「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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口調が安定しません……。



それでは、どうぞ。


契り

「ファル、終わらせてきたよ。」

「随分とお早いですねイオリさん。3日も経ってませんよ?」

「連れてったこの子らが優秀でね、依頼自体は1日で終わってるよ。」

「ついでに外郭で狩りをしてました。」

「な、成る程……。」

「そういう物だよ、受け入れなファル………ふむ、そうだね、ちぃとばかし席を外すよ。」

 

後日、ファルに出迎えられそのまま依頼達成の報告を告げた一向。するとイオリが何やら携帯端末らしき物を取り出し、何処かへ行ってしまった。その背中を見送る二人に対し、ファルは話題を切り出す。

 

「そういえば君達二人に再依頼が入ってるんだけど。」

「内容は?」

「前回と同じく「食料調達」だよ。」

「………あぁ、22区ね。」

「どうするんだい?一応断る事も出来るけど。」

「いえ、受理します。依頼主の方には「一週間以内に届ける」と伝えておいてください。」

「分かったよ…っと、帰って来ましたか。」

「すまないねぇ、少し知り合いに確認を取ってたんだ。」

 

形だけの謝罪をしたイオリはエノクとリサの方をチラリと見た後、ファルに対して話しかけた。

 

「で、だ。この二人の等級、今も9級かい?」

「いえ、一応今回の結果を含めて8級に昇格させようかと。上が納得するかどうかですが……。」

「渋ったねぇ。ま、無所属の奴らは大体そんなもんか……よし、私の名前で推薦しといてくれ。せめて7級ぐらいまで上げてもらおうか。」

「ちょ!?そんないきなり言われても!」

「何勝手に私達の事を進めてんのよ。」

 

大人達の間で繰り広げられる会話の内容にストップを入れるリサ。怪訝な表情を隠そうともしないリサはイオリに尋ねる。

 

「何が目的?」

「なぁに、先輩から有望な後輩に向けた餞別さね。ま、少しやってほしい事はあるが、それもあんたらからしたら大したことでもないだろうよ。」

「……メリットは?」

「貰える金が増える。あと、依頼をある程度選べるってもんかね?等級が上なら、その分実力に見合った報酬が貰えるって事さ。」

「……どうしようかしら、正直胡散臭いんだけど。」

「ふむ……頼みたいこととは?」

 

エノクの返答にイオリは笑みを深くする。

 

「話が分かる奴で助かるよ。知り合いの仕事の手伝いをして欲しい。私の教え子の一人でね、今は護衛専門の2級フィクサーだ。」

「その方の任務を手伝えと?」

「あぁそうさ。何でも、少しばかり規模の大きい依頼らしくてね、一人じゃ荷が重いと思ったのか私にも依頼を寄越してきたが……生憎、私にも予定というものがある。そこでだ、あんたら二人を私の代わりに送りたいのさ。」

「ふぅむ………。」

「おや、あまり良いとは言えない顔だね。」

 

イオリが依頼の詳細を語るが、それを聞いたエノクは少しばかり眉をひそめていた。

 

「正直に言いますと、僕らは相手を殺すことには長けていても守る事に関してはあまり得意とは言えないんですよ。」

「あぁ、それについては問題無い。あんたらはあくまでも遊撃だ。守りはアイツに任せて得意分野で暴れりゃどうとでもなるだろうよ。」

「あ、それなら良いです。」

「なら契約完了だね。ファル、そういう事だから後は頼んだ。ちょっと人に会う約束をしてるもんでね。」

 

そう言うと、良い返事が返って来たことに機嫌を良くしながらその場を離れる。止める暇もなく去ってしまった自分の師匠に重いため息を吐くファルであったが早急に気を取り直して下から自分を見上げている二人から話を聞くことに意識を向けた。

 

「ファルさん、お願い出来ますか?」

「………分かったよ、取り敢えず何とかしてみる。あと、君達に回された任務に関しては、僕の方で探して受理しておくよ。特色の推薦であれば通るだろうしね。」

「ありがとうございます。」

「じゃ、私達も武器の手入れとかしなきゃいけないからそろそろ行くわ。」

「うん、任務の場所に関しては端末に入れとくよ。」

 

