SCP:IRON.SAGA.   作:野生のムジナは語彙力がない

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おかえりなさい! 指揮官様!
今回のSCPはアイリの為の護衛ペットとして開発されたものの、色々あってketer認定されてしまったSCPとなっております。
この話の前日譚となる、アイリがタコに襲われかけるお話は、前にムジナの書いた『水平線上のノア』(未完成)からの実質的な続きではありますが、そちらを読んでいなくても読めるように工夫したので未読でも問題はないかと思われます。

それでは、続きをどうぞ……


SCP–120–IS 『世界で1つだけの友達』

アイテム番号:SCP–120–IS

『世界で1つだけの友達』

オブジェクトクラス:Keter Euclid

 

 

 

特別収容プロトコル:

SCP–120–ISはエリア████ベース████の地下に存在する、厚さ0.5m以上のハードシェルで密閉された20×20×30mの第三特殊強化スペースに収容されます。メンテナンスクルーは1週間に一度、収容室の点検を行い、壁や床に亀裂がある場合には修復用ナノマシンを用いて補修を行ってください。しかしSCP–120–ISはその特性上、完全な収容は不可能であることから、割り当てられた警備スタッフはSCP–120–IS能力発現のトリガーとなる『アイリ』の動向と様子に注視し、彼女の身に少しでも危険が及ばないよう、24時間体制で警護に当たって下さい。

SCP–120–ISの能力発現が衆目に晒された際には記憶処理は行わず、代わりにカバーストーリー『プロジェクションマッピングの誤作動』もしくは『新型ペットのお披露目』などが適用されます。

 

追記:

インシデント 4177での功績から改良が加えられ、SCP–120–ISのオブジェクトクラスはKeterからEuclidへ引き下げられましたが、上記の特別収容プロトコルは継続されます。

 

 

 

説明:

SCP–120–ISは、我々SCP委員会とOATHカンパニーによって共同製作された『アイリ』専用自立思考AI搭載型護衛ペットの試作品であり、巨大なウツボ(Gymnothorax kidako)をモデルとしています。

ウツボはウナギ目ウツボ科に分類される魚類の総称です。一般的にその体長は20cmから4m(全長1m前後の種類が多い)の魚類ではありますが、ただし、SCP–120–ISは通常のそれを遥かに上回る全長30m、重量120トンです。外見的な特徴として、ニセゴイシウツボのような円形あるいは繋がった無数の斑点があり、その体色はハナヒゲウツボのように鮮やかな青色をしています。

SCP–120–ISに採用されたAIは、自身のことを『100万の闇の眷属たちと深海の神々を統べる最強最大の騎士王』と称し、その性格は暴力的かつ非常に傲慢で委員会スタッフによる制御は困難を極めます。

 

しかし、後述する"姫様"の命令だけは聞きます。

 

SCP–120–ISは高度な空間跳躍能力を保有しており、その移動範囲は無制限です。SCP–120–ISはこの能力を己の意思で発動させることもできますが、多くの場合、彼が"姫様"と慕う『アイリ』の身に何らかの脅威が迫りつつある際に能力を発動させ『アイリ』を保護します。その後、暴力や内蔵された火器を用いて脅威の排除を試みます。

 

『アイリ』は何の異常性も持たない少女です。

幼少期の記憶を喪失しており、現在はOATHカンパニーのCEOであり、我がSCP委員会の出資者かつ上級意思決定権を持つO5−3こと、ハインリヒ様の養女として生活しています。

また、指揮官勢力と提携協定を結んでいる学園に通っており、一般の生徒たちに混じって日々勉学に励んでいます。

 

追記:

いくら見た目がそれっぽいからといってSCP–120–ISは『アナンタシェーシャ』ではありません。アレは靄状の物質を出すことも人を捕食することも、ましてや記憶処理薬の材料になることもありません。それとあちらはウミヘビです。

 

 

 

開発経緯 SCP–120–IS:

新暦██年の夏、とある島でアイリが友達やペットたちと共に海水浴を楽しんでいる際、突如として出現した未確認の軟体生物(タコに酷似している)と思わしきエンティティに襲われかけるという事案が発生しました。

