それでは、どうぞ。
「じゃ、また明日駅で会いましょ。」
「うん、ありがとう……所で寝る場所とかって大丈夫?」
「近くの適当な宿泊場所を探しますよ。幸い、金銭ならある程度持ってるので。」
部屋から引き上げ、マンションの前にいるエノクとリサは、スーツケースとバッグを持ったカルメンと会話している。
「へぇ、どれぐらい?」
「ざっと……裏路地で1ヶ月は余裕で生活出来るぐらいですかね。」
「大金じゃない。確か貴方達都市に来たの最近だったわよね?」
「私達を拐って金に換えようとした奴らの身ぐるみひっぺがして巻き上げただけよ。向こう側から仕掛けてきたんだから文句は言わせないわ。」
「へ、へぇ……強いのね。」
悪どい笑みを浮かべるリサとニコニコとした表情を崩さないエノクに、カルメンの顔が少しひきつっている。
「そうだ、駅の近くにホテルとかない?2人で泊まれそうな所。」
「ん~……あ、私が時々使ってるホテルならあるよ。家まで帰っても休めなさそうなときはよく使ってるとこなんだけどね………………。」
「ベッドにダイブ!」
ボフッ!
「んー、ふかふか………。」
「テンション高いねリサ。」
マンション前でカルメンと別れた後、駅前まで戻って来た2人はカルメンから聞いたホテルに入る。幸い、子供だけでもチェックインが出来たため、エノクとリサはそのまま自分の泊まる部屋へ直行していた。
「だってふかふかのベッドなんて初めてなのよ?ヤーナムにあるベッドは大体質が悪いか医療用の固いやつだったし、外郭と裏路地でもこんなふかふかは味わえないんだもの。ほら、エノクもやってみなさいよ。」
「うーん………そうだね。」
そう言ってエノクはリサの隣に腰掛けて、背中から倒れる。
ボフッ!
「…………気持ち良い。」
「でしょ?」
思わず安らかな顔になるエノク。天井を見上げていると、視界の端からぬっとリサが顔を出してくる。その顔には笑みが浮かんでいる。しばらく落ち着いた時間が過ぎた所でエノクが口を開いた。
「…………所でさ、リサ。」
「何?」
「何で僕の腕を押さえてるの?」
エノクは顔を動かさず、目だけで上を見る。そこにはガッチリとリサの手で拘束された自分の腕があった。少しもがくがびくともしない。拘束した手をそのままにしながらエノクの上に跨がったリサはニッコリと笑いながら話し始める。
「ん~、逃がさないようにするため?」
「…………何で逃がさないようにしてるの?」
「そんなの
ヤるために決まってるじゃない!」
「だろうね。」
突如興奮し始め、笑みを深くしたリサから逃れる為に拘束から抜け出そうとするエノクだったが、先程と同じようにリサの拘束はびくともしない。それどころか空いた左手でエノクの肌を触り始めた。
「一応僕の方が筋力高い筈なんだけどなぁ?」
「そんなもの技術でどうにかなるわ!さぁ速く始めましょ!あの時のキスからずっと溜まってるのよ此方は!」
「ここ一応他の人も泊まってるからね?あまり煩くしたら迷惑だと思うんだけど……。」
「そんなの気にしたら負けよ!」
「気にしなよ。」
「うるさいッ!」
エノクは苦笑いしながら落ち着かせようと話しかけるが、既に発情しているリサには効果が無いようだ。
「反論してくる口なんてこうしちゃうんだから!」
「落ち着いッんむ!?」
遂に唇が重なりあった。しばらく部屋に舌が絡まり合う音が響き渡った後、ゆっくりと顔を離すリサとエノク。足りなくなった酸素を取り込むかのように息を荒げる2人の間には唾液で出来た糸が繋がっている。リサは頬を赤くし、とても獰猛な笑みを浮かべながらエノクのパーカーに手をかけると、そのまま脱がせた。
「リサ……明日も早いんだから止めとこ?キスならいくらでもして良いから……ね?」
「何言ってんのよ。こんな
「いや今リサに脱がされたんだけどね?」
「だまらっしゃい!」
その声と共にリサは自分の服を脱ぎ捨て、ついでにエノクの残りの服も取っ払った。お互いに裸になった所でリサが暴走し始める。
「あぁ、もう我慢できない♥️」
「……………………はぁ。」
「エノクッ!!♥️」
