世界がスローモーションのように遅くなる。
これが俗に言う走馬灯とやらなんだろう。今までの経験から死を回避する手段を探すために思考しまくるから相対的に遅く感じるということらしい。
結局、俺のスピードが上がったわけでも実際に相手が遅くなったわけでもないのだから直前に迫る
あーあ、これで二度目の人生...いや、龍生も終わりかぁ。享年13歳。死の瞬間が呆気ないのは前世でも今世でも変わらないのか。
まぁ、前世の機械のように仕事して、泥のように眠り、栄養摂取のためだけの食事を取る。そんな生活よりかは刺激的な日々だったし、出来なかったことも出来たし、俺としては満足、満足.........
(んなわけねェだろ!)
まだ人間とも会えてない。
まだ家族の温もりを感じてもない。
まだうまい飯も食ってない。
まだ何も考えず、ただ惰眠を貪ったこともない。
刺激的な日々?自分で狩りをして成功したときの快感?知ったことか!
『確認しました』
『エクストラスキル【環境適応】【虫の知らせ】【形態変化】【限界突破】をリソースとして還元』
『成功しました。』
『続いて、【
『検索結果、ユニークスキル【
『成功しました。【自己再生】が統合され、【超速再生】に変化しました。』
そして──因縁の相手が俺の腹を貫いた。
ただ貫いた。
【
逆に言えば一回でも貫通すれば勢いは遅くなる。
【鎧硬化】の使いすぎで並みの防御力じゃない俺の鱗。それで効果が無効化。さらには背中に貫通するときも鱗があるのだから突進の勢いだけでは俺を貫き通すことは出来ない。
左腕を使ってヤツの体を押さえ、だめ押しに筋肉を膨張させることで俺の体に固定する。これでヤツが抜け出しての追撃も、出血多量による死も、何よりスピードを封じ込めることに成功した。
暴れまわるトカリプトルに【悪食】を使った噛みつきと【
【侵蝕者】の効果値は接地面積が大きいほど大きくなる。今はトカリプトルの顔面が俺の体に埋まっている状態なので顔面からじわじわと溶かされている感覚をおぼえるだろう。
【悪食】の補正効果その2である顎が強靭になり、噛む力が増す。それを使って次々と硬い皮膚を破り、肉を食いちぎっていく。
しかしここで黙っているヤツでもない。
引いても頭を抜かせてもらえないことが分かると逆に大地を蹴るパワーを使い、貫き通そうとする。
ここで耐えなければ死ぬのでミチミチという音とともに穴を広げられる痛みが来るも地面を踏みしめて耐える。
動かないことを悟ったのか次の手を打ってきた。
ただの足による蹴り。しかしヤツがそれをするともはやただの蹴りではなくなる。【
俺の中で防御系のスキルは【鎧硬化】と【
ならばどうするか答えは簡単。
「グゥッ──」
肉を抉られる痛みにうめき声を出しながら耐える。スピードの乗らない突進が脅威でないように、力のこもらないキックも怖くない。
足をも俺の体に固定されたトカリプトルは【肉体改造】のスキルで抜けるための幅を作ろうとするがどれだけ細くしても【超速再生】の方が先に隙を埋めていく。
...俺の勝ちだ
普通ならフラグになっていた言葉をあえて出したくなる気持ちが分かる気がする。この快感はクセになりそうになる。
ただ、同時に少しの喪失感もあった。傲慢と言われるかもしれないが、ここら辺の魔物相手では文字通り敵無しといった無敵の強さを誇っている。
その中で唯一といって良いほどの強敵であるトカリプトルを倒したのだ。強敵と書いてトモと読むというのはあながち間違いではないのかも知れないほどその存在は大きかった。
【思考加速】に【並列思考】を重ねてフルスペックで発動させたせいか頭がいたい。【超速再生】の再生スピードを上げるためにも相当な体力を使ったので早々に家に帰ろう。
──ところでこんなことわざを知っているだろうか。
『泣きっ面に蜂』『一難去ってまた一難』『弱り目に祟り目』『傷口に塩を塗る』
どれも『不幸なことは立て続けに起きる』ということを表したことわざである。昔の人は失敗すらも後世に語り継いでいるからバカに出来ない。
まぁつまり何を言いたいのかって言うと──
家に帰ろうと体にムチ打って歩き出した俺が見たのは霧散した毒霧の影からでてくる無数の魔物たちだった。
──『嵐の夜はまだまだ続く』ってことさ
皆が殺したがってた敵が満身創痍なのを見逃すほど自然界は甘くねぇんだよなぁ...
ヴェルダナーヴァの一人称って?
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僕(作者はコレ)
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私
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オレ(主人公と分けるため、カタカナ)
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我
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ナーヴァ
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拙僧
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一人称ナシ(作者の負担が増大)