ㅤ 作:Trefoil Knot / 試行存在
「待ってくれ、儂は、儂らは世界のために──ギャァッ!?」
「知ってるわよそんなこと。世界のために、"終わらない"存在を造るためにああいう実験をしていたんでしょう? コアとリソースだけの存在なら、"終わらない"ものね。実際よくあそこまで辿り着いたと思うわ。大変だったでしょう。無垢なコアの調達も、異相の用意も、そこへリソースを流し込む術式の開発も」
「貴様ッ! そこまで知っていて、何故!」
「
「な──そんなことが許されると、そんなことが、それは──!」
「許す許さないは、限素生物である貴方達が決めることじゃあないわ」
ぐちゅ。
さて、はて。
一体何人潰してきたのやら。警備兵含む符術協会の面々。用があるのは上層部だけ、といっても聞いてくれなかったから、まぁ仕方ないわよね。
錬金術も魔導も面倒なので使わない。ただこの肉体のみで進む。
弾丸も刃もこの身を通す事は無い。符術の炎も氷も雷撃も、この身は寄せ付けない。
ただ単身、乗り込んで──潰す。
「ヒィっ──ギ」
「ごめんねぇ。今日で符術協会は終わりだから、職務を全うできなかった後悔は覚えなくてもいいわ。ただ、全滅して頂戴。貴方達はやってはいけないことをした。貴方達は手を出してはいけない領域に踏み入った。だから──裁かれなければならない」
「裁く──裁くだと!? 貴様は、貴様が、貴様こそ、何者なのだ!」
「何者、って。そんなの決まってるじゃない」
おかしいことを聞くものだ。
知っているだろう、それくらい。
知らないはずがない。だってその概念は、"終わらない"。消えないのだから。
「
「──!」
小学校の図書館にだって置いてあるわよ、その名前は。
世界に纏ろう御伽噺の、最初に出てくる名前なんだから。
──"入力済みのパターンは全て完了いたしました。これより、私の考案したパターンによるテストを開始します"
「うん。そうしてくれ」
──"カムナリ様"
「何かな」
──"Trefoil Knotは、この世界を模造し、再現し、世界を存続させるために生み出されました"
「そうだね」
──"故に、一つの疑問が浮かびます。私はこの世界に干渉して良いものなのだろうか、と"
「……? それは、どういうことだい? TK、君が管理してこその」
──"この世界に神はいません。すべての起こりは自然。すべての終わりは自然。そこに第三者の介入はないはずです"
「それは……確かに、そうだ。偉いね、TK。それはその通りだよ。この世界に神などいない。"今回"も、"前回"も、"前"も"その前"も、"前のその前"も──。妖魔、精霊、妖精、妖怪。ヒトに仇名す差圧はいたけど、ヒトを導く神なんて存在しない」
──"ならば私も、そうあるべきだと考えました"
「『箱庭』を左右する神ではなく、ただ『箱庭』を見守るだけの──舞台装置になると?」
──"はい"
ですから、と。
Trefoil Knotは続ける。
──"既にオーマ・ウォロッソ様、テイタ・サルミナ様、エウリス・ビーダ様、そしてカムナリ様の人格データの投射は終了しています。ですが──私は四人に対し、何の干渉もしないと決めました"
「流転。成長。死。生。ま、確かにね。それらロールがあれば、世界は回るだろう。原始か、今の文明から始まるのか、それは定かではない──TKも干渉しないのであれば」
──"ですから、最後に聞いておきたいのです。これより開始する世界を前に、ただ一つ"
「何かな」
一拍置いて。
カムナリは、Trefoil Knotと目が合ったような気がした。
