転生したら影の国に流れ着いてしまった件   作:辛味噌の人

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第2話です
どうぞ


プロローグ その2

 どうも、転生者の無銘です。お師匠ことスカサハに戦い方の訓練を受け始めて7年がたちました。現在約10歳です。誕生日がわかんないし影の国では1日の間隔も曖昧だから仕方ないね。

 ちなみに使ってるのはプニキことクー・フーリン(プロトタイプ)の使ってる槍っぽいのです。結構取り回しの良さがいい感じ…かっこいいとかじゃなくてこういう感想になるあたり毒されてるなぁ。

 

 さて、現実逃避もここら辺にしておこう。今俺の目の前にいるのは魔猪。そう、ディルムッドの怒りを思い知れさんの死因の魔猪である。

 どうもお師匠はこれくらいなら今の実力なら何とか勝てると見込んだようで。闘技場的なところに放り込まれたと思ったら出て来ました。

 

 おい待てふざけんな英雄の死因に勝てるわけないだろふざけんなこの槍ただ頑丈なだけで宝具でもなんでもないぞおいコラって危ねぇなクソ!

 

「ほれほれどうした?倒さなければ死ぬだけだぞ?」

 

「お師匠の鬼!悪魔!」

 

 …どうやらこいつを倒さない限り俺に明日は無いようだ。お師匠の目がマジだ。ここで死ぬようなら所詮そこまでとか思ってらっしゃる。くそう、多少成長したからかとんでもなく厳しくなってる…

 やってやろうじゃねえかこの野郎!大丈夫だ問題ない、波涛の獣ことクリードや覇獣ことコインへンに比べれば大したことねぇ!確かディルムッドが死んだ時は兄弟かなんだかの怨念だか生まれ変わりだかの奴だったらしいからそれに比べれば弱いはず。ならば何とか…なるか?いいや、何とかしなきゃ死ぬ!

 

「◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️!!」

 

 ひとまず身体にルーンを刻んで強化!同じく槍にもルーン!これである程度は攻撃が通るはず。それでも致命傷を与えるには、目、口、もしくはケツにぶち込む必要がありそうだ。

 

「◻️◻️◻️◻️◻️◻️!!」

 

「危ねぇな!喰らえハガラズ!!ついでにアンサズ!!オラァ!!」

 

 突進してきた魔猪をかわして、ルーン魔術をぶつける。雹、そこから派生して氷属性及び静止を意味するハガラズ、オマケに術ニキでお馴染みのアンサズだ。俺が現時点で使えるのはこれらとソウェル、カノ、ダガズ、エワズ、ベルカナ、ケーナズ、エイワズ、トゥール、ついでにガンド。あとはアトゴウラに必要なナウシズ、アルギズ、イングズだ。それ以外はどう頑張っても何故かまともに使えない。いや、使えはするが、あまり意味が無い。

 

 ハガラズの氷を食らって停止した魔猪に今の俺が出せる最大火力のアンサズの火球をぶつける。横腹に当たった火球は魔猪の分厚い毛を焼き尽くし、皮も炙るが、そこ止まり。使い手の俺がまだまだ未熟なせいか、原初のルーンを持ってしても大したダメージを与えられては居ない。おそらくお師匠なら今ので魔猪の土手っ腹に風穴を開けているだろう。

 だが俺としてはそれだけでも十分だ。分厚く生半可な刃を通さない毛を焼いたことで、今の俺が持つ槍でも貫ける場所が増えた。あそこに渾身の一突きを喰らわせれば、心臓に届けば致命傷を与えられるだろう。

 

 しかし代償もなかなか大きい。今のでかなりの魔力を使った。おそらく今ほどのアンサズを使うのは不可能。これでルーンは補助にしか使えなくなった。

 …まぁ、さして問題は無い。熱さに悶え苦しむ魔猪を尻目に、槍にベルカナ、カノ、トゥールを刻む。これで擬似的なゲイ・ボルクの完成…と言うには弱すぎるか。ルーン魔術はある程度なら使い手の考え方によって方向性を変えることが出来る。探索の意を持つベルカナで心臓に誘導し、カノで威力を強化、トゥールで自分に勝利を呼び込む。これはゲイ・ボルクと言っても過言じゃ…過言か。

 これで後は…ッ不味い!!

 

「◻️◻️◻️◻️◻️!!」

 

「しまっ…がぁッ!」

 

 クッソ油断した…って痛てぇな、脇腹を抉られたか…ひとまずハガラズを傷口に刻んで、出血を抑制する。

 油断して突進を食らってしまったが、これはチャンスでもある。今の魔猪は突進直後かつ俺に一撃入れて油断している。おそらく人間ならもう立ち上がれないと踏んでいるのだろう。幻想種といえど、所詮獣か。

 

「油断したな?喰らいやがれ!ハガラズ!!」

 

 残りの魔力をほぼ全てつぎ込み、ハガラズの氷弾を入れる。静止の効果が発動し、硬直する魔猪。これ以上ないチャンス、逃したらアホだぜ!喰らえ、お師匠に教わった、特殊な槍の扱い方、兄貴ことクー・フーリンの代名詞!

 

「穿て、抉れ、ブチ抜け!

偽・偽・穿ちの朱槍(ゲイ・ボルクIII)!!』」

 

 俺の全身全霊を込めた一撃は未だ動けぬ魔猪の脇腹を喰い破り、エイワズの効果によって心臓に誘導され…貫いた。

 

「◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️!!」

 

 今までで最も大きな声で断末魔をあげる魔猪。俺はあわてて飛び退る。死に際の悪足掻きを食らってはたまらない。

 

「◻️◻️◻️◻️◻️◻️…」

 

 最初は暴れていたものの、徐々に大人しくなっていく魔猪。やがてひとつ痙攣して動かなくなった。

 

「死んだ…か?」

 

 死んだフリではたまらない。アンサズの火球…魔力がもうない故かなり小さいが…を傷口にぶつけるが、ピクリともしない。

 

「確かに死んでおるよ。安心するが良い」

 

 あ、お師匠。とりあえず一言文句を…あれ?体が動かん…しまった、ある程度止血していたとはいえ、血を流し過ぎたか…

 

「おっと、限界のようじゃの。良い、眠るがいい。運んでおいてやろう」

 

 倒れかけ、お師匠に受け止められる。いかん、もう…意識が…ぐぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと苦戦するかと思えば…ふふっ。あのような戦いを見せられては…昂ってしまうではないか、愛しい我が弟子よ」

 

 




魔猪の前に放り出されても取り乱さず、脇腹を抉られても動じず、魔猪を割とあっさり倒す。これは逸般人ですわ…

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