前回に引き続き、元同期組です。今回と次回はブラボ要素が多めです。
それでは、どうぞ。
「あ、申し遅れました。僕はエノクといいます。」
「リサよ。」
「そういえば忘れてたわね。私はジュリアって言うの、おそらく貴方達が言ってた依頼を受けるフィクサーの1人よ。」
そう言ってジュリアは手招きをしてソファまで案内する。
「取り敢えず座って座って。ココアでいいなら出してあげるけど、どうかしら?。」
「あ、お構い無く。」
「別にコーヒーも飲めるし、何でもいいわよ?」
「あらそう?」
そんな穏やかな会話をしていると説教が終わったイサドラとサンがエノクとリサに気が付く。
「ちょっと、誰よその子達。誰かの親戚?お使いにでも来たの?」
「違うわ、この子達は同業者よ。」
「同業者?……ってことはフィクサーなのかい?」
ジュリアの言葉に目を丸くするサン。隣のイサドラも以外そうに目を開いており、次の瞬間には疑うような視線になった。
「……嘘じゃないの?流石にこんなまだ10歳位の子供がフィクサーとかあまり信じられないんだけど。」
「そうかしら?さっき免許見せて貰ったけど、ちゃんと本物だったわよ?」
「ふーん………。」
ジュリアから聞いた情報もあまり信用していないのか、疑わしい目線は絶やさないイサドラ。しかし当の本人達は一切気にせずジュリアに話しかけている。
「ジュリアさん、貴女以外にも依頼を受けた人がいると言ってましたけど、こちらのお2人ですか?」
「ええ、そうよ。こっちがサンでこっちがイサドラ。」
「そうなんですか、よろしくお願いいたしますね。」
そう言ってペコリと頭を下げるエノク。サンは温和な笑みを浮かべて返事をするが、イサドラは腕を組んだまま険しい表情を崩さない。
「イサドラ、いつまでそんな不機嫌なの?ほら、貴女は可愛いんだからいつまでもそんな顔してちゃダメよ?」
「……余計なお世話よ。」
ジュリアの言葉に少しだけ顔赤くしてそっぽを向いたイサドラだった。それを横目に、リサはエノクから受け取っていた依頼書を取り出し、百合百合しい雰囲気を醸し出す2人をよそにエノクと共にサンへと話しかけた。
「ねぇ、一応確認しておきたいんだけど、この依頼でいいのよね?」
「えっと…ちょっと待っててね……依頼者………内容……うん、間違いないよ。」
「そう、本格的に動くのは明日になるのかしら。」
「まぁ、そうだね。……そうだ、君達は何処かに泊まるのかな?」
「そうですね、夜を安全に凌ぐ方法ならあるので心配しなくても大丈夫ですよ。」
「?そうなんだ、一応この事務所のソファ位なら貸せると思ったんだけど………。」
「問題無いわ。」
リサがそう堂々と言い切った所でイサドラとジュリアが話に入って来る。
「ごめんなさいね、ほったらかして。あ、そうだこの後時間あるかしら?」
「ん~……特に無いわよ。」
「じゃあ私がここら辺の案内をしてあげるわ。丁度いつもの見回りの時間だし、どうかしら?」
「…そうですね、僕らそもそも21区に来たばっかですし、そうして貰えると有り難いです。」
「……で、何で私達まで着いていかなきゃダメなのよ。」
「まぁまぁ、ジュリアにだってしっかりとした考えがあって誘った訳だし……ね?」
「はぁ………。」
「あはは……。」
数十分後、街を歩くエノクとリサとジュリアの後ろを着いていくイサドラはため息をついていた。隣のサンもなんとも言えないような笑顔を浮かべている。
「どうしたの二人とも、そんな暗い顔して。」
「別に、なんでもないわ。」
「そう?」
そんなやり取りが行われた後、エノクが何かを思い出したかのような顔をしてサンに話しかける。
「そういえばサンさん、貴方ご兄弟って居られますか?」
「?確かに一人弟がいるけど……それがどうしたんだい?」
「もしかしてパダさんのお兄さんですか?」
エノクから自分の弟の名前が出てきた事に驚くサン。昔からの知り合いであるイサドラも少し目を見開いている。
「あぁ、そういえば似てるわね。」
「パダの事を知ってるのかい?」
「ついこの間依頼で届け物をした先にパダさんが居りまして、そこで少し話しただけですよ。」
「………杖事務所に届け物?」
「何でも最近人手不足だそうで、新人もほぼ出払ってるとの事で僕らが行きました。」