~翌朝~
「……………だから止めとこって言ったじゃないか。」
「………ッ♥️……………♥️」ビクンビクン
「……何で勝てないって分かってるのにわざわざ襲いかかってくるのかな。」
ベッドから起き上がったエノクが隣のリサに対して話しかける。が、リサは時折体を震わせるだけで反応は無い。どうやら余韻に浸っているようだ。寝ているが、オーラは何とも幸せそうである。余裕綽々なエノクは眠るリサの頬に一回キスをするとそのままベッドから立ち上がり、シャワーを浴びに向かう。
「…………ベッドどうしようかな……。」
考えていることを呟きながら体液だらけの体を綺麗にし、そのままパーカー姿に着替えた所でようやく起きたリサが声を出す。
「………………んッ。」
「あ、おはようリサ。」
「……………おはよ、エノク………また勝てなかった♥️」
悔しがっているようなセリフだか、うっとりとしながら言ってるので説得力が無い。実際、開かれた目の中にハートが見える気がする。
「ほら、早く体洗っておいで。」
「待って……余韻に浸らせて………。」
「この後仕事あるんだから……。」
「エノクが上手すぎるのが悪いんだもん♥️リードしようとした私をぐっちょぐちょにして、容赦なく………えへへ♥️」
エノクは、ベッドのシーツを体に纏いながら頬を赤らめてトリップしているリサに対して近づくと、耳元まで口を寄せてぼそりと小声で話す。
「………………次はもっとすごいことしてあげるからね?」
「!?♥️」
「さ、早くシャワー浴びて来て?その間にベッド何とかしとくから。」
「さて……カルメンさんは何処だろう……。」
「もういるみたいよ。」
「あ、来た来た!おーい、こっち~!」
手を繋ぐエノクとリサは駅の入り口の所で手を振るカルメンからの声に反応する。良く見れば、隣には無表情で立っているアインもいた。2人はそのまま駆け寄っていく。
「おはようございます。」
「うん、おはよ。ホテルは良かった?」
「ええ、久々にしっかりと寝れた(意味深)わ。」
「所で、何故アインさんも?」
「…………見に行くだけだ。」
「成る程、なんやかんやで同棲することになったと。」
ヤーナムで培った理解力でアインの端的な言葉に返答するエノク。
「家も前もって決めてるし、2人でも十分な所選んでたから後は荷物を運び入れるだけよ。」
「そ、じゃあさっさと行きましょ。」
「あ、2人の電車代位は出すから。行こっか。」
そう言ってカルメンを先頭に駅の中に入って行く一行。一番後ろを歩くアインがふと前を歩くエノクとリサの首辺りを見たところで眉をひそめる。
(……………歯形?)
アインの目線の先には、2人の首元についた小さな歯形があった。
(…………最近の子供は進んでるな。)
優秀な頭脳でナニをしていたかを理解はしたものの、別に気にすることでもないとそのまま視線を前に戻すアイン。後ろが気になって振り向いたカルメンは、アインの歩く速度が落ちた事に気がついた。
「どうかしたのアイン?」
「……カルメン……いや、何でもない。」
しかし、特に何も察知することは出来ず、そのまま納得して進み始めたのだった。
「地味に名前呼びになってない?」
「昨日色々あったんだよきっと。」
「こっちね、着いて来て。」
隣の区……11区に着いて早々、カルメンは歩きだした。他の3人も離れる事なくそれに従って歩く。ふと周りを見回したリサがポツリと言葉を漏らす。
「何というか、さっきの区より人が多いわね。」
「んー、恐らくここの翼の経営が安定してるからだと思うわよ?」
「?翼の存続と巣の存続に関係があるんですか?」
「うん、街……巣は翼の物質的な豊かさの恩恵を直接受けられる所なの。翼で働く人とその家族が住んでたり、俗に言う中流階級以上の人が住む場所とでも思って。」
「あぁ、翼が無くなれば巣に向けられていた恩恵が無くなって必然的に裏路地と同じになるんですね。」
「そう言うこと。今更だけど、かなり教養あるのね。」
「そこら辺は気にしないでちょうだい。」
