ㅤ 作:Trefoil Knot / 試行存在
さて、と。
「ウラナガ、と。もう呼ばない方が良いかしら」
「……ああ。頼むよ。俺はアムド・多良戸だ。その分だと、浦永についても知っていたみたいだね」
「ええ。オーディアと同じ時期に活動していた殺人鬼だもの。19歳なんてありえない、ってことくらい、簡単にわかったわ」
「そっか。……ああ」
がしゃん、がしゃんと。
鉄くずが落ちる音がする。
「おかしいね。まだリソースの枯渇に至るには早いはずなのに、身体に力が入らない。メンテナンスは怠っていないんだけどな」
「いいえ、アムド。それはリソースの枯渇であっているわ。──だってもう、貴方には目的がないでしょう」
「ああ──」
感情とは心から際限なく湧き出るものだ。
けれど同時に──目的を失えば。あるいは、達成してしまえば。
その放出量は極端に減る。
「なるほど。俺は、満足しているのか。……そうだよな。浦永を……妹を殺した奴の名を騙って、沢山を殺した。別にそれは後悔していないけれど、ああ。そうか。復讐はもう──終わってたんだ」
ウラナガ。いえ、アムドは、膝を突き、俯き、少しだけ笑って──私を見る。
「殺してくれ、アズ」
「どうして?」
「これ以上生きていても仕方がない。もう俺はボスのために動けない。自分のためにも動けない。どうせあと数ヶ月でこの世界は"終わる"んだろう? じゃあ、もう、いいじゃないか。ちょっと早いか遅いかの違いだ」
無気力になるのだ。
目標無き知性体は、ただ──無為を。
それは無にとって、悪であると断ざれる。
「わかったわ」
「ああ──ありがとう」
「……ところで、なんだけどね」
「……?」
アムドを掌握する。
使うのは錬金術だ。彼には見えていないだろうけれど、私の後ろに──後方の暗がりに広がっている、無数の遺骸。幾度となく作られては壊される。そんな存在になってもらう、つもりだけど。
一つだけ、言っておかないといけないことがある。
アムド。貴方にはまだ役目がある。
「どうして浦永が。あの殺人犯が、貴方達兄妹の近くに来たのか、覚えている?」
「……いや。覚えていない……ああ、違う。確か、誰かに追われて……何かが上手く行かなくて──誰かを殺し損ねて、それが露見した、とか、で」
「そ。で、殺人鬼浦永が殺し損ねたのは──私」
「え」
反応を見せる。
私には大吾君のようなコアを見る瞳は無いけれど、手に取るようにわかる。
「私が追い返したの。そして通報したわ、時の英雄さんに。でも、実はそれだけじゃなくってね?」
「……アズが、殺人鬼に狙われる、なんてことは」
「そうそう! あり得ないのよ。だって私、基本表にいないのだから」
研究所か、BARか、あるいはこういうオシゴトの時間か。
私は基本、出歩かない。じゃあなぜ、浦永は私を殺そうとしたのでしょうか。じゃあどうして、浦永は私を見つけられたのでしょうか。
「──私が依頼したのよ。英雄ウェインを始末したいから、私を囮に使って、彼を抹殺してほしい、って」
「……」
カタ、と。
何かが動く音がした。それは、先ほど崩れ落ちたはずのパーツだ。
殺しのために、身体の大部分を武器の類に置き換えたアムドから、カタ、カタと。
震えるような音がする。
「そして、浦永は手筈通りに事を進めたわ。応援要請の届かない範囲にまで逃げて、その国の兵士は私がちょちょっと眠らせて──子供二人を人質に取って、確実にウェインを仕留められるように」
動く。動く。
何かが爆発的に。
何か? ふふ、冗談はやめましょう。
「だから、浦永が死んだと聞いた時は酷く残念がったものよ。彼もまた復讐者だった──だから、
「あ、ず──」
「お酒を飲みながらね、話し合ったものよ。アレは引き込むに値する、って──」
「貴様──ッ!!」
「
笑う。にっこりと笑う。
ともすればアルダト・リリーに並ぶくらいの微笑みで。
「
「──!!」
何か最後に、銃口らしきものを私に向けていた気がするけれど。
その身は、何も言い残すことなく──消滅した。
寿命を迎えたのだ。限素としての寿命。リソース化。ああ、その量は。
「ふふ。やっぱり死に際の憎悪は──あぁ、素晴らしいわね。でも、同じなのよ? 貴方だって、たくさんたくさん、殺したのだから……ね?」
おやすみなさい、道化の君よ。
貴方は余すところなく使わせてもらうわ。そのリソースも、コアも。
