小動物で内気な幼馴染   作:アッシュクフォルダー

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第三話 石瀬千尋

高木雅利は愛嬌を、どこかに置いてきたかの

ように不愛想な男だった。

常にツンと前を向き、

冷めた言葉を口にしては周囲から人を遠ざける。

親しい者を相手にしている時ですら滅多に心を開かない、

気まぐれな猫のような性格だった。

 

彼には、石瀬千尋という、もう一人の幼馴染がいる。

高木とは正反対な穏やかで心優しい性格で、

大人しくて臆病な小動物のような

印象を与える可愛らしい少女だ

 

二人は同じ、中学校に通っており今も家が近くにある。

しかし、この年になって男女が肩を並べて登校するのは

少しばかり恥ずかしく思え、高木は入学当初にあった

石瀬からの誘いを断ってしまった。

 

それからふたりは、たとえ同じ時間に家を出たとしても

せいぜい簡単に挨拶を交わす程度で、

一緒に登校することなどほとんどなかった。

休日行動を共にすることは抵抗がないのに、

どうして行き先が学校だとこんなにも

複雑な気持ちが芽生えてしまうのか。

 

今日も高木は一人で学校に向かっていた。

 

(……石瀬だ)

 

数分先に家を出たはずの石瀬が

支度中外から声が聞こえたので確かだ、前方をゆっくりと歩いている。

彼女とは歩幅も歩調も違うので、

こうして追いついてしまうことも珍しくない。

そんな時 高木はわざと歩調を緩め、

彼女に追いつかないよう調節を図るのだ。

 

(髪、跳ねてるな)

 

歩くたび揺れる髪が一か所不自然に浮いている。

学校につく前に教えてやるべきか少し迷った。

 

わざわざ自分が教えるようなことではないのか?

いや、もしかしたらあれはそういうものなのかもしれない。

 

高木は、そんなことを考えていながら、登校していった。

 

高木は担任に呼ばれ職員室に向かった なんてことのない内容だ

どうしてそんなことで放課後に呼び出すんだと少し不満に思う。

こんなことなら荷物も持ってくればよかった。

もう誰もいないであろう教室に高木は戻る。

 

「!」

 

高木は机の上に放置していた筆記用具を鞄に収め、

物音を立てないようにして席を立った。

そんなことをする必要は

どこにもないのに気配を消してしまおうとしていた。

 

「わっ」

 

そんな高木に後方から何かがぶつかってきた。

ちょうど教室を出るところだったため躓き転びかけてしまう。

 

「…………」

 

高木が少しムッとした顔で振り返ると、

そこには高木以上にムッとした顔の石瀬が立っていた。

 

「一緒に帰ろうよ、雅利くん」

 

石瀬が小さな声でそう言った。

緊張しているのか握りしめた手は震えているし、

声は少し掠れて聞き取りづらかった。

耳まで真っ赤に染めた彼女が高木の返事を待っている。

まるで告白でもされているかのようだった。

 

「…ああ」

 

高木はやっとの思いでそう返した。

彼女にその気はなくとも一度意識してしまえば

まるで本当に告白されているかのように思えてしまうのだ。

 

石瀬がドアと高木の横を通り抜けて歩き出す。

高木は暫し茫然とその姿を見詰めていたが、数歩先で立ち止まり振り向いた

石瀬に我に返って彼女の横に並んだ。

ちらりと見降ろした石瀬は拗ねているのか、

小さく口をとがらせており、

それでいていつもと変わらず可愛く映った。

 

 

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