食べ終えると食器を片付けランチ用の弁当を用意する。
せっかくなので弁慶の分も用意すると物凄く喜ばれた。
「あ、そうだ。テストが終わったら今度買い物行こうよ」
「何か欲しいものでもあるのかい?」
「ノアの家に置く日用品を買うだけだよ」
「もう今度から泊まれる用にしておくつもりかい?さすがに九鬼が許さないと思うけど…」
「大丈夫だって、1回やっちゃえば2回も3回も変わんないから」
楽観的な弁慶に頭を抱えるノアであるがこれが弁慶だったなと直ぐに考え直す。
「さて、そろそろ学園に向かうとするか」
「早くない?まだ時間あるよ?」
「むしろいつもより遅いぐらいだよ」
「そこらへんの思考はだらけ部に相応しくないね」
「時間に余裕を持って登校すれば慌てずに済むからね。慌てて何かをする方がだらけ部に向いていない気がするけどね」
弁慶と話しながらゆっくりとした朝食を終え学園に向かい始める。
朝から横に弁慶がいるのはとても新鮮でたまにはこういう登校もいいかもしれないと思うノア。
弁慶は当然のようにノアと腕を組み手を繋ぐ。
登校時間ともなれば川神学園の生徒達も多数登校をしており、ノアと弁慶の仲睦まじく登校する姿を見かける事になる。
この二人が朝から一緒に登校している姿を目撃した生徒達は何かがあったのだと察した。
もちろん二人は何かをした訳ではなく弁慶がノアの家に泊まっただけなのであるが、そんな事情を他の生徒達は知るはずもなく…ノアの意志とは関係なく注目を集めてしまうのは必然である。
「やはり注目されているみたいだね」
「なんでかねー、普通に歩いてるだけなのに」
「どう考えても原因はこれだろうけどね」
「ふーん…止めたほうがいい?」
弁慶は腕を掴む力を更に強くする。
否応無しに弁慶の柔らかい部分が腕に押し付けられてしまう。
「いや…そのままで構わないよ」
「安心したよ。ノアにも人並みのスケベな心があるんだね」
「言い方が酷いな…残念ながら俺にも人並みに性欲というのはあるんだよ」
「じゃぁこの行為には意味があった訳だね」
「俺の腕が幸せに包まれているという意味であればね」
二人のカップルは川神学園で知らない生徒はいないほど周知されている。
ベストカップルと言われるほどの二人であるがノアに関しては多数の男子生徒から恨まれている。
「あー!弁慶!何でノア兄様と腕を組んでいるんだ!」
後ろからクリスが大きな声で叫んでいるのが聞こえた。
ノアと弁慶が後ろを振り向くと風間ファミリーが勢ぞろいで登校していた。
「ノア先輩と弁慶、おはようございます」
「やぁ大和くん、おはよう。昨日は途中ですまなかったね、あの後は問題なかったかい?」
「はい、こっちが勝ったので相手はちゃんと手を引いてくれるって事で念書も書いてもらって終わりましたよ。店長が今度はお礼したいって言ってましたよ」
「気にしないで欲しいと伝えておいてくれないかい?一日だけでも店員として働いていたのだからね。ただ業務をしていただけだよ」
「よお!弁慶にノア!お前等昨日凄い戦いしたんだって?いいなー!私も戦いたいなー!」
「私は既に先輩に負けてるんで大丈夫ですよ」
「いや、あれは違うだろ!むしろノアに揉まれて成長したんじゃないか?」
「残念ながらまだ手は出されていませんよ」
「おまっ!ばっかだなぁ!こーんな可愛子ちゃんが彼女で手出さないとかなんなの?馬鹿なのか?」
「そういう話は俺のいない所でやってくれるかい?」
百代がノアと弁慶に絡む中、ガクトだけは違う所を注目していた。
「くっそー!ノア先輩と場所を交換したい!弁慶の胸に腕が包まれてみたい!」
「体交換できても直ぐに離れられそうだけどね」
「羨ましいと思わないのか!?」
「そりゃ弁慶みたいな女の子に引っ付かれたら嬉しいだろうけど緊張しちゃってそれどころじゃなくなりそうな気がするよ」
「くっそー!俺様も弁慶に負けないような女をゲットしてやるぞ!」
「ガクトはまず興奮する癖治さないと無理でしょ!」
「はい!ノア先輩に質問があります!」
「なんだい?一子くん」
「今度私の稽古を見てもらいたいです!」
「んー…俺は川神院の人ではないし戦い方も違うから役に立てないと思うけど?」
「私は将来川神院の師範代になってお姉様を支えたいんです!その為には強くならなくちゃいけないんです!」
百代に目をやると首を縦に振る。
「今のままでも一子くんは十分に強いと思うけど、それでも必要かい?」
「はい!お願いします!」