ここのお掃除のために──最後の最後まで。
「アズ!」
「あら、どうしたのイアン君。そんな息を切らして……って、お連れさん全員で、まぁまぁ」
「どうしたのイアン君、じゃないよ! 二週間もBARを開けなかったんだぞ、こっちがどんだけ心配したか!」
「あらやだ、心配してくれるの? 嬉しいわぁ」
「茶化さないで!」
いつの間にか、身内認定をされている……のかもしれない。
そんな心配してくれるとは思ってなかった。実は一週間前には戻ってきていて、研究所やビーダには連絡済みとかそんなことはいえいえそんなそんな。
「ま、とりあえず座りなさいよ」
「……ふう。ごめん、取り乱した。……とにかく、無事でよかったよ」
「それについては、私も謝っておくわ。ウラナガのこと」
「あ……いや、いいんだ。薄々わかってる。……でも一応、聞かせてほしい。あの人が、どういう選択をしたのか」
「ええ。──彼はあの場に残って、妹さんと最後まで過ごすそうよ。元より改造に改造を重ねていた身体。そもそもの寿命も、そんなに長くなかったみたい」
「そ、っか……」
どこまでも冷たい視線は、大吾君とジュニちゃんからね。
ふふ、この場で嘘吐き呼ばわりしてこない辺り、なにか言いたい事があると見たわ。
「そ・れ・よ・り」
「わ」
「藍沙ちゃん! ん~、久しぶりねぇ! ふふ、この柔餅肌! そしてこのおっぱい! ね、どう? 快復記念に私とワンナイト──」
「あ、ごめんなさい。お断りします。私、好きな人がいるので」
「んんんんド直球に振ってきたわねますます好きになっちゃったわ!!」
久しぶりの御対面だ。
なんでも紅のアーグの時にはイーリスの魅了に晒されて*1気絶、起きたかと思えば件の悪魔に乗っ取られていて、その反動かあの抜け殻を倒し切った後も一日は目覚めなかったのだとか。
蒔菜さんからも心配の着信履歴がこれでもかって程に届いていて、多分家に帰った直後はそれはもう熱いハグと厚いベーゼの嵐だったのでしょうねぇ。
「……あの悪魔の件について、なんだけど」
「いきなりね。ええ、聞いているわ。夢魔とABSと貴方達で強制転移祭り。私も参加したかったわぁ」
「いやそんなのほほんとしたものじゃなかったんだけど」
とりあえずお水に見せかけたお酒をカウンターに置く。無味無臭のお酒を造る、というのがどれほど至難か、それが分かってくれるのはビーダくらい。ただ彼は分かってくれるけれど「味も匂いも無かったら酒である意味ねぇだろアホか」とか言ってくるのでアイツと飲むのはやめた。
「で、悪魔?」
「うん。倒したと思ったら、全員が符術協会の外に強制転移されて、その瞬間に符術協会の建物が丸ごと"終わった"。……あれはやっぱり、悪魔の仕業だったのかな」
「それは……普通に違うんじゃないかしら?」
「どうしてそう思うの?」
「だってそれ仕掛けたの私だし」
ガクっ、と。
イアン君の首が落ちる。百合かしら。
「最終手段よ。あの悪魔が建物外に逃げようとしたら、貴方達ごとあの建物を消し飛ばすつもりだったし、倒せたら、貴方達を弾き出してあの建物を消滅させる符術を仕掛けておいたの」
「怖い事するな!?」
「あのね、イアン君。私は符術協会が嫌いなの。今回の一件でさらに嫌いになったわ消えたけど。だから消したかったの。これで納得してくれる?」
「な……っとくは、しかねるけど。まぁ、理由はわかったよ」
「そ。踏み込まないでいてくれるのは正直助かるわ」
何も気付くことなくお水風にお酒を飲んでいくイアン君。と藍沙ちゃん。
大吾君とジュニちゃんは流石にガード硬いわねぇ。
「……もう一つ、聞きたい事があるんだ」
「何かしら」
「──『箱庭計画』、について」
「『箱庭』?」
うわぁ、と。
これ絶対ビーダが漏らした奴だ、と。
もう手に取るようにわかる。私が隠し事をしていたから、アイツも意趣返しにこっちの困る事してきたってワケね。早めに殺しておこうかしらアイツ。
「とぼけなくてもいいよ、アズ。『箱庭計画』、というものが極秘裏に進行していることは知っている。エウリス・ビーダから聞いたんだ。"俺達Absurdusは、そもそも『箱庭計画』を阻止するために集まった組織だ"って」
「そう。それで、どうしてそれを私に聞くの?」
「……聞いたんだ」
「ビーダから?」
「ううん、エヌから」
エヌちゃあああああん!