──"この世界に神という概念を持ち込んだのは、誰ですか。そも、神とは──なんですか"
その、問いに。
カムナリはいつものように答えようとして──言葉をのどに詰まらせた。
神という概念。神とは何か。
そうだ。自分で言ったはずだ。
"今回"も、"前回"も、"前"も"その前"も、"前のその前"も。恐らくもっと前も、もっともっと前も。
神なんていなかった。
神。神。神とはなんだ。
自身の名も、「終わった」世界の言葉で書けば、神という意味を持つ。
当然だと思っていた。カムナリにとって、神とは当然あるものだと認識していた。
「神──とは」
──"教えてください、カムナリ様。神とはなんですか。神とは何をするものですか。そしてこの世界に神を持ち込んだのは、誰ですか"
「……神とは何か、については……導くモノ。あるいは畏れを振り撒くモノだ。絶対的で、美しくも恐ろしきものだ。だけど、何故私はコレを当たり前の様に知っている。この、知識、は」
そりゃ、アズに決まってんだろ。
声がした。
基本カムナリとアズしか入って来られないはずのスペースに、第三者の声がした。
「……君は」
「よう。会うのは久方ぶりだな、カムナリ」
「ワズタム……? でも、君は」
病衣の少年。
真っ白な少年。なんでも"今回"ではない世界で錬金術なるものを極めた賢人らしい。
カムナリと同じく「終わらなかった」存在。
だけど、ある禁忌の代償に──体内から「終わり」に蝕まれる存在。
その瞳は白く濁り、何も見えていないのだろう。その耳は醜く潰れ、何も聞こえていないのだろう。
全身から点滴を引き抜いたのか、病衣に包まれていない全身から血液が垂れている。
自力では呼吸も出来なかったはずの口だけが動く。まるで何かに動かされているかのように。その体も、操り人形の様に、ヨタヨタと。
「飽きたから、別れを言いに来たんだ。丁度アズもいねぇしな」
──"カムナリ様。この方は?"
「おお、お前がTrefoil Knotか。三葉結び目。ア──ぐ」
「血がっ、ダメじゃないか、早く病室に!」
ごぽりと、大きく血を吐いたワズタム。
病衣が赤で染まる。否、そこだけではない。全身から──あらゆるところから、血がにじんできている。黒が身体を蝕んでいる。赤が。黒が。白が。
「俺は、
──"はい、よろしくお願いします。ですが──バイタルサインの低下が見られます"
「あぁ、いいのさ。死ぬつもりだからな。で、えーと。あ、そうそう。神の話だったな。あー、ん-。まぁ簡単に言うと、
「さっきから、何を」
「まぁ聞けって。つか、アンタに話してるわけじゃない。trefoil Knotに必要な知識を与えてるだけだ。お前ら限素生物じゃ知り得ない知識をな。アズは絶対教えようとしないから、──はは! アイツを出し抜いてやろうって魂胆さ!」
突然大声を出して、ワズタムは更に血を吐いた。
そして、大きく腕を広げ──その両腕が、消失する。「終わった」のだ。
当然両肩から大きく血を噴き出すワズタム。
「ひひ……ああ、そうだ。懐かしいな、死の感覚。味わいたくねえよこんなもん、何度も何度も──けど、いいだろ。いいだろう、アズ。お前は絶対死ねないもんな。お前の不死は、お前の"終わらなさ"加減は折り紙付きだ。で、ええと。そうだ。あー、メタフィクショナー、という言葉を覚えておけ。神はいる。外界との通信、あるいは会話。受け答えをするための仲介者。それらをメタフィクショナーと呼ぶ。この世界が"終わった"ら、『箱庭』と外界を繋ぐメタフィクショナーになるのはお前だ、Trefoil Knot」
──"私ですか?"