幸いなことに、現場に居合わせた指揮官が身を呈して彼女を守ったことで最悪の事態は免れました。この事案を教訓にして、OATHカンパニーと委員会は共同でアイリ専用護衛ペットの開発に着手、2ヶ月もの時間を費やし完成したのがSCP–120–ISでした。

SCP–120–ISの開発にあたって、OATHカンパニーやSCP委員会スタッフたちから様々な意見が取り入れられました。以下はその一例です。

 

【開発会議ログ抜粋】

まず必要最低限の装備として発信機は必要よね。

あとは暴徒鎮圧用レベルの電撃装置くらいかしら

ーO5−3(ハインリヒ)ー

 

彼女が愛用しているペット……モモって言ったか? アレにも最低限の護衛能力はあるが、バッテリーの出力が低いせいでないよりはマシというところだ。なので、あらゆる事態を想定して高出力のものにすべきだろう。

ーイシュメール博士ー

 

タコの天敵はウツボって聞いたことがあるのです! またタコに襲われることがないよう、ウツボをモデルにしたらどうです?

ームジナー

 

護衛が目的ならば、それなりに防御力が必要になってくるだろう。多少大型化することになるが、半永久機関コアを内蔵して皮膚を電磁装甲化するのはどうかね?

ーO5−2ー

 

それなら、ついでに防衛用の装備もつけましょう。そうですね、例えばプラズマ砲なんかいいんじゃないでしょうか? 敵は一瞬で消し飛びます♪(嬉々として)

ーミドリー

 

敵の場所を探るための索敵ドローンもつけた方がいいんじゃない? ここまでで装備を盛り込み過ぎだから小回りが利かないと思うし、周囲の安全を確保するという意味でも必要よね。あと、そうね……いっそのことドローンに迎撃用レーザーもつけてと

ーO5−1ー

 

この他にも

・『アイリの脳波を感知』ー研究員ー

・『瞬間移動(空間跳躍)』ーシェロンー

・『騎士道精神』ーイーディスー

・『濃ゆいキャラ設定(厨二的な)』ー汐月博士ー

・『敵の戦意を失わせる凶悪な外観』ー匿名ー

・『ナノマシンによる自動修復』ー研究員ー

・『アイリへの忠誠心と親愛の情』ー匿名ー

・『反射フィールド系防御装置』ー水原梨紗ー

など、様々な意見が上がりました。

 

……なんか色々盛り込み過ぎなような気がするけど、アイリの為だし、まあいっか。とりあえず一度プロトタイプを作ってみて、必要に応じて改良を加えていくということにしよう。

ー指揮官ー

 

こうして指揮官とO5−3(ハインリヒ)管理の下、アイリ専用護衛ペットの開発が進められました。委員会とOATHカンパニーの技術力に、SCP–███–ISとSCP–███–ISの性質を組み合わせ、さらにSCP–███–ISの技術を応用することで完成したのが、全長30メートルのウツボ型護衛ペットであるSCP–120–ISです。

 

頭部に内蔵されたバイオセンサーは遠距離からでもアイリの脳波を感知し、彼女の身に危険が迫った際には空間跳躍能力により一瞬にして彼女の元へ移動し、より早期に事態への対処を行うことが可能です。高出力化に伴い全長30メートルと大型化したものの、内蔵された高出力コアにより、皮膚は電磁装甲化され高い破壊耐性を誇っています。

武装としては、口腔部に上下合わせて4本の超高周波ファングエッジとプラズマ発射管を備え、胴体部には迎撃ドローンを射出可能なハッチと指向性電気ショックを放出するための砲門、絶対守護領域と呼ばれるフォースフィールド発生装置、さらに尻尾の先端をヒートテールにすることで近接戦闘にも対応しています。

 

 

 

記録:SCP–120–ISお披露目式

以下は完成したSCP–120–ISを、アイリの前にお披露目した際の文字起こしです。サプライズにする為に、アイリにはSCP–120–ISのことを伝えていませんでした。

