「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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カーリーさんこんな感じでええんやろか。
やっぱり小説は難しいです。






それでは、どうぞ。


無法と中立

真新しいコートに身を包み、夜が明けて少し経った18区の裏路地を歩く。イオリから依頼された際に伝えられた場所へと歩みを進める二人は次第に人の往来が多くなっていることに気が付いた。

 

「……へぇ、武器が選り取りみどりだね。」

「さっさと行きましょ、この先みたいだし。」

 

辺りを見回すと、通りの両側にある店の殆どに明かりがついており、武器を持った人間達がその中にひっきりなしに出入りしていた。他の店も似たような雰囲気であり、他の区と比べるとどことなく物騒である。ただ雰囲気程度で臆する訳もなく、特に用事も興味も無い二人は軽く様子を見ただけで通りの真ん中を再び歩き始める。

 

「なんだ?あのガキども。」

「見ねぇ顔だな…それにしちゃ、上等な服着てんな。」

「おおかたどっかのお嬢様とかだろ。録な目に会わねぇな。」

 

しかし、そもそもこのような場所に子供が居るのが珍しいのか、はたまた子供が持つには大きすぎる刀に注目しているのか、周りはチラチラとエノクとリサを見ていた。中にはヒソヒソと隣の人間と何かを話し合う者も居たが、手を出そうとする気配は今のところ無い。

 

「物騒な割に害意があんまし無いわね。」

「一種の中立地域なんじゃないかな。ここで騒動を起こせば他の人間に殺されるとか、俗に言う暗黙の了解みたいなの。」

「あぁ、ヤーナムではそう言うのが通じる相手居なかったものね。忘れてたわ。」

「確かに基本的に全員が僕ら見つけた瞬間襲いかかってきたけど……一応デュラさんとかはまだ言葉が通じてたから。」

「あの人はあの人で自分ルール押し付けてたわよ。子供だからって理由で最初は普通に話しかけてきたけど、狩人だって気づいた後は容赦なく機関銃ブッパだったじゃない。エノクだって何回も素手で殴り殺してたでしょ?」

「リサが塔の上から銃のヒットストップで突き落とした回数の方が多い気がするけど。」

「それは……精々50行ってない位よ。」

「結構殺ってるね。」

 

二人は狩人基準でありきたりな会話を交わしながら通りを歩いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

(ん?……なんでこんなところにガキが?)

 

同時刻、その通りの一角で煙草を吹かしていたカーリーは視界の端で他の人間よりも一際小さい二人の人影を捉える。ここら一帯は18区の裏路地の中でも治安が悪く、子供どころか普通の大人ですら近づくのも憚れる場所である。武器の店等が集合する通りは比較的平和であるものの、少しでも離れた場合ネズミ(落ちぶれた者)(組織の駒)ハイエナ(荒くれ者)達が蔓延っており、少なくとも引率者もいない子供が来れる場所ではない。その為、通りの真ん中を歩く子供という光景は通常あり得ないのである。改めて二人の子供を見やるカーリーであったが、暫くして特に何かあるわけでも無いと思い、そのまま意識の外に追いやろうとする。それと同時に、カーリーの耳に何人かの男女の声が聞こえてきた。

 

「なぁ、今のガキども、拐って売り飛ばしゃ良い金になりそうじゃないか?」

「うぇ、そりゃマズくないっすか。こんな場所にいる子供なんて絶対訳アリっすよ?」

「だからこそでしょ?それに見てくれも悪くなかったし……あの男の子、私好みだったし、味見位は良いかしら?」

「商品にするって聞いておきながらそれかよ……。」

 

(……何処にも下卑た考えを持つ奴は居るもんだな。)

 

現在進行中で誘拐の計画を立てる女を中心としたグループの会話に影から聞いていたカーリーは眉をひそめる。やがて、そのグループは立ち去ったのか、耳障りと感じていた声は聞こえなくなった。カーリーもそのまま目的地まで行こうと足を向ける。それは偶然にも、子供達と例のグループが去っていった方向であった。

 

「…………………………………………チッ。」

 

少しの間、その場に立ち止まったカーリーは大きく舌打ちした後、背中の剣を背負い直して歩きだしたのであった。

気配を消し、人拐い達から少し離れた所から後を追う。

 

 

 

 

 

 

