公立七百中学校の校門に、
ある女の子が、俺の顔を見ていた。
「悠里ちゃん…」
「雅利くん!待っていたよ!」
「待っていたって、何でいるんだ?」
「学校、抜け出しちゃった!会いたくて!」
「抜け出しは、よくないぞ!」
と、俺は、少し怒った。
「悠里ね、雅利くんに会いたかったんだ」
「そんなに、俺に会いたかったのか?」
「そうだよ!ねぇねぇ、今日は何して遊ぶ?」
「そんな事、急に言われても…」
すると、しばらくして、石瀬千尋も現れて…
「雅利くん、それに、悠里ちゃん?」
「あっ、千尋ちゃんだ!
ねぇねぇ、悠里と千尋ちゃん、どっちが好き?」
「急にそんなこと言われてもな…」
「それじゃあ、どっちを愛している!?」
「言い方、ほぼほぼ、一緒じゃん!」
「私と悠里ちゃん、付き合うなら?」
「…」
俺には、小豆沢こはねという、女の子がいるが、
そんなこと、言うと、二人が、悲しむに決まっている…
そして、俺は、こう言い放った。
「片思いをずっと続けるなら、
それは、両想いより、幸せだと思わないか?」
「それって…」
「どういう意味?」
「片思いしている人って、大抵、破局する事が多いって、
ウワサだぜ?そして、両想いしている人は、
長続きもせずに、別れてしまう」
「じゃあ、結局、同じじゃん!」
「そうよ!それで、どっちが好き?」
二人とも、俺の顔を、じっと、見つめている。
パーソナルスペースが、明らかに狭かった。
「もっと、簡単に言えば、恋は、難しくて、
怖いことなんだよ」
「…」
「…」
「じゃあ、私と悠里ちゃんのこと、
ちゃんと、見ていてよね?」
「えっ、わ、わかったよ…」
「じゃあ、雅利くんの家に行きたいなー」
「悠里も!」
「う、うん、わかった、今日は両親がいないから、
大丈夫だと思うよ?」
父親と母親は夜遅くまで働ているため、
一人でいることが非常に多い。
同い年の女の子を二人も、
家に招くのは、マズい気がして仕方がない。
「ここが、雅利くんの部屋なんだね」
「初めて来たけど、キレイにしているね」
「こまめに掃除しているからだ、
飲み物、持ってくるから、じゃあね」
こうして、俺は彼女たちの為に、
お茶を淹れるのだった。
「雅利くんは、悠里のこと、どう思っている?」
「私のことも!」
「好きで愛しているよね?」
「ずっと、大切にするよね?」
「えっと…」
「悠里のことは?」
「あっ!私のことは?」
「千尋も悠里も、大切な女の子だ、
それ以上でも、それ以下でもない。
大切な女の子だ」
と、俺はそう言い切るのだった。