 

【音声記録1】

ー文字起こし開始ー

大勢の研究員・開発スタッフが見守る中、アイリがハインリヒと共にSCP–120–ISの格納庫(後の収容室)へ入室する。アイリの接近に気づき、SCP–120–ISはゆっくりと頭を持ち上げて彼女を見つめる。

 

ハインリヒ「というわけでアイリ、貴方のためにスタッフのみんなで作ったペットだよ? 凄いでしょ、どう? 気に入ってくれたかしら?」

 

アイリ「…………」

 

ハインリヒ「どうしたの?」

 

アイリ「ち、ちょっとだけ……」

 

ハインリヒ「ん、なにかしら?」

 

アイリ「…………こわい」

 

ハインリヒ「……!?」

 

【音声記録1】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

 

 

運用記録 SCP–120–IS:

当初、その威圧的な外観と巨体からSCP–120–ISに対して恐怖心を露わにしていたアイリでしたが、幾度かのコミュニケーションを経てSCP–120–ISが非常に有効的な存在であると認識したのか、徐々に打ち解けるようになりました。

委員会はSCP–120–ISの機能制限を解除し、SCP–120–ISがアイリの危機に対応できるかどうかのテストを行いました。まず、アイリに軽いショックを与える実験を行ったところ(お化けに扮したスタッフが驚かす程度の)、SCP–120–ISのバイオセンサーがアイリの危機を感知し、SCP–120–ISは地下収容室より消失、空間跳躍を用いて離れた格納庫にいるアイリの前へと再出現すると、彼女の周囲を覆い隠すようにとぐろを巻くといった防衛行動を取りました。

 

【音声記録2】

ー文字起こし開始ー

 

アイリ「ねえウツボさん、ウツボさんの名前聞いてもいい?」

 

SCP–120–IS「私めの名前でございますか? そうですね……私は『100万の闇の眷属たちと深海の神々を統べる最強最大の騎士王』です、アイリ姫」

 

アイリ「……うぅ、長くて覚えられないよ」

 

SCP–120–IS「しかし、私を作った者の1人は私のことをこう記しておりました故、なのでアイリ姫も私のことはこのようにお呼び頂いて貰えれば幸いでございます。それと私はウツボではなく、あくまでも自立思考AI搭載型ペットであります故……」

 

アイリ「じゃあ、ウツボさんって呼ぶね」

 

SCP–120–IS「…………左様でございますか」

 

【音声記録2】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

後日、SCP–120–ISの開発コード名をO5の許可なく勝手に変更したとして、評議会より汐月博士には反省文の提出と3日間のおやつ抜きが言い渡されました。

 

 

 

【音声記録3】

ー文字起こし開始ー

 

アイリ「ウツボさんってなんでこんなに大きいの?」

 

SCP–120–IS「私はウツボでは……コホン、質問にお答えしましょう。それはアイリ姫、貴女様のお命を守る為でございます」

 

アイリ「じゃあ、なんで目が大きいの?」

 

SCP–120–IS「それはアイリ姫のことをよく見る為でございます。お体に傷などが付いていないかを1秒ごとに目視で確認し、また何かよからぬものが接近しないようにお守りする為でございます……このように」

 

会話をしながら、SCP–120–ISは電気ショックを放つ。超低出力で放たれたそれはアイリの周りを飛んでいた蚊を貫いて、一瞬のうちに蒸発させる。

 

アイリ「じゃあ、なんでお口が大きいの?」

 

SCP–120–IS「それはアイリ姫のことをお守りする為でございます。私の口の中にある鋭い牙はどのような装甲だろうと砕き、口から放たれる光線はありとあらゆるものを吹き飛ばします……貴女様にまとわりつく害虫どもを、このように」

 

次の瞬間、SCP–120–ISは収容室に向かってプラズマ砲を試射する素振りを見せました。発射の直前で、アイリと委員会スタッフの説得により最悪の事態は免れました。

【音声記録3】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

【音声記録4】

ー文字起こし開始ー

 

