「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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一応言って置きますが、二人の肉体(外見)年齢は十歳ほどです。ただしステータスがカンストしてるので可愛い外見とは裏腹に馬鹿みたいに身体能力が高くなってます。一人でALEPHとタイマンで勝てます。

だって狩人なんだもの。


目指すもの

「~~♪」

シャッ  シャッ

 

目覚めた部屋の隅でパーカーとジーンズを着ているエノクが古い作業台の上で矢のような物を研いでいる。隣には機械じみた籠手の様なものが置いてある。

 

「最近使って無かったからなぁ。」

 

椅子に座り、足をぶらつかせるエノクは研ぎ終わった刃を籠手に装着していく。その過程で籠手の機械部分をいじくっている最中、部屋に近づいてくる気配を感じる。

 

「ただいま~。」

「おかえりリサ。」

 

てくてくと歩いてきたのはリサだった。いつもと同じ様子だったが、右手に握る細長い獲物…仕込み杖は血塗られている。

 

「他の人は?」

「ここら辺りは私達以外軒並掃除屋とかにやられちゃったみたい。化物かロボットがいるだけで人間の気配なんてほとんど無かったわよ。」

「やっぱりだね、あと素材になりそうな獲物はいた?」

「手頃なやつを何匹かぶちのめして来たわよ。あ、あとこれ潰したロボット回収したら出てきたの!」

 

ふんす!と聞こえてきそうなほどのどや顔を見せるリサ。左手には何か結晶の様なものが握られていた。

 

あの子(使者)達に聞いたんだけど、どうやらこれを幾つか集めて加工すると血晶石の代わりに出来るらしいの。」

「本当かい!?」

 

エノクは少し目を見開いて驚く。その様子に更に気分を良くしたリサは意気揚々と話を続けた。

 

「ええ、実際に携帯してた工房道具で軽く加工してみて出来たのがこれだから!………まぁ弱い奴ばっか素材にすると強い物も出来ないみたいなんだけど…………。」

「ちょっと見せて。」

 

若干言葉が尻すぼみになるリサをよそに、結晶を見つめ、観察するエノク。暫くその状態が続いたが、おもむろにエノクが口を開く。

 

「………放射型……恐らく「強化の血晶石」に近いね。別物っぽいけど効果はほとんど変わらないと思うよ。」

「ちなみにランクは?」

「4か5。」

「使えないじゃない。」

「いいや、これがいいんだよ。」

「?」

 

リサは自分が拾った物があまり役に立たない物だと分かり、肩を落としたが、エノクは目を輝かせている。

 

「丁度攻撃力が微妙な武器を作りたかったからね。有りがたく使わせて貰うよ。何にしようかな~?」

「そんなの作ってなにするのよ。」

 

ニコニコと笑うエノクに純粋な疑問をぶつけるリサ。

 

「あぁ、まだ話して無かったっけ。そろそろここから引っ越そうかと思ってね。」

「それとその石に何の関係があるの?」

手加減(・・・)するためだよ。」

「…………別にする必要無いんじゃないかしら。」

 

首をコテンとかしげるリサにエノクは笑いかけながら説明し始める。

 

「フィクサーを始めようと思うんだ。」

「てことは裏路地に?」

「うん、依頼の中には対象を捕獲する物もあると思うし、今から準備してたほうが良いと思ってね。」

「うーん………そうね、いつまでもこんなとこにいられないし。」

 

納得する様子を見せるリサだった。

 

「で、具体的に何処へ向かうか決めてるの?」

「それについてはこれを見て。」

 

そう言うとエノクは作業台の上に置いてあった紙束を見せる。そこには裏路地について簡単に説明された文章が書かれていた。右下には小さく《ハナ協会》と書かれていたいる。

 

「この前ゴミの山の前を通りかかった時に見つけたんだ。どうやら他のゴミと一緒に流れ付いたみたいでね。あとこれも。」

 

反対側の手には四角いカードの様なものを握っている。

 

「これは?」

「通行証。外郭から都市に入る為に必要な書類みたいなものだよ。ただ、一つ問題があってね………一人分なんだ。」

「誰から奪えばいいの?」

「話が早くて助かるよ。」

 

リサの質問に対し、エノクは笑顔で答える。

 

