「いいことだらけ」と言うけれど   作:ゲガント

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色々忙しくて遅れました。本編も構想を練っている最中なので気長にお待ちください。




それでは、どうぞ。


番外編 エノクinツイステッドワンダーランド 序章3

「こんばんはー、優しい私が夕食をお持ちしましたよ……と、おぉ?」

「あぁ、わざわざありがとうございます。」

「遅かったな、早くツナ缶を寄越すんだゾ!」

「全く、持って来るだけありがたいと思ってほしいのですが……って、何を食べてるんですか貴方達。」

「スモアですよ。あぁ、食材は安全なものなのでご安心を。」

 

クロウリーが弁当のような物が入った袋を持って元無人寮の談話室に入ると最初に来た時よりもかなり清潔になった室内を見て目を見開いて驚く。しかしそんな事関係無いと言わんばかりに、火の灯った暖炉の前にある安楽椅子に座ったグリムは少しほつれが見えるソファに座っているエノクが作ったスモアを頬張った。

 

「はぐっ!ムグムグ……ん~!サクッとしたクラッカーと溶けて柔らかくなったマシュマロの淡い甘味とチョコレートのコクのある風味が合わさって口の中が幸せなんだゾ~!」

「よく食べますねグリムくん。材料はまだありますし、夕食の後にまた作りましょうか。」

「ふなっ、本当か!」

 

語彙力高めの食レポを披露するグリムはエノクからの追加情報に踊り出しそうな程機嫌の良い声色で喜んでいる。

 

「にしてもこの短時間でよくここまで綺麗に掃除が出来ましたね、魔法等は使えないというのに。」

「世界に存在する力は魔法だけではないんですよ。あの鏡の方も言っていたでしょう?あぁそうでした、ここに先に住んでいる方々の事、事前にお話しされても良かったのでは?」

「えっ?…………そういえば、この寮は悪戯好きのゴーストが住み着き、生徒達が寄り付かなくなって無人寮になっていたのを忘れてました。ですが、その語り口から察するにもう彼らとの会合は済ませているようですね。」

「えぇ、中々愉快な方達でしたよ。僕らがここに住むことを歓迎してくれているようでしたし。生きてるか否かの差ですし、手を出してこない限りは別段気にすることでもないでしょう?」

 

魔法の世界と言えど、さすがにゴーストと人間の脅威度を同列に見ている発言に口角が若干ひきつる感覚がしたが、そのような間抜けな姿を見せないように耐えながらクロウリーは持ってきた袋を押し付けながら話を切り返す。

 

「いえ、普通気にする所ですよそこは。」

「つーか、知ってたんなら先に話しとくんだゾ。歳食って記憶力ボケてんのか?」

「ボケてないですよ失礼な!私もまだ若いんですから不吉なこと言わないでください!」

 

グリムから飛んできた予想外の口撃に思わず声を荒げるが、すぐに意識を切り替え一つ咳をすると口を開いた。

 

「兎も角、私はもう行きますからね。仕事についてはまた明日改めてお伝えしますから。」

「クロウリーさん、一つ聞きそびれていたのですが、この寮を少し上書き(・・・)してもいいですか?」

「……?上書き、というのはよくわかりませんが修繕に伴って暮らしやすいように多少改築等を行うのは問題ないですよ。あと学習や情報収集の為に業務時間外で図書館を利用することも許可しましょう、私優しいので。ではおやすみなさい。」

「えぇ、悪夢の無い良い夜を。」

「………随分と変わった挨拶ですね。」

 

エノクとの会話の節々にあるよく意味のわからない言葉に首をかしげながらクロウリーは転移魔法らしき物を使って消えてしまった。部屋に残っているエノクは安楽椅子に座るグリムへと向き直る。

 

「さて、これとデザートを食べたら君も寝て下さいね。多分明日朝から来ますよあの人は。」

「うぇ~………めんどうなんだゾ。」グ~

「そんな顔しないで下さい、掃除がてら力の操作の仕方を教えますから。それが出来れば掃除もぐんと楽になりますし色んな事に応用できますよ。お腹も空いてるのでしょう?」

「ふぬぬ~、わかったんだゾ。そうと決まれば飯だ飯!ツナ缶を寄越すんだゾ!」

「…………あ、ツナ缶ありませんね。代わりに鮒缶が入ってましたけど食べますか?」

「ふ、ふなぁ~!あのカラス~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、やっと寝てくれましたか。テオくんは聞き分けの良い子でしたからあまり騒ぐことも無かったですが、本来子供とはこういった感じなんでしょうか。ベッドの底も抜けましたし。」

 

その後、自分の血を用いて埃などを払った隣の部屋……恐らく寝室だったと思われるその部屋のベッドへグリムを寝かせたエノクは明かりを減らして暗くなった談話室の暖炉の火を眺めながら椅子の背もたれに身体を預ける。脳裏に浮かぶのは自分の部下の一人である13にも満たない少年であった。そこから暫くの間、暖炉の青い炎を眺めながら想い耽っていたがやがて徐に一つの携帯端末を取り出して操作し始めた。

 

(繋がらないか、まぁ期待はしてなかったけど。狩人の夢に帰ることもまだできないから死ぬことも出来ない。それに、離れると思った以上に寂しいな……リサに会いたい。)

