「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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色々とリアルが忙しく、丸一ヶ月経ってしまいました。申し訳御座いません。今回の話はブラボの考察も含むのでご注意下さい。





それでは、どうぞ


啓蒙

「カーリー、貴女狩人出来るんじゃない?連盟に加盟する?」

「狩人ってのはそんな軽くなれるもんなのか?」

「名乗るだけならね。あ、私達の血をぶちこめば人辞められるけどやる?」

「何でやると思った。普通に嫌だぞ、そんな得体の知れないもの体にぶちこむのは。」

 

どこからともなく取り出された空の注射器に嫌そうな顔を向けるカーリーに対しリサは少しばかり真面目な声色で話を続けた。

 

「冗談よ……でも、一つ忠告しておくわ。あまり啓蒙に頼りすぎないようにね。」

「さっきの線か?かなり意識しないと見えないが、中々便利そうだぞ。」

「本来、私達の言う啓蒙は物事を理解する事を指すの。貴女の場合、見たものの弱点を導き出すことに特化してるみたいね。貴女に授けた瞳が合わせるように勝手に性質を変えたと考えたら辻褄が会うけど……見えてる物事は人それぞれなわけだし、それもあり得ない事じゃないのかも。」

「ただし、啓蒙が高まりすぎると弊害も出て来ます。例えば……常に様々な情報を強制的に処理してしまって脳が耐えられなくなるとか、理解したくないことも理解してしまうとか、他にも色々。」

「ふぅん……?」

「乱用しなければ急激に高まることも無いでしょう。ゆっくりとした変化であれば慣れる筈ですのでご留意下さい。」

「……伊達に地獄を生き抜いてきた訳じゃない、精々有効活用してやるさ。」

 

忠告に対し様々な感情を含んだ笑みを浮かべるカーリーに顔を見合わせる二人であったが不意にエノクの持っていた携帯端末が短い電子音を鳴らした事でそちらに意識を向けた。

 

「すいません、連絡が入ったようです。確認してもよろしいですか?」

「別に気にすることでもないだろ。」

「ありがとうございます。」

 

その言葉の後、エノクは端末を操作し始める。その間、カーリーは自分用の軽食の袋を開き、中に入っていたBLTサンドにかじりついた。男らしく食べすすめているとジュースをチビチビと楽しみながら飲みながらエノクの隣にいた筈のリサがすぐ前まで近づいて来た。

 

「はぐっ………なんだ、リサ。」

「そういえば、私達の過去はある程度話したけど貴女の事は余り知らないと思ってね。で、なんか無い?」

「話題振りが雑すぎんだろ。」

「良いじゃないカーリー、別に減るもんでも無いでしょ?」

「そう易々と人の過去が知れるとでも思ってるのか?」

「いや全く。むしろこの都市の人間、それも裏路地に住んでる輩は過去をベラベラと話す奴の方が珍しいんじゃないの?」

「分かってるなら何で質問した。」

「お試し。」

 

軽い調子のリサに呆れたような目線を寄越すカーリーはコートの内ポケットからまた取り出した煙草に火を着ける。そして一度紫煙を吐き出した所で、リサは話の続きをし始めた。

 

「私達だって完全に話した訳じゃないけど、当たり障りの無い事なら普通に気にせず話すし。」

「それはお前の価値観だろ。」

「え~、少し位教えてくれても良いじゃない、

 

 

例えば…………貴女の出身が23区の裏路地だったとかさ。」

「ッ!?」バッ!

 

瞬間、カーリーは目を見開き、すぐに警戒するように身構える。それに対し、リサは自然体のままで首を傾げていた。

 

「あら、間違ってた?」

「………。」

「そんなに警戒しないでよ、別に言い触らしたりしないし。」

「そんなことはどうでも良い、何故お前がそれを知ってる、私は一度たりとも23区の事を口に出した覚えは無いぞ。」

「私も無いわよ、でも事実なのは変わらないでしょ?」

「………どういう絡繰だ。」

 

肩を竦めて心底不思議そうに語るその姿は秘匿した事をあっさりと暴かれた側にとっては恐怖すら覚えそうになる。警戒の度合いを上げたカーリーの問いへの答えはさも当然のような語り口で返ってきた。

 

