作:Trefoil Knot / 試行存在

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 大吾君から手短な説明を受けて、大体理解した。

 イアン君がエヌちゃんに殺されて、藍沙ちゃんがビーダとエヌちゃんを相手にしていて、それはそれとしてイアン君の骨の手で、世界が「終わり」そう、と。

 

「なるほどねぇ。イアン君は死んじゃったか。ま、遅かれ早かれってカンジだけど」

「……」

「あぁ、ごめんなさい。ええと、そうね。一応言っておくわ。イアン君は死んだ。これは間違いない。けど彼、多分自分に異能を使用していたでしょう? 生命活動の停止は"終わり"じゃないのよ。だからイアン君は半永久的に"終わらない"。そしてあの骨の手……そもそもの話だけど、なんで骨の手自身が"終わり"に蝕まれていないか、って所になるんだけど」

「イアンが停めていたのだろう。それくらいはわかる」

「あらそう。正解よ。そう、イアン君があの手も自分のものとして大切にしていたから"終わらなかった"。イアン君の異能は適用されたままなのよ。基本異能というのは使用者が"終われ"ば解除されるものだけど、イアン君は細切れになったとしても"終わらない"から」

「あの骨の手も終わらないのか!」

「そゆこと~」

 

 走りながら話す。

 うんうん、やっぱり見た目通り体力のある子ねぇ。私、ケッコーな速度で走ってるんだけど、ついてきて、しかも喋れるなんて。

 

「それで、どうにかする手段はあるのか!」

「ええ。いくらでもあるわ」

「助けを求めに来た甲斐があった!」

 

 ……この様子だと、ジュニちゃんの事はきれいさっぱり、かしら。

 そういう世界の仕組みだっていうのは私が一番理解しているのだけど……ううん、ちょっぴり期待していたりしたのだけどね。魂を見る眼を持つ英雄の息子。彼にだって、譲れないものが──巨大なリソースがある。だから、あるいは、と。

 ま、漏れなく、だったみたいだけど。

 

「あそこね」

「ああ」

 

 なるほど。

 あそこね、なんて確認を取る必要がないくらいの大崩壊が起きている。シンクホールも真っ青な程に深い穴。骨の手に触れたものがすべて「終わって」いくから、阻むものがなくて自由落下、みたいな。

 とりあえず引き上げましょうか。

 

「あ、そうそう。大吾君。貴方にはある人から伝言があるから──死なないでね」

「ある人……?」

「今から私はあの手を取ってくる。貴方は藍沙ちゃんのお手伝いでもするのでしょう? だから、死なないでね、ってコト。いいわね?」

「ああ、元よりそのつもりはない。──イアンが死に際に何かをした。それだけはわかるんだ。それより前に俺が死ぬのはダメだ。あいつらの兄貴分としても──その、誰かのためにも」

 

 良いコねぇ、ホント。

 英雄の息子。いやはや、英雄なんてのは異能と同じく遺伝しないものだと思っていたけど──そんなことはないのかもね。

 

「任せた」

「任されたわ」

 

 さて、地底深くにまで潜った骨の手。

 これも身から出た錆、かしらね。

 

 でも、回収するのは良いんだけど、消しちゃっていいのかしら?

 イアン君の遺品、になるわけだけど。

 

 ……ま、回収してから考えればいいか。

 

 

 

 

 熾烈を極める、とはこの事を言うのだろう。

 的確に急所を狙ってくる結界の槍。力任せに壇上のあらゆる場所を圧し潰さんとする符術の壁。

 普通の生活をしてきた少女には到底成し得ない戦術の数々が、エウリスとエヌに襲い掛かる。

 

「おいおいここはどこの戦場だっての。無事なもんが何もねェ足場もねェときた! おいエヌ早く何とかしろよ! オジサンあれには対抗できねェって!」

「殺しても良いのかい?」

「いーよ別にもうどうせ"終わり"だろ!」

 

 なら、と。

 瞬きの間に藍沙へと詰め寄ったエヌが、その太刀を振る。

 斬撃──は、しかし壁に防がれる。面ではなく線。刀の形に添って形成された黒の結界。

 

「藍沙! 戻ったぞ!」

「大吾くん──ありがとう。でも、そこから先に入って来ないで」

「おう大吾・ウェイン! 命惜しくばそっから入ってくんな! 死ぬぜ!」

 