 

今の環境が想像以上に堪えている事に驚きつつも、エノクは窓の外の未だ止まない雨に無意識に溜め息をつきながら手を開き意識を集中させる。次の瞬間、エノクの手には先にランタンが付いた鉄の棒が握られていた。虚空から取り出したのはヤーナムの至るところにあった灯りであり、まだ機能していないのか光は点いていないもののその物々しい雰囲気は見たものを怯ませるような気迫があるように感じる。しかし、本来いる筈の使者の姿は無く、そこにあるのはただの鉄の塊であった。

 

(自分が夢に仕舞っていた物は取り出せるけど、新しく買うことは出来ないから輸血液の数とかも気にしておかないと。恐らくこちらでは殺人はご法度だろうし。)

 

そんな状態の灯りを抱えて椅子から立ち上がったエノクは、部屋の中でも少しスペースの空いている場所に向かうと、

 

「よっ……と。」ドスッ!

 

床にその灯りを突き刺した。容易く床板を貫いて固定されたそれに、エノクは手をかざす。すると、何も入っていない筈のランタン部分に青白い光が漏れ始め、暗くなっていた談話室を妖しく照らしだした。流石に暖炉の火程の光量は無いが、久々に見たその光に、エノクは何とも表現しづらい安心感を得たのだった。暫くしてその意識を切り替えると、エノクは灯りの前に立ち自分の内側にある神秘をそこへ流し始める。

 

(ここを起点にこの寮を僕の夢と同化させる。一種の異空間の創造に近いけど、幸いこの世界では力の制御がしやすいから意外と早めに定着する筈……出来ることなら明日には繋げて連絡を取りたいな。)

 

それから一時間程が経過し、ランタンに灯る光が安定し始めたが狩人の夢へと続くポータルとしての役割は果たせそうに無さそうな様子である。しかしそれとは別に何か手応えがあったようで、当人は満足そうな顔をしている。

 

「うん、基礎は築けたし、後は現実との境界線の侵食をある程度で止めたら大丈夫かな。後は……」

 

エノクは踵を返すと談話室から廊下に繋がる扉からひょっこりと顔を覗かせる。

 

「掃除ですね、せめてここからエントランスまでは綺麗にしておきましょう。」

 

まだ二部屋ほどしか終わっていない掃除を出来るだけ終わらせるため、エノクは暖炉の火を消し暗闇で先の見えない廊下へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリムくん、グリムくん、もう朝ですよ。」

「うーん……むにゃむにゃ……あと5分………。」

「イッヒヒヒ、そんな風にいつまでもゴロゴロしてたら永遠に起きれなくなっちまうよ。」

「オレたちみたいにね!イーッヒッヒッヒッ!」

「んにゃ……ってフギャ!?ゴーストども!?」

 

何故か足がへし折れてマットと床がくっついているベッドで丸まって寝ていたグリムは、エノクの声を聞いて少しだけ意識が覚醒し、寝ぼけ眼で辺りを見る。そして、眼前で愉しそうに嗤うゴーストを認識した瞬間、飛び上がりながら

 

「おいエノク、何でゴーストと一緒に居るんだぞ!?」

「何でって……少し掃除をしてまして、その手伝いをしてもらっていたんですよ。」

「随分と熱心にやってたもんだからねぇ。それに、多少綺麗になった方が人が寄り付きやすいもんだろ?」

「イタズラできる相手が増えるんならオレたちも大歓迎さ!」

「そういうことらしいです。さ、早く起きて顔を洗ってください。朝食食べる前にクロウリーさんが来て食べ損ねてしまいますよ。」

「何っ!?それを早く言うんだゾ!」

 

エノクがそう言うと、グリムは慌ててベッドから飛び出し洗面台のある方へと向かって行く。水が勢いよく流して顔を突っ込んだあと身体を震わせ水滴を飛ばし、事前に用意されていたタオルで顔をぬぐってさっぱりしたグリムは談話室へと直行する。テーブルの上には、具材がぎっしりと詰まったサンドイッチが置かれていた。

 

「おぉ、朝っぱらから豪華なんだゾ!」

「T社の技術が使われた容器に入れてたハムハムパンパンのサンドイッチの存在をさっき思い出しまして。良ければどうぞ、僕の世界でもチェーン店が出来るぐらいには人気の物ですよ。」

「難しい事はどうでもいいんだゾ!それじゃ、いっただっきま~す!」

 

もう辛抱できないといった様子だったグリムは勢い良く目の前のサンドイッチにかぶり付き、咀嚼する。味わうようにして

 

「ん~!このシャキシャキのレタス、程よい酸味の新鮮なトマト、そして肉の旨味がしっかりと詰まった厚いハム!塗られたソースも相まって、まるで口の中で具材が踊ってるみたいでいくらでも食べられそうなんだゾ!」

「昨日も思いましたけど、食レポの時の語彙力すごいですよねグリムくん。本書いたら売れるんじゃないですか?」

 

そんなほのぼのとした会話をしながら朝食を食べ進め、グリムが満足そうに腹を擦りエノクが皿を片付けた辺りでクロウリーが談話室へと入って来た。

 