「絡繰も何も、仕組みに関しては貴女もその一端に触れてるじゃない。」

「何?」

「私の話聞いてなかった?啓蒙は、本来物事の本質を理解する事だって。いくら貴女が隠そうとしても過去にあった事実は変えられるわけ無いじゃない。」

「ちょっと待て、それだとお前らは相手を見ただけでそいつの詳細が分かるってことになるぞ。」

「普段は勝手に入ってくる必要無い情報は弾いてるし、誰かの過去もそれに含まれるんだけど、特定の相手に狙いを絞れば出来るわよ。」

「………つくづく規格外だな。」

「まぁこんなこと出来る私達が例外側だろうし間違ってないから否定しないわ。未来予知とかは流石に無理だけど。」

「ある程度腕っぷしのある奴ら相手に無双してた奴が未来予知してくるとか完全な化物だぞ。」

「私は出来ないって言ってるでしょ。まだそこまで人間捨てた訳じゃ無いのよ。」

「あんなもん従えてる時点で手遅れだ。」

 

カーリーは先程見せられた神もどきの一部を思い出す。目の前の少女から授けられたらしい瞳は今まで見えていなかった世界を写し出し、ほんの少しだけ理解させた。その時の感覚は未だに頭に反響している。今はもう頭痛もないがその反響が最大まで達した時、見えたのは膨大な数の線でありカーリーはそれが見たものの弱点である事、そして力の流れさえも見る事が出来る事を本能的に察していた。自分の手を注視した際見えたものの理解も当に済んでいたが、何より恐ろしいのは目の前の少年少女が時より歪んで見えるように思えるである。しかし、それがなんなのか理解するには啓蒙が圧倒的に足りないのだった。

 

「………まぁ良い。そんなことよりもエノク、内容の確認は終ったか?」

「えぇ、問題無く。どうやら正式に階級が7級に上がる事に決まったようでして。」

「あら、もう?案外早かったわね、イオリが関わってるからかしら。」

「ファルさん曰く色々と暗躍してたらしいよ。」

「何でそこまで上に押し上げようとするのかしら。私達の階級を上げたからといって別にあの人に何か得があるわけでもないでしょうに……なんか啓蒙使っても何考えてるか見えにくいし。」

「あの紫ババアの行動は今更だから気にするな。私はあいつに関わってからあいつの行動について細かく考えるのは諦めた。」

「それはそれでどうなのよ。」

 

遠い目をしながら話す姿にツッコミを入れるリサだったが、ふと辺りが先程よりも暗くなり始めている事に気が付く。日が傾き始め、話し合いのために入った路地裏の影が濃くなる中、リサは虚空から懐中電灯を取り出し蓋を開く。

 

「あら、もうこんな時間……一回駅周辺の中心街まで戻る?」

「それもそうだね。カーリーさんはどうされますか?」

「……私の借りてる部屋もそこら辺だ。食い終ったな?さっさと行くぞ。」

「「はーい。」」

 

数瞬黙ったカーリーは息を吐き捨てて踵を返して歩き出す。二人はてくてくとその後に続いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………。」

「……………。」

「……………。」

 

終始無言の三人は空からの光が収まり始め、人工的な光が辺りを照らす道を歩く。疎らにすれ違う人間は怪しい雰囲気や危険な気配を醸し出す者達ばかりで安全とは程遠い環境である。先程の場所から中心街までの最短ルートを進む一行であったが、やはりと言うべきか、何処からか肉を殴るような打撃音と若い男の苦しむような呻き声が聞こえて来る。ただし、周りの人間は気にせず自分の目的の為に動くのみであった。

 

「物騒ね。」

「今の状況をその言葉だけで済ましてる時点でお前も十分物騒だぞ。」

「端的に表しただけじゃない。」

「ドライだな。」

「関係ない厄介事にわさわざ首を突っ込むほど僕らも優しくは無いですよ。依頼等であれば別ですが。」

 

そう言って三人もスルーし、通りを抜ける。暫くすると先程よりも人の喧騒が大きくなって来た。どうやら中心街の端辺りに着いたようで、ポツポツと人の往来も増えており、次第に店頭の明かりも増えてきた。

 

「依頼だったら躊躇無く殺すのか?」

「相手が敵であるのならば。あと、理性を無くしてしまった獣だったらですかね。獣を狩り、弔うのが僕らの本来の仕事ですから。」

「何の罪もない一般人相手に手を出すつもりはないと?」

「それをすればあの狂人達と同類になってしまいますからね。僕らはあくまでも獣を狩る狩人であって、神を暴く学者や医者では、血を啜るために殺し続けた処刑人でも無いですよ。」

「比較対象がろくでもない奴らばっかだな。」

「終らせる位しか救いようの無い世界()だったもの。そういう環境に置かれた子どもが、マトモな人間になる筈無いでしょ?」

 