次第に活気も薄れたところで、人拐い達に動きがあった。どうやらターゲットが脇道に入ったようで、大通りの端に寄り一本の細道の様子を伺った後、ゾロゾロとその中に入って行った。

 

(………何やってるんだ私は。)

 

少し遅れてそれに続くカーリーは頭の中で自分の行動に馬鹿馬鹿しさを感じていたが、心の中に僅かにあった良心に基づいて動いてしまった以上どうしても気になってしまうため、肩を落とし仕方がなさそうに狭い路地へと入った。すると、

 

ドゴッ    バキッ

 

曲がり角の先から重い打撃音が鳴り響く。続けざまに何かが折れる音が耳に入り、カーリーは反射的に背中の剣に手を掛け走り出し横に四人並べるかどうかの広さの路地へ入っていった。そうしてもうじき曲がり角に差し掛かろうというところで、カーリーの目の前を何か大きなものが高速で過ぎ去った。

 

        ドガッ!

「ッ!?」

 

急ブレーキをかけ、通って行った物体を確認する。どうやらすぐそばの壁に叩きつけられたようで、直ぐにその正体を知ることが出来た。

 

「う………ぐぁ……。」

 

そこにいたのは、先程誘拐の計画を立てていたグループの男の一人である。最早動く気力も無いのかただ呻くだけの男はカーリーに気が付くと、すがるような目を向けて口を開いた。

 

「そ、そこのお前……助けてくれ………。」

「断る、何があったかは知らんが自己責任だろ。」

「い、いやだ……まだ死にたくは

ドチュッ!!

 

助けを求める男であったが、最後まで言葉を紡ぐ前に曲がり角の先から飛んできた何かが頭を捉え、貫いたことで呆気なく絶命した。息絶えた死体を直ぐに思考の隅に追いやったカーリーは背負った剣を引き抜き、警戒しながら曲がり角の向こう側をゆっくりと覗き込んだ。視界の端では新鮮な血液が飛び散っている。

 

「…………。」

 

いの一番に視界に入って来たのは既に事切れた仰向けの女の死体であった。顔は目を見開いたまま固まっているため、どうやら訳も分からず死んだようだ。見た限り、死因は胸にあるた直径8cmにも満たない穴で、心臓を丁度消し飛ばすようにぶち抜かれている。こちらも例のグループのリーダーらしき女であった事を思い出したカーリーだったが、これも記憶の隅に追いやって死体から顔を上げ、目の前の光景に絶句した。

 

「いや、いや、私はこんなところで死ぬはずな「私のエノクに手を出そうとした奴がごちゃごちゃ言ってんじゃ無いわよこのアバズレ。」バンッ!!

「あ………あ、「はいはい、恨むなら僕らを拐おうとした自分を恨んで下さい。」ガキョッ!!

 

現実逃避していた女はドスの効いた声を出す少女(リサ)が持つ短銃で脳を貫かれ、仲間全員を数分も経たない内に無惨な死体にされたしたっぱらしき男は完全に戦意を喪失していたが、笑みを絶やさない少年(エノク)の手によって首を180度回転させられそのまま動かなくなった。その光景を呆然と見ていたカーリーだったがリサがこちらを横目で見ながら銃口を向けている事に気が付く。

 

「………おい、ちょっと待っ、チッ!」ジャキッ!

 

ガキン!

 

カーリーが静止させるため声を掛けようとするのと同時に引き金が引かれ、銀色の弾丸が飛び出した。その軌道は真っ直ぐカーリーへと向いており、数秒もあれば肩を食い破るだろう。狙われた当人は避けずそのまま引き抜いていた剣で切り払い口を開く。

 

「待て待て、私はこいつらの仲間じゃない!只の通りすがりだ。」

「「…………。」」

 

しばし無言の時間が訪れる。互いに警戒しながら武器を構えていたが、エノクが殺気を収め、両手に握った投げナイフをコートの内側に仕舞った。

 

「どうやら害意が無いのは本当みたいですね、失礼しました。」

「信用して良いのかしら。」

「さぁ、どうだろうね。」

「………はぁ、まぁいいわ、これ以上やっても無駄なんでしょうし。」

 

そう言うとリサは銃をホルスターに収め、展開していた仕込み杖も元の形状に戻した。それを確認したカーリーも溜め息をつきながら己の剣を背中に背負い直すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?誰よ貴女、フィクサー?」