未だ出会えていないエヌちゃあああん!
なんなのアナタ! なんで私のそんなプライベートなコト知ってるの!!
「そ、そう。それで、なんて聞いたのかしら」
「『箱庭計画』を主導しているのが、アズだってこと。『箱庭』は今ある人類の文化や歴史、そして人類そのものを『箱庭』と呼ばれる世界に移し、未来へ遺す計画。……そしてその計画の為には、多くのリソースが必要だ、って」
「──随分とまぁ、詳しいわね、エヌちゃんは」
「そして、こうも聞いた。……『箱庭』は、本来必要のないものだ、って」
「へえ?」
お酒が入って饒舌になってきたイアン君。
聞いてあげましょうか。エヌちゃんの言う『箱庭』について。
「この世界が"終わる"のは……悔しいけれど、自然の摂理。僕の異能も、間に合うかどうかはわからない。けど、『箱庭』は……そういう摂理とか、"終わり"に対して必死に研究している機関の頑張りを全て台無しにする計画。何故って、『箱庭』の製作には膨大なリソースが必要だから」
「……」
「それは──世界を"終わらせる"程の規模の、量の」
なるほど。なるほど。
なるほどねぇ。
「『箱庭』を作らなくても、世界はまた再生する……んだよね、アズ。今まで通り、僕らは知らないけれど、前もその前も、そのずっと前も、そうやってこの世界は繰り返してきた。苦しいし悔しいけれど、僕らのこれからって時期に、その境目が来てしまった、というだけ」
「それはまぁ、肯定するわ。『箱庭』を作らずとも世界はまた繰り返すでしょう。けれど、当然だけど、この世界は"終わる"。貴方達も例外ではないわ。どんな異能を持っていたとしても、"終わる"のよ。次なる世界が出来たとしても、そこに貴方達はいない。それを摂理、だなんて受け入れられるの?」
「──それでも、今ある世界を潰してまでやることじゃ──無いと思う」
……ふぅん。
ま、その限られた情報量で、そんな答えに行きつけるのは褒めてあげましょう。
いつからそんな正義漢になったのやら、という感じだけど……さてはて。
「『箱庭』の製作は止めないわ。それは私の悲願だもの。貴方に諭されたところで、糾弾されたところで、絶対にやめない」
「……だよね。僕も、アズを言葉で説得できるなんて思ってないよ」
「ならどうするの? 力尽くで止めてみる?」
「それも難しいと思う。あのエウリス・ビーダと長年の付き合い、なんて。どんな隠し玉があるかわかったもんじゃない。符術協会を消したあの符術も、あの時作った匣も……僕らじゃ及び付かない技術だったし」
「うんうん、力量差を理解しているのは良い事ね。それで、貴方はどうするのかしら。言葉でも力でも及ばない。けれど『箱庭』は作らせたくない。聞かせてちょうだい、イアン君。貴方の出す答えを」
大きく、グラスの液体を呷る彼に。
中身がお酒だと分かっているのだろう、途中から飲むスピードを緩めた藍沙ちゃんに。
そして厳しい目でこちらを見続ける二人に。
問う。問いかける。
「"停める"よ」
「──へえ」
「僕の異能が"終わらせない"──"停める"事だって教えてくれたのは、他ならないアズだ。だから僕はこれから、ありとあらゆる"終わり"を停める。『箱庭』に使われないように、何もかもを停める。僕はこの世界を"終わらせない"」
そっか。
そっかそっか。
じゃ、アナタは──。
「貴方の、その程度の異能で。私の幾星霜もの妄執を、停められると?」
敵に回るのね、私の
空気が変わったのを察知したのだろう、大吾君とジュニちゃんが臨戦態勢になる。イアン君は酔っている、けれどまぁ、変化くらいは感じ取っているだろう。
藍沙ちゃんは……あら。
「停める。停めて見せる。世界の"終わり"だって、停めて見せる。そうして『箱庭』に使えるリソースを全部失くしてやるんだ」
「ふふ。大言壮語が過ぎるわ。貴方には何も停められない。守れない。と、言いたい所だケ・ド」
指を鳴らす。
するとアラ不思議。グラスが一つ、メモ用紙に早変わり!
