【肉体改造】を解除、元の体へと戻してスキルの【威圧】を発動することで敵の足止めを狙う。しかし予想に反して俺を気に止める様子もない。
操られているというには動きは滑らかだし、それでも死んでいることに変わりはない。まさに
敵の目的が分からない以上、敗北の条件は『俺自身が死ぬ』ことと『
俺のストレスでもあり、アニマルセラピーでもあるドッグシーフには意外と助かっている。プラス、家にはバレないように食糧が置いてあるのだ。
健全な精神を保つために必要なのは人間の三大欲求。性欲の部分は娯楽みたいなものだから俺の場合、ドッグシーフとのたわむれがそうだな。だから三つのうち二つ出来なくなるのはすごく痛い。
逆に勝利条件は...『敵の撃破』と『黒幕の撃破』だな。尤も、数もどれだけ強いのかも分からないが──なッ!
小手調べとしてまだ距離がある状態で【竜の伊吹】を使いつつ横に凪払う。威力は分散するが、ゾンビと似ているのなら火葬が一番効く。燃え広がって近づけなければなお良い。
しかしやはりと言うべきか。体を焼かれながらも歩みは止まらない。推測ではあるがあの様子では【痛覚無効】を獲得しているだろう。さらに火傷は治っていないが、【自己再生】も全てのキメラが持っているようだ。
(死体が回復するとか...何の冗談だよ!)
小手調べといってもほとんどのモンスターが耐えきれずに炭になるレベルの炎だったが、まさか【熱耐性】も所持しているのだろうか。さすがに炭になった傍から再生しているのは違うはずだ。というか違ってくれ。
警戒度を二段階ほど引き上げ、取りあえず進行を止めるため【猛毒生成】から麻痺毒を作りだし、【毒霧吐息】【毒霧操作】で周囲にばらまく。
これを聞くとみんなは驚くかもしれないが、実はこの世界のモンスターは麻痺に耐性を持たない。
理由は麻痺毒も麻痺が起きる
植物は食べられないように...または食べられたとしてもその場で殺し、養分に出来るような即効性の毒を。
動物なら自分から口に飛び込み、自己犠牲の精神をもってして
後者に関しては電気といえるものの
──まぁ言ってしまえば毒が強力すぎて麻痺する前に死んじゃうよってことなのだ。
だから麻痺毒も電流も存在せず、存在しないものに耐性なんてつけられない。つまり俺のこれも防げるヤツはいない。土壇場で耐性を獲得できるヤツなんて一握りできるかすら怪しいのだ。
波のように並んでいるキメラたちが次々と倒れこむ。
やはり耐性を持っていない、と内心ほくそ笑むが足止めできる時間も少ないしその間に倒し方を考えて実行しなければならない。
一応【自己再生】以上のスピードで倒すとか、【竜の伊吹】で焼き尽くすなどの案は出たがどれも先に俺がスタミナ切れになりそうだ。
そう考えを巡らす中で──視界の端に動く影を見つけた。
(ウソだろ...麻痺が解けるのに
第一陣がよろよろと立ち始めたとき後ろから来た第二陣が第一陣を押し退け、毒霧に足を踏み入れる。決定的に違うのは全員が麻痺になっている訳ではないということだ。
さらに後ろから来た第三陣は誰も麻痺になった様子はなかった。
ここから新たな結論を導きだす。
(まさかスキルの共有!?第一陣の誰かが【麻痺耐性】を獲得したから起き上がるのが早かったし、第二陣も倒れる数が少なかった。第三陣にいたっては【麻痺無効】も獲得したってか!どう勝てッんだよ!)
高火力、一撃で、【自己再生】させる間もなく。言葉にするのは簡単だが、そんなことが出来るスキルは数多ある中でも片手で数えられるぐらいだろう。例えユニークスキルだったとしても。そして俺が今使えるものではない。
否──使えはする。だが、怖いのだ。
成功のために積み上げた失敗があるように、リターンにはそれ相応のリスクが存在する。それを危惧して封印したスキルが...俺が竜として生まれてから一度しか使ったことのないユニークスキル。
(いや、これ以外にもあるはずだ。探せ!)
そう思う俺とは裏腹にあらゆる手の悉くが封じられていく。
炎を撒き散らせば【対熱無効】へと。
毒を食わせば【毒無効】へと。
殴って殺せば【物理攻撃無効】へと。
打つ手がなくなり、戦況が硬直したとき、敵が普通のモンスターなら考え付かない、明らかに知性があるようで狂った考えを実行し始めた。
なんと、自分の尻尾を切断し始めたのである。
「オイオイ、マジかよォ!?」
切断したのはさそりの尻尾を持つキメラ。
『ガンズスコルプ』の注意すべき場所はその尻尾の針である。前世でのさそりの猛毒とかそういう話ではない。その針には【防御貫通】の効果がついているのだ。
だがガンズスコルプは致命的なまでにスピードが低い。だから気を付けることは奇襲だし、刺さったとしても火力も低いからそこまで脅威ではない。
そう、
もし他のモンスターと結託したなら
もしスピードの高いモンスターが持っていたなら
今回で言うならその尻尾を
『ゴ・リラ』の腕がついているキメラがゆっくり、しっかりと腕を引き絞る。無駄にフォームが良く、【豪腕】のスキルによってそれは爆発的な威力を出すことが容易に想像できる。
さらに、そのキメラと俺の延長線上には俺の家がある。そして、その家には
これで回避の選択肢は消えた。防御...も無理。
なら──そらす!
空気を貫く音とともに打ち出される弾丸。俺はそれにただ両手を前にだす。そして──衝突。
肉が削げていく感覚。防御とは呼べない俺の手に当たることで勢いが落ちていく。削りきられる前に逸らす。それも上ではなく横に。
(攻撃を凌ぐついでに囲まれてるヤツら殺そうとするとか俺も案外、余裕あるな。)
すぐさま【
...ということはガンズスコルプは持っていなかった【自己再生】でいくらでも弾丸を産み出せるってことで、
尻尾を振り回しながら正面を見据えた瞬間、
(あ、これ死──)
この中に終わり方見た気がするって思った人...だぁいせいかぁい!
ヴェルダナーヴァの一人称って?
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僕(作者はコレ)
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私
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オレ(主人公と分けるため、カタカナ)
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我
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ナーヴァ
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拙僧
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一人称ナシ(作者の負担が増大)