「おはようございます二人共、昨日はよく寝れましたか?」

「ベッドの底が抜けるってオンボロにも程があるんだゾ。オマエどれだけ放置してたんだ?」

「特に問題はありませんよ。ゴーストの方々とも仲良くなりましたし。」

「昨日の事といい、貴方いきなり異世界に飛ばされたにしては精神図太すぎやしませんか?まぁ元気であることは大変よろしい、では早速本日のお仕事の話をしましょうか。」

 

一つ、咳払いをするとそのまま話題をつづける。

 

「今日のお仕事は学園内の清掃です………といっても学園内は広い、魔法無しでは学園全ての清掃を終えるのは無理でしょう。ということで本日は正門から図書館までのメインストリートの清掃をお願いします。」

「それに関して一つ質問が。」

 

話が終わった所を見計らい、エノクは手を挙げながら尋ねる。

 

「なんでしょう?」

「掃除と平行してグリムくんの魔法の練習も行ってよろしいですか?勿論、他人に迷惑がかからない程度で済ませます。」

「ふむ、学ぶ意欲があるのは良いことですね……では他の生徒と騒動を起こしたり、学園の備品を傷つけたりしない限りは許可しましょう。ただし、お仕事はきっちりとしてもらいますし、グリムくんの手綱は必ず握っておいて下さいね。それと昼食は学食で採ることを許可します。では、しっかりと業務に励むように。」

 

それだけ言うとクロウリーはそのまま談話室から去って行ってしまう。エノクはどしようかと頭を捻っていると、グリムからダルそうな声が聞こえてきた。

 

「ちぇっ……掃除なんかやってらんねぇんだゾ。オマエのあの銀色の奴で何とかならねぇのか?」

「できなくはないですけど、目に見える範囲とかに限りますから。それに血を使ってるので最悪僕が死にますし………あぁそうだ、グリムくんは炎以外に何が使えます?」

「ふな?いきなりどうしたんだゾ?」

「少し面白そうな事を思い付きました。面倒なら、使える魔法で何とかしてしまいましょう。」

 

そう言って微笑みかけるエノクに対し、グリムは何度か目をパチクリと瞬かせ、「ふな?」と首をかしげたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほへ~、やっぱりスッゲェ広いんだゾ。」

「本当ですね、道具のみで普通にやってたら1日で終わるかどうかといった所でしょうか。」

「そう考えるとめんどうになってきたんだゾ………。」

 

昨日も図書館へ向かう際にチラリと見ていたメインストリートに感心するような声を上げながら、一人と一匹はその道を見物していく。その途中、最も目立つ場所に立つ石像の近くまで来るとグリムが首をかしげながら口を開いた。

 

「昨日は見てなかったけど、この石像は誰だ?7つあるけど、なんかみんなコワイ顔。」

「ふむ、この世界の偉人でしょうか。」

「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ。」

 

二人揃って精巧な作りの像の前で首を捻る。すると、

 

「なんだ、『ハートの女王』を知らねーの?」

 

そこに一人の青年が話しかけてくる。目元にハートの形をした赤いスートを書いている彼に対し、グリムは自分の疑問をぶつける。

 

「『ハートの女王』?偉い人なのか?」

「昔、薔薇の迷宮に住んでた女王だよ。規律を重んじる厳格な人柄で、トランプ兵の行進も薔薇の花の色も一切乱れを許さない。マッドな奴らばっかりの国なのに誰もが彼女に絶対服従。」

「何でなんだゾ?」

 

その問いに、青年はニヤリとイタズラっぽい笑みを浮かべると声を弾ませながら答えた。

 

「理由は簡単、規則違反は即打ち首だったから!」

「こ、こえ~!おっかねぇんだゾ!」

「クールじゃん!俺は好きだね。優しいだけの女王なんて誰も従わないだろ?」

「確かに……そう言われてみればリーダーは強いほうが良いんだぞ。」

「まぁやり方も理にかなってますしね。それに処刑方法が打ち首だなんて優しい方ですし。」

 

突如話の物騒さが数段上がり、それに置いていかれた青年とグリムは驚いたかのように発言者であるエノクの方を見やる。それに臆した様子もないエノクに対し、グリムは率直に尋ねた。

 

「何で打ち首なんかが優しいんだゾ?」

「痛みを感じるのが数瞬だけだからですよ。串刺しとか、拷問とか生きたまま食われるとか……そういった痛みを伴う物に比べたら優しい以外のなにものでもありませんよ。下手に生きてるより潔く死んだ方が楽な時だってありますし。」

「いやそんな発想無いだろ………。」

「そうですか?まぁ死ぬのは嫌でしょうからその回避の手段が無いのは同情しますけど、支配する方法としては死の恐怖で縛り付けるのが一番手っ取り早いですよ。」

 

ずっと変わらぬ笑顔で末恐ろしい事を宣うエノクにドン引きしている青年とグリム。若干距離が遠くなった気がするがエノクは特に気にしている様子はない。

 

「所で君は誰ですか?」

「お、おぅ……俺はエース、今日からピカピカの一年生。どーぞヨロシク。」

「オレ様はグリム!大魔法士になる予定の天才だゾ!」

「はじめましてエースくん、僕は闇の鏡とか言う道具に誘拐されて帰る方法も見つけて貰えず、仕方なしにここで用務員としての仕事をすることになったエノクと申します。以後お見知り置きを。」

