最近この小説にも赤色評価が着きました。皆様、ありがとうございます。
それでは、どうぞ。
「さて、ここからどうしよっか。」
狩人の夢を通って22区の裏路地へと戻って来たエノクとリサ。街並みは二週間前に外郭から訪れた時と変わっていないが辺りは少し暗くなっている。
「取り敢えず隣の区までは電車で行くとして……巣に入れるのかしら。」
「行ってみるしかないよ。」
街の中を歩く二人。先程までいた23区よりも建ち並ぶ店は大人しい雰囲気ではある。
「次の依頼が最後でしょ?」
「うん、そうなんだけど………。」
「どうかしたの?」
「なんというか………うん、まだ仮免の子供に頼む仕事じゃない物が多くなかった?」
「人材不足なんじゃない?」
ガタン ゴトン
「…………。」
「…………エノクゥ。」スピコラスピコラ
22区の駅から電車に乗り、寝ているリサの頭を肩に預けられながら揺られているエノクは何かを考えんでいる。
(さて、フィクサーになった後はどうしようか…正直な所、組織云々はヤーナムであまり信用出来なくなったからなぁ。いや、けど個人でいることもそれこそ面倒な事になりそう………この都市、ヤーナム以上に組織が複雑そうだし。)
そこまで思考を巡らせた所で一度リセットしようと息を吐く。すると、電車のドアが開いた。目的地ではないが、停車駅のようだ。元々少なかった乗客のうち何人かは席を立って出ていき、代わりに何人か新たに入って来た。
「……………。」
「座ります?目的地まで遠いです。」
「空いてます?問題無いのでは。」
「あそこです?」
最後辺りに入って来たのは不気味な白い仮面で顔を隠し、黒いローブで全身を覆った巨体な人である。しかも三人いる。エノクは一瞬そちらに視線を向けるが、こちらに興味を持たれる前に戻した。三人組はそのまま車内を歩き、エノクとリサの目の前の席に座った。
(奇妙な………いやヤーナムにゴロゴロいたっけな。)
そんな変わった装いをした三人を見て感想をもつエノクだったが、自分達のいた環境では余り珍しい物では無かった事を思い出した為、少しげんなりしている。少しため息をつきながらリサの頭を撫でていたエノクだったが、その内目線が自分たちに向かってくるのを感じた。
(誰だろう?)
「「「……………。」」」ジー
顔を上げると先程目の前に座った三人組が全員こちらを身動ぎもせずに見つめていた。仮面には穴などなく、それがまた不気味さを醸し出している。流石に変だとエノクが思い始めたところで、三人のうち一人が話しかけてきた。
「初めまして?ご機嫌いかがですか?」
「ご機嫌いかがですか?」
「ご機嫌いかがですか。」
「………ええ、問題無いですよ。」
一応会話が可能そうであるため少し怪訝な顔になりながらも返事をするエノク。
「それはそれとして、どちら様でしょうか?」
「お客様ですか?仕立屋です。」
「美味しそうですね?大丈夫です。」
「仕立屋です。食べて良いですか?」
「良く分かりませんが、駄目です。」
不躾に発せられた「お前を食べていいか」発言も笑顔で流すエノクは内心でため息をついた。今一掴み所は無いが、狂人の相手はヤーナムで慣れているためそれとなく対応しているうち、ふと疑問を問いかけた。
「それにしても……仕立屋ですか?どんな仕事なんでしょうか?」
「簡単です?糸を作って布を織ります。」
「糸は何かを食べて作ります。」
「貴方を食べてみたいです?」
「ふむ…………どんなのですか?」
「興味がおありですか?こちらです。」
エノクの言葉に応えるように一番左に座っていた者が自分の体を裂いて中から赤い布を取り出した。
「昨日作った布です。こちらを狙った者を生地にしました?」
「あまり美味しくなかったです?布の質もよくないです?」
「貴方はどんな味ですか?」
「……珍しいですね、人間から作られた布ですか。まぁ服なら沢山有りますし、別に欲しくは無いので大丈夫です。」
「あとさっきから食欲旺盛な奴……エノクは渡さないから。」
いつの間にか起きていたリサがエノクの肩に頭をのせたまま三人組………謝肉祭のうちの一人を睨み付ける。先程から食べる事しか言っていない者は首をかしげた後、残念そうに肩を落とす。
「食べたかったです?」
「なんかすいませんね代わりにこれどうぞ。」
そう言ってエノクは虚空に手を突っ込むと、巨大な狼の頭を取り出した。眉間に腕一本が入りそうな穴があいており、他に傷痕は見当たらない。
「こないだ狩った奴何ですけど……これでも良いですか?」
「これはなんですか?気になります。」
「外郭の化け物ですよ。」
「気になります?食べますね。」
謝肉祭達は自分たちの体から無数の触腕や牙を出すと、狼の頭を切り分けて体の中に運んだ。そのまま暫くの間モゴモゴと体を不自然に膨らませる謝肉祭達だったが、やがて鋭く尖った指に黒に近い赤色の糸が紡がれ始めた。三人が体内から糸を出しながらそれを織っていく姿を見ているエノクとリサは興味深そうに眺めていた。
「出来ました。よかったです。」
「良い出来です。満足です?」
「美味しかったです?」
完成品を二人に差し出してくる謝肉祭。その布はグロテスクな素材からは考えられない程に滑らかで高級そうな布だった。
「ふぅん?……腕前は一人前みたいね?」
「これ貰って良いんですか?」
「良いものだったお礼です?報酬ですね。」
「美味しかったです?」
「ふむ……そうですね、でしたらこれらはあげちゃいますね。」
そう言ってエノクは先程出した狼の首から下の部分を取り出す。
「どうぞ、お納め下さい。」
「よろしいですか?ありがとうございます。」
一人がそう言うと謝肉祭達は一斉に狼の死体を解体し始め自分たちの体内に収めた。電車の中に血痕は一つも残っていない。
『次は、○○、○○』
「次ですか?降ります。」
「依頼はあります?お待ちしてます。」
「美味しかったです。」
丁度そのタイミングで車内にアナウンスが流れ、電車がスピードを緩め始めた。謝肉祭達はエノクとリサに別れを告げるとわらわらと扉の前に向かって行き、駅に着いた後そのまま去って行った。そのまま扉は閉まり、電車は発車した。中では布を貰った二人が手触りを確認しながら話し始める。
「………で、これどうする?」
「後で使者君達に新しい装束にして貰う?こっちの都市でも違和感が無い物を作って欲しかったし。」
「それもそうね。」
そう話を締めくくった二人は、布を虚空に仕舞うとそのまま椅子の背もたれに寄りかかり、今度は二人揃って寝てしまった。
(((なんだったんだろ今の………………。)))
他の乗客を置いてけぼりにしたまま。
乗っているのはW社の物ではなく、普通の物です。良く見る壁に座席があるタイプですね。
はい、というわけでリクエストのあった謝肉祭を出してみました。書いてて思ったんですが、電車乗るんですかねこの人(?)達。貰った布はその内出します。