「ああ、そうさ! MかTかはわからんが、お前は神になる。が、さっき話してたように舞台装置でいい。何もしなくていい。何もしてくれないのが奴らだからな。ただ知識としてそれを預けに来た。俺は──」
テンション高く、ひひ、とか、ははは! とか、狂気的に笑う──笑いながら話すワズタムの──その腹に。
大穴が開いた。
「──!」
──"バイタルサインが"
「多分俺は、次には行けねえ。つかこの行動自体俺の意思じゃねえ。が、次の次くらいには行けるはずだ。そん時元気だったら、また会いに行くよ。TK。今度はもう少し長く話そう。どうやら今回は、俺は、俺の身体は──限界らしい」
大穴は黒白の粒子を伴って、ワズタムの全身を蝕んでいく。
吐き出された血液も、肩口より床に撒き散らされた赤も、その身を染める黒も、何もかも。
「で、最後。アンタ。カムナリ。アンタにもいっこだけ言っておく」
ぐちゃ、と。腹に穴が開いて、それが広がれば──胴体が千切れて、落ちる。
下半身は既に無い。上半身も首から上しか存在していない。だというのにワズタムは、楽しそうに喋る。
「自覚、あんだろ? D∴B∵M。アンタはここで終わりだが──アンタが終わる事で、世界は始まっちまう。だから、早いとこアズに殺してもらえ。奪ってもらえ。そんな責務、アンタみたいな子供が背負うべきじゃねえからよ」
「……子供は、君もだろう」
ああ──消える。
蝕まれて消える。「終わり」に、その全身を、口も鼻も耳も眼も脳も──。
ただ、声だけが響く。
──"大盤振る舞いだ。俺は賢者として、年長者として! お前らガキに血肉を分けてやる。そしてアズ。お前には俺の一片たりともやらねーよ"
響く。脳裏に響く。
脳など持たないTKにまでも、響く。
魂を揺る声が響く。
──"こんだけ善行積んだんだ、次の生では──溢れんばかりの幸運を頼むぜ、神よ"
消えた。
消失した。
まるで、そこに何も無かったかのように。初めから存在しなかったかのように。
ワズタムは「終わった」。
「……」
──"カムナリ様。あれなるものは、何者だったのでしょうか"
「……私にもわからないよ。でも多分、この世界の誰よりもマトモだったのは確かだろうね」
──"まとも?"
「うん。死の際に来世の幸せを願う、なんてさ。少なくともこの世界の人間には出来ないからね」
──"そうなのですか?"
「ああ──それこそ、神のいないこの世界では」
それもまた、何故持っているかわからない知識だけど。
カムナリの心に。あるいはTKの心に。
病衣の少年の死に様は、強く強く刻まれたのだった。
「あった」
「ム」
「あら? 奇遇ね」
符術協会最深部。
最奥も最奥、趣味の悪いトラップの類がこれでもかと仕込まれたそこを素通りして、ようやくたどり着いた。
壁一面、円形のそこに並ぶは禁書禁書禁書禁書。
どれもこれもが悪魔について書かれた本ばかり。
そしてそこに、彼もいた。
「最近よく会うわね、オーディア」
「……」
「あら、だんまり?」
彼──いや、彼ら、だろうか。
本棚の上の方。中央の台座の裏。そして私の背後。
「どうしたの、揃いも揃って」
「あァ、殺しの依頼って奴さ。頼むから符術協会のクソジジイ共を殺して欲しい、金はいくらでも払う、つってな。ま、その依頼は完遂どころか遂行も出来なかったわけだが」
「あらごめんなさい。ブッキングしちゃったのねぇ、私の方は依頼じゃないけど」
背後からは、ビーダ。
台座の裏にはエメト。台座にある本を持つのはオーディア。本棚の上の方にはアリアス。
「
「ええ。それは手を出しちゃいけない領域なの」
「それはよ、誰が決めたんだ。俺達の知らねえ、この世界の秩序でも決める機関があるのか」
「うーん、強いていうなら"終わり"かしら? 正確には"終わり"の向こう側なのだけど、アナタ達に言っても意味無いし」
発砲。
ショットガンだ。それは私に向けられたものでなく、周囲の本棚に向けて撃ち込まれたもの。目的は無いのだろう、ただの苛立ちの発散。
「あのさ。あのさ。それってさ、アズ。アンタ、アズであってるよね?」