「えっ、生徒として呼ばれたんじゃねぇの?」

 

多少誇張もあるものの、概ね事実な事柄をなんでもないかのように語ると、ハートのスートの青年……エースは驚いたかのように目を大きく開いた。

 

「少なくとも僕はこの学校に来るつもりは一切ありませんでしたよ。何故か落ちてた封筒の中身を危険物じゃないか改めたら地面から棺が生えてきてそのまま連れてかれた訳ですし。仕事が溜まってないと良いんですが…………。」

「えぇ………そんな犯罪臭いことやってんのこの学校。確かに入学式に行くのが黒い馬車に積まれた棺ってのも怪しいもんだったけどさぁ。」

「向こうも予想外といった様子でしたよ。」

 

二人の会話よりも自分の興味が勝るグリムは興味津々といった様子で次々とエースに質問を投げ掛ける。

 

「なぁなぁエース!そんなことよりもあっちの目に傷のあるライオンも有名なやつなのか?」

「そうだな、これはサバンナを支配した百獣の王。でも生まれながらの王じゃなく綿密に練った策で玉座を手に入れた努力家だ。王になった後、嫌われ者のハイエナも差別せず一緒に暮らそうって提案した話もある。」

「おぉ、ミブン?ってやつに囚われない奴はロックなんだゾ。」

「度が過ぎれば不和を生み出す原因にもなり得ますがね。もしくは他の意図があるとも考えられますが……まぁおおよそ利用でもしたんでしょう。差別された側の人間の心理は動かしやすいですから。」

 

 

「こっちの蛸足のおばさんは?」

「深海の洞窟に住む海の魔女。不幸せな人魚達を助けることを生き甲斐にしていたって話で、お代さえ払えば変身願望から恋の悩みまで何でも解決してくれたらしい。お代はちょっと高かったらしいけど、なんでも叶うならそれぐらいは当然だよな。」

「その契約がどういった形なのかによりますが、最終的に何かしらの罠を仕掛けて命等を担保にしてそうですね。願いの代償でその後の人生を奪えるのであればあるいは……といった所ですか。」

 

 

「じゃあじゃあ、こっちのでかい帽子のおじさんは?」

「そっちは砂漠の国の大賢者。間抜けな王に仕えてた大臣で王子と身分を偽って王女を誑かそうとしたペテン師の正体を見破った切れ者!その後、魔法のランプをゲットして、世界一の大賢者までのしあがり、その力で王の座まで手に入れたんだとさ。」

「へぇ、国盗りですか。王が間抜けであったならさぞかし楽にできたでしょうね。」

「どういう事だ?」

「適当に罪を被せたらよっぽどの事がなければそれで終わりですから。周りに仲間を作ってしまえば集団心理で王を引きずり降ろして自分を代わりに据えるとかいう芸当も可能ですよ。魔法のランプなんていうアイテムがあれば洗脳とかもできたでしょうし。」

 

 

「おぉ!こっちの人は美人なんだゾ!」

「これは世界一美しいといわれた女王。魔法の鏡で毎日世界の美人ランキングをチェックして、自分の順位が一位から落ちそうになったらどんな努力も惜しまずやったって話。」

「努力の方向性によりますね、他のランキング上位陣を殺せばそれで済む訳ですし。それに、何故そこまで一番の美しさに拘るというのもよく判りませんね。生きた崇拝対象として人から離れた美貌が必要だから、好いた相手を自分に縛り付けるためという理由であれば納得できますが、ただ自分が一番になる為だけならばひどく狂気的な執着ですね。」

 

 

「こっちの怖い顔のは?」

「死者の国の王!魑魅魍魎が蠢く国を1人で治めてたっていうから超実力者なのは間違いない。コワイ顔してるけど押し付けられた嫌な仕事も休まずこなす誠実な奴でケルベロスもヒドラもタイタン族も全部コイツの命令には従って戦ったんだってさ。」

「死者の国ですか。こちらにも地獄という場所があるのは確かになってますが、あまり情報が無いのでよく知らないんですよね。押し付けられたという点において何やら不穏な気配がありますけど。それと、ケルベロスとは?」

「ケルベロスは頭が3つある巨大な犬、ヒドラは沢山の首を持つ竜でタイタンは巨人だな。」

「ひぇ~!?おっかねぇやつらばっかりなんだゾ!」

「成る程成る程……従える者を仕留めればどうにかなりそうですね。」

 

 

「魔の山に住む茨の魔女。高貴で優雅、そして魔法と呪いの腕はこの7人の中でもピカイチ!雷雲を操って嵐を起こしたり、国中を茨で覆い尽くしたり、とにかく魔法のスケールが超デカイ。巨大なドラゴンにも変身できたんだってさー。」

「ドラゴン……へぇ、龍なら見たことはありますが恐らく別物ですね。それに天候操作に国一つを滅ぼす力……ALEPHは間違いないとして、ビナーさんやカーリーさんとも良い勝負が出来そうですね。そんな力を持ってれば国一つ支配する程度は余裕でしたでしょう。圧倒的な力を見せつけられた生物は、基本的心が折れてしまうでしょうから。」

 

一通り石像について尋ねたグリムは難しい顔をしながら首を捻る。

 