そのような話をしながら大通りを進む一行だった。その途中ふと、アインが先程から感じる視線の元を探ると遠巻きにこちらを見やる人を何人か見つける。しかし悪意等は感じないため、無視していた。しかしリサはそう思わなかったのか、少し苛ついた様子で話し始めた。
「………さっきから視線が鬱陶しいんだけど。」
「実害が無いだけヤーナムよりましだと思うけど?」
「ホオズキと比べないでよ。流石にあれがここにいたら全力で逃げないといけないし。」
「あっはは…あまり思い出したく無いね。」
「………………何の話をしてる。」
エノクとリサがヤーナムでの話をしていると、アインが入って来た。前を歩くカルメンも興味深そうに耳を傾けている。
「別に、単純にこっちを見つめるだけで気を狂わせてくる奴を思い出してただけよ。」
「………都市伝説か何かか。」
「ん~、似たようなものですかね。彼女がいたら、確実にその位の被害は出るでしょうし。恐らくもういませんが。」
「…………そうか。」
エノクの言葉に納得したのか興味を無くしたのか分からないが、そのままアインは無言で歩いている。
「ま、今となっては関係ないわ、忘れてちょうだい。」
「そう?にしても、何でこんな視線がくるのかしらね。」
「………強いて言うなら顔がいいからじゃない?」
「「?」」
「あ~、アイン格好いいもんね。狙ってた人もいるみたいだったし。」
「男2人は自覚無しね。」
そのまま歩くこと5分、カルメンが一つのマンションの前で立ち止まる。
「ここの部屋借りてるから、早く荷物置きましょ。」
「大体いい場所ね。」
「まぁ学校から給料出るし、少し高めだからね。寝るならいい場所の方が良いでしょ?ほら行きましょ。」
「………引っ張らないでくれ。」
カルメンはリサの言葉に答えると、アインの手を引いてそのままマンションのエントランスに入って行く。
「遠慮しなくなったわね。」
「スルーでいいんじゃないかな?」
「それじゃ、私達の仕事はこれで終わりね。」
「ありがとね2人とも、依頼以外の事でもお世話になっちゃって。」
「研究については少し興味があるので、また伺うかもしれませんね。」
「ホント!?それじゃあ連絡先交換しとこ!」
そう言ってカルメンは携帯端末を取り出し、そのアドレスを記入した紙を手渡した。
「いつでも電話かけてきていいわ。貴重な意見を聞かせてね?」
「ええ、軽いものでいいなら協力するわ。」
軽く握手をするエノクとリサとカルメン。そして、そのままエノクとリサはその場から立ち去って行ってしまった。その様子を端から見ていたアインは伸びをするカルメンに話しかける。
「………今日はどうする。俺は家に戻って荷造りを続けるつもりだか。」
「ん~……家具もベッドも無いからなぁ……今日はここら辺を見て回って一緒にホテルにでも泊まりましょ?荷造りなら明日手伝うから。」
「………………カルメンがそう言うなら。」
「よっし決まり!それじゃ、私達も行きましょ!」
カルメンとアインもその場を後にし、街へと繰り出して行った。
リサはスイッチの入ったエノクさんに勝てないんや。
アインは何かを理解する事に関しては他の追随を許さない程の天才ですが、必要がなければ一切他人に伝えません。コミュ障なので。
~昨晩のカルメン~
ピンポーン
ガチャ
「ヤッホー、アイン。」
「…………何の用だ、先輩?」
「ちょっと話したい事があってね?ご飯も買ってきたから……ね?」
「………まぁいい、上がってくれ。」
「ねぇアイン、一緒に住まない?」
「いきなりどうした。」
「何というか……ほら、同じ場所で働くんだから、打ち合わせとか直に出来た方が楽でしょ?」
「…………それもそうだな。」
(確かにカルメンの言う通りだな、そちらの方が楽だ。)
「うん。あ、一応明日見に行こっか。」
(よっしゃ!言質は取れた!)
「あ、そうだ。」
「どうした?先輩。」
「もう先輩後輩の関係じゃなくなるんだから、私の事は名前で呼んでね?」
「……先輩でいいだろう?」
「ダーメ!ほら、カルメンって呼んでみて?」
「…………カルメン。」ボソッ
「うん!それで良いの!」ニッコニコ