「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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いきなりbloodborneのエンディングですが、ブラボのキャラクター達との交流はそのうち書くのでお待ちください。






それではどうぞ


裏路地
悪夢の終わり


ポタ    ポタ

 

 

人の形をした何かが白い花畑の上で赤黒い血を流して倒れ伏している。

骨格こそ人間のような形をしているが、異常な程に痩せ細り肋骨は剥き出しで肉や皮があるのは腕と脚、背中位だろう。貌は穴があいたような仮面と言うべき無貌であり、周りには無数の触手がさながら獅子の鬣のように生えている。瞳も、口さえもないまさしく仮面と言う他ない。更には複数に枝分かれした尻尾も生えていた。

 

 

……………………。

 

  ポタ       ポタ

 

 

しかしその異形が動く様子はなく、ただひたすら赤黒い血を流すのみだ。どうやら絶命しているらしい。

動かぬ異形……「月の魔物」の傍らでその骸を無言で見つめる影が二人(・・)。どちらも全身を覆うような格好をしているが、明らかに齢が10歳位であろう姿だ。しかし、その手には子供が持つには不釣り合いなほどに恐ろしい気配を感じさせる武器が握られていた。二人が右手に持つ武器……一人は鉈、もう一人は杖……が血塗られていることからこの現状を作り出したのがこの者達であることが分かる。しばらく無言の状態が続いたが、やがて片方の人物が口を開く。

 

「ねぇ、これで終わったの?」

 

口を開いた者は幼い声でそう言いながら頭に被っていたフードを取り外す。そこには金色の長髪と紫色の目を持つ少女がいた。問いかけられた片割れは振り向いてその少女の質問に答える。

 

「恐らくだけどね。取り敢えず、この夢の主は僕らになったみたいだ。」

 

優しく語りかける声の主もあどけない子供だった。頭に被っていた帽子を取り、鼻まで上げていたマスクを下ろして素顔を露にする。茶色の髪と青色の目を持つ少年だ。少女に笑いかけながら話す少年はやがて空へと目線を向ける。それにつられて少女も空を見た。

 

暗かった空に光が差し始める。

 

「だからさ、ほら、どうやら自由に目覚める事が出来るみたいだよ、リサ。」

「そうね、エノク……………もう私達が、エノクが死ななくていいんだよね?」

「まぁ向こう側(・・・・)に近くなった僕らが本当に死ぬのか怪しい所だけど。」

「そういうこと言うのはやめてよ。」

「あはは。」

 

頬を膨らませてポコスカと殴る少女……リサとそれを笑いながら受け止める少年……エノク。二人共血塗れであるが、なんとも微笑ましい様子である。

 

 

するとそこに足音と車輪の回る音が聞こえてきた。

 

「狩人様方。」

「「人形さん。」」

 

車椅子に老人……ゲールマンをのせて静かに歩いて来た女性……"人形"は二人の近くまで来ると立ち止まり、話し始める。

 

「御二人は………夢から、この悪夢から目覚めるのですね。」

「うん、そのつもりだよ。」

あんな奴ら(上位者)みたいになるのは嫌よ。」

「そうですか……。」

 

表情の動かない"人形"だが、その声色は何処か寂しそうな、別れを惜しむような感じがする。それを感じ取ったエノクとリサは優しく笑い、"人形"に話しかける。

 

「大丈夫、ここ(狩人の夢)が消える訳じゃない。」

「私達が眠る時にまた会えるからね。」

「そう……ですか、それならば…安心……なのでしょうか。」

 

戸惑うように話す"人形"だったが、納得したのか佇まいを直して二人に向き直る。それを見たエノクとリサは一つ頷き、光の方へ歩き出す。光に入る直前、二人は振り返って"人形"に笑いかける。

 

「またすぐ会えるよ。」

「またね、人形さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狩人様方、

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方達の目覚めが有意なものでありますように。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おはよう。」」

 

いつの間にか向かい合うように寝ていたリサとエノクは同時に目を開け、微笑みながら挨拶を交わす。

 

「ようやく戻ってこれたね…………ここに未練があるわけじゃ無いけど。」

「永遠に変わらない誰もが狂った夢の世界より未来があるこっちの方がマシでしょ?」

「そうかもね。」

「………それにしてもちょっと早起き過ぎたかしら。」

 

何もない部屋、少しボロい窓、暗いままの外。外郭にいる以上、安全な時間はなど無い。夜であるなら尚更だ。

 

「問題無いよ、死んでも夢に戻るだけ……あぁ、それだと別れたばかりの人形さんに格好がつかないね。」

「軽々しく死のうとしないでよ。」

「あいて。」

 

気にする部分がズレているエノクを呆れた目で見つめるながらポカリと叩くリサだった。

 

「まぁ、取り敢えず…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一回寝ましょ。」

「あの街に安全な場所は無いし、安全な狩人の夢では眠る事が出来なかったもんね。」

「ホント、ちゃんとした睡眠は何年ぶりなのかしら。」

「起きたら装備の確認しよっか。」

「それもそうね。じゃあ、おやすみエノク。」

「うん、また明日、リサ。」

 

 寝転んだままの二人は互いに抱きしめ合うとそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

二人が寝てから数分後、近くに煙の渦が生じる。そこからおどろおどろしい小人たちが這い出てきた。よれよれのシルクハットを被った小人………使者たちはすやすやと眠っている自分たちの主を見つけると、何人かで話し合うように向き合った。

 

「」ワタワタ

「」フーム

「!」ピコン

 

激しいジェスチャーによる討論(のように見えるもの)の最中、何かを思い付いた様子の使者が渦の中に潜る。しばらく他の使者が首をひねる動作をしていると、潜っていた使者が何かを持って出てきた。その手にはブランケットの様な布が握られている。

 

「」ソッ

 

ファサッ

 

そして他の使者と協力して眠るエノクとリサに布をかけると、静かに渦の中へ帰っていく。

 

 

眠る二人の顔は穏やかだった。

 

 




この作品のエノクとリサ(本編でのティファレトAB)はヤーナムをn十週繰り返したカンスト勢です。なので体は小さいながらも全てのボスをコンビネーションで一方的にぶちのめす事が出来るぐらいには強いですし、一周を年単位で過ごしていたため精神年齢や狂気耐性もだいぶ高くなってます。抽出部門の井戸を見ても「わぁ」位の反応になります。
ラストの周で月の魔物を倒し、上位者(幼年期)になる所を強制的にねじ曲げて夢の主導権を手に入れ人間と上位者の中間みたいな存在なったことで、自分たち以外の夢を終わらせてproject moonの世界に戻って来たのが今回のお話です。下手なアブノーマリティよりヤバいです。
かなり自己解釈が入っているので指摘されたら即座に直します。

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