「うーん……エノクの言葉を聞いてると、物騒で怖そうって感想しか出てこないんだゾ………。」

「グレート・セブンを知らないどころか何処をどうやったらそんなエグい想像に行き着く訳?」

「すいませんね、育った場所で考えられるパターンを考えていたらそうなってしまうんです。人が死ぬ事や人として生きる事が出来なくなる事はよくあったんですけど。」

「んな事よくあってたまるか!」

「あなたにとっての常識は誰かにとっての非常識なんですよ。」

 

納得出来ないといった様子のエースを他所に、エノクは懐から懐中時計を取り出した。何処と無くアンティークな雰囲気を漂わせるそれを見ながら、エノクはエースに向き直った。

 

「それより、授業はいいんですか?初日から遅刻では先生方に厳しく見られますよ。」

「うぇっ!?マジ、もうそんな時間!?」

「歩いても間に合う程度ですけど、ゆっくり行って先生と鉢合わせたら大目玉を喰らうかもしれませんね。」

「あーそう言うことだったら早めに行っとくか、入学早々に目つけられたらたまったもんじゃないし。」

 

そのまま立ち去ろうとしたエースであったが、ふとなにかを思い出したかのように立ち止まり振り返ると人を挑発するような悪い笑みを浮かべて口を開いた。

 

「じゃあね、物騒な用務員さんに間抜けそうな狸くん♪」

「ふなッ!?誰が間抜けだ!それにオレ様はタヌキじゃねぇんだゾ!」

 

グリムはそう憤慨するが、もう既に矛先となる者は遠くに行ってしまい追うのは不可能となったため

 

「全く、失礼なやつだな!」

「グリムくんってそこまで狸に見えるんですかね?自分はあまりそうは思いませんが……。」

「その通り!オレ様のかっこよさが分からないなんて見る目がないんだゾ!」

(かっこいいよりかはかわいい路線なのでは?大きな猫みたいな容姿してますし………うん、動物系統の幻想体と比べると可愛いですね。)

 

エノクは脳裏に浮かぶ洗脳して肉を食うムキムキ犬や首吊り強要目隠しダチョウと目の前で胸を張って鼻を鳴らす小生意気だけど言葉が通じる可愛い猫ちゃんを安全性も含め比較して、納得した様子で頷いている。罰鳥は癒し枠に入るのであろうか。

 

「どうかしたのか?」

「いえ、ちょっと職場の事を思い出してただけですよ。それより、早く掃除をしてしまいましょう。」

「つってもどうするんだ?ここにあるのは水の入ったバケツだけなんだゾ。」

「昨日の応用です、見ててください。」

 

置かれていたバケツに入った水へと神秘が注がれる。すると、水面が物理的に不可能な動きをし始め、次第に空中へと

 

「おぉ~、水が纏まって空中を動いてるんだゾ!どうやってるんだ?」

「神秘を水に浸透させて操ってるんです。今はただ纏めてるだけですが工夫を凝らしたら……。」

 

ズォォォォ

 

水の球体はエノクの指揮と共に動きだし、やがて激しく渦巻き始め地面へと着地した。水滴なども撒き散らさず回転するそれは、舗装された道をなぞるように進み、通った後には土埃等が取り除かれた綺麗な地面が見えた。メインストリートを通る生徒達はそれを興味深そうに見ながら通学していくのであった。

 

「この通り。水はしっかりとした質量がありますから叩きつければかなりの威力になるので相手にぶつけて攻撃する事も出来ますよ。」

「………で、これどうやってやるんだ?」

「まずは感覚でやってみてください。イメージとしては自分の内側で練った力を抽出する感じです。」

「あ、あんまし難しい事を言わないで欲しいんだゾ……ふぬぬぬぬぬぬ~!」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、エノクとグリムの姿は校舎の食堂の一角にあった。

 

「ふなぁ………結局出来なかったんだゾ………。」

「もしかしたら水との相性が悪いのかもしれませんね、君の得意分野は炎ですし。バケツの水で水流を作る事は出来ても持ち上げようとすると途切れてたので、集中力辺りが原因でしょうか。」

「集中力なんかよりもっと派手な魔法が良いんだゾ。」

「そうですね………あ、それなら体内で全力で力を暴発させて自爆という手がありますが。」

「オレ様まだ死にたくねぇ!」

 

メインストリートの掃除を神秘でさっさと終わらせた為、グリムの魔力操作の練習の時間が伸びたのだが、どうやら結果は乏しかったらしい。最終手段を代替案と出してくるエノクに吠えるグリムはやけくそ気味に頼んだ唐揚げを頬張る。いじける子供を見るような表情で自分用のシチューを味わっていると、

 

「なんかまーた物騒な話してんな。」

「あ!さっきの失礼な爆発頭!」

「はぁ?んだとこの狸もどき!」

「オレ様は狸じゃねぇんだゾ!」

「おや、先ほどぶりですねエースくん。初日の授業も終わって昼休みですか?」

 

そこへトレーを持ったエースが近づいて来る。トレーの上には海鮮が使われたパスタが乗っていた。エースはエノクとグリムが座っている席の真向かいに腰を降ろす。

 

「そーそー、まぁ授業つっても大体説明みたいなもんだったけど。」

「ふな?魔法を習うんじゃねーのか?」

 

きょとんとしたグリムの問いかけにエースはフォークでパスタを巻いて頬張ってから答える。

 