 

 

 

 

数分後、エノクとリサの二人は薄暗い路地裏を歩いていた。周りに人は居るものの表の通りより重苦しい雰囲気は、裏路地が決して安全ではない事を思い出させる。しかしそんな物お構い無しに歩く二人は、やがて人影すらない狭い路地へと入って行った。

 

「あったあった、3日ぶりだね使者くん。」

 

そう声をかけた先には一本の曲がった鉄の棒にぶら下がった青白い光を放つカンテラと、その下に集う使者の姿があった。エノクとリサの存在に気が付いた彼らは、わらわらと手を振っている。するとそのうちの一人が二人の足元に近づいて何かをジェスチャーし始めた。

 

「………あ、また?」

「次は誰かしらねぇ。」

 

それから何かを察した二人はその場から広がった霧の渦の中に沈むように消えて行った。

 

 

 

 

 

「む、帰って来たか。」

「成る程、貴方でしたかヴァルトールさん。」

 

狩人の夢へと帰還した二人を出迎えたのは穴の開いた鉄バケツを被った一人の男……ヴァルトールであった。

 

「また着けてるのねそのバケツ。」

「そうだな、本来であれば君達に譲った物なのだが……いかんせんこの状態に慣れてしまってな。再び被る事を許してくれ。」

「構いませんよ、長と言う立場に強い拘りもありませんし。今の貴方は獣食らいでは無く連盟の長としてこの場にいるということでよろしいですね?」

「感謝する、同士よ。………そういえば、どうやら最近虫を潰したようだな。」

 

なんでもないかのように告げられた言葉。しかし、二人はその内容が意外だったのか少しだけ目を見開いていた。

 

「確かに虫は何匹かぶっ殺したけど、"淀み"のカレルは着けてないわよ?それにあの時にはもう虫が見えなくなってるんじゃなかったの?」

「分かっているとも。今のお前達は連盟員として立っているわけではあるまい………何故かは知らないが、この状態になってから以前より意識が明確になった気がしてな。虫の気配がより分かるようになったのだよ。」

 

そこまで言ってヴァルトールは一度言葉を切って物憂げに宙を見上げた。

 

「どうかされました?」

「なに、今更思い返す事でも無いのだろう……いや資格が無いと言った方が良いのか………今になって"虫"というのは、何だったのかと思うのだ。」

「………貴方がそれを言う?」

「その通りだとも、あの時、一人残された私が禁忌を犯して獣を食らった時に淀みと共に虫を見出だした私が言える事では無いのだ。だが、正しく振り返れる機会を得た今、ふと考えてしまうのだよ………。」

「……取り敢えず、座りましょうか。椅子ならありますよ。」

「……感謝する。」

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、狩人様方。」

「ただいま、人形さん。いきなりで悪いけど、お茶を淹れて貰えないかな?」

「お客様でしょうか?少々お待ち下さい。」

 

ペコリと頭を下げた"人形"は、どうやら掃除をしていたようで、その手にははたきが握られていた。その後、"人形"が紅茶を淹れるためにいつの間にか存在していた厨房へ足を運んでいる間に三人は椅子に腰かけて向かい合う。

 

「それで、結局の所あんたはどうしたいの?」

「どう…とは?」

「理解したいのか、納得がしたいのか、よ。正直に言って私達だって完全に分かってる訳では無いけど……それでも貴方が求めてる答えらしき物は知ってるわ。」

「本当か?」

「同じ物である保証は無いけど……それでも?」

「出来るなら、聞かせて貰えると有難い。」

 

リサの問いかけに対し、真っ直ぐに見つめ返すヴァルトール。肯定の意を受け取ったリサはそのまま口を開いた。

 

「……貴方の生きた時代よりも昔にとある狩人が一つのカレル文字を見つけたのよ。『導き』、そう呼ばれていたわ。」

「『導き』?」

「えぇ、獣を狩る中でその狩人を導いた光の糸に付けられた名前よ。医療教会に所属する狩人の筆頭が信じた、細くて儚い、光だったらしいわ。」

「……医療教会だと?」

 