 中は、棘だらけだ。符術の槍が現界したまま消えていない。それは結界というにはあまりにも鋭く、触れたものを傷つける意図でのみ構成されている。対象は選ばない──あらゆるものを憎む、憎悪の槍。

 

「……君、アリアスを奪ったな」

「……」

「今の見切りはアリアスのソレだ。自身の身体を遮蔽物に隠して接近し、喉を掻っ切る──符術での代用ではあるけれど、今私が追撃を仕掛けていたら同じことが起きていた事だろう」

「エヌちゃんは」

 

 周囲──全方位。

 エヌを取り囲む、棘の球体。凄まじい密度で構成された結界の槍は、刀の一本で防ぎきれるものではない。

 

「最初から私に近づかなかったよね。──私に奪われるのが怖かったから!」

「そりゃあ怖いさ。一目見てわかったよ。君、狂人だろう。私よりもオーディアよりもイーリスよりもウラナガよりもアリアスよりもエメトよりも、殺人者に向いている。許せない許せない許せない。嫌い嫌い嫌い。()()()()で対等みたいな顔してくる奴らが大嫌い」

 

 構えを取る。

 そろそろ先ほどイアンを切り刻んだ時の構え。

 

「全人類を見下してるね。いや、数人は認めているのかな? はは、いたよ、そういう奴。私の国にも。自分こそが最優だって疑わないヤツ! ──けど、彼らと君は決定的に違う所がある」

 

 エヌが、斬る。

 空間を──符術を、ではなく、前方の空間を、すっぱりと斬る。

 

「君には我がない。野心がない。混ざりすぎたね。奪い過ぎたんだ。その濃密さに惚れてしまったのだろうけど──ああ、あまりにも幼稚だ。そんな弱い信念で、私を砕くなど万は早い」

「知ったような口を」

 

 棘の球体が内側に向かって全射出される──も、そこにエヌはいない。

 空間を斬り、彼我の距離を詰めたエヌは、そこにはいない。

 

「さようなら」

「聞かないでよ!」

 

 その首を刀が刎ねようとした瞬間──ソレは起こる。

 藍沙が左の掌に拳を付けた。もう刃は首の皮を切り裂いている。だが、エヌは引くしかない。あともう少しで殺せたが──その印は不味いと、エヌは、彼女は知っている。

 

「精霊使役!? そんな、どこでそんな知識を──いや、不味い! ビーダ! あと大吾! 逃げろ──爆発するぞ!」

「聞いてねえよクソ強制転移──ああもう、大吾・ウェインもこっち来い、助けてやる!」

 

 顕現する。

 藍沙の背後に、燃え盛る焔の剣を持った骸骨──魔導の発展した世界において、精霊イフリータと呼ばれた怪物が。この世界では発展しなかった魔導。そして精霊術。その最終系にして、禁じ手。

 意思の有る精霊の使役は──世界を滅ぼす一手となると、誰もが知っていたが故に。

 

「俺は」

「馬鹿野郎お前アレが敵を選ぶように見えんのか! 俺に殺されるならいい、エヌに殺されるなら良い! だが味方に殺されてどうすんだお前、英雄の息子だろ! 馬鹿が、肝心な時に躊躇ってんじゃねえよ!」

 

 敵の首魁に説教される、などという体験は、彼の足を更に止める。

 強制転移の発動。エウリスの技量では、煙草などの符が無い限りは出来ない。エヌは大丈夫だろう。勝手に切り抜けるだろう。

 だが、コイツは──無理だ。

 

「おいアズ! いんだろ──後は任せたぞ! いつか会えたら、地獄の釜の縁で一杯やろうぜ!」

 

 だからビーダは。

 テロリスト集団。テロ組織。狂人の集いが首魁、エウリス・ビーダは。

 彼を、助ける事にした。

 

 強制転移の転移先を彼の目の前に変更。

 そして、全身に隠していたとっておきの符を全部出す。

 

「へへっ、わかってんだ。わかってんだよばァか。──いねェんだろ、もう。俺の妻は。誰か覚えてねェ時点で消されたか、"終わった"か。だがよ、あァ何度も言うぜ、馬鹿野郎が。──相手がいなくなっても! 何にも覚えてなくても!」

 

 結界が展開される。 

 藍沙のそれをまねた符術の結界──だが、その色は黒ではない。

 

 純白の壁。

 何かを守ろうとする、意思の壁。込められたリソースは愛情。大吾に、ではない。

 誰とも知れない相手への、最後の大一番だ。

 