「……一応ここらでは有名なんだがな、恐らくお前らは他所から来たんだろ?」

「ええ、なんなら今日この辺りに来たばかりです。仕事の手伝いをして欲しいと送られて来たものでして。」

 

そう言いながら壁に叩きつけた男にとどめを刺すために投げた千景を引き抜き、血を払って腰に携えた鞘に収める。金属と固い物がぶつかり合った音を立てて収まったそれの柄をなぞるように触れたエノクであったが、ふと目の前の女性が若干驚いたような顔をしているのに気が付いた。リサも同様の違和感を持ったらしく、眉をひそめながら尋ねる。

 

「どうかした?」

「いや、待て………なぁ、一つ聞いて良いか?」

「「?」」

「送られて来たつったよな?依頼主は誰だ?」

「イオリさんという方ですけど。」

「やっぱりか……成る程、言ってた事も強ち間違いでもないな。にしてもガキを寄越すならせめてそれぐらいは伝えろよあのババア。」

 

悪態をつきながらも納得した様子を見せるカーリーは改めて向き直ると口を開く。

 

「私はカーリー、2級フィクサーだ。お前らがイオリを通して依頼を受けた奴らで間違いないな?」

「はい、そうです。僕はエノクと申します。」

「リサよ。エノク共々フィクサーをやってるわ。まだフィクサーになってから1ヶ月位だけどね…………あぁ、そうそう。私達、貴女を手伝えって言われて了承したけど、詳しい内容聞いてないのよ。」

「………よくそんな状態で承諾しようと思ったな。普通依頼内容は聞くものだろ?」

 

呆れた様子のカーリーに対し、揃って首をかしげるエノクとリサ。それに気づいたカーリーは怪訝な表情へと変わるが、その前にエノクは不思議そうに尋ねる。

 

「別に不思議な事でも無いのでは?」

「そんなわけ無いだろ、情報はフィクサーを続ける上で大事な要素の一つだ。」

「そんなこと言われても昔っから録な前情報も無しに化け物を相手取るなんてざらだったし、基本的に暴力で何とかなったから………ねぇ?」

「血が出る奴は殴れば死にます。固い奴も根気よく殴れば死にます。話が通じない奴も殴れば何とかなりますよ。」

「OK、取り敢えずお前らが見た目に似合わず頭の中に筋肉が詰まってるのは理解した。」

「冗談ですよ、半分位。」

 

拳を掲げながら笑うエノクに思わず遠い目になる。しかし合流してしまった以上、連れていかないという選択肢は選びづらい為、頭痛が止まない頭を押さえながら一つ溜め息をついたカーリーは顔を上げた。

 

「………仕事の内容は歩きながら話す、依頼先にはお前らの事は私の部下の体で話を通すが構わんな?」

 

数瞬の思考の後、有無を言わさないような気迫と共にそう告げたカーリー。半ば強制のように問われた二人には特に断る理由もない為頷き了承の意を示す。

 

「よし、じゃあついて来い。取り敢えず依頼主と顔合わせは済ませるぞ。」

 

そう言うとカーリーは路地の向こうへと体を向け、エノクとリサもそれに続くように足を動かし始めるのであった。

 

「所で、今から行く場所ってどんなとこなの?」

「簡単に言えば武器工房、それも最近台頭してきた木の葉工房だ。何処ぞの組織との取引があるとかなんとか言っててな、その護衛として雇われた訳だな。」




カーリーさんは口は悪いけど優しいんやで。

カーリー自身は「偶然、行き先と被ったから」と心の中で自分に言い訳してますが、行動的には
小さくて(見た目だけが)非力な子供がいる→一旦無視→子供を拐う計画を立てるグループの会話を聞く→気になるけど一旦無視→グループが移動するのを見送る→やっぱ気になる→依頼先と子供達が行った方向が同じだと気づく→「しょうがねぇなぁ」
みたいな感じですね。まぁ子供(神をも殺す狩人)なので心配は杞憂でしたけど。

あと、武器工房通りは独自設定です。18区は傭兵企業のR社が治める場所なので治安も他と比べて正当な治安の悪さがあると思ってます。木の葉工房も詳しい場所が分からなかったので取り敢えずこの街にぶちこみました。
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