「時々、都市の中から外郭に調査に来る人達がいるんだよ。そのうちの一人を狩ればいい。使者くん達に頼めば偽装もいけるよ。」

「了解よ、探して来るわ。」

「僕も行くよ。そろそろ本腰入れて素材を集めなきゃいけないからね。」

 

エノクは手に持った物といじくっていたパイルハンマーを虚空へと仕舞うと、一瞬で狩人の衣へと着替え、両手に武器を持った。右手で巨大な塊のような剣……獣肉断ちを担ぎ、左手には大砲をそのまま装備している。

 

「結構殺意高めね?」

「そりゃあ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除屋もまとめて()るつもりだから。」

「なるほど私も即殺特化の方がいいのかしら。」

 

リサも仕込み杖を仕舞い、おどろおどろしい刀……千景を取り出す。それを鞘ごと腰に差したのち、左手にエヴェリンを持つ。

 

「最近エヴェリンをよく使ってるね。」

「なんかあの街の奴らより弾が効くのよね。ロボットとかは核を撃ち抜くと一発よ。」

「ふぅん、まぁ叩き潰せば同じだね。」

「狩りになるとホント脳筋になるわねエノクって。」

「そうかな?」

 

少し呆れたように笑うリサの言葉に首をかしげるエノク。

 

「割りとこういう人多いと思うよ?ほら、大分前だけど悪夢の辺境で鐘を持った人が召還した狩人、僕らを潰す気満々だったし。」

「ほぼ裸で頭に処刑隊の奴………金のアルデオだったっけ……被って大砲と車輪担いでた変態の事?あんな奴を基準にするのはどうかと思うわよ。」

「そうかな?何回か見掛けたけど……。」

「同一人物じゃないの?」

「肌の色がそれぞれ違ってたから恐らく別人かな?女の人も一人いたよ。」

「やっぱり変態じゃない!」

 

怒鳴ったリサはエノクの狩装束の襟を掴んで揺さぶり出す。

 

「ちょっと!あんな変態みたいな格好許さないわよ!」

「大丈夫大丈夫、あれをやることはないと思うから……………多分。」

「その多分は信用出来ないわよ!」

「わぁ~。」

 

揺らされて首がガクンガクンとなっているエノクに引リサは叱る様に話を続ける。

 

「貴方の外見考えなさいよ!」

「えーと……ただの子供だよ?」

「嘘おっしゃい、顔面偏差値かなり高めでしょうが!」

「リサもかなり高いと思うんだけどなぁ。」

「ありがとね!でも話が違ってくるから戻すわよ!」

「うーん、何か問題なの?リサはともかく僕が上半身を出してもあまり倫理的な問題が起こるとは思えないんだけども……。」

「背徳感がスッゴいのよ!よくそこまで情欲を掻き立てられるのか不思議な位に!」

「……………ふぇ?」

 

エノクの目が点になり、口から声が溢れる。しかしリサはその様子に気がつくことは無く、頬を紅潮させてさらに捲し立てる。うがー、と口を開けるリサはかなり錯乱しているようだ。

 

「気付きなさいよ!エノクったら無意識に色気を振り撒いて行く先々で女を……いや男もいたっけともかくそいつらとか私を誘惑して「ちょ、ちょっと待って?」何よ。」

 

興奮して顔をスレスレまで近づけるリサに引き気味に尋ねるエノク。息が荒く、見方によっては目が発情してるようにも見える位に開かれているので当たり前である。

 

「え、えっと……僕誘惑なんてした覚えはないしそんな目で見られた覚えも無いんだけど………。」

「はぁ!?あの時(・・・)みたいに色んな意味で貪るわよ!?」

「ここでは止めよう?」

「ああもぉお!ムラつくぅ!」

(どうすればいいんだろう…………。)

 

ちょっとずつはだけて来て少し冷や汗をかくエノクは狂乱状態のリサを落ち着かせようとするが全く効果が見られない。頬をかいて首をかしげるが中々よい案は出て来ないようだ。挙げ句の果てに頭を抱えながら地面に膝を付いたリサは髪をかき混ぜながら唸っている。

 

「……………ねぇエノク。」

 

ふらふらとゆっくり立ち上がるリサ。顔はうつ向いており、影で表情がよく見えない。が、何か荒い息づかいは聞こえる。少し嫌な予感がしたエノクは後ずさるが、リサはぴったりとついてくる。