さも当然だと言わんばかりの態度の二人に微妙な表情を浮かべるカーリー。少なくとも自身もマトモな環境で育った記憶は無い上、マトモに育ったとも思っていない為、言葉自体は納得しているのだが、まだ自分の半分程しか生きていないような子どもに見える二人が悟ったような言葉を吐くことに何とも言えない虚しさが生まれるのだろう。そんな複雑な感情を抱えるカーリーを余所に、リサは辺りを見回して話しかける。

 

「そろそろかしらね。ここの店とか見覚えがあるわ。」

「………。」

「カーリー?」

「あ?………あぁ、そうだな。」

「?」

 

少しだけ反応の鈍いカーリーに違和感を感じながらもそれを気にせず二人は進む。やがて、エノクとリサが18区に来た時に降り立った場所の数倍はあるであろう規模の駅が見えてきた。街明かりはどんよりとした暗い空を照らしている。それに近づく途中、カーリーは足を止めた。

 

「もうここらで良いだろ、私はこれ以上面倒は見ないからな。」

「あら、わざわざ送ってくれたの?優しいのね。」

「世辞は良い、さっさと行け。自分達の協会への報告はそっちでやってろ。」

 

そうぶっきらぼうに良い放ったカーリーは踵を返して街を抜ける。その背中が人混みに紛れるまで見送った二人は顔を見合わせた後ゆっくりと並んで歩き出す。

 

「じゃあ、早く寝れる場所を探しましょ。」

「良い場所あるかな。カーリーさんの言葉の通りなら何かしら面倒事もありそうだけど。」

「向かってくるなら一人残らずぶっ飛ばせば良いのよ。あの街の時みたいにね。ほら、行きましょ……って、あら?」

「」ヒョコッ

 

エノクの手を取って駆け出そうとするリサだったが、いつの間にか何やら籠らしき物を被った使者がエノクの肩に乗っているのに気が付いた。

 

「どうかした?」

「」ミブリテブリ

「狩人の夢に誰か来たのかな?」

「」コクコク

 

エノクからの問いにジェスチャーで答える使者。その意味を正しく捉えたエノクはしばらく悩んだ後口を開く。

 

「……取り敢えず、先に夢に行ってしまおうか。少しだけ嫌な予感がする。」

「うーん……残念だけど、仕方ないわね。また別の場所探しましょ。」

 

 

 

 

 

 

 

「って訳で来たんだけど………なんであんたがいんのよ。」

 

駅からそう遠くもないが人が寄り付かなそうな物陰から狩人の夢へと帰った二人であったが、視界に入った人物に顔を歪ませる。リサはあからさまに顔をしかめ、エノクも笑みではなく眉をひそめた相手は乾いた笑みを浮かべながら不気味な笑い声を上げた。

 

「おや、お気に召さなかったかな。」

「お久しぶり……で良いんですかね、ミコラーシュさん。」

 

エノクが笑顔を作りながらそう問いかけると、男……ミコラーシュはボロボロになった学者風のコートと頭に被った籠を揺らしながら笑い続ける。かつてはあったであろう輝きもとっくの昔に失っており、そこに残っているのは只の影法師に過ぎないだろう。

 

「相変わらずねその頭の籠、もう着ける意味も無い癖してまだそれに拘るの?」

「何を言う、これは必要な物だとも。我々の獣性を封じ込め、神へと近づく為に。「とっくに意味なんて無いのが分かってるくせに。」

 

聞き飽きたと言わんばかりに言葉を遮り、畳み掛けるように口を開く。

 

「ここにいるんならもう分かってるでしょ?貴方達メンシス学派達が興した悪夢も、アメンドーズがいた辺境も、赤子が見ていた夢の世界も、ヤーナムの街だってもう既に終った後なのよ。残ってるのはボロボロになった街だけ。あんたが交信しようとした神みたいな奴さえもう居ないわ。」

「あぁそうだとも、分かっているのさ。私はもう終わってしまったということは。だか、その程度が探求を止める理由になり得るのかね?」

 

返ってきた答えに少しばかり驚いた様子の二人を余所に、

 

「君達という人から神への到達点へと至る可能性が有るのだから、まだ諦める気は更々ない。現実ではなくても、夢は元々我々の通った道だ。」

「そうだった……あんた達夢を強制的に拡張して現実と繋げた変態だったわね。そのせいでどれ程私達が苦労したか……。」

「あぁ、あの学舎の事かね。私の記憶から作り出したものなのだが、中々良い出来だっただろう?」

「どうしましょエノク、こいつ全く反省してないわ。」

「この人はこういう人、もう手遅れだよ。」

 