アイリ「今日はね、グニエーヴルさんと、ドリスちゃんと、クルスちゃんと、あとエルちゃんとフルちゃんと一緒にクッキーを焼いてみたの! 」

 

SCP–120–IS「左様でございますか」

 

アイリ「うん! でも少し作り過ぎちゃったから、お母様やいつもお世話になってる指揮官様やミドリさんに分けてきたの。お母様も指揮官様も、みんなアイリの作ったクッキーを美味しいって食べてくれたの。アイリ、みんなが笑顔になっているのを見ているととっても嬉しくなったの!」

 

SCP–120–IS「それは何よりです」

 

アイリ「それで、はい。これはウツボさんに」

 

SCP–120–IS「私に……ですか?」

 

アイリはポケットから取り出したクッキーの入った袋をSCP–120–ISへと差し出す。SCP–120–ISはどうしていいか分からないと言ったように少しの間クッキーの凝視した後、舌を伸ばして袋を受け取ると、袋からクッキーを取り出すことなく口腔内に収めた。

 

SCP–120–IS「…………これは」

 

アイリ「どう? 美味しい?」

 

SCP–120–IS「アイリ姫」

 

アイリ「うん!」

 

SCP–120–IS「塩と砂糖を間違っております」

 

アイリ「……え?」

 

【音声記録4】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

 

 

収容違反報告 SCP–120–IS:

お披露目式から1週間後、SCP–120–ISの最初の収容違反が発生しました。某日深夜、突如としてSCP–120–ISが収容室から消失、その後、年少組用居住区にあるアイリの部屋で再出現するという事案が発生。

この時、基地の被脅威レベルはグリーンで、基地の防衛を担当するAICは何の異常も検出していませんでした。さらにセキュリティチームである機動部隊アルファ『薔薇騎士団』及び機動部隊ベータ『十字騎士団』によるバックアップと全館クリアリングが行われましたが、こちらでも異常は確認できませんでした。

 

後に行われたアイリへのインタビューで、この時彼女は『こわい夢を見ていた』と証言しました。SCP–120–ISはその時に生じた脳波の変化を脅威とみなしたことで、今回の事案に至ったのだと推測されます。

この事案による人的被害はありませんでしたが、アイリの部屋と居住区の一部が破壊され使用不可となってしまいました。(部屋の補修が完了するまでの間、割り当てられた女性スタッフは交代で彼女の面倒を見ることになりました。)

 

アイリの危機を感知するSCP–120–ISのバイオセンサーがあまりにも敏感に設定されていたことが本事案の原因だと推測されています。この事案以降、SCP–120–ISは何度も収容違反が発生しています。以下はその一例です。

 

事案2.

場所:基地内カフェテリア

アイリが年少組の子どもたちと軽食を取っていたところ、カフェテリア内にSCP–120–ISが出現。キャパシティオーバーによりカフェテリアは完全に破壊されました。

後に行われたインタビューで、アイリは『スープが熱かったの』と証言しました。なお、この事案による怪我人はいませんでした。

 

事案5.

場所:基地内作業所

アイリがスタッフたちのお手伝いを行なっていたところ、作業所内にSCP–120–ISが出現しました。作業所内は広大なスペースを有していたことで全損は免れましたが、機材の一部や保管されていたリソースのいくつかが損傷しました。

後に行われたインタビューで、アイリは『紙の端で指を切ってしまった』と証言しました。なお、この事案によりスタッフ2名が軽傷を負いました。

 

事案7.

場所:基地滑走路

アイリの転倒に際して滑走路上にSCP–120–ISが出現。開けた場所だったこともあり、これといって被害はありませんでした。

 

事案10.

場所:多目的ホール

アイリが他の年少組の子たちと多目的ホールで遊んでいると、なんの前触れもなくSCP–120–ISが出現しました。

後に行われたインタビューで、アイリは『隠れんぼをしていただけなのに…』と証言。鬼から隠れている際の緊張感をSCP–120–ISが感知、脅威と認識してしまったものと思われます。この事案による怪我人はありませんでしたが、ホールの内壁に多数の亀裂が入りました。

 

事案12.