「愛情は残んだよ! 馬鹿が、馬鹿野郎が! 先逝きやがって──俺もすぐ後を追うぜ、()()!!」

 

 異世界において禁じ手とされた大精霊の使役。

 何故禁じ手なのか。そんなの簡単だ。

 使役出来ないからだ。ただ顕現し──込められた感情(リソース)の通りに、あらゆるものを灰燼(リソース)に帰そうとする化け物。

 

「だからてめェは逃げな。わかるぜ、俺もそうだ。今そうだ。忘れちまったんだろ。好きで好きで仕方がねえ、抑えきれねえ程の本能が叫ぶ、叫びたてる誰かを! 馬鹿野郎、お前は生きんだよ。どうせこの世界は"終わる"が──最期に一つくらい、花が咲いたっていいだろ、なァ!」

 

 純白に──じわり、じわりと紅炎が滲む。

 数多の人間の諸観念を混ぜ合わせた憎悪と、たった一人を愛する感情。優劣は無いのだろう。だが、この世界のシステムとして、込められたリソースが物を言う、という単純な原理がある。エウリスの保有リソース量では、藍沙のそれを上回る事は出来ない。

 

「俺、は」

「あ~~~悩める若者ォ~~~!! うーんオジサンいらいらしてきちゃった~! だから、おらよ!」

「な、うわ!?」

 

 襟首を掴まれて、ぶん投げられる。

 それを空中でキャッチするのはエヌだ。

 

「エヌ……!?」

「ただの親子喧嘩だよ。母親がいなくなった父子の親子喧嘩。私も君も、口を挟まない方がいい。だから私達は、私達のやるべきことをやろう」

 

 眼下。小学校の体育館が、恐ろしい程の熱に包まれる。火焔──大炎上。

 周囲の建造物の悉くを焼き尽くし、その鎌首をもたげるは焔の怪物。対するはちっぽけな中年。真っ白な壁を広げて──もう遠く、表情なんて見えるはずがないのに。声なんて聞こえるはずがないのに。

 

「じゃあな、世界! アズ! カムナリ! 先に逝くぜ」

 

 笑顔で。

 

 エウリス・ビーダは、灼熱の炎に飲み込まれて行った。

 

 

 

 

「ふぅ」

「……」

「大丈夫かい、大吾」

「……ああ」

 

 その様相は、地獄と表現すべきなのだろう。

 街が燃えていた。「終わった」北区も西区は勿論、未だ被害の無かった東区や、大吾たちの大学のある南区の──全てが。

 ここは政府塔。この国で一番高い塔。その天辺。

 未だ昼だというのに、空には煤が舞い、影を落としている。

 

「あれは……藍沙は、どうなったんだ」

「普通に生きてると思うよ。あの子、結界術は一級品通り越してるし。ただアレ……イフリータっていうんだけど、アレの制御が出来なくて少しくらいは焦ってるんじゃないかな」

「イフリータ……。俺はいつのまに、ファンタジーの世界に入り込んだんだ」

「符術だって十分ファンタジーなんだけどね」

 

 先程まで小学校の合った場所を、炎の怪物が闊歩している。

 自分が救助した者たちも、あの分では燃え尽きてしまっているだろう。これほど高い所に居ても熱を感じるのだ。恐らくはもう。

 

「終わりだね、もう。知ってた? あの体育館に集められた人々。アレが最後の人類だよ。ま、何も出来ないお子様は家でプルプル震えてるだろうけどさ」

「……他国は」

「無い、ってこと。全滅したからね」

「な……」

 

 炎剣が振るわれる。住宅街が融け堕ちる。

 焼け溶けた家々は寿命を迎え、「終わって」いく。

 

「そうだ、アズは」

「アレは大丈夫。というか、そろそろあの怪物も消えると思うよ。アズが殺すなりなんなりするでしょ」

「……そうか」

 

 だが──その言葉とは裏腹に、化け物の闊歩が止まる気配はない。

 どころか。

 

「なんっ……!?」

「あー。あちゃー」

 

 イフリータと呼ばれた怪物の目の前に──同じくらいの大きさの、水の化け物が形成される。

 それらは炎を消化するが、水流によって火の手の届いていなかった地域まで壊していく。

 

「ウィンディーネって奴。ファンタジー知識あるならわかるでしょ。地水火風の大精霊、みたいなのは」

「あ、ああ……だが、何故それが」

「藍沙ちゃんが喚んだんじゃない? イフリータの制御が出来ないから、ウィンディーネに相殺してもらおう、みたいな感じで。……ロクな知識がない癖に、誰かの記憶だけでやった事もない事やるからあーなるんだよ」