リサの話に出てきた言葉にピクリと反応するヴァルトール。その後、僅かな殺気が漏れだし始め、エノクは少しだけ困った顔をしながら尋ねた。

 

「やはり、医者はお嫌いですか?」

「あの頭のイカれた奴らにはうんざりだったとも。」

「確かに、獣の病が流行った原因も彼らですし、治療と称して馬鹿みたいな実験を行ってましたけど…………あれ、もしかして反論の余地もない?」

「あそこの連中が狂ってるのは今更でしょ。一部はまだましだったけど、患者はもう原型留めて無かったし……というか話が反れてるわよ。」

「狩人様方、お茶が入りました。」

 

リサが呆れた声を出したところで"人形"がポットとカップが乗ったトレーを持って近づいて来た。

 

「あら、ありがとう………うん、いつも通り、美味しいわね。」

「ヴァルトールさんもどうぞ、召し上がって下さい。」

「そう言うのであれば有り難く頂戴しよう。」

 

自分の前に出されたカップの持ち手を掴み、自分の頭を覆う鉄をずらしながら口に近づけてそのまま入っていた紅茶をすする。カップから口を離したヴァルトールは一息着くと感心したように呟いた。

 

「ほぅ、見事な物だ。ここまで上質な物を飲んだのは久方ぶりだ…………して、先程の話の続きは、どういったものだろうか。導きを得たその者はどうなった?」

「そうね……貴方、狩人の悪夢って知ってる?」

「?……すまないが、そういった名称の事件は聞いたこともない。」

「事件ではありませんよ。血に酔った狩人達が行き着く、文字通りの悪夢です。」

「何故そのような物を……まて、今その話題が出るということは……。」

「えぇ、彼……ルドウィークさんはそこに居ましたよ。表現出来ない程に醜い獣となって。」

「発見した時は背負ってた剣の使い方すら忘れてたわ。ま、最後辺りは少しだけ理性が戻ってたみたいだけど。」

「成る程、私の知らぬ所でそのような事が………しかし、そうなるとその導きとは何だ?人の形すらも失う時点でろくな物でもあるまい。」

「貴方もよく知ってる物ですよ。」

「……虫か?」

「そう考えてもよろしいかと。狩りの狂気の中に見えた導きの光、淀みの中に潜んだ虫。見た目こそ違えど、それに取り付かれた者の末路は皆獣です。貴方も言っていたでしょう?「何処もかしこも虫だらけだ」と。」

「あぁ……確かに言ったな。しかし……いや………。」

「どうかされましたか?」

「すまない、記憶が曖昧でな……君達にこの長の証を残した後の事があまり思い出せんのだ。」

 

額の部分を押さえるヴァルトール。鉄兜の隙間から聞こえた声には困惑と動揺が含まれているのが分かる。

 

「私は確かにこの鉄兜を残した後にあの場所を去った筈なのだ……………。」

「それは間違いないわ。連盟員としての呼び出しに応じてたけど。」

「……すまない、その記憶も無い。」

 

暫くの間俯いて思考を巡らせていたヴァルトールだったが、やがてその事実を受け止めたのか真っ直ぐ二人を見て話の続きを促した。

 

「……まぁ、良い。そもそもここにいること自体、夢現のような事なのだからな。」

「話の続きしていい?」

「構わないとも、取り乱してすまないな。それで、虫の根絶の話であったか?」

「若干違うけど……まぁ大体似たような物ね。結論を言えば、貴方が言ってた事は強ち間違いでも無かったのよ。」

「………そうなのか?」

「貴方が見ていた虫は人の精神に巣食う寄生虫……ま、虫の形をした別物だったのよ。特に『血の医療』を行ったり、受けたりしていた医者や狩人、患者がその存在の影響が顕著に現れるわ。」

「知らず知らずのうちに上位者の力に頼った結果でしょう。もしかしたら獣などの返り血を浴びたりしても感染しているかもしれませんね。僕らみたいな特殊な例もありますけど、基本的に思考から変化させられて最終的には肉体までもが異形になる……といった感じです。貴方だって、心当たりがあるでしょう?」