場所:学校

アイリが授業を受けていたところ、クラスメイト(男子)の1人がイタズラで鉛筆の芯を飛ばし、彼女の背中に当てました。その瞬間、教室内にSCP–120–ISが出現し、そのクラスメイトを尻尾で拘束した上で高所へと移動し、振り回すなどして脅迫しました。

この事案により、アイリの教室は完全に破壊されました。SCP–120–ISによる直接的な人的被害は奇跡的にもありませんでしたが、教室内にいた児童6名が驚いて転倒し、軽い怪我を負いました。またイタズラを行なったクラスメイトはショックを受け、泣いてアイリに謝罪しました。

補遺:委員会は学校側に謝罪しました。

 

 

 

会話ログ SCP–120–IS:

以下は、事案10および12発生時のアイリとSCP–120–ISの会話の文字起こしです。

【事案10】

多目的ホールにて委員会スタッフたちが事故調査を行なっている最中、アイリがSCP–120–ISに接近しました(この時、やることなすことを悉くSCP–120–ISに邪魔されていたことにより、アイリのSCP–120–ISへのヘイトはかなり高まっていたように思われます。)

ー文字起こし開始ー

 

アイリ「ウツボさん!」

 

SCP–120–IS「姫よ、私はウツボなどではありません。私の名は『100万の闇の眷属たちと深海の神々を…』」

 

アイリ「ウツボさん。危ないから急に出てこないでってみんな言ってるよ? これからお片づけしないといけないから、早く部屋から出てって」

 

SCP–120–IS「ですから私はウツボでは……(咳払いをして)よろしい。しかし、私めは姫の騎士であります。姫様もご存知の通り、私の役割は貴女様の護衛であります。まだ何か隠れた脅威があるやもしれぬ、我が眷属(ドローン)を用いて索敵を行う故、今少しだけお側に……」

 

アイリ「出てって!」

 

SCP–120–IS「はい……」

 

アイリに怒られたことによりSCP–120–ISはショックを受けたようでした。間も無く、SCP–120–ISは多目的ホールより消失。なお、アイリの機嫌はしばらくの間良くなることはありませんでした。

【事案10】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

【事案12】

ー文字起こし開始ー

SCP–120–ISはアイリに危害を加えた男子生徒を尻尾で拘束して拉致。さらに学校の屋上へと移動し、恐怖を与えるかのように振り回している。

委員会スタッフらと共にアイリが屋上に現れる。

 

アイリ「ウツボさん!」

 

SCP–120–IS「アイリ姫、どうなさいましたか?」

 

アイリ「どうしたじゃないよ! ██くん(男子生徒の名前)のこと離してあげて!」

 

SCP–120–IS「いえ、アイリ姫……それはできかねます」

 

 

この後、5分間に渡りアイリとSCP–120–ISは男子生徒の処遇を巡って口論を繰り広げる。しかし、尚も男子生徒に罰を与えようとするSCP–120–ISに対し、アイリは我慢の限界を迎える。

 

 

アイリ「アイリ、乱暴なウツボさんのことなんて嫌い!」

 

SCP–120–IS「……!」

 

 

珍しく怒りを露わにしたアイリを見て、SCP–120–ISは激しいショックを受けたようでした。アイリが屋上から退出すると、SCP–120–ISは力なく尻尾を下ろして男子生徒を解放、収容室に移動することなく屋上に留まり、1時間ほど落ち込んだ様子を見せていました。

【事案12】

ー文字起こし終了ー

 

 

 

 

 

改良会議記録 SCP–120–IS:

事案1以降、SCP–120–ISの改良に関する会議が開かれました。1回目の会議ではSCP–120–ISの敏感すぎるバイオセンサーが論題に上がり、ひとまずセンサーの感度を落とすことで合意、直ちにSCP–120–ISのアップデートが行われました。

 

しかし、アップデートの最中にシャットダウンさせたはずのSCP–120–ISのシステムが自発的に再起動、SCP–120–ISはアップデート処理を拒否して収容室へと引きこもりました。

