「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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はい、原作を知っている人ならタイトルで分かると思いますが、あの人が出てきます。





それでは、どうぞ。


「C」

『次は、□□○○、□□○○。』

「…………着いた?」

「ふぁあ…………。」

 

車内アナウンスが流れたところで二人は目を覚ます。流れるアナウンスからは目的地の駅名が聞こえてきた。二人揃って伸びをした後、のそのそと立ち上がり扉の前まで移動する。

 

『扉が開きます、ご注意下さい。』

ガシュッ  シャー

「さ、行こうか。」

「分かってるわよ。」

 

扉が開いたと同時にエノクとリサは駅のホームへと足を踏み入れる。周りを見ると路線が何本も並んでおり、規模の大きさが伺える。

 

「意外とあっさり巣に入れる物なのね。」

「まぁ、明るさからして裏路地との差は分かるけど……何と言うか、どこかしら高級そうな雰囲気が漂ってる。」

「カインハーストの玉座の間とか?」

「あれは別物だと思うよ?」

 

駅のホームの中をてくてくと歩きながら会話する二人。改札に切符を通して出た先は、様々な店が立ち並ぶショッピング街だった。23区の裏路地も賑わっていたが、雑踏とは少し違いとても上品そうだ。その光景を前にして、エノクもリサも少し驚いている様子だ。

 

「………こういった場所は初めてだなぁ。」

「仕方ないでしょ、ヤーナムにこんな所無かったし、元々外郭に捨てられた時点で……それで?どこら辺なの?依頼者がいるのは。」

「ちょっと待ってね今依頼書出すから。」

 

エノクは着ていたパーカーのポケットに手を突っ込むと、そこから折り畳んだ依頼書を取り出した。

 

「ええと………午後4時から8時の間に総合図書館の中で待ってるみたいだよ。」

「………地図とか無いかしら。」

 

リサが辺りをキョロキョロと見回すと、巨大な掲示板と共に、駅近くの施設を示した地図が張り出されていた。二人はその地図に近づいて行き、目的地を確認し始める。

 

「図書館図書館…………あった、ここから歩いてすぐみたいだね。」

「じゃあ早く行きましょ。」

「どんな所だろうね。」

「ビルゲンワースみたいな所じゃない?図書館とか言うぐらい何だから蔵書量は多いんでしょ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………。」」

 

目的地の近くで二人は周りを見て見ながら歩いていた。周囲の人間の会話や装いを見て、何やら戸惑っているようだ。

 

「………………ねぇ、ここ学校じゃないの?」

「………ホントにビルゲンワースっぽい所(学校)とは思わなかったなぁ。」

 

二人の目線の先には、とてつもなく大規模な建造物があり、入り口らしき場所の人の出入りはかなり頻繁だった。

 

「ヤハグル位ならすっぽり入るんじゃ無いの?」

「まぁ、規模の大きさはそのぐらいなのかな………図書館どこだろう。」

 

物珍しそうに舗装された道を歩くエノクとリサ。建物の周りには芝生などがあり、とても開放的だ。今までいた場所が街中だったり荒れ果てた土地だったりしたためか、明るい自然を前にして少し動揺している二人に、何処からか声がかかる。

 

「ねぇ、そこの君達、何かお困りかな?」

 

二人がその声に反応して振り向くと、そこには茶髪をポニーテールにしている女性がいた。鴬色のシャツに黒色のキュロットパンツを着ている。肩に掛けたショルダーバッグは膨らんでおり、何か本が入っているのが分かる。悪意の欠片もない様子であるため、二人は大人しく事情を話す事にした。

 

「えぇ、ちょっと図書館を探してるのだけれど、広くって。」

「そうなの?じゃあ私が案内してあげようか?」

「良いんですか?」

「いいのいいの、私も丁度図書館行こうとしてたところだから。」

 

朗らかに笑う女性はそのまま二人の前を歩き出す。これまでの人間関係の中でも殆ど居なかったタイプの女性に思わず顔を見合わせる二人だったが、先を歩いていた女性が不思議そうにこちらを見ている事に気がつき、急いで着いていった。

 

「それで、二人は図書館で勉強?まだまだ遊び盛りなのに頑張るね。」

 

道すがら、女性は隣を歩くエノクとリサに話しかける。

 

「あぁ……別に僕達は勉強の為にここに来た訳じゃないんです。」

「あれ、そうなの?じゃあ、好きな本でもあるのかな?」

「そういう訳でもないわよ………単純に待ち合わせ場所がそこなの。」

 

問いかけられた二人は女性を見上げ返事をする。自分の予想が外れた女性は少し首をかしげる。

 

「待ち合わせ?……私はよく使ってるけど、あんまり他の人が待ち合わせ場所として使うのは見たことないなぁ。」

「そう?単純に依頼されたから来たのだけど。」

「…………依頼?」

 

リサの言葉に反応する女性。その顔には驚きの表情がありありと浮かんでいる。

 