「俺も早く魔法使いたいんだけどさぁ、先ずは基礎を覚えてからだーつってたから退屈そうなんだよな。」

「実践形式でやるのは早急に覚える必要があるか、感覚が基本となるものを習うかですからね。事前知識がなければ精巧な動作は出来ないでしょう。グリムくんも、生徒になりたいのであればしっかりと話を聞くことを覚えましょう。」

「え~、面倒なんだゾ。」

 

「すまない、相席良いか?他が混んでて座れないんだ。」

 

グリムがげんなりとした様子で机に突っ伏した所ににオムライスの乗ったトレーを持った青年が声をかけてきた。右目には黒色のスペードのマークのスートが入っている彼に、エノクは頷きを返す。

 

「僕は構いませんが……グリムくんとエースくんは?」

「どーぞ、別に困る訳じゃないし。」

「へへーん!オレ様は優しいからな、特別に許してやるんだゾ!」

「なんでその魔獣は上から目線なんだ……?」

 

胸を張るグリムは大変可愛らしいが、その態度は良いとは言えない物である。困惑した様子の青年は戸惑いながらもエースの隣に腰を下ろす。そして改めてエノクを見た時、漸くその人相が見覚えがあるものだと気がついた。

 

「もしかして、入学式の最後に来た……。」

「えぇ、生徒でなく用務員として雇われたエノクと申します。以後お見知り置きを。」

「え?でも、入学式であの服を着てた筈じゃ?」

「手違いらしいぜ。魔力は無いし、そもそも誘拐紛いな形で来たんだと。」

「学園長と直々に話し合って、帰る目処が立つまではこの学校で働くことになったんです。」

「た、大変ですね。」

 

生徒ではないと聞かされ、ギクシャクとした様子で敬語を使い始めた青年にエノクはクスリと笑う。

 

「あぁ、敬語でなくて結構ですよ。僕は普段からの癖でこれですが、そんなに(見た目の)年齢に差はないでしょう?」

「そ、そう……なのか?」

「別に本人が良いつってんだから気にする必要なんて無いでしょ。誰だか知んないけど堅苦しい奴だな。」

 

そのエースの言葉が癪に障ったのか、青年は語気を強めながら口を開く。

 

「僕はデュース・スペードだ!クラスメイトの顔ぐらい覚えたらどうだ………えーと。」

「お前も覚えてねーじゃん。」

「う、うるさい!」

「まぁまぁ、落ち着いて下さい。早く食べないとオムライスが冷めますよ。」

 

生真面目そうなスペードのスートの青年……デュースは指摘に顔を赤くして声を荒げるが、エノクに優しく諭され渋々といった様子で座り直してオムライスにスプーンを入れた。

 

「そういう訳なので、これからもちょくちょく顔を会わせることもあるかもしれませんので、よろしくお願いしますね。」

「あぁ、こちらこそ………所でそのそっちの狸っぽいのは何なんだ?」

「狸じゃねぇ!オレ様は大魔法士になる予定の天才、グリム様なんだゾ!」

「唐揚げが無くなってますね、いつの間に。まだ10分も経ってませんよ。」

「お前らがチンタラ話してる間に全部食っちまったんだゾ。それより、これからどうすんだ?」

「図書館にでも向かおうかと、一応こっちの事を知っておきたいですしね。グリムくんも派手な魔法が書かれた教科書を探してみてはいかがですか?あの寮の周辺なら魔法を使っても文句は言われないでしょうし。」

「お、その手があったか!今日の仕事はもうねぇし、早く行くんだゾ!」

 

そう言うと食べ終わった皿を返却口へと置いたグリムはそのまま食堂から出ていってしまった。それを見送ったエノクはそのまま前に座る二人へと話を振る。

 

「お二人はこの後どうされます?」

「……もしよかったら僕も着いていって良いか?もう午前中で授業は終わったんだ。」

「えぇ、構いませんよデュースくん。」

「んじゃ、俺も行こうかな~。」

「意外だな、お前がわざわざ勉強しに行くタイプには見えないが。」

「ひっでぇな。まぁ、図書館の司書と仲良くなっとけば今後楽になりそうだし?初日から「真面目にやってます」感出せば成績が下がりにくそうだろ。」

「そういうことか……中々にずる賢いな。」

「人聞きが悪いなぁ、頭が回るって言えよ。」

 

軽口を叩き合う二人とそれをBGMにバゲットをシチューに浸して食べるエノク。暫くの間、他愛の無い相槌をうちながら話を聞いていたが、不意にエノクの耳に騒ぎ声が届く。

 

「………ん?」

「エノク……でいいんだよな、どうかしたのか?」

「いや、グリムくんがいってしまった方向が何やら騒がしいので……ングッ、食べ終わったのでちょっと様子を見に行ってきますね。」

 

既に空になったシチューのボウルとバゲットの皿が乗ったトレーを返却すると、そのまま食堂の入り口から出ていく。昼休みであるためか、かなりの人口密度を誇るがその間をするすると抜けていき辺りを散策する。周囲の生徒は制服ではなく"図書館"の司書としての格好を身に纏うエノクを奇妙な物を見る目を向けているが、アウェーな状況はヤーナムにいた時に慣れてしまった為意識の外に追いやって辺りを見回す。