 

「…なぁにリサ。」

「ヤらせろ。」

「っ……!」

 

エノクの目を真っ直ぐ見据えてリサが言う。エノクはその言葉に驚いたかのように固まった後、少し体を庇うようなポーズを取る。

 

「全く……リサはいつもそうだね、僕の事をなんだと思ってるんだい?」

家族()。」

「いやその通りだけどね、もうちょっと時と場合を考えようね………今どんなルビふったの?」

「大丈夫、大丈夫よ事実だから。」ガシッ

 

言葉は優しいが手をワキワキと動かしながらエノクに近づく様子は限りなく変態に近い。そして、両手でエノクの頭を捕らえた。

 

「さぁ、観念なさい!」グググ

「生活が安定したらいくらでもしていいから今は許して…………。」

だが断る(嫌だ)!」

「うわぁ強い意志。」

 

ずっと押し留めていたエノクが諦めてキスを受け入れようとしたその時。

 

 

ガチャ

 

 

「…………………。」←キス顔のまま固まるリサ

「…………………。」←同じく驚いて固まるエノク

 

 

 

 

 

「…………………。」

↑漁ろうとドアを開けて部屋に入ったら子供同士で深いキスをしようとしていた所を目撃してしまった掃除屋

 

暫く固まる三人。

 

「…………………152、493292327019082(あ、どうぞごゆっくり)」

 

掃除屋はそのままそそくさとドアを閉めて、その場から立ち去ろうとする。

 

「逃がさないわよ?」

 

次の瞬間、壁から数本の触手が突き抜けて掃除屋に襲いかかる。無論掃除屋も反撃して逃れようとする。が、その触手は想像以上に精密に動き、容易に掃除屋をからめとる。掃除屋はそのまま空いた穴へと引きずり込まれてしまった。

 

「3289!4372097373280!」

「エブちゃんの触手も問題無いわね!」

 

右手から先を5本の触手を生やしたリサはその捕らえた掃除屋を地面に叩きつける。その後、何か掃除屋が叫んでいたように見えたが特に気にせず触手を消し、腰の千景を抜刀して首を断ち切った。首の断面からはとんでもない量の液体が流れている。

 

「うえっ、肉無いわよこいつ。」

「んー……体の構造が虫に近いのかも。内側がほとんど水分だ。」

「ま、とりあえず回収しましょ。」

 

千景を振るい、液体を飛ばして納刀したリサは指を鳴らして使者達を呼び出す。わらわらと出てきてそのまま掃除屋の死体と共に消える前に、一人がエノクの袖を引っ張った。

 

「ッ」バッバッ ミブリテブリ

「えーと、《よくわかんない素材だからもっとサンプルが欲しい》……でいいのかな?」

「!」グッ

 

使者はサムズアップしている。

 

「あーもう萎えたんだけど~。」

「あはは、さっきも言ったけどそういうのは都市に入ってからね。」

 

そう言いながらエノクは部屋の角にあった作業台を使者と共に片付け始める。どんどん解体されていき、最終的には全て使者が持って行ってしまった。

 

「さ、そろそろ行こうか。」

「もう移動するの?」

「本当はもう少しここに居たかったんだけどね……。」

 

残念そうに笑うエノクはリサの方を向いたまま、先程空いた壁の穴辺りに大砲を向け、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら仲間を呼ばれたみたいだ。」

 

人影の様なものがが見えた瞬間、躊躇無く大砲の引き金を引いた。

 

 

 

 




この作品ではエノクとリサはほぼ恋人みたいな関係です。コンビネーション的な意味では熟練夫婦ですが。
ちなみにあの街にいた者でエノクの事をそういう目で見ているのはリサを含め数人程です。他は精々可愛い位にしか思ってません。

今さらですが、二人の狩装束はこんな感じです。
エノク 帽子  ヤーナムシリーズ
    装束  狩人シリーズ
    手袋  神父シリーズ
    ズボン ゲールマンシリーズ

リサ  フード 異邦シリーズ
    服   人形シリーズ
    腕帯  鴉羽シリーズ
    ズボン マリアシリーズ

それぞれ使者達に仕立て直してもらって子供サイズになってます。
普段(拠点中)は原作の格好です。

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