どうぞ。
その後、衛宮邸に無事帰還したセイバー・アーチャー陣営は、作戦会議を開始しようとした。しかし、
「いや今何時だと思ってんだよ」
という宗次の一言によってひとまず寝ることになったのだが…
「なんで俺の寝室にいるんだ遠坂…」
「ほら、敵に襲われたときのことを考えると、衛宮君のそばに誰かいた方がいいんじゃないかと思って」
「勘弁してくれ…」
「お待ちを、リン。同盟を結んでいるとはいえ、シロウと2人にする訳にはいきません。ここは私が見張っておきますので。サーヴァントには睡眠は不要ですし」
「男女が2人で同じ部屋で夜を明かすのがまずいんだって!」
この有様である。
「まぁ修羅場になるよな」
「…趣味の悪いことだ」
愉しげに嗤う宗次と、苦虫を百匹まとめて噛み潰したような顔のアーチャー。何が悲しくて未熟な自分と若き日の妻がイチャついているところを眺めなければならないのか。おいオレ、そこ変われ。
「というか護衛と言うなら兄さんでも…」
「へえ?士郎は俺に一晩中起きていろと?俺は睡眠が必須なんだが?…色んな意味で」
どうにか女性と二人きりを回避しようとする士郎だったが、兄にも拒否られ、仕方なくセイバーと2人きりということになったのだった。凛は舌打ちした。
そして次の日の朝。そこには緊張して寝不足な士郎と、何やらげっそりとした…具体的には少なくとも二桁は死んだあとのような顔をした宗次がいた。
「ちょっと、衛宮君はともかく、なんでアンタもそんな顔してんのよ」
「聞くな遠坂、ちょっと胸キュンしただけだ…ぐぅぅ、幻痛と分かっていても心臓が痛てぇ…!」
哀れ衛宮宗次。それはもうしごかれたのであろう。実は週に一回はこうなる。それは実力もぐんぐん伸びるというものだ。総死亡回数はとうに万を超えている。
「っ…で?今日はどうするんだ?」
なんとか持ち直し、今日の予定を聞く宗次。家に篭もってもいいが、その備えもない─実は切嗣と宗次がそれぞれ色々と仕込んではいるのだがー衛宮邸では、少々厳しいものがある。
「学校に行く。藤ねぇから呼び出しを受けてて…セイバーは留守番しててくれ」
「そうですか、分かりました」
「おう。…え?反対しないのか?サーヴァントなしに外出するのは危険だーとか」
「シロウ1人ではそうですが…ソウジも同行するのでしょう?」
「そりゃそうだ…留守番するならお前に隠蔽のルーンを刻んでおくが」
「分かりました。お願いします。そして、シロウの護衛を頼みます」
宗次に頭を下げるセイバー。それに対し、宗次は自信たっぷりに頷いた。
「言われなくとも、家族くらい守ってみせるさ」
その夜、冬木の街にて、赤い主従が骸骨の兵相手に大立ち回りを繰り広げていた。
「このッ!次から次へと…!」
「一体一体は大したことはないが…こうも多いと面倒だな」
「キャスターの仕業ね…!私の街でこんな堂々と…いい度胸じゃない!」
「これは骸骨ではなく竜牙兵だな。これを使役できるのは、神代のキャスターで間違いなさそうだ」
その時、うじゃうじゃと湧き出てくる竜牙兵の一部が吹き飛んだ。
「悪い!遅くなった!」
「ちょっと、アンタ衛宮君はどうしたのよ!」
「もう家にいる!セイバーもいるから心配ない!」
その後、到着した宗次の助勢によって10分ほどで竜牙兵は掃討された。
「で?キャスターの情報は?持ってるんでしょ?」
「残念ながら、柳洞寺を拠点にしていることくらいしか分かってない」
凛の質問に、しかし宗次は首を横に振る。
「何よ、サーヴァントの真名は分かってるんじゃなかったの?」
「そうだが、キャスターだけは例外だ。あいつ召喚された直後に俺の探査術式を破ってきやがったからな…拠点が柳洞寺だってわかったのも、竜牙兵の出元を辿って分かっただけだしな」
「な、なんですって!?」
宗次の言葉に驚愕する凛。それもそのはずだ。原初のルーンを修めた宗次を上回る使い手、すなわちキャスターの中でも最高位にあたる程の腕前である。
「しかし、それほどの使い手なら逆に真名は絞れるな」
「ああ。候補としては…魔術王ソロモン、大魔女キルケー、あとは…あのクソ夢魔はまだ生きてるし…お師匠も然り。あとは裏切りの魔女メディアくらいか…」
「ビッグネームばかりね…」
「ひとまず掃討完了したことだし、帰るか」
そうして彼らは衛宮邸に帰還した─。
「この大馬鹿者!!」
「痛ぁ!!」
そのさらに次の日、衛宮邸では士郎にゲンコツを落とす宗次の姿があった。
「サーヴァントも俺も連れずに学校に行った挙句にライダーにやられたとか…もうやだ、うちの弟が馬鹿すぎて辛い、ホント馬鹿」
「そんな馬鹿馬鹿言わなくても…」
「てめぇは黙ってろ!さてはあれだな?俺がサーヴァントとやり合ってたのを見て、俺でもできるかもとか思い上がりやがったな?」
「うっ…」
図星を突かれ、おし黙る士郎。今回の件に関しては誰もが士郎に非があると考えているし、実際そうなので、誰も助け舟は出さない。
「いいか?お前は英雄でもなんでもねぇ、ちょっと魔術をかじっただけのただの一般人だ。そこを理解しろ。自分の心配だけしとけ」
「分かったよ兄さん」
「本当だな?…なら今回は許す。…さて、で?なんか情報は?」
納得した様子の士郎を見て、話を切り替える宗次。まあ実際には、どうせまたやらかすんだろうなとか考えているのだが。流石兄弟、弟の気持ちをよくわかっている。
「それに関しては私から話すわ。美綴が行方不明になってたんだけど、サーヴァント、というかライダーの仕業で間違いなさそうね。…おそらくだけど、ライダーのマスターは慎二よ。」
「何?」
凛の報告に思わず聞き返す宗次。自分が集めた情報と違ったのだからさもありなん。
「何よ?アンタマスターが誰かくらいわかってたんじゃないの?」
「ああいやなんでもねぇ…ワカメだと?しかしライダーは妹の方が…それにあいつは…いやしかし…」
しばらく考え込んでいた宗次はしかし少しして顔を上げた。
「とりあえず明日以降は、美綴の捜索と並行して、ワカメをとっちめる。ひとまずライダー陣営を潰すぞ!」
「「おう!!」」
「えっ?」「えっ?」「えっ?」「あっ」「あーあ」
宗次の声に、士郎…そしてアーチャーが声をあげる。
「なんかアーチャーキャラ違くないか?」
「確かに…アンタそんなこと言うやつだっけ?」
「…少々意外でした」
「あ、いや、今のは癖というかだな…」
しどろもどろなりながら弁明をするアーチャー。しかし…
「癖?へえ、アンタクール気取ってたけどそれが素なんだ〜?」
うっかり口を滑らせてさらに追い詰められてしまう。
「しまっ!あ、そのだな、…くっ!」
とうとう霊体化して逃げるアーチャー。
「…これはいじるネタが増えたわね」
「…さては遠坂のうっかりがうつったな?」
結局ぐだぐだした感じで会議は終了したのだった。
アーチャーェ…
オリ主君は原作知識は忘れてます。
おかしいねえ、一昨日まではある程度覚えてたのにねぇ?
これに関しては過去編で描写しますのでしばしお待ちを…
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