初戦闘を終えた俺は片腕を治すためムシャムシャと三匹の肉を食らっていた。
うーん、ガッツリ香る鉄のにおい、噛むほどに溢れるグニュっとした柔らかい感触。これが(幼体)の肉かぁ...せめて焼きたい...
ブレスをはこうとしても遠距離手段が少ない地上型なことを思いだし、軽く泣いた。いっそ味覚がないほうが楽なまである。
ていうかよくあんなに動けたな。お兄さんもビックリよ。あれが『窮鼠ねこを噛む』。
三匹がこの場から消えたのを確認し、毒の霧に囲まれて安全なうちに自分にむかって【鑑定】を行う。
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コモンスキル
【竜鱗】【威圧】【滑空翼】【思考加速】【毒食み】【苦痛耐性】【毒耐性】
エクストラスキル
【魔力感知】【解析・鑑定ex】
ユニークスキル
【
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【
触れたものを取り込む、または物質を浸蝕し100%魔素へと書き換える能力。さらに毒系の攻撃の解毒、利用が可能になる。
...つよ、余裕のある今のうちに試しておこう。
初戦闘で学んだことは自分の手札をしっかりと理解しておくことが何よりも重要だということだ。
ユニークスキルがどんな感じなのか体験もせずに使うのは愚の骨頂。だからあらかじめ試すに限る。
【毒食み】による『毒の物質化』で毒霧を食べる。霧の成分はほぼ100%が魔素で出来ているので回復には持ってこいである。それでも回復系のスキル持ってないから右肩の血が止まっただけだが。
3つのユニークスキルを試してみる。今さらだけど3個中2個が手を使うのに片腕失ってるこの状況ってヤバイのでは?
『ホ●ミ』とか『ベ●イミ』は切り傷は治せても欠損は戻せない感じあるよね。それこそ『自己再生』とかじゃなければ。
思えば回復って強キャラにのみ許された特権だとおもうんだよね。少なくとも序盤に出てきて良い魔法じゃない。
どうやったら獲得できそうかな?今までは望んだら『成功しました』とか言われて使えるようになったけど。
あーでもないこーでもないと考えているとき、急に自分の周囲が暗くなった。
直後、風を切るおとと【魔力感知】にひっかかった高速をだす物体。
本能が警鐘をならし、すぐさまその場から左へと離れることで危機一髪回避。
ドゴンという大地をえぐる音と同時に現れる巨体の影。
砂煙が晴れるとそこにいたのは──
「クェエェェェェェェ!!」
──鳥のような羽に鳥のようなくちばし、さらには鳥のようなかぎ爪と、詰まるところ体の大きさ以外鳥の姿のモンスターだった
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トカリプトル 種族:亜竜
称号:大陸を駆ける者
コモンスキル
【瞬足】【突撃】【毒食み】【スロースターター】【暗視】【危機察知】【狩猟本能】【自己再生】【毒撃】【毒無効】【熱変動耐性】【麻痺耐性】【石化耐性】【衝撃耐性】【痛覚耐性】【睡眠耐性】【刺突耐性】【痛覚耐性】【物理耐性】【電流耐性】【苦痛耐性】
エクストラスキル
【石化の魔眼】【肉体改造】【毒霧操作】【猛毒生成】【魔力感知】【高速飛翔】【演算省略】【高速演算】【自動演算】
ユニークスキル
【
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えぇ...見た目グリフォンじゃん?それがなんでトカリプトルの成体なんだよ。
...ユニーク持ち、案外早く見つかったな。
称号ってなに?
警戒しつつ思考を巡らせ勝つ未来を想像する。どっかの人がいってた『人が想像できる物は必ず人が実現できる』と。今は人じゃないけど。
警戒を解かずにいると、先に動いたのは相手だった。いや、動いたというか蠢いたみたいな感じなのだけれど。
バキッボギバゴと骨が折れているんじゃないかと思うほどの轟音のあと、羽は消え後ろ足がさらに発達、流線形のボディにも磨きがかかった姿に変身した。
(今のが【肉体改造】の能力か?思ってたよりグロ──ッ...!)
目の前のヤツが足に力を込める。このモーションは知っている。ついさっき嫌というほど辛酸をなめさせられた【瞬足】の予兆だ。
左に避ける。直後、轟音と突風。
右腕があったならば、引っ張られるまま何が起きたかも分からず衝撃で死んでいただろう。それと同時にこうも思った。
幼体の【瞬足】はまだ目で追えた。【魔力感知】にもひっかかったし、【思考加速】を使った時では初動も読みやすく簡単に避けることが出来た。
だがコイツは違う。初速から途中まで見えなかったし【魔力感知】も【思考加速】もくぐり抜けた。
そしてもっと大変なことに気がついてしまった。
初動が見えた、タイミングが分かったからギリギリで回避することが可能だった。最初の一撃だって影がささなければ地上の染みとなっていただろう。
ならば毒霧によって
ドンッドンッと轟音が鳴り響く。アイツが地面を蹴る音だ。初撃を避けられるとは思わずに遠くへ行きすぎたから【魔力感知】でおれを探しているのだろう
あの攻撃のあとすぐに【魔力感知】を切り、毒霧の中に身を隠したのが正解だったようだ。【毒霧操作】の能力では感知は無いようだ。
走る、走る、走る
あのときのような恐怖の逃走ではない。
逃走ルートを考え、ジグザグに動きながら霧のそとを目指す。
毒霧は巣を中心にそとに行くほど濃くなっていた。そこから推測するに、巣から半径なんメートルという縄張りを持っているはずだ。
つまりは毒霧が届かないところに行けば逃げきれる
足音も気配も種族の圧的なヤツも消し方なんて分からないが抑えながら足を動かす。
『スキル【気配遮断】を獲得しました』
タイムリーなスキルに感謝しつつONに設定する。
走ってる間にもドンッドンと規則的な音が俺の耳に響く。だんだんと迫り来る恐怖に足腰を奮い立たせ、濃くなっていく霧の中を感で外に向かっていく。
急に視界が晴れる。ようやく霧のそとへ出られたようだ。いつの間にか止んだ大地を踏み抜く音で見失ったかと少し気を抜いた。
直後、強烈な悪寒が背筋をつたう。本能のままに背後に【拒絶者】の壁を『称号:大陸を駆ける者をもつトカリプトルの肉体』で設定し、残りの魔素全てを【竜鱗】に注ぎ込み今出来る最大の防御をおこなった。
「グガッ──」
最大の防御をギリギリで張り終えた、次の瞬間には巨体によりくり出された突進に体がくの字に曲がる。
そのまま勢いに吹き飛ばされ地面と平行に宙を舞う。
結構なスピードを出しながら巨大な岩に衝突し意識を飛ばしそうになるのを気合いで保つ。
途中で巻き込んだ魔物がいなければ岩に激突した衝撃で天に召されていたかもしれない。そんなことを考えながら【侵蝕者】によって魔物を吸収する。
後方からドォンという音が聞こえるも背後に見えるトカリプトルが動かずに鋭い眼光でこちらを見据えていた。
ようやく回り始めた頭であれが音速を超えていたことに改めて実力の差を突きつけられる。
アイツが睨むのをやめ、毒霧の中へと消えたのを確認したあと、緊張していた体の力が抜けて──そこで意識を手放した。
産まれて5日で最強核のユニークモンスターと遭遇
これが主人公...!
ヴェルダナーヴァの一人称って?
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僕(作者はコレ)
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私
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オレ(主人公と分けるため、カタカナ)
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我
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ナーヴァ
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拙僧
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一人称ナシ(作者の負担が増大)