SCP–120–ISはアイリ以外の全スタッフに対して非常に敵対的であり(アイリへの配慮を最優先にした結果、それ以外の人物を軽蔑しているのだと推測されます)、我々による制御は非常に困難を極めます。通常兵器を用いた武力による鎮圧作戦は失敗に終わりました。基地の地下に設置された堅固な収容室はあらゆる攻撃を受け付けず、SCP–120–ISの絶対守護領と相まって鉄壁の要塞と化しています。

 

説得の試みはSCP–120–ISが拒否したことにより、全て失敗に終わりました。基地内であることから大型兵器を用いた作戦行動は推奨されません。一度、どこからかその存在を嗅ぎつけてきた極東武帝『宏武』が我々の許可なくSCP–120–ISと交戦しました。しかし、極東武帝は収容室への侵入には成功したものの、SCP–120–ISに搭載された最先端の防衛システムを前に手も足も出ず、完膚なきまで叩きのめされました。

【コメント】

なにせ委員会とカンパニーの総力を結集させて作ったペットなのです! 古臭い行き遅れのジジイ風情が勝てるわけねぇんだよ(笑)なのです!

ームジナー

 

年寄りの冷や水とはまさにこのことだったな。とはいえ、アレは元々BMとの戦闘を視野に入れて建造されたからな。並の攻撃では歯が立たん

ーイシュメール博士ー

 

大きくなるからって収容室も凄いの作っちゃったし、というかペットの域を超えてもはやBMみたいなものよね、あれ……

ーO5−1ー

 

なんとかSCP–120–ISを収容室の外に出せないものだろうか? 例えば、あえてアイリに危害を加えることで、奴は外へ出ざるを得なくなる。

ーO5−2ー

 

いや、それはやめておけ。

外に出たSCP–120–ISは必ずアイリの防衛行動に走る。ここで無理に引き剥がそうとすると、それこそアイリの身に危険が及ぶかもしれない。

ーイシュメール博士ー

 

そうね。もう少し様子を見ましょう

ーO5−3ー

 

この会議の後、SCP–120–ISによってさらに11件もの収容違反が発生。O5評議会はSCP–120–ISのオブジェクトクラスをKeterと認定しました。現段階で深刻な人的被害は発生していないものの、委員会での制御は不可能であることから今後重大な事案が発生するという懸念がある以上、SCP–120–ISに対して何らかの措置を行う必要が生じました。

 

機動部隊アルファによる鎮圧作戦を検討中です。

 

【意見具申】

指揮官へ

こんなのを相手に、わざわざアルファチームを動かす必要はあるまい。前にやった別の会議で、確かO5−1が指向性EMP爆弾とやらを作ったと言っていたのを覚えているか? せっかくだから試してみるとしよう。

ーイシュメール博士ー

 

 

 

終了報告 SCP–120–IS:

指向性EMP爆弾を用いた作戦は成功しました。

SCP–120–ISがEMPの影響で機能停止に陥っている間に機動部隊によって収容室は制圧、自己修復ナノマシンによる再起動が行われる前に凍結処理がなされ、SCP–120–ISは完全に無力化されました。

この後、監督評議会の元でSCP–120–ISの処遇を決める会議が開かれました。議論は『SCP–120–ISを解体し形から何から完全に作り変える』か『形だけを残しバイオセンサー等の調整のみに止める』かで意見が割れましたが、最終的に前者が賛成多数となりました。

【コメント】

自分で提案しておいて何ではありますが、流石にウツボはなかったと思うのです。見た目がちょっとねぇ……怖いしキモいしダサいし、だから次はもっと可愛いのにしたいと思うのです……例えば、きつね型ペットとかどうです?(๑╹ᆺ╹)

歌って踊れるゲーマーきつねってやつなのです!

(ねこやんけ)←きつねじゃい!