 

 ファンタジーの大戦争、という言葉が一番似合う。

 符術師同士の戦いでも炎や水が用いられる事はあるが、ここまで大規模なものは起こらない。これほどまでのソレが──まるで、意思を持っているかのように動く、なんて。

 

「意思を持っているんだよ。妖魔と一緒。コアの無い、万物をリソースに還さんとする化け物。それが精霊で、その凄いのが大精霊。私の世界では常識だったよ」

「私の、世界?」

「……もういいか。私さ、別の世界の出身なんだよね。ヒノモトって国で、お姫様だった。ふふん、尊敬するかい?」

「いや……」

「ああそう。別に良いけど。……でも、その世界は"終わった"。でも私とこの刀だけは"終わらなかった"。そのまま世界の無い無の時間を過ごして──この世界に辿り着いた」

 

 土の化け物が起き上がる。風の塊が生まれ落ちる。

 凡そ人間が過ごす事の出来ない空間が形成される。藍沙は知らないのだ。これらを消す手段を。

 

「"終わり"……」

「そう。私は"終わらない"。……けどそれも、今回までだろうね。自分の事は自分で判るんだ。私が"終わらなかった"のは、生かされたからだ、って」

「……生かされた、か」

 

 ──相手がいなくなっても! 何にも覚えてなくても!

 ──愛情は残んだよ! 馬鹿が、馬鹿野郎が!

 

 先程言われたエウリス・ビーダの言葉が刺さる。

 己も、そう、である……気がする。何か忘れている。何か、思い出さなければならない事がある。

 

「あ、そろそろ終わりそう」

 

 どこがだろうか。

 四つの限素……いや、ファンタジーに倣うなら、元素とでもいうべき存在の集合体。

 それが全てを破壊しつくし、今ぶつかり合おうとしている。

 土と水と火と風。それが一度にぶつかったら、何が起こるか。

 

「……アレはもう大丈夫。それより、こっちが問題だね」

「大丈夫とは到底思えんが……は、ぁ? な──……なんだ、これは」

 

 大丈夫と言ってファンタジー大決戦から視線を外したエヌに、呆れて、けれど釣られて、そちらを見る。

 そちら。

 地水火風が暴れ狂う方向の、反対側。

 

 

 そこは暗闇があった。

 

「アレが、無。世界の外側。これこそが"世界の終わり"。世界はもう端の方から限素を維持できなくなって、リソース化している。……どうする、大吾? 生きたままリソース化されるの、一瞬じゃないと結構キツいよ」

「……アズを探しに行く」

「それまた、どうして?」

「伝言があると言われたんだ。ある人からの伝言があると。だから俺は、何としてでもそれを聞かなきゃいけない」

「ふぅん。……ま、いいよ。じゃ、護衛してあげる。多分今あの大精霊たちをアズがどうにかしてるから、それを避けるようにして彼のBARへ行こう」

「BAR? エルドラドか?」

「うん。FTRM3Uはもう停止しちゃったけど、聞いてるからね。最後の場所があそこになる、って」

 

 エヌは大吾の首根を掴む。

 掴んで──政府塔を、飛び降りた。

 

「な──ァ──!?」

「この塔見た時から一回やってみたかったんだよね。あぁ──落ちるのは気持ちがいいな!」

「嘘を吐くなお前ちょっと怖がってるのわかってるぞ!」

「その眼面倒だから潰していいかい? 後怖がってないけど」

 

 怪獣大決戦の傍らを通り過ぎて。

 エヌと大吾は、あのBARへ向かう。最後の場所。BAR・エルドラド。

 伝説の、黄金郷へ。

 

 

 

 

 藍沙ちゃんは馬鹿ね。決定したわ私の中で。

 さてはて、誰から盗んだ知識なんだか。多分妖魔……イーリスに似た異界の来訪者が持っていた記憶を奪ったのでしょうけど、これはもうやらかしオブやらかし。

 大精霊を召喚しちゃいけない、使役しちゃいけない、なんて魔導の世界では常識も常識よ?

