鬼と世界とSCP   作:アルビノ鮫

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弐拾参話 しがみついているようです(後編)

 ………。

 

 

 「……??」

 

 なんだ、これは。なんだこの反応は。

 

 子供がその言葉を……████という場所の言葉を呟いた途端に室内が静まり返ってしまった。誰も何も話さない、息すらしていないかのような静けさが室内を重く埋め尽くしている。息すら…息も、出来ないかのような。

 

 

 誰も、彼も……隣にいる、まい子ですら。

 

 

 「……████…?」

 

 彼女が場所を呟いた言葉は…異常に震えていた。 

 

 

 「どうしたまい子、大丈夫か」

 「…ぇっ、あ……大丈夫…です」

 

 彼女の細い肩を掴めば体全体が震え、それが私の手にも伝わってくる。原因は決まっている。……子供が呟いた、場所、か。

 

 

 室内にいるほぼ全ての大人が、呟いている。子供が発したその場所の事を。そして……

 

 

 探しに行く事を決めていた筈のそれを、迷い始めている。

 なぜ今日この日に、と嘆いている。場所が、████だと判明したばかりに。

 

 

 「…まい子?」

 「………」

 

 村人ですらない彼女ですら、戸惑っている。言葉を失い戸惑っている。普段なら一も二もなく動き出しているだろう彼女が言葉を失い、震えている。動けなくなっている。

 

 

 言葉がなにも、紡げなくなっている。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 そして私達は行方不明になっている子供達を山に入り、探していた。

 地元民を含めない少数の人……他方から来た私を含めたさほど多くもない人数で。着いていくと言ったまい子は置いてきた。この気温の中連れ出したくない。それに……

 

 

 「………」

 

 周りの人間が叫んでいる。子供の名前を呼び探している。しかし…返事は何も聞こえない。

 

 迷子になっている者を捜索救助する為に私達は山に来た。しかし探す人数が多くない現状で散り散りになりってしまえば、雪深い山で逆に遭難してしまう。だから距離を取る事が出来ずまとまって動くしか出来ない。

 まとまり団体でさくさくと雪を踏みしめ動いていた。行方不明の子供二人が見付かるまでこの形は崩さないだろう。

 

 

 雪は微かにちらついていれど、通常の視界を遮るほどではないはずだ。それでも体を冷やすに支障はなく、幼い子供達をいつまでも放っておける気温ではない。

 

 

 …そんな大変な中、どうして地元民は探しに来ないのか。あの身体が伴わなく入れはしなかったが人を想う鬼殺隊の精神を持つまい子ですら一瞬戸惑うほどの"何"がこの近くにあるというか。

 ……山のとある場所にある、怖い、話とは。

 

 

 「!!」

 

 そんな考えを巡らせていれはこちらの呼び掛けに答える幼い声が。その声が震えているように聞こえるのはこの寒さだ、仕方ない。

 幾人でそちらの方向へ向かい……

 

 

 

 

 そして私を除いた全員が息をのんだ。悲鳴に似た声も上がった。子供達が助けを呼ぶ声が聞こえ続けている。

 

 

 ……なにかが、いる、のだろう。他の人々が口々にそれを指し話している。足を踏み出すことを躊躇する、なにかが。

 

 

 だが………私には何も見えない。存在すら何もわからない。見えない、気配すら感じないそれに怯える事は……。

 

 

 だから。だからこそ、私は誰もが躊躇するその場に足を踏み入れ腰を抜かした子供達に手を伸ばすことが出来た。助ける事が出来た。

 

 

 

 ――― 「行冥様。もし、もしあの禁則地に足を踏み入れるのならば…絶対に、絶対に辺り一面にある"木の幹"には触れないでください…!」 ――

 

 

 

 

 出発前に唯一、まい子から言われた言葉を守って。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 行方不明になった子供達を探しに出掛けた行冥様達が戻ってきたのは、太陽が山の向こうに沈みかけていた時だった。

 

 二人の子供は寒さに震えてはいたものの、捜索に出掛けていた家族であろう男性に手を引かれ無事に歩いて帰ってきた。見たところ怪我はない。捜索隊にも怪我はない。

 

 行冥様、は……。……。

 

 

 ああ、優しい優しい彼なのに。誰よりも大きな巨躯を持っているのに。どうしてそんな、切ない目をしなければならないのか。

 

 

 ……暗い影を背負う彼の大きな手を握りこむ。私の動きなんて普段なら避けようとすれば避けれるだろう、行きの汽車の時のように。

 それでも避けれず、避けず、手をとらせてくれた。触れさせてくれた。そのまま、胸元に飛び込ませてくれた。

 

 場所に、土地に、禁則地に怯えている訳ではない彼が……切なさが、尊さが。何よりも儚く愛おしい。

 

 

 「…お帰りなさいませ、行冥様」

 「……ああ。嗚呼……ただいま、まい子」

 

 彼は膝をつき、私を胸元に招いてくれた。外の気温で凍えていてもおかしくない体温はとても、暖かかった。辺りの視線もざわめきも戸惑いも恐怖も、今は何も感じなかった。きっと今はそれどころではないから。

 入った人達も、入った彼らを見送ったこの村の人達も。

 

 

 早くお祓いをしなければと思っているのだろう。早くこの場から去りたいと思っているのだろう。 

 "禁則地"に入った彼らは怯えているのだろう。恐らく…"見て"しまったのだろう。

 

 

 

 "あれ"ら……"シガミツキ"を。

 

 

 

 

 

 ** SCP-951-JP **

 

 

 

 

 

 説明するのは後でいい。

 こんな……私の直接でないにしろ遠い血筋が何をして、こうなったかなんて……あれらに触れてしまった場合はどうなるかなんて。今の彼に聞かせるべきではない。

 

 家に戻って、話せると判断した時に話せばいい。

 今出来るのはただ……優しい彼を力一杯抱き締めるだけなのだから。

 

 

 

 

 

 





 SCP-951-JP 幻幻肢痛茸

 オブジェクトクラス:Euclid(ちょっとヤバい)

 SCP-951-JPは木に人間の腕に見える、キノコ。ドクササコに似ているらしい。いいよね、ドクササコ。好きだよドクササコ。毒キノコって本当にSCPみたいで怖くて好き。
 SCP-951-JPを食べた場合、一ヶ月後に本来ないはずの位置にある腕の痛みを訴え始める。そして痛みは消えることなく一年間持続し続ける。そのあまりの痛みに耐えきれず自分で自分を終了させてしまう。
 無事一年間耐えきった後死亡すればSCP-951-JPが生えてくる苗床になる。


 まい子の遠い血筋の先祖が何をしたかなんて関係なくとも、本人がそう思ってなければそうではないのです。
 


SCP-951-JP http://scp-jp.wikidot.com/scp-951-JP

著者:semiShigUre 様

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