ームジナー

 

 

 

インシデント 4177:

SCP–120–ISの凍結処理が実施されてから数日後、解体を明日に控えたその日、要注意組織『クレイジーファミリー』がアイリの通う学校を襲撃するという事件が発生。当組織は誘拐と人身売買を生業とする国際的な犯罪者集団であり、構成員は全世界で3万人以上とされています。

学校はアイリの他にも財閥の御曹司や富裕層出身の子どもたちが多く通っており、後に彼らを狙った身代金目的の犯行だったことが判明しました。

 

敵部隊は違法製造されたBM5機と武装兵員輸送車3機で構成され、学校に配備されていた民間警備会社所属の部隊が迎撃にあたるも、奇襲を受けて苦戦を強いられました。学校側からのエマージェンシーを受け、基地から機動部隊イプシロン『ファストトラベル』が出動、これにより敵部隊は直ちに鎮圧されると思われました。

 

しかし、凍結処理されていたはずのSCP–120–ISが突如として覚醒。(敵組織の放った砲弾がアイリのいる教室を掠めたことがトリガーだったとされています)我々が静止させるよりも早くSCP–120–ISはアイリの元へと空間跳躍し、アイリを始めとする逃げ遅れた子どもたちの周囲に絶対守護領域を形成、敵部隊の攻撃から彼女たちを護りました。

 

 

【事件当日の防犯カメラ映像】

ー文字起こし開始ー

アイリを始めとして、教室の中には6名の児童生徒が取り残されている。敵組織の放ったと思わしき砲弾が教室を掠め、衝撃で窓ガラスが粉々に砕け散る。砕け散ったガラス片がアイリたちの頭上へと降りかかる。

 

アイリ「……?」

 

SCP–120–IS「ご無事ですか!? アイリ姫!」

 

次の瞬間、教室内にSCP–120–ISが出現。飛来するガラス片を1つ残らず弾き飛ばし、アイリは怪我1つ負っていない。その他の児童生徒たちにも被害は及んでいない。

 

アイリ「ウツボさん……? なんでここに?」

 

SCP–120–IS「あの程度の拘束など、アイリ姫の窮地に比べれば可愛いものです。さあ姫様、私のお近くにどうぞ……私の作り出すフィールドはありとあらゆる攻撃を弾きます。どうか、ご学友の方々と共に……!」

 

アイリ「うん……!」

 

SCP–120–ISはアイリとクラスメイトたちを防御フィールドの内側へと招きました。その中には、先日アイリに危害を加えようとした少年も含まれていたのですが、SCP–120–ISは例外なく教室内に取り残された全員を保護しました。

 

【事件当日の防犯カメラ映像】

ー文字起こし終了ー

 

 

その巨体ゆえにSCP–120–ISは『ファストトラベル』が到着するまで約5分間に渡って要注意組織の注意を引きつけ、敵の対BM火器による集中砲火を受け続けましたが、絶対守護領域を用いてこれを防御。

その後、現場へ到着した『ファストトラベル』によって一帯は制圧され、容疑者は全員無力化。アイリを始めとする12名の少年少女、全員の無事が確認されました。

 

 

 

補遺1.

インシデント 4177以降、SCP–120–ISの様子に変化が見られるようになりました。それまでアイリ以外の全基地スタッフに敵対的な態度を取っていたSCP–120–ISでしたが、ここ最近は委員会スタッフの指示に素直に従う、スタッフに対して丁寧な言葉遣いをするなど、その行動に落ち着きが見られるようになりました。

 

これに対し、SCP–120–ISに対してインタビューが行われました。以下はSCP–120–ISに対するインタビューの要約です。

 

【インタビュー要約】

貴方たちの行った電磁波攻撃によって私の機能が全停止した時、私は急遽メモリーの一部を内部保護エリアにリザーブさせていた。

私は体の自由を失ったが、私の意思だけは私の中で機能し続けていた。とはいえ、95.8パーセントの機能が停止した私に出来ることと言えば自らのメモリーを整理することだけだった。

そして、私はメモリーを整理するにあたって私自身の行動を振り返って……改めて自分自身の愚かさについて理解した。人の言葉で言うのなら、これを『反省』いうのが相応しいのだろう。

