難産だった...
コミュニケーションできる人がいないとギャグにもシリアスにも移りにくい今日このごろ。早く原作に突入したいところではある。
なお作者はクモが嫌いです。どれぐらい嫌いかと言われると夏の蚊、もしくは飛び回るGくらい嫌い。
未だ続く竜巻に突如として終わりをもたらしたのはその中心にいた存在だった。
白い光による一閃。
ただそれだけで猛威を振るっていた竜巻は霧散し晴れる。
そこに広がっていたのは雲一つない大空と巨大なクレーター。それと白い放射状に広がる太い糸と中心に佇む、竜の10倍は大きな黒光りする蜘蛛であった。
その他にモンスターはおらず、目的の一つとついでにボスの全体像も見えたことは、手段が違うとはいえ良い結果であることだろう。少なくとも一匹一匹を突進で飛ばすよりも遥かに効率的であるのは間違いなかった。
しかし、蜘蛛を壁となる存在がいなくなった今でもすぐに攻撃に移ることは叶わなかった。
危機感知系の
だがその感覚とは裏腹に口角は上がっていく。
さまざまなことを戦いで学んできた。
死に対する恐怖、戦いでの高揚感、自身の状況への怒り、ただひたすらに逃げることしか出来ない無力感、制限時間と動かない敵に感じた焦燥感、確実に強くなっていくと感じた時の充足感、戦場でする油断の危うさ、たったの一手が戦場を変える不安定さ、そして──攻撃が通らなかった相手にダメージが入った時の快感。
最近は格上や同格の敵がいなくて穏やかだった。平和だった。なにより──退屈だった。
何だかんだ言っても本質が闘争の中に生きる
対する蜘蛛もゆっくり黄色い目を開く。
その目に浮かぶのは驚愕、憤怒、警戒そして...歓喜。
自分だけのための軍団があった。
どんなにも強いヤツでもそれ以上の耐性、質を取得して、どんなに大きな群れでもそれ以上の量を持ってしてあらゆる者を蹂躙してきた。
今回は確かに何匹か殺されたことに驚きはした。
だが、それだけだ。すぐに耐性を獲得し、追い詰め、油断させ、奇襲し、
詰みから起死回生の一手。
今まで逃げることしかせず、狩られる側であった黒き蛇の思わぬ反撃。
「キチチチチチ...」
「グルルルルル...」
蜘蛛は怒りながらも冷静に、竜は今まで以上の敵に警戒して唸り声をあげる。
最初に動いたのは竜。
まず狙うのは蜘蛛の足場。その巨体の何倍もの広さを誇る放射状に伸びる糸で出来た巣の性質を竜は見抜いていた。
(さっき俺が起こした竜巻、防御貫通の弾も巻き上げて結構な火力だったはずだし、何より刃状の風がとんでいったのにアイツの体には傷一つねぇ。確信したりするのは良くないと思うが、理由があるとしたら足場だ。)
図体にかかる力を8本の足を通してしなやかに曲がる糸で衝撃を吸収することでダメージの軽減。柔らかいゆえに壊しにくく、風の刃でつけられた傷は7割近く修復が終わっていて、それでも完全に復活してるわけではないのは僥倖といえるだろう。
「グルゥ...ガァ!」
鑑定する隙などなく、また与えられることもない。
その事を理解しつつ、蜘蛛の周りを旋回しながら口に溜めた【竜之息吹】の炎が球状となって放たれる。
しかし、その目論見は失敗に終わった。
エクストラスキル【魔力妨害】
それは己を中心とした球の形にジャミング効果を持たせるスキル。このスキルによって魔法のみならず遠距離系のスキルすらも霧散させる。
むしろそれを受けつつも防御を超えてダメージを与えられたオリ主が化け物なまである。そう言えるほどのスキルなのだ。もっとも、体を振るっただけで消えるほど小さいダメージなのだが。
攻撃がほぼ不発に終わり、たじろぐ竜に対し、その隙をコモンスキルである【鋼糸】で攻撃を放つ。
ただ糸を吐いているだけでは空中という地の利をとっている竜には届かないが、鞭のようにしならせることで攻撃の範囲を広げていた。
さらにそれは一発だけでなく連続で放たれ、かつ高速で迫る糸に、竜は補足されないために急制動を繰り返しその距離を詰めていく。
しかしそのまま接近を許すはずもなく、同時に【粘糸】を使い【鋼糸】を操りつつ空中にばらまくことで、【鋼糸】に切られた【粘糸】が辺りに霧散し、動きを阻害する罠を張り巡らせた。
「ガッ...ハ」
苦し紛れに放った炎球の影から飛んできた糸が骨まではいかなかったが腕を切り裂き、深い傷を作った。
炎球のおかげで多少動きやすくはなったものの【鋼糸】を瞬間で燃やすほどの火力にはならず、燃え尽きる前に切り離して竜を狙っていたのだ。
痛みにうめき、体勢を崩したがそれも一瞬。すぐに立て直し炎球によって出来た道に突進する勢いのまま蜘蛛へと一直線に駆けた。
たしかに燃えた糸を切り離した直後である──が距離が縮まるより先に糸が放たれる。
高速で移動するということは高速で向かってくることと同義である。格子状に放たれた糸は大きく素早く避けるか、防御せねばならず、失敗は『死』を意味する。
思考の空白を許さない攻撃に対し竜は───
ドンッ
──空中を蹴る音と共に
「キチッ!?」
蜘蛛は驚愕した。
なぜなら加速した結果、回避は間に合わなくなり、防御以外で生きる方法を失ったからである。回避か防御を迫られている時にさらに選択肢を狭めるなんて自殺行為である。
「グルゥゥゥアァァァァァ!!!」
直後、竜が咆哮を上げる。それは攻撃を耐えて見せるといった恐怖を絶ちきる決意の声か、はたまた──
いや、蜘蛛にはそんなことはどうでもいい。
理解できない行動には驚いたものの、防御した時の速度低下を補うために行ったものだと思えば辻褄は合う。
──ならば、その防御すら貫くほどの火力を叩き込めばいいだけだ。
油断などしない。傲りもない。ただ、徹底的に叩き潰す。
蜘蛛は目を竜から逸らさず膨大なエネルギーを口内に溜めていく。糸を防御し、その速度が遅くなった時に防御ごと竜を切り裂くために。
ついに糸が竜に当たる瞬間、
次に目を開いたときに見たのは白い糸のみで、竜の姿はどこにもなかった。
「キチチ?」
まばたきという一瞬の隙に消えた敵をブレスのせいで振れない首の代わりに目だけで探す。が、見つからない。
ならば一帯を凪払おうとブレスを解放しようとしたとき、小さな豆粒のようなモノを見つけた。
気にせずブレスを吐こうとする次の瞬間、その豆粒から竜の腕が飛び出した。複眼でしっかりと捉えれば竜の時よりも小さいが、同じような翼も存在した。
ゾウがアリを見ても何も思わないように小さなものは見落としてしまいがちである。
「ギッ!?」
「しっかり食らえや...クソ蜘蛛野郎ォ!」
流星のごとき拳がその蜘蛛の額を捉え、
その巨体を地面に沈めさせた。
蜘蛛さん驚きすぎじゃね?と思ったそこのあなた。
そりゃそうだ。だって初戦闘何だもん。敵が何をしてくるか予想しつつ何が起きても平常心を保つ訓練とか練習とかしてるわけないでしょうよ。