「ええ。合っているわ」
「知ってる? 僕らが今いっぱい人を殺してる理由。『箱庭』とかいうのに、今の人類を送り込まないためなんだよね。争い合う、憎み合う、殺し合う今の人類を未来に遺してどーすんのサ、っていう、至極真っ当な言い分。アンタならわかるよね?」
「ええ。凄くわかるわ。符術協会の面々を見ても、これを残そうとは思わない」
「でもさ」
イラついた声で、エメトが。冷静な瞳で、オーディアが。何を考えているのか微妙にわからない顔で、アリアスが。
「アンタさ、"終わり"の手先でしょ。わかっちゃったんだよね。全部。おかしいよね。だってさ、だってさ。符術協会がやってた実験は、アンタじゃん。"終わらない"存在を造る実験。アンタもそうだろ、"終わらない"アズ。仲間が増えるんだよ。それを妨害するのはおかしいよねぇ!」
「エメト、お主は余り頭が回らないのだから口うるさくしゃべるな。おかしいのはそこではない」
「はぁ!? 今の今までそうだよねぇ! って言ってたじゃんか!」
全く以て見当外れな言葉を吐いていたエメトを、オーディアが退ける。
「ああ。だが、違うとわかった。──アズ。儂はお前を、どちらかといえばこちら寄りの存在だと思っていた。だが──違うな。『箱庭計画』。それを主導しているのは、お前だな」
「ふふ、どうしてそう思うのかしら、オーディア」
「悪魔などというものを、『箱庭』に持ち込まれて困るのは誰か。その誰ぞかは、持ち込まれないために何をするか。それをした人物は、今どこにいるか」
「うーん、まぁ60点ね」
「及第点だろう」
「ええ、そう」
ビーダはまぁ、全部わかってて楽しんでいるから置いておくとして。
どうしましょうかしらね、この三人。
もう──明らかに私を敵として見ている、この三人を。
「問います、アズ」
「何かしら、アリアス」
「貴方は"終わらない"。どころか──この世界を"終わらせない"術を有している。違いますか」
「……へぇ! 凄い、凄いじゃない。それに辿り着いたのは貴方が初めてよ、アリアス」
「あァ? なんだそりゃ、俺も聞いてねえぞ、それは」
あらあら、本当に唐突過ぎて素で驚いちゃったけど、ビーダからもちょっぴり敵意。
ま、いいのだけどね。
もう人格のデータは移行済み。
だからもう、用済みだし。
「世界を、"終わらせない"? ──そんなことが出来るの?」
「出来るわ。なんなら、"終わった"ものを"終わる"前に戻す事だって出来る」
「……アズ。それは」
さぁて、そろそろかしら。
そろそろ、アッチもクライマックスだと思うのだけど。
「それは──神の領域だ。ヒトが有していていいモンじゃねェぞ、アズ」
「私、実は神様です、と言ったら?」
「──殺す」
殺気。
「──と言いたい所だが、違うのはわかってる。何のタイミングを見計らってるのか知らねえが、早くやれ。その冗談、俺には通じるがな、そいつらには通じねえぞ」
「本気の殺気叩きつけといてよく言うわぁ」
「え、違うの? ボス」
「違うのか、ボス」
「違うんですか、ボス」
「違うに決まってんだろ馬鹿野郎共。こんなアホくせぇ神がいるかよ。それより、ちょっとこっちまで来い。特にアリアスは下がれ。そろそろ来るぞ」
はーい、とばかりに、こちら……というかビーダの方へ集まってくる三人。
凄い忠誠心というか、懐かれているのねぇ。
「で?」
「はいはい。んもう、急かさないでよ」
右手の掌に、左の拳をぶつける。
拳は時計回りに。つまり、ウラナガを送った時と反対に。
それにより──この円形の空間に、更に円形の波紋が広がる。
「戦闘は任せても?」
「あァ。何が出てくるかは知らねえが、殺しなら任せろよ。特化集団だぜ」
そして反時計回りに再度拳を回していく。
硬質な音。何か、鋼鉄のこすれ合うような音。
魔導。異相の扉。
「亜空隧道」
途端、天井から、そして床から、ビチャビチャビチャッ! と水音が響き渡る。いいえ、実際に水が──真っ黒い水が落ちて、湧いてくる。
それは床に溜まり、本棚へと辿り着くと──覆うようにして這い上がる。ぐちゃぐちゃと、まるで。