かつて扁桃石を持って古協会を経て訪れた悪夢の中の学舎、その中にいた変わり果てた学徒、狂気のような研究対象を思い出して、高笑いをするミコラーシュを余所にため息をつく。そもそも、エノクとリサが回り続ける悪夢を走らされる羽目になった原因の一端はこの狂人だったりする。恨みはあれど感謝は一切ない相手に対し、二人は呆れの感情を持ちながら話を続けた。

 

「それで、今になって何故ここに?正直なところ、貴方が来る意味も無いでしょう。」

「ふははは……む?そう思うかね。残念だが、私は目的を持ってここに現れている。聞きたいことがある、君達にな。」

 

不気味な笑みを浮かべ笑い続けるミコラーシュはやがて二人を真正面から見据える。

 

「僕らがどのようにこの状態に至ったかですか?」

「それではない。今の君達は人と神の間、いわば半端者だ。私の目指す所とは少々勝手が違うのだよ。」

「それでは何を?」

「前提として、君達はこの場所が何処にあるのか分かっているのかね?無論、夢の中という回答は求めていない。」

「何処って……貴方がやったみたいに月の魔物が先生の記憶を元に作り出した空間?」

 

思案する二人を余所に、ミコラーシュは更に畳み掛けるように問い掛ける。

 

「そうだな、概ねその通りだ。しかし何故かの上位者はこの空間を作った?かつて同じ学舎で学んだローレンスが君達の言う月の魔物を呼び出したらしいが、何故これを作るに至った?」

「……先生と初代教区長ローレンスは古くからの友人だったと本人から聞きました。狩人の発端もそこであると資料にも残ってましたし、この場所を僕とリサ以外の狩人が利用した事も聞いています。」

「まぁ大体予想は着いてるけど、なんでそんなこと聞くのよ。」

「強いて言うなら学者としての興味だとも。探求者とは、そういう生き物だろう?」

 

さ、続けたまえと催促するミコラーシュ。暫く黙り込む一同であったが、やがてリサがゆっくりと口を開いた。

 

「………餌場。」

「ふむ?」

「青ざめた血、そう呼ばれてた月の魔物は餌を育てるためにここを狩人の夢にして私達を狩人として呼び込んだ。あの触手多少ループを認識してたっぽいし、あいつ自身成長するのに必要な物が特殊だったみたいよ。」

「ははははは!成る程、そうか!全ての上位者は赤子を失い、求める!しかしその魔物だけは他とは違う!まさか呼び出された彼が赤子側(・・・)だったとは!まさかあのメルゴーとは別の子が現れていたとは気づかなかった!」

「そこまで興奮しなくとも、貴方達メンシス学派にはあの脳が有ったでしょうに。」

「いいや?あれは言葉遊びの結果出来た出来損ないだ。まさかメルゴーへと願った事が言葉そのままで返ってくるとは誰が思ったか……。」

「いきなり表情変えないでよ気色悪い。」

 

突如スンッ、と無表情になるミコラーシュ。それもその筈、偶然交信できた上位者に「ウィレーム先生みたいに脳に瞳(概念)が欲しい!(意訳)」と言ったらガチで瞳(物理)が脳の中に埋め込まれた上位者モドキが送られてきたのだ。しかもそのモドキから得られるのは中途半端な物ばかり、思い出しただけで萎えるのも当然だろう。

 

「……話を戻しましょうか。」

「そうだな、続きがあるのなら是非とも聞かせてくれたまえ。かの魔物は何を餌として求めたのかね?」

 

気を取り直して近くの石階段に座り込んだミコラーシュはギラギラとした目線を送る。興味以外何も感じられないそれに仕方がなさそうにエノクは語り始めた。

 

「あくまでも推測ですけど、彼は恐らく獣性と神秘が入り交じった存在なんだと思います。極端に言えば貴方が目指した終着点そのものですよ。ですがその代わりに不安定な状態へと陥って、神秘だけではどうにも出来なくなったのかと。」

「ふむ、獣性と神秘は真逆の位置にあるように見えるがその実とても似ているものだ。確かに私も獣を克するために神秘である思考の瞳を求めたな。」

「ええ、なので彼は神秘だけでなく獣性も欲したのです。つまるところ、餌は自分と同じ神秘と獣性が混じりあった存在という訳ですね。」

「………あぁだからか。」

 