「どう考えても新人が行くような場所じゃないのだけど………ま、そこら辺はどうでも良いわ。」
「な、成る程………パダは元気にしてたかな?」
少し引き気味になるサンだったが、次の瞬間には大切な弟との記憶を思い返したのか穏やかな顔で問いかける。
「ええ、五体満足でしたし、どこも怪我などをしてる様子は無かったですよ?」
「そっか、それは良かったよ。最近連絡が取れて無かったけど…どうやら心配いらなかったみたいだね。」
ありがとう、とお礼を言ってくるサンに対し、エノクは笑みを浮かべたまま返事をする。
「いえいえ、お礼を言われるような事でも無いです、よ………………………………。」
突如黙り混み、その場で立ち止まったエノク。その顔に先ほどまでの笑みは無く、ただひたすらに何かを見つめている。隣を歩いていたリサも同様である。その姿に違和感を覚えたのか、真っ先にジュリアが問いかけてくる。
「ねぇ、どうかしたの?」
エノクは横を向いたまま、目線の先を指差す。そこには路地裏へと続く小道があり、まだ明るい時間であるはずなのに先が見えない。3人が不思議な顔をしてそちらを見たところでエノクが口を開く。
「ここの先って何があるんですか?」
「……確か、色んな店の裏口とか、安いアパートとかだった筈だけど。」
「ねぇ、この先ってどんな人が住んでるの?」
「えっと……そこまでは知らないけど、そんな危険な人はいない筈だよ。」
「二人とも、大丈夫?」
雰囲気が豹変したエノクとリサに戸惑った様子でジュリアが話しかけた所でエノクはため息をつき、リサは舌打ちをする。
「「匂い立つなぁ/わね。」」
「え?」
エノクとリサが呟いた言葉に反応したサンが声を漏らした次の瞬間、二人が駆け出した。
ダッ!!
「あ!ちょっと、待ちなさい!」
イサドラが静止するよう声をかけるも、エノクとリサには聞こえていないのかそのまま振り返る事もなく小道へと入っていってしまった。突発的な行動に動けずその姿を呆然と見送っていたジュリアとサンだったが、髪をかき混ぜて苛ついた様子をみせるイサドラが怒鳴った事で意識が戻ってくる。
「なにボサッとしてるのよ!さっさと追うわよ!」
「え、えぇ!」
「わ、分かった!」
そのまま二人の後を追うように小道へと走って行く三人。先頭を走るイサドラは嫌な気配を感じたのか、それとも警戒心が高まったのかその右手で自分の武器である直剣の柄を握りしめていた。
街灯事務所の三人が小道に入った頃、エノクとリサは狭い道を抜け、少し広い道路に出てきていた。先程まで歩いていた表の通りより明かりが少なく、どこか陰鬱な雰囲気を漂わせる路地裏……というのが通常であることは二人は知らされている。21区は他の区に比べ、比較的安全であるという情報も事前に頭に入れている。
「やけにいきなりの登場ね?」
「ずっと臭いは気にしてたけど、あの道を通りかかった瞬間に膨れ上がったようだった。」
「じゃあ何かしら、この惨状が作られたのが今さっきなのかしらね。」
しかし目の前に広がる景色の半分以上が紅に染まっていた。普段であれば中々起きない大虐殺である。しかしあの街で狩人として獣を狩り続けた二人にとっては見慣れたものである。濃い人の血の匂いが漂うその惨状を前にして二人は何かを確かめるように話し出した。
「……ねぇ、やっぱり違和感があるんだけど。」
「同感、恐らくリサが思った事だよ。」
「………死体はどこに行ったのかしらねぇ?」
そう言って紅に染まった地面を触るリサ。リサの言葉の通り、そこに血があってもその血を流していたであろう人物の痕跡が一つも見当たらない。血が付着している面積から考えても明らかに一人分では足りない筈なのに、肉片どころか骨の欠片すらそこには無かった。暫く考えを纏める為、その場に立ちそれぞれ銀の直剣と反り返った刃を虚空から取り出した所で、追いかけてきた三人が小道から裏通りに入って来た。
「ッ!?」
「ヒッ!?」
「うぷッ………。」
イサドラは目を見開き、ジュリアは短い悲鳴を上げながら後退り、サンは目の前の惨状に耐えきれなかったのか口を押さえて座り込んでしまった。足音に気が付いたエノクは振り返りながら声をかける。