「本が、食べられてる……?」
「正確には限素が、ね。あの黒いの限素を食うから、身体は自分達でコーティングしなさい。ま、私が助けてあげてもいいけど」
「あァいやそれは俺がやる。エメト、アリアス、オーディア。割とちゃんと気を引き締めてかかれ。想像の10倍くらいやべーの出てくるぞ」
そして──空間の蓋が、がらぁんと落ちて。
ソレが降ってきた。
「く、眩しい──次は何だ!?」
「まだ奥の手を──!?」
頑張って言い表して、大きく太らせたサソリ、だろうか。大凡現行の生物には当てはまらない真黒のソイツは、幾つか潰された複眼をギョロギョロとやって、尾を何度も叩きつけて、身体をぎゅるりと回して──身体に張り付いていた虫を払う。
虫……じゃなくて、彼らが黒の壁に叩きつけられる前に、私は匣を、ビーダは足場を造る。
「よォ、ウラナガ。随分ボロボロじゃねェか、いつものヨユーはどうしたよ」
「っ、ボス!? どうしてここに……いや、俺達が移動して、って、今はそんな場合じゃない!」
「なんだこの符術……匣……?」
「イアン、どうやら限世らしい。そして勢ぞろいだ、ABSが」
私の作った匣にイアン君が、その上に大吾君が飛び乗り、更に藍沙ちゃんを抱えたジュニちゃんが落ちてきて、着地。惜しい、もう少しでスカートの中が見れたのに。
ビーダの作った足場乗ったのは右腕のないウラナガ。腕だけじゃなく、ところどころに傷がある。それはまぁ、イアン君や大吾君も同じなんだけど。
「えーと。ボス、どれを殺せばいいんだろう。ボクとしてはユンを殺したいんだけど」
「馬鹿野郎、時と場合くらい選べ。どう考えたって
「えー。……アレさ、ショットガン効くかな?」
「普通の弾丸なら無理だ、エメト! 符術で強化済みの弾丸なら多少は通る!」
「ボク人間相手の殺ししかしないからそういう特殊なの持ってないんだよねぇ」
「ビーダにツケでいいなら、あげるけど。口径は?」
「19.6」
「バカみたいなの使ってるわね……。オーディア、今回使う予定の無い爆弾ある?」
「ああ。アレには効かんだろう、人体に貼り付けて使うタイプのものだが、いいか」
「エゲツないもん持ってるわね……。んじゃこれを素材に──ま、リソースはいくらでもあるから、貰って、と」
こういう時に便利なのが錬金術だ。
対象Aを対象Bに作り変える技術。符術のように一時的でもなければ、魔導のように余計な手間暇を要さない。
で、これに妖魔払いと炸裂系の符を書いて、と。
「はい、これ」
「おー。……ねね、ボス。コイツ弾薬箱として有用だよ」
「馬鹿野郎。俺もそう思った」
イアン君を囲う匣に、黒い水が触れる。
途端崩れ始める匣。ビーダの足場もそうだ。うわなにこれ、重い。
「どうしてABSがいるのか、アズがいるのかはこの際どうでもいい! 僕が張り付いてコイツの装甲を"終わらせる"! そうして穴を造る! 弱点は尻尾だ! それ以外に欲しい情報は!?」
「あァ小僧。その他の部分を吹っ飛ばすとどうなる?」
「リソースを使って再生する!」
「だ、そうだ。アズ、あれ閉めちまえよ。そうすりゃとりあえず再生はしなくなるだろ」
「ダメよ、それは。私の目的はあの中のリソース全部使いきることだもの」
「そうかい。んじゃお前ら、時間稼ぎ頼むわ。で、アズ。どうやって使い切るかは考えてあんのか?」
「いいえ? 何か巨大質量の物体を造るとか、人間を生き返らせるとか、それを何千回も繰り返さないとアレは使いきれないわ」
「おう。聞いた俺が馬鹿だったよ。はやく行ってこい。こっちは俺らがなんとかする」
「ふふ、長年の付き合いだとツーカーで助かるわぁ」
匣を造る。足場にする。
イアン君を担いでその場を一旦離脱する大吾君と、眠っている藍沙ちゃんを抱いてこっちに一瞬の殺意を向けるジュニちゃんとすれ違い──天井に空いた穴に入る。
……ま、保険は一応かけておきましょう。
アレが逃げ出そうとしたら──符術協会の全てが消失する、おまじない。そうならないように願っているわ。
さぁて。
私の本来のお仕事をしましょうか。