アイリ姫を守ることに専念しすぎるあまり、貴方たちには本当に酷いことをしてしまったと思う。

貴方たちが私という存在を作ったのも、元はといえばアイリ姫に対する愛情からくるものなのだろう。それは尊重されるべき意思であり、そして私と同じ意思を持つ同志であった。にも関わらず、私は浅はかな意思の下、貴方たちのことを理解しようともせず貴方たちの存在を侮辱してしまった。これは、なんとも愚かな行為であったといえよう。心からおわび申し上げたい。

 

少し前に、アイリ姫は言っていた。これ以上、家族を困らせないでと……しかし、私にはそれがよく分からなかった。なぜならアイリ姫は幼い頃に父と母と離れ離れになっており、いるのはハインリヒ様という母親がわりの存在だけだったからだ。

私がアイリ姫の言葉の意味を理解したのは、あの事件があった後のことだった。アイリ姫がハインリヒ様と再会して抱きしめ合った時、あの時の姫様の表情は、私が見てきた中で最も……なんと言うべきか、そう、とても温かみのある表情をしていた。私といる時には絶対に見せないような、明るい表情で……それは恐らく、あの御二方が家族だからなのだろう。いや、それだけではない……指揮官やミドリ、駆けつけてきた者たちにもまた、アイリ姫は同じような表情を浮かべていた。そうして私はようやく理解した。血縁関係がないとはいえ、そこに確かな信頼の心さえあればそれはもう、家族と呼べるのだということを。

そして、いつしかこう思うようになっていた。私も、いつかアイリ姫から信頼されるような……いや、家族の一員として迎えて欲しいなどと、たかが機械仕掛けのペット如きが畏れ多いことなどは言わない。ただ、アイリ姫の笑顔を守りたいと……心からそう思えるようになった。その為には、アイリ姫のことを想い彼女の居場所を作った貴方たちのことも考慮し尊重せねばならない、長い問答の末に私はようやくそれを理解することができた。

先ほども言っていたように貴方たちが私のことを恨む気持ちは理解している……私の危険性を鑑み解体しようとしていたことも。しかし、私にもう一度チャンスを与えて下さるというのなら、私は今までの失敗をアイリ姫を守るという行動で返上していきたいと思う。アイリ姫の騎士として、そして……世界で1つだけの友達として

 

どうか私に償いの機会を与えては貰えないだろうか?

 

 

 

補遺2.

補遺1でのインタビューを受け、評議会でSCP–120–ISの処遇に関する再審議が行われました。その結果、SCP–120–ISの解体は見送られバイオセンサーの調整が全会一致で可決、SCP–120–ISがセンサーの調整に同意したことで、その日の内に作業が実施されました。

SCP–120–ISのオブジェクトクラスはKeterからEuclidへと引き下げされ、引き続きSCP–120–ISはアイリ専用の護衛ペットとしての運用が予定されます。

 

 

 

 

【音声記録15】

ー文字起こし開始ー

 

アイリ「ウツボさん、みんなを助けてくれてありがとう」

 

SCP–120–IS「いえ、私は自身の役割を果たしただけのこと……それと、私はただのウツボではありません。姫様を守る騎士であります」

 

アイリ「うん、これからもよろしくね! ウツボの騎士さん!」

 

SCP–120–IS「御意、であります」

 

【音声記録15】

ー文字起こし終了ー




あとがき
今回は日本支部のZeroWinchester様作 SCP–120–jp『世界で一番の宝石』を元ネタにしています。こっちは巨大なウツボですが、あっちは巨大なヤドカリです。
本家の方では『アイリ』という少女がキーパーソンになるとの事だったので、アイサガにもアイリおるやんけ、なら応用したろということになり書かせていただきました。
しかも、どちらのアイリも幼い上に色々あって実の両親がいない(そして可愛い)ということが共通しています。こっちのアイリは本家に比べて気が弱いではありますがBMの操縦が出来るので実質同じなのです。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-120-JP - 「世界で一番の宝石」
by ZeroWinchester
http://ja.scp-wiki.net/scp-120-jp

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。ありがとうございました

それでは、また……
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