勢い良く頭を下げられた。
再び百代に目を配ると少し悲しそうな目で一子くんを見ている。
これは後でちゃんと事情を確認しておかないとな…
「判ったよ。今度川神院で百代と訓練する時で良ければ見させてもらうよ」
「押忍!お願いします!」
元気よく返事をする一子にノアは優しく笑みを返す。
「今の勢いなら行ける!ノア先輩!俺様もお願いがあります!」
「ガクトくんもかい?」
するとガクトは地面に正座し土下座を見せた。
「一日だけ!一日だけでいいんです!俺様と一緒に街でナンパしてください!」
「ほお?島津だっけ?私の目の前で頼むとは…いい度胸じゃないか」
弁慶が目に見えて怒っているのが判る。
「お、おい、ガクト止めとけよ?弁慶に殺されるぞ?」
「いや!ここは引けねぇ!引けない所なんだ!」
「島津…お前泳ぎは得意か?」
ノアの腕から離れた弁慶がガクトの頭を掴み片手で持ち上げる。
「い、痛い!取れる!!頭が取れる!!」
「頭を冷やしてきな!そぉい!」
ガクトの頭を掴んだまま川の方へと投げ飛ばし、飛んでいくガクト
「くそぉぉぉぉっ!やっぱ駄目だったかああ!」
何か叫びながら見事に川へと落ちていった。
「まったく…私のノアをダシに使おうなんて…」
「ま、まぁまぁ、弁慶落ち着いて」
「大和の友達だから投げるだけにしたけど…次はないって言っといてくれ」
そう言うと弁慶は再びノアと腕を組む。
「あー!また組んだ!」
「さっきから叫んでどうしたんだいクリス?」
「ノア兄様の腕は自分の場所なのにぃ!」
「いや、誰の場所でもないよ?反対の腕があるだろ?」
「くぅぅぅぅぅうっ!」
声にならない声をあげながら弁慶とは反対側の腕を両手でガッチリと掴むクリス
「私とノアは恋人なんだから問題ないだろ?」
「まだだ!自分は認めていないし、勝負もこれからだろう!」
「と言われても本人同士は好き同士だから問題ないんだなーこれが」
「ノア兄様からも何か言ってください!」
一体何を言えと言うのだろうか…
「前にも言ったけど二人共仲良くしてくれると嬉しいんだけどね」
「ぐぬぬぬぬぬっ!」
「なんでそんなに目の敵にするのかね」
「大好きなお兄さんが取られちゃったって思ってるからじゃない?」
「違うぞ!自分はそこまで甘えていないぞ!」
「じゃぁどうしてなのさ?」
「……なんとなくだ!」
「クリス…それじゃ説明にならないよ?」
何とも朝から騒がしいが昨日の決闘に比べればきょうのような日の方が好ましいね
「くぅぅぅぅぅぅっ!」
「時にクリス、テストの勉強はしっかりしているんだろうね?」
「はい!勿論です!」
「…この前大和丸のDVDを夜ふかしして見てたよね?」
「み、京!?違うぞ!あれは勉強の間の休みで!」
「ワンシーズン丸々見てなかったっけ?」
クリスの顔から血の気が引いていく。
「ち、ちがっ!」
「クリス?」
「ノア兄様違います!勉強は本当にしてました!」
「大方勉強をしていてその休憩時にちょっとのつもりが全部見てしまった…という所かな?」
「うぅ…その通りです…」
「さすがノアだねぇ、妹の事を良くわかってるねぇ」
「家族だからね、誤魔化そうとしたのは駄目だけど別にDVDを見ていたのは怒らないさ」
「いいのですか!?」
「俺も勉強の休憩がてらに本を読んでしまって時間が経過してしまった事もあるしね」
「ノア兄様が!?」
「ノア先輩も俺様と一緒かよ」
「ガクトと違ってエロ本読んでる訳じゃないよ?」
「あーでもそういうのあるよねー」
「という訳だよ。何も休む事は悪いことじゃないよ」
「ごめんなさいノア兄様…」
「いつも言ってるけどクリスは真面目すぎるんだよ。もう少し肩の力を抜いていいんだよ」
クリスが抱きついている手と反対側で頭を撫でようとするが弁慶が組んでいるので動かせなかった。
それを察してくれたのか組んでいる腕を放してくれたので空いた手でクリスの頭を撫でる。
顔を嬉しそうに歪めるクリス。
「うー!ノア兄様ありがとう!大好きです!」
「俺もだよクリス」
頭から手を離すと自然と弁慶が腕を組んでくる。
「弁慶さんのさりげない行動…あれがデキる女と言うものなのですね!松風!」
「頑張れまゆっち!まゆっちだってやればデキる女って所をみせてやるんだ!」
「デキる女の前に友達作らないとね?」
何とも賑やかな朝であった。
物凄い沢山の誤字訂正いただきました。
非常に助かっております。
ありがとうございます!
引き続き誤字脱字、感想評価、お待ちしております。