簡単な錬金術なんだけどね?
「コレ、あげるわ」
「……これは?」
「エメトとアリアス、そしてオーディアの故郷の座標。どれもが全て"終わった"国──だから、ちゃんと見てきなさい。自分が停めようとしているものが、どれほどのものなのか。そして」
「──僕のこのちっぽけな決意が、君の理念に並び立てるかどうかを見極めてこい、ってことだよね」
「ええ。その上で私を停めると言うのなら──ちゃんと相手をしてあげる。勿論誰を仲間に引き連れてきてもいいわよ。エメトでもビーダでも、世界中の殺し屋でも」
「たった一人で勝てる、って?」
「ええ」
そうはならないと知っているけれど。
そうなるとしたら──それは、甘美かもしれない。
最初もそうだった。
一番。最初の最初。私がまだ人間を十全に理解しきれていない時──私は全人類の敵になった。
懐かしい話だ。何千億と前の話だ。
「それじゃ──いってらっしゃい」
「へ?」
「どうやらソッチの二人は私に用があるみたいだから──ほら、藍沙ちゃんと新婚旅行よ」
また指を鳴らす。
返事とか、ちょっぴり頬を染めた藍沙ちゃんとか、一切確認せずに──強制転移!
行先はオーディアの故郷。名前の"終わった"国。じゃあね~。
「……これでいいかしら?」
「ああ」
「いいよ。イアンには聞かせられない話だし」
じゃ、こっからが本番ね。
「まず、一つ。今の話は嘘だな? 『箱庭』が全世界を潰す程のリソースを必要とする、という話」
「ええ。そんなには要らないわ。あるに越したことは無いけど」
「何故そんな嘘を吐いた」
「それは教えられないわ。強いて言えば、イアン君にはもっと強くなってもらわないと困るから、かしらね」
「……嘘ではないが、本当でもないな」
「あらやだ。怖い眼ねぇ」
険悪ムードで始まったお話合いは、大吾君からの切り出しが先手。
ジュニちゃんはノートPCを取り出して、何かを打ち込んでいる。アムドに貰ったガラクタとは違う、本物のPCだ。結構高いはずなのだけどね、PC。"今回"はあまり電力技術が進んでいないから。
「アムド・多良戸先輩は──お前が殺したな、アズ」
「ええ。その妹も同じ。何か問題あった?」
「……いや、無い。先輩は何故か俺に殺意を向けていた。俺に覚えはないが──彼が殺人鬼ウラナガであったというのなら、納得も出来る。ただ真実が聞きたかっただけだ」
「そ。ちなみにだけど、イーリスは違うわよ。むしろあのコの願いを叶えてあげたというか」
「……本当らしい。あの暗闇の中に、イーリスがいたのか」
「別れでも告げたかったのかしら?」
「いや。ただの所感だ」
「あらそう」
この子も随分とさっぱりしているわねぇ。
ウェイン姓であるとは思えない程に善意が感じ取れない。けど悪性でもない。
守りたい物だけを守れたら、それでいい。そんな感じ。
「じゃ次私、良い?」
「良いわよ、ユンちゃん♪」
「……次その名前で呼んだら、この店に火つけるから」
「それは怖いわ。ごめんね、ジュニちゃん」
「ん。……聞きたいのは二つ。まず一つ。符術協会の奥……本来なら入り口の方からしてた、あり得ない程濃い血の匂い。アレ、やったのはアンタで間違いない?」
「ちょ、ちょっと。酷いじゃない。ジュニちゃんはもっと天真爛漫な口調で」
「アンタで間違いないのね。……私、アンタの事身内だと思ってないから。ああいう可愛いジュニちゃんを見せるのは、仲間か、敵だけだから」
「それは残念ねぇ」
仲間には仮面を。
敵には幻影を。
じゃ、これが素なのね。素を私に見せてくれているのねぇ!