 

「テメェ!待てやこの猫!」

「オレ様は猫じゃねぇ!」

 

10分後、騒ぎが向こうから自分の方へと近づいて来たのを感じ取ったエノクが見たのは、大広間へと飛び込んでくるグリムとそれを追いかける生徒達であった。少し呆れたような表情を浮かべるエノクすばしっこく駆け回るグリムを目で追う。

 

「なにやらかしたんですかグリムくん。」

「ふな!?オレ様は何もやってねぇんだゾ、アイツらが勝手にぶつかって来て文句言ってくるだけだ!」

 

抗議するグリムが次々と飛来する魔法をヒョイヒョイと避けると先に宝石のようなものが付いたペンを構える生徒達は生徒達は腹立たしげに悪態をつく。

 

「くっそ、ちょこまか動きやがって!さっさと当たりやがれ!」

「遅い!そーんななまっちょろい魔法なんかでオレ様を打ち落とせる訳ねぇんだゾ!」

 

グリムはニヤニヤと悪い笑みを浮かべ煽りながらそのまま器用に壁に上り、そのままシャンデリアに飛び乗った。

 

「やーいやーい、悔しかったらここまで届かせてみろ!」

「あまり暴れないで下さいよー。」

 

取り敢えず見守る形に徹する事にしたエノクは下から一応注意を促すが、既にグリムにも煽られた生徒達にも聞こえていないようである。頭に血が上った生徒の一人は、シャンデリアに乗ったグリムに向けてペンを向けた。

 

「じゃあお望み通りにしてやるよ!ファイアショットォッ!!」

 

ペン先の宝石から火炎の球が放たれたが、距離が空いていることもあってかグリムに当たることは無かった。

 

バチンッ!

 

その後ろのシャンデリアを支える部分に直撃した。

 

「ふな?」

「おい何やってんだ!」

「ヤベッ、先生が来る前に逃げるぞ!」

 

 

 

「おーい、エノ"ッ!?」ガシッ!

「あの魔獣は見つか"ッ!?」ガシッ!

 

数瞬の内にトップスピードに至ったエノクは落ちてくるシャンデリアの下に入ろうとした二人の胴を抱え持ちそのままの勢いで端まで跳ぶ。そうしてその下に誰も居なくなった広間へ

 

ガッシャーンッ!!

「ぶなぁッ~!?」

 

グリムをのせたシャンデリアは大きな音と共に床と衝突した。その衝撃で散らばった破片が襲いかかるが、エノクは即座に向き直ると抱えていた二人を背後に投げ飛ばし虚空から取り出した仕込み杖を構える。直後、眼前に迫ったシャンデリアを彩っていたであろう硝子細工を杖を振り下ろして粉々に砕き、次々と飛来する硝子や金属の破片を無傷で凌ぎきる。それが静まった後にエノクは後ろに投げ捨てた二人へと振り返る。

 

「大丈夫ですか?」

「ゲホッ、ゴホッ…腹が………。」

「ってて……いきなり何すんだよ!」

「すいません、こうでもしないとお二人がシャンデリアの下敷きになるかズタボロになってしまいましたので。」

 

いきなり捕まれたり、固い床に投げ捨てられた事で混乱していたエースとデュースだったが、エノクの言葉で漸く目の前の惨状に気がついた。もしそのまま歩いていたら落下してくるシャンデリアに巻き込まれていた事を察したのか顔を青ざめさせる二人を他所に、エノクはシャンデリアが落ちた衝撃で目を回しているグリムへと近づいて行く。

 

「う~………。」

「全く……むやみやたらに喧嘩を売るのは駄目ですよ。痛い目に遭ってからじゃ遅いんです。」

「オレ様は悪くないんだゾ……。」

「ここが僕の職場じゃなくて良かったですね。そんな言い訳する前に館長に殺されますから。」

「ヒェッ……。」

「さて……これを落とした張本人は……ってすごい、半径10mに人が居ない。」

 

辺りを見回すが、大広間にいた筈の生徒達は既に移動したようで、

 

「だからちげぇって!」

「俺たちはただ巻き込まれただけなんです!」

「嘘おっしゃい!この近くにいたのは君達だけでしょう。言い逃れは出来ませんよ!」

(そういうことですか……危機管理能力が育っていると言うべきか、逃げ足が速いと言うべきか。)

 

クロウリーにあらぬ疑いをかけられている二人は必死に弁明を行っているが、向こうは聞く耳を持たないようである。仕方なしにグリムを抱えたままそちらへ向かうと、その怒りの矛先がエノクへと向けられた。

 

「君もです、エノクくん!全く、グリムくんの手綱を握っているように言ったでしょう!」

「あぁ、その事ですが……。」

「言い訳は聞きません!これは退学物ですよ!」

 

エノクの言葉を遮りキッパリと宣言されたその一言に、デュースは更に焦燥した様子になる。

 

「そんな!それだけは勘弁してください!」

「そうは言っても、このシャンデリアは学園の設立当初から受け継がれている歴史のある品なんですよ。それを壊したとなると、普通の罰では済みません。」

「え~っと、すごい魔法士である学園長ならこれも直せたりとか………?」

 

おずおずといった風に尋ねるが、とりつく島もないようでクロウリーは無慈悲に事を告げる。

 