「……………私は、どうすれば良かったのだろうか。」

「過ぎた事は思い返せたとしても、やり直しは出来ませんよ。僕らだって悪夢を終わらせて、自分の領域にする事でしか進めなかったんですから………それを望まぬ人が居たかは知りませんが、恨み程度なら受け入れますよ。」

「そもそも私に後悔なんて無いけど……もし貴方が何か思うことがあるんだったらしっかりと向き合いなさいな。」

 

そこまで言うと、エノクとリサは何処からか取り出したクッキーを食べて咀嚼し、紅茶でそれを流し込む。

 

「……やはり君達は強いな、私も見習わなくては。」

「いえいえ……あ、そうだ、相談料の代わりと言っては何ですが、一つ契約をして貰えませんか?」

「契約?」

「今までの物と似たような事ですよ。もしかしたら、正式な肉体を持ってこちら側にこれるかも知れないですし。なにより、虫と類似した何かがあるかもしれないので。」

「呼び出せるのか?……言ってしまえば今の私は幽霊のような者だぞ?」

「互いに承認すれば可能性は有るわ。そこら辺は私達の力でどうにか出来るだろうし。」

「どうしますか?ヴァルトールさん。」

 

二人からの問い掛けに暫く顎に手を当て考え込む様子のヴァルトールであったが、やがて顔を上げた。

 

「………様々な事で世話になったからな、私で良ければ力になろう。」

 

少し晴れたような雰囲気となった彼は立ち上がり、口を開いた。

 

「そろそろ私はお暇させていただく……漂っていた世界をもう一度見てくる事にしよう。私と同じように連盟員がいるやも知れんからな。」

「ヤマムラさんなど僕らと縁の深い方はもしかしたら何処かに留まってたりするかもですね。探すのであれば、そういった場所を訪ねられたらよろしいかと。」

「感謝する。」

 

一度頭を軽く下げたヴァルトールはそのままその場を後にし、姿が見えない場所まで去って行った。残された二人は人形の淹れた紅茶を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ師匠、わざわざ俺を呼び出すなんて珍しい事もあるんだね。」

「来たかい小僧。妹とは仲良くやってるのかい?」

「それが、最近やたらと自立したがってねぇ……「お兄ちゃんに頼らず生きていけるようになりたい」ってさ。」

「立派じゃないか、応援してやりな。」

「でも不安だよ。どっかで悪い男に引っ掛かったりしてないか気が気じゃないっていうのに……。」

「それはあんたの都合だろうが、このシスコン。」

「そんなに褒めないでよ~……で、何の用?」

「なぁに、ちょいと調べて欲しい事があってね。」

「……それってわざわざ俺に頼む必要ある?師匠に何とか出来ない案件だったら流石に無理なんだけど。」

「物は試しという奴さ。勿論報酬は用意するよ。」

「ふぅん……ま、いいや。で、何について?」

「ヤーナムって街の事を出来る限り調べてくれ。頼んだよ?

 

 

アルガリア。」




bloodborneのDLCで拾える装備の一つ、狩装束「官憲」にヴァルトールさんの過去らしきテキストがありまして、それを参考に書いてます。

ヴァルトールさん含め連盟員の皆さんが見ていた虫は、所謂人間の中にある獣性が具現化したものだと思っています。人間としての性質を獣性(虫)が食い荒らす事で狂気に陥り、普通の人間などであれば獣へと変容し、耐性のある狩人は血に酔って更なる血を求めて全てを狩りの対象にする、といった感じですかね。まぁ最初から人の中に眠るものでもあるんでしょうけど。


あと、前に言ったかも知れませんが、二人が悪夢を終わらせた後、ヤーナムや狩人の悪夢等に残っていた者は纏めて夢から覚めました。まぁその全員が取り込まれ、何回も繰り返された悪夢の中で必ず何回、何十回と死んでいるので、意識はあれど肉体は消滅しています。そもそも死んでる人もいますし、謂わば幽霊状態です。ただ、狩人の夢は言葉の通り「夢」であるため、実体となって存在も出来るのです。

無茶苦茶になってるかもしれませんが、お許し下さい。

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