「ま、正解よ。悪魔を造るのも、リソースを異相に溜め込むのも私にとって禁忌だったから、潰したわ。何か問題は?」
「無い。別に私もあそこは潰れて良いと思ってたし」
「俺も同感だ。未練の無い魂を限世に引き留める所業自体、見ていて耐えられるものではなかったしな」
「あら、気付いていたの? 西区のゴーストタウン」
「ああ」
気付いていて何も言わなかったのねぇ。
いやぁ、中々。
「質問二つ目。いい?」
「ええ、どうぞ」
「『箱庭計画』の本当の目的」
「……本当の、というと?」
「一々説明させないでよ、面倒くさい。あり得ないでしょ。今の人類の文化や歴史、そして人類そのものを"終わり"の及ばない世界に移住させて未来に遺す、なんて」
「そんなにあり得ないことかしら」
「あり得ない。だって"今回"の人類は、貴方の禁忌に触れた。それを残そうとするはずがない」
あらら。これは口が滑った、という奴かしら。
それに"今回"ね。
「──ええ、肯定するわ。『箱庭計画』は、そんな目的のためのものじゃない。こんな争う事しか知らない人類を遺したいなんて、欠片も思っていない」
「だから、何。本来の目的は。本当の目的は。……それに、エヌは関係している?」
「それじゃあ三つねぇ。どっちかに絞って」
「……本来の目的」
「あら、エヌちゃんはいいの?」
「だって会った事ないんでしょ。聞いたって会ったこと無いから知らない、で終わる」
「……鋭くてヤになるわ。貴女、見てくれはそんなに可愛いのだから、もっと可愛らしくしていたらいいのに」
「生憎だけど、この美貌は武器だから」
「怖いわねぇ、ホントに」
暗殺者ユン。
某国の暗殺組織が筆頭にして、"終わり"によって組織が壊滅した後も、近くの国を一夜で滅ぼしたという伝説の凶手。
奪った命の数だけで言えば、Absurdusなんかメじゃない。優に超えて、一番になれるだろう。まぁあそこの階位は殺した量、じゃないんだけど。
「本来の目的は、『箱庭』の破壊よ」
「……大吾」
「本当の事を言っている。嘘じゃない。紛う方なき本心だ」
「どういう……こと? 『箱庭』の製作がアンタの目的じゃないの?」
「『箱庭』の製作なんか、もう終わっているもの」
「!」
そんなもの、すでに出来上がっている。
だからTKが一生懸命テストをしてくれているのだし。あ、そういえばワズタム死んじゃったのよね。んもう、別れの言葉くらい告げてくれたっていいのに。
「なら……『箱庭』の破壊って」
「質問は二つだけ、でしょ」
「……わかった」
「あら、物分かりがいいわね。もっと食い下がるかと思ったのだけど」
「初めに私が条件を提示した。アンタは了承した。故に契約は成立した。命令違反はしない」
「依頼主との契約は反故にしない、という命令ね」
「……ふん」
ジュニちゃんは。
そのたわわなおっぱいの下で腕を組んで、そっぽを向く。
やだ、揉んでみたい。
「もうお話は終わりでいいかしら。それならそろそろ、アナタ達もイアン君の所へ飛ばそうと思うのだけど」
「待て。もう一つだけ聞きたい。良いだろうか」
「ええ、いいわよ。一つだけね」
大吾君の質問。
それに私は──肯定を返した。
「それじゃ、いってらっしゃ~い!」
「──」
頑張って、沢山学んできてね。
この世界がもう、本当にどうしようもない、っていう事実を。たっぷりと。