異世界転生して騎士になった僕(男)は、メスオークどもからくっころを強要されていた。 作:寒天ゼリヰ
リケとかいう元捕虜のエルフへの聴取が終わった後、ワタシは引き続き"新"、"正統"の連絡員とも会談をした。相変わらずエルフどもの思考は訛りがひどすぎて読みづらかったけど、総じて反応は悪くなかった。
『面倒な戒律がないのなら、改宗を考えても良い』と明言した者までいたから、ワタシはだいぶ安心した。エルフの宗教観はずいぶんとユルいみたい。これなら、強引だったり性急だったりする手を使わなければ十分に安全な布教はできそう。
エルフ連中を信者にしてしまえば、困窮した信徒たちを救うという名目で炊き出しが行えるし、千人単位での新規信者獲得に成功すれば、星導教内でのワタシの評価も上がる。まったくwin-winの取引じゃないかしら?
「アーイイ、そこ……」
その後、ワタシと
ワタシはソファーに横になり、パパの膝を枕にした状態で耳をいじられていた。耳かき棒が動くたびに、あられもない声が漏れだす。あんまりヘンな声を上げると妙な勘違いをされそうだから、正直嫌なんだけど……我慢が出来ないんだから仕方がない。
「フィオは本当に耳かきが好きだねえ」
苦笑しながら、パパは耳かき棒を自在に操る。そのたびに、何とも言えない快感が走った。昔からパパの耳かきはすごかったけど、最近いっそう磨きがかかっているみたい。いやぁすごいわぁ……。
ちなみに、パパの口調がラフなものになっているのは、この場に他の人間が居ないからだ。ナイショ話がしたいという名目で、昼食は個室で取ることにしたからね。普段ならこういう場合にもソニアがくっ付いてきて邪魔をしてくるんだけど、今日は二日酔いでダウンしているので好き放題できるってワケ。
「ええ、もちろん。しかし、わたくしだけが特別好んでいるというわけではないでしょう? この手付きは明らかに普段から他人に耳かきをし慣れているものです。ソニアさんなどにも、してあげているのでは」
「まあ、その、ノーコメントで」
『ソニアもカリーナも……最近はリケ氏もか。本当、みんな好きだねぇ』
こんな可愛くて格好良くてエロい男性がタダで極上の耳かきをしてくれるんだから、そりゃあ人も集まってくるというものでしょうねぇ。あー、ソニアが羨ましい。だいぶズルい立場よぉ、あの女……。
『しかし、フィオレンツァ司教に耳かきをするのも久しぶりだなあ。昔はよくやってたものだけど……』
そうそう。子供のころは、耳かきも添い寝も好きなだけしてくれたよねぇ。随分とめんどうくさいヤツだったワタシを、邪険にすることもなく……ああ、まったく。あの日々のおかげで、ワタシがどれだけ救われたことか。はぁ、あの頃に戻りたい……。
「それはさておき……どうかな、エルフたちの感触は」
「悪く……んふっ、そこ好き……悪くないですね」
優しく耳垢を削ぎ落されるような感覚に吐息を漏らしつつ、ワタシは答えた。久しぶりのパパとのスキンシップに、言いようもないような至福の満足感が胸の中に湧きおこっていく。ついでに、性欲も。
……いけないいけない、いくらでもごまかしがきくパレア大聖堂と違って、ここはパパの屋敷だからね。ヘンなことをしたら、一発でバレる危険性がある。そうなったら、パパの立場も悪くなっちゃうからね……。
「あくまでエルフたちの自主性に任せる、という方向性ならば……んっ……布教をしても大きな問題は発生しないように……あっ、イイ……思います」
「なるほど」
頷いてから、パパは私の耳に息を吹きかけた。とたんに、私の脊髄に法悦めいた感覚が走る。
「あひぃ……」
「はい、こっちの耳はお終い。ひっくり返ってね」
「は、はい……」
もちろん、ワタシはすぐさまパパの指示に従った。寝返りを打つように転がり、逆側の耳を上にする。すると……ワタシのちょうど目の前に、パパのお腹と股間が……。
あー、だめだめ、えっちすぎる! む、娘に対してそんな誘惑をしてくるなんて、なんて悪い父親なのかし……いや十割ワタシが悪いわね? 一方的に父親認定した相手に一方的にワタシが欲情しているだけだわ。
あー、冷静になったら罪悪感がムクムクと。どうしてこう、すぐスケベな気分になっちゃうのかしら? やっぱり、淫乱の娘は淫乱になる
「まあでも……エルフはなかなかケンカっ早い種族だし、独自の文化も持っている。何が地雷……じゃないや、逆鱗なのかまだわからない部分があるし、宗教関連は慎重にやったほうが良いと思うな」
そんなこちらの内心には気付いてない様子のパパは、私の耳に無造作に耳かき棒をつっこみつつそう言った。こんなニブニブで、良く今まで純潔を保てたわよねぇ、パパってば。ソニアがいなきゃ、どう考えても誰かに食べられてるわ……。
「あふっ……も、もちろんその辺りは分かっております。わたくしとしても、無用な争いは避けたいですし……」
忠告されるまでもなく、当然ワタシもそのあたりは理解していた。星導教は比較的ユルめの宗教だけど、それでも他宗教といさかいを起こすことはよくある。中央大陸東部で信仰されている天陽教とは、定期的に戦争をしているしねぇ。
ここがパパの領地じゃなきゃ、ある程度テキトーにやっちゃうんだけど……今回はそういうわけにもいかない。できるだけ慎重に立ち回らなきゃあ……。
「それに、極星様の導きは日々の暮らしを少しでも良くするためのもの。思考停止して金科玉条のように教えを守っていればそれでよい、というものではない……それがわたくしたちの考えです。彼女らエルフの文化を無視して己の戒律を押し付けるような真似は、かえって極星様の教えに背くことになりますから」
実際、ワタシたち星導教は宗教集団を名乗ってはいるけれど、実態はたんなるクソデカ星占術集団だからね。パパの前世の世界で言えば……陰陽寮? とかいう組織が近いかなぁ。もちろん腐敗したり硬直化したりしてる部分は多々あるんだけども……他宗教に対する柔軟性は、なかなかなものがある。
そういう面では、エルフとは相性がいい気はするのよね。彼女らはどうやら一種の精霊信仰を行っている様子だけど、星導教ならその従来の信仰と対立することなく共存可能だし。唯一神をあがめる天陽教じゃ、こうはいかないんだけど。
「なるほどね」
パパは頷きながら、ワタシの頭を優しく撫でる。その甘美な感触に、ワタシは思わず目を細めた。はあ、こんな時間が永遠に続けばいいのになあ……。
「……エルフたちの現状は、目を覆いたくなるような悲惨なものです。聖職者としては、座視はしていられません。どうかわたくしにおまかせを、アルベールさん」
……まあ、正直エルフとかどうでもいいんだけどね。でも、あの連中が大人しくなれば、パパの仕事も随分と楽になるだろうから……娘としては、頑張りどころねぇ。せいぜいミスをしないよう、気を付けてやっていきましょうか。