 それを単身で四体。案の定制御できずに最悪の展開。

 

「よっと。……うわぁ」

 

 とりあえず地上にまでやってきたけど、これはひどい。

 炎と水と風と土。見事に魔導の基礎限素大精霊を顕現させている。でもまぁ良かったわ。錬金術じゃなくて。アレ使用法間違うとオーディアの国みたいになるから、そっちの方が大変だったでしょうし。

 

「あ──アズさん! 助けてください!」

「御機嫌よう藍沙ちゃん。それで、助けて、って。何を?」

「何って……この、意味の分からない化け物たちから」

「自分で召喚したのに酷い言い草ねぇ」

 

 無駄な問答が好きだと蒔菜さんに言ったけれど、前言撤回。

 無駄な演技には付き合ってられない。もう本性わかってるんだから、とっとという事言いなさいよ往生際の悪い。

 

「……アレ、なんとかしてください。できますよね」

「できるけど、するメリットがないわ。私別に人類滅んでも問題ないし」

「じゃあ、私のおっぱい好きにして良いので、なんとかしてください」

「それは良いご褒美!!!!!!」

 

 んもう、それは仕方がないわねぇ。

 たとえビーダを殺した仇敵でも、私の計画結構ぐちゃぐちゃにしてくれた面倒な相手でも。

 

 可愛いコのオパーイを好きに出来ると聞いて、動かない男がいますか、って話よね!!

 

「んじゃまぁ──最初はアンタよ、シルフィ」

 

 空を飛ぶ風の大精霊。アレは火やら水やら土やらを拡散するので初めに潰しておくに越したことは無い。

 さぁて取り出したるは、プレートにまで達そうとしていた骨の手君。ごめんなさいね、私のミスでこんなことにまで付き合わせて。

 

 それを目に放って──直上に、蹴り上げる!

 

「はい一匹」

 

 骨の手。「終わり」を纏う手が身体を突き抜け、込められた憎悪が均される。妖魔に骨の手が効く理由がコレ。ま、イアン君はわかっていたのでしょうけど。

 指向性を、方向性を持ったリソースによって突き動かされるのが妖魔だ。その感情が単なるリソースにまで均されたら、形を維持できない。

 大精霊が使役できないのもそれが理由。大精霊の顕現クラスにまで込めた感情は、その他のちんけな感情じゃあどうこうできない。だから大精霊は暴走するのよね。使役者は既にリソースを使いきっているから、新たな命令の更新が出来ない、と言うのも大きいわ。

 ……それを四体召喚するのは普通に凄いのだけど。

 

「はい次ノーム」

 

 落ちてきた骨の手を、今度は水平方向に蹴り飛ばす。今まさに此方を叩き潰さんとしていた土の巨人が骨の手に触れ──そこからドサドサと崩壊していく。

 そんな崩壊する土塊に突っ込んで骨の手を回収、今度はウィンディーネに向かって骨の手を投擲。アレは攻撃範囲が広い分、身体の面積も広いから、どこに投げても基本当たるのが良い所。

 

「で最後イフリータ」

 

 投擲した骨の手を回収し、符術で足場を展開。実はこれ符術じゃないとかそういうネタバレは置いておいて、イフリータの顔面に──というかその髑髏の口の中に、骨の手を突っ込む。

 

 地面に着地し、イフリータの喉を突き抜けて落ちてくる骨の手をキャッチして、終了。

 

「……便利ね、これ」

「そんな、一瞬で」

 

 この国は壊滅した。自粛で家に閉じこもっていた者達も、残された子供たちも死んだことだろう。その恐怖はそこそこ良いリソースにはなったので、少しばかり褒めてあげてもいい。

 そんな骨の手を、一旦異相空間にしまう。符術協会の連中が作ってた奴の真似。Trefoil Knotがいる空間とはちょっと作りが違う。

 

「ええ、一瞬よ。といっても骨の手のおかげなのだけど。骨の手無しだと、もう少し被害が大きくなってたわ。私のせいで」

「……貴方は、何者なんですか」

「私はアズ。気軽にアズにゃんと呼びなさい。で、藍沙ちゃん。おっぱい、揉ませてくれるのよね?」

「……」

 

 俯く藍沙ちゃん。

 え、なになに。今更恥ずかしがっちゃってるの? やだぁ、自分から売って来たクセにぃ~。

 

 でもま、契約は契約よ。

 揉ませてもらうわ──そのおっぱい!

 

 

 

「──ええ、胸くらいいくらでも。代わりに貰います──貴方の記憶」

「え?」

 

 

 

 私が藍沙ちゃんのオパーイにタッチしたのと同時。

 藍沙ちゃんは──妖しい瞳で、上気した頬で。

 

 

 私の頭部に、手を当てた。

 

 

 

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