そこまで話した所でミコラーシュは納得したような声を上げる。その表情は実に楽しげだ。

 

「餌は君達だったのだろう?獣性を宿しながら神秘を用いる存在は稀有だ。聖職者が獣となった例はあるが、その両方を理性を保ったまま扱う者は君達位しか知らないものでな。その導きとして使われた存在が……最初の狩人かね。あの者もこの夢に囚われていたと。」

「ちょっと違うわ、あれ多分お礼も兼ねてる。」

「む?」

「呼び出したからって言えば良いのかしら、月の魔物はその対価として先生の願いを叶えたのよ。」

「願いとな?」

「『大切な人とまた会いたい。』、その朧気だった願いを彼はこの夢に招くことで叶えようとした。」

「ほう、それで?」

「……。」

「恐らくまだ続きがあるのだろう?そう、例えば……私のようにその叶えた内容が理想と程遠い物であったとか。」

「思想こそ理解できませんがその理解力は相変わらずですね。さすが、医療教会上位組織の内の一派を率いて上位者への交信へと漕ぎ着けただけはありますよ。」

「君達によって最後まで行く前に途絶えてしまったがね。」

 

その言葉に一瞬だけ詰まるが直ぐに「自業自得」の文字が頭に過って持ち直す。

 

「まぁ、そのせいで先生は狩人の夢に囚われて、助言者みたいな事をせざるを得なかったんです。寝言でも疲れたって言ってましたし。」

「夢の中でも眠れるのかね。」

「それこそ今更でしょう?……さて、本題です。」

 

一端息を整え、改めてミコラーシュを見やる。

 

「貴方は目的を持って来たと言ってましたよね?それも多分僕ら関係の物を。」

「……………。」

「今更貴方が色々と知ってる事には突っ込みません。多分貴方が完全に肉体を失った代わりに啓蒙というか擬似的な瞳を手に入れたんでしょうから。まぁそれも上位者に至るには到底届かない霞でしょうけど。」

「……あぁ、そうだな、だが何かを客観的に見るには充分すぎる代物さ。お陰で現状は知れたとも………それよりも、まだ気づかないのかね?私は既に半分程答えを言った筈だが。」

 

ニヤリと気味な笑みを浮かべるミコラーシュは、相対する狩人達へと問い掛ける。

 

「何が言いたいのよ。」

「おや……君達はそこまで察しが悪かったかね?それでは質問をするとしよう。

 

何故君達はあの街(ヤーナム)に来た?」

 

目を閉じ、独り言のように、自分に問い掛けるように空へと放ったその質問に二人は訝しげな顔をする。

 

「そこまで知れたら苦労しないわよ。なんせ、啓蒙でも該当する知識が浮かび上がって来ないんだもの。」

「ほぅ、先程自分達が言ったあれも嘘だったのかね?」

「月の魔物には…恐らくヤーナムで輸血されたから選ばれたのよ。でも、そこに至る経緯がわからないの。」

「普通、親は子を大切に守るものだ。鳥であれば巣で待つ子供へ狩った餌を与える。まさしく愛と本能が紡ぐものだ。上位者であってもそれは変わらない、それどころかより顕著だ。」

 

そこまで言いきった所でミコラーシュは目の前の幼き狩人達(誰よりも上位者に近い者達)へと視線を向ける。その濁った目には何かに気がついたようなような表情をする二人の顔が映っていた。

 

「分かるだろう?君達が狩人となったそのきっかけ、見ず知らずの土地へと飛ばされたその理由、そして狩人の夢に住まう月の魔物(赤ん坊)、無関係である筈が無い。」

「………まさか。」

「あぁ、居るのだろな君達の故郷に

 

 

 

 

 

月の魔物の親に当たる上位者が。」




Ooh! Majestic!

はい、原作の中でも屈指の狂人かつ天才の皆大好き檻頭変態おじさんです。この人原作でもかなり重要なポジションに居ますし、何なら割と色々と察してエンジョイしまくってそうですよね。鬼ごっこ中ずっと笑ってますし。プロムン世界の天才達とはまた別ベクトルに突き抜けた怪物だと思ってます。なのでこの作品ではまだ自分が目指した場所へ到達することを諦めておらずゆっくりと色々やってます。まぁ、全部終わった後だから出来ることなんて限られてますけど。





原作では主人公は自分の病を治すために血の医療が有名なヤーナムを訪れてましたが、二人は前置きは一切ありませんでした。なんせそんなものとは無縁の、身寄りの無い、居なくなっても気づかれないし困らない子供達だったのですから。
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