「?えぇ、僕らは一応フィクサーですから。」

「まだ一応だけどね。」

「あー、じゃあ貴方達なのね………そういえば、自己紹介がまだだったわね。」

 

女性は頬を掻きながらそう言うと、右手を差し出してくる。二人が意味を図りかねていると、女性は笑いながら告げた。

 

「依頼者の「C」ことカルメンよ、よろしくね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所にしていた図書館の中、その休憩スペースにて三人は対面していた。

 

「いやぁまさか君達みたいな子供がフィクサーとして働いてるとは思わなかったなぁ。」

「別に良いじゃない、仕事はちゃんとやるわよ。」

「あぁ、ごめんごめん、別に貶してる訳じゃないの。ただちょっと意外でね………私、巣の育ちだから裏路地の詳しい事情は知らないけど、まだ10歳位の子供が働いてるって話は聞いたことなかったから。」

「親がいないから自分で何とかしてるだけよ。」

「あっ………ごめんなさい。」

「気にしないでいいわ。私達を捨てた親の顔なんざとっくの昔に忘れたし。」

 

申し訳なさそうな顔をするカルメンにリサは軽く返事をする。その顔には「どうでもいい」という感情が浮かんでいた。エノクは話が一度途切れた所で本題に入ろうと依頼書を差し出した。

 

「取り敢えず、依頼の確認をさせて頂けますか?荷物の運搬としか書かれて無かったので詳細が分からないんです。」

「あー、そうだったね。」

 

カルメンは何かを思い出したかのような声を上げると、姿勢を正して二人を見る。

 

「私がして欲しいのは引っ越しの手伝いなの。」

「引っ越し?」

「………わざわざフィクサーに依頼しなくてもそういう業者みたいなのに任せれば良いんじゃないの?」

「あぁ~………もっと詳しく言うとこっそり引っ越したいの。出来る限り誰にもばれずに。特に………親には。」

「………それはまた。」

 

気まずそうに視線を反らすカルメンはぽつりぽつりと話を続ける。

 

「私、隣の11区の大学で少し研究したいことがあるんだけどね、周り……特に両親から早く翼に入りなさいって急かされてるの。一応推薦は貰ってるからそうなれば簡単だけど……。」

「翼に入れる事はかなり名誉な事って他の人が話してるの聞いたけど?」

「私がしたいことが全く出来なくなるの。」

 

薄く笑い、肩を落とすカルメンはどこか疲れているように見えた。

 

「私の今研究を理解してくれてるのは私の可愛い後輩位だし……。」

「研究?」

「えぇ、人の持つ可能性を否定するっていう精神的な病のね…………この都市にはそれが蔓延してるって思ってるの。」

「病………ですか。」

「…………ねぇ、カルメン?」

「なぁに?」

 

病というワードに反応した二人は顔を見合わせ一瞬悩む素振りを見せるも、頭を振って思考を元に戻す。リサはカルメンの名前を呼ぶと指で上を差しながら告げた。

 

「依頼については承ったわ。そういった力仕事は得意だからね。代わりに一つ条件があるの。」

「条件?」

「その研究っていうのがどんなのか知りたいの。」

「少しばかり興味が出ました。」

「ホント!?」

 

リサとエノクの言葉にカルメンは目を輝かせる。先程までの憂鬱さは何処かに行ってしまったようだ。カルメンはすぐにで立ち上がるとウキウキと荷物をまとめ始める。

 

「じゃあ早速案内するわね!」

「どこに?」

「私達の研究室!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん♪ふふん♪」

「…ふ~ん。」

 

 

鼻歌が溢れる位に機嫌がいいカルメンの後をてくてくと着いていく二人。かなり巨大な施設の中を興味深そうに見ていると、何処からかひそひそとした声が聞こえて来た。

 

「ねぇ、あの人今度は子供にまで説明するつもり?」

 

           「まだ魂の治療とか言ってるのかしら。」

「というかあの人翼からのオファー蹴ったんだって。」

 

     「は?嘘でしょ気でも狂ってんの?」

 

 

「…………………………はぁ。」

「…………どこもかしこも似たようなもんね。」

 

耳が良いが故に周りの声がしっかりと聞こえたエノクとリサは呆れたような顔をする。思い出されるのはヤーナムの住人達である。排他的で子供であっても余所者であれば一切の慈悲が無い者達が頭をよぎったリサは心底嫌そうな声で呟き、エノクは小さくため息をついた。

 

「ん?どうかしたの?」

「……何でもないわ、早く行きましょ。」

 




はい、まだ学生時代のカルメンです。歳はまだ20歳ぐらいですかね。

カルメンの研究の賛同者ってかなり少ないと思うんですよね。本人の人柄とかで大分ましになっていますが、プロムン世界の人々にとっては「馬鹿みたいな事をしている」という意見が強いと思います。だって周りには今が当たり前でカルメンは精神論の新興宗教を立ち上げようとしてるようにしか見えてないんですから。


カルメンの親は原作では言及されてませんでしたが、この作品では巣の中で働く一般人みたいにしています。
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