「このシャンデリアは魔法を動力源とし、永遠に尽きない蝋燭に炎が点り続ける魔法のシャンデリアです。その核を担う魔法石が割れてしまった以上、修復は不可能なのですよ。歴史的価値も含めて10億マドルは下らない代物です!」

 

膨大すぎる価格を聞き、弁償等も不可能だと理解する。冤罪とはいえ、二人は声を詰まらせる。

 

「そん……な。」

「うげっ………マジかよ。」

「……いや、もしかしたら不可能というわけではないかもしれませんね。」

 

その時だった。クロウリーはふと思い出したかのように呟く。それが耳に入った

 

「直せる方法があるんですか!?」

「代わりとなる魔法石があればの話ですがね。このシャンデリアの核となっていたのはドワーフ鉱山の物ですが、同じ場所から採れる性質の似ている物なら代用品になり得るやもしれません。」

「それじゃあ、オレがその魔法石を採ってきます!」

 

威勢良く宣言するデュース。だがクロウリーは疑わしげな雰囲気を隠そうともせずに答える。

 

「しかし、ドワーフ鉱山は昔に閉山になってしまっています。既に目ぼしい魔法石は採り尽くされているかも……。」

「ですが少しでも可能性があるのなら!僕は行きます!」

「ふむ、でしたら鏡の間のゲート使用を許可します。期限は明日の朝までです。」

「はい!」

 

確認だけするとクロウリーは魔法で消えてしまう。その場に残った三人と一匹は取り敢えず移動を開始した。

 

 

 

 

「はぁ~……オレ何もやってないのに何でこんなことしなくちゃなんないんだよ。お前も、何でわざわざキッツい方法選んだわけ?」

「う"っ………だが、あの状況だとあぁ言わざるを得ないと思ったんだ!」

「そうですね、多分クロウリーさんは基本的に話を聞かないでしょうし、不毛に言い争うよりもさっさと現物を持っていって交渉する方が早いでしょう。」

 

一先ず入学式が行われていた鏡の間へと訪れた一向。エースは納得いかない様子で顔をしかめており、デュースも気持ちは分かるのか若干ヤケクソ気味である。そんな二人の前で巨大な鏡に立つエノクは振り返りながら問いかけた。

 

「一応着いて来て貰えますか?大体は僕がしますが、君達も手伝ったという証拠は必要ですし。」

「んあ?何、やってくれんの?」

「お二人は巻き込まれただけですし、おおよその原因はグリムくんですから。」

「オレ様だって、追いかけられてただけなんだゾ!」

「はいはい………闇の鏡さん、起きていらっしゃるのでしょう?少々お聞きしたいことがあります。」

『……昨日の今日で汝とこうして言の葉を交わすとは思っていなかった。して、何用だ?』

 

無罪を主張するグリムをスルーして鏡に話しかける。すると昨日と同じ様に向こう側に仮面が出現した。

 

「ドワーフ鉱山という場所へ行きたいんです。魔法石なる物を採取しなくてはならなくなりましてね。出来ますか?」

『可能だ。ゲートを作るまで暫し待て。』

「へぇ、遠距離の転移能力まで……中々に優秀ですね、"図書館"にも一つ欲しい位です。今度詳しく仕組みを見てもよろしいですか?勿論、解体などはしませんので。」

『この鏡の間の清掃を対価とするのであれば問題無い。』

「その程度ならば喜んで。」

 

交渉をそこで打ち切ったエノクへ、デュースは覚悟を決めたといったように拳を手に打ち付けながら話しかける。

 

「僕は手伝うぞ、流石に一人におんぶにだっこは情けないからな。」

「必要な時にはお願いすると思いますよ。」

「えぇ~……頼んで良いなら俺待っときたいんだけど。」

 

見るからにやる気が無さげなエースだが、次のエノクの言葉にピクリと反応する。

 

「ふむ……手伝って下さるのであればクロウリーさんを一発ぶん殴る位のお手伝いはしますよ。」

「………マジ?」

「はい、理不尽に冤罪をかけられて君も腹が立ってるでしょう?悪い条件じゃないと思いますが。」

 

少しばかり理解するのに時間がかかった様子だったが、次の瞬間にはニヤリと悪どい笑みを浮かべ、弾んだ声色で答えた。

 

「そんなん、手伝うしかねぇじゃん♪」

「気持ちは分からなくもないが、仮にも相手は学園長だぞ……そんなウキウキで殴りに行くなよ。」

「当然の権利というやつですよ。君も、腹立たしいとは思っているのでしょう?」

「……………そうだな、僕もあの仮面を叩き割りたい!」

「俺より過激じゃん。」

「気合いがあるのは良いことですよ。それでは早速行きましょうか。」

「あぁ!闇の鏡よ、僕達をドワーフ鉱山へと導きたまえ!」

 

デュースが闇の鏡にそう力強く言い放つとそれに応えるように鏡は光輝く。光がおさまった後には、いつの間にか三人と一匹の姿は人のいる気配の無い山の中にあり、目の前には廃れた様子の坑道の入り口が見えるのであった。




最後辺りグリムが空気ですね。

自分はツイステをやってないので動画やサイトで情報収集をしてるので、どこか拙いところがあればご指摘をお願いします。
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