「おや、皆さんも来ましたか。」
「…………何よこの状況。」
「さあ?私達が来た時にはこうなってたけど。渇ききってない新鮮な血だから行方不明者が
「…………何であんた達は平気な顔してんのよ。」
少し顔色が悪くなっているイサドラの問いに対してリサは振り返る事無く返す。
「何百回もこれよりひっどい景色見てたら慣れるわよ。肉片とかグッズグズになった死体が無い分ましな方だし。」
「どんな修羅の国よ!?」
「全員が狂ってる終わりかけの街よ。最終的に残ったまともな奴なんて一人も居なかったし。」
「……………っはぁ!」
イサドラがリサを問い詰め始めた所でようやっと胃から込み上げて来たものを飲み込めたサン。ジュリアがサンの背中をさすっていると、不意に物音が聞こえてきた。
ヒタ………ヒタ………
「…?なにかしら?」
「どうかしたのジュリア?」
「何か水みたいな音が聞こえた気がするのだけど……。」
ジュリアはそう言って辺りを見回す。しかし音源になりそうな物は何処にもない。
「気のせいかしら?」
「………………ジュリアさん、サンさんと一緒にそのまま伏せて下さい。」
「え?」
首をかしげるジュリアに対しそう告げたエノクはいつの間にか背中に背負っていた長方形の鉄塊に棒がついたような物を左手に持ち、そのままジュリアとサンの方へと走り出した。
「ちょ、あんた何する気!?」
突如走り出したエノクを止めようと動くイサドラだったが、加速し続けるエノクはそれを難なく通り抜け、そのまま手に持っていた直剣を鉄塊の棒の部分に突き立てる。音を立てて合体したそれ……教会の石槌を担いだエノクはそのまま振りかぶるように構えた。
「待ちなさ………ジュリア!サン!上!」
「上……ッ!?」
エノクが走り出した時よりも焦ったような声を出すイサドラに何事かと思うジュリアだったが、言葉の通り上を向いた瞬間、その意味を悟る。
「pdup3rdopatxg3awyprpm」
そこには化け物がいた。その姿は犬のように見えるが、その体躯は軽く数mは越えている。口らしき場所からは意味不明な言語が漏れている。しかしそんな事が帳消しになる程のインパクトのある箇所がある。
「何、あれ………。」
「危ない!」
全身の至る所に人間のパーツが生えてる。正しくは埋まっているの方が正しいのかもしれない。幾つもの肉塊が寄せあって出来たその生物には人間の口や目玉、その他諸々などが見受けられる。我慢の限界だと言わんばかりに飛びかかるその化け物を前に動けないジュリアに咄嗟に覆い被さって守ろうとするサンは来る痛みに耐えようと目を閉じる。
「k27o32itnhrh37oyokf3gwp!!」シュバッ!!
「させないよ?」
ドゴムッ!!!
「lc37ynkiho8k!?」
しかしその瞬間が来る前にエノクが両手で振るった石槌が化け物を捉える。質量がエノクが持つ力によって加速したことで、巨大な化け物を軽く10mはぶっ飛ばした。
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……ありがとう。」
「取り敢えず立ってください。まだあれは生きてますから。」
「………今、物凄い音が聞こえてきた筈なんだけど。」
「恐らく何かを代償にしてダメージを肩代わりしてます。手応えが余り無かったので。」
鋭く獲物を見つめるエノクは後ろにいるサンに声をかける。目線の先にはゆっくりと立ち上がり、こちらを威嚇してくる化け物がいた。ぶっ飛ばされたとは思えないほどに元気だ。駆け寄って来たリサは左手に持った散弾銃を化け物に向けて構える
「エノク、援護は必要?」
「嫌な予感がするから一応構えておいて。」
「………所で、そろそろ退いて差し上げた方がいいのでは?」
「え?」
「…………ねぇサン、庇ってくれたのは嬉しいんだけど、ちょっとそろそろ恥ずかしいなぁ。」
「…………あっゴメン!」
「いちゃついてないでさっさと立ちなさいよ。」
今回出てきた化け物のイメージとしては、ちっちゃくなった再誕者+何もないを割らずに犬っぽくした感じですね。まぁ見た目だけなのでその2つよりかは弱いです。知能は高くないし、特別な力も少ししかないので。
三人の